しっかりした妹さん(仮)   作:苦土重焼燐

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イキマス


しっかりした妹さん(仮)

カーテンの隙間から差し込む朝日をうけ、俺は瞼を擦りながら、大きく欠伸をする。

 

 

 

「ん……ふぁー……」

 

 

 

朝は弱い、欠伸をした後もぼんやりとした脳味噌を揺らす様に船を漕ぐ、平行に向いていた視線も揺れるに連れて、徐々に自分のベットの方へと誘われていく。

 

 

「起きねば……」

 

 

薄く開いた瞼を閉じれば、このまま気持ちの良い安らかな二度寝へと旅立てるのだろう。究極の二択を前にして、寝惚けた頭で迷う。

 

 

寝れば確実に遅刻する時間帯だ、遅刻常習犯のレッテルを貼られてるとはいえ、これで遅刻すると今月で四回目に突入する。

季節はまだ、春を迎えたばかりで高校二年生になったばかり。

俺の頭脳による計算によると、一週間に一回ペースとでている。まぁ、誰が計算してもそうなるだろうが。

 

 

 

こうなってくると、何回でも同じだと思ってしまうからたちが悪い。

初犯と常習くらい意味合いが変わってくるくらいだから、もう仕方無い。何が仕方無いのか俺にも良く解らないが仕方無いんだ。

 

 

 

「……寝よう……ピリオドが俺を待ってる……」

 

 

 

色々と思考を重ねた結果、俺は折角だから心地よい眠り(微睡みを添えて)を選び、いそいそと起こした身体を布団に潜り込ませる。

 

……暖かい……。

 

 

 

あ~^^心がピョンピョンするんじゃ~^^

 

 

 

「兄さん? 起きてますか?」

 

 

 

就寝体勢(改)を取りつつ心をピョンピョンさせたところで、扉をコンコンッと控え目なノックと共にドアの向こう側から声を掛けられる。

 

 

 

「……」

 

 

 

やばい、俺のエデンへの道則を邪魔する者が現れてしまった。

いつか、この時が来るとは思っていたが(毎日来てます)……遂に、来てしまったか(くどい様ですが、毎日来てます)……。

 

 

 

「起きてるのは知ってるんですよー?」

 

 

 

「……」

 

 

 

ここで、『……ん、今起きたとこ……』なんて答えた日には、『何やってるんですか、カーテンも閉めっぱなしで』という流れでシャッと開けられ、『おはよう、勇者。今日は貴方の十六歳の誕生日よ』、なんて流れに発展する恐れがある。

 

先ずポイントとしては入室させない、年頃の娘さんであれば異性、ましてや兄の部屋に入ろうだなんて結論に至らない。

よって、ここは居留守に限る。

 

大体、実の兄貴の部屋なんてやばい代物(意味深)だらけなんだから、自ら好んで入室する妹がいるんなら見てみたい、連れてこい土下座してやるから。

 

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

 

俺は息を殺す、それはどこぞのミッションをこなしていくダンボール戦士の如く、ステルス、俺は今、ステルスその物なんだ。あぁ、そうだ。俺は、今、猛烈に、ステルスしてる。

 

 

ドアの向こう側から、ビシビシと無言の圧力が俺の下へと集いつつある状況だが、俺は負けない。例え、周囲をオーク、オーク、オーク、オーク、触手と、厭らしい者に囲まれたとしても。

負けないけど、感じてしまうのは人の性。

 

そんな、くっ殺精神な俺は布団の中で不動を保ち、動かざること山の如くを体現していると言っても過言ではない。

 

 

 

俺が勝つか、妹が勝つか先に動いた方がこの勝負、敗北を期す事になる。

 

 

 

 

ここからが山場だ、麻雀で言えば南四局、最後まで気が抜けない、肉親との闘い。

その火蓋は突如として切って落とされる。

 

 

ガチャッと回されるドアノブ、軋みながら開かれるドア、一歩……また一歩と床を踏み締めてくる足音。

高鳴る鼓動、額から耳へと汗が伝う。

 

よりにもよって、近付いてくる方向の耳とは俺も運が悪い。聴覚が駄目なら嗅覚、それが駄目なら最早、気配を感じ取るしかない。

 

視覚を使いたいが、使ったら最後、メテオを唱える老人達と同じ末路を辿ってしまうだろう。

 

 

 

その時、いきなり俺の頭スレスレを風が切り、ボスッとした衝撃と音が俺の耳に届く。

 

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

 

先程、土下座してやると言ったな?

 

あれは、嘘だ。

 

 

 

ふっつーに入室してきたし、俺のベッド横まできました。

 

 

 

つーか、こええええええええ!

 

 

ずっと、無言なのはマジでこえええ!!

 

 

 

俺が寝た振りをしてると思って、カマ掛けてきたみたいだが、残念でした! 寝ております!

 

 

 

「……兄さん……」

 

 

「……!」

 

 

 

囁く様な低い声が、俺の耳を叩き、思った以上に近いのか、何処と無く息遣いが感じられる。『はっ……はっ……はっ……』、まるでホラーゲームをVRで体験している感覚に陥る。

 

 

こええええ! ってかやべえええええ!!

 

 

今更、『寝た振りでした♡テヘペロ』なんて明かした日には、俺はもう朝日を拝むことが無い可能性がある。

 

 

もうだめだ……おしまいだぁ……。

 

 

good-bye 二度寝 good-bye 俺の明日

 

 

マリアさまは見てくれてなかったのか……まぁ、俺も見てないからいいんだけど……。しょうがない、覚悟を決めるか……。

 

 

 

俺は、意を決して瞼を開いてみた。

 

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

 

瞳を開けると、俺を膝立ちの状態で跨がりながらカーテンを開けようとしてる妹の姿が、そこにはあった。

 

カーテン→ベット on the 俺しちゃってるからね、ちかたないね。

 

 

 

「おっ……お、おはよう……」

 

 

「お? お、おぅ……おはよう……」

 

 

 

状況だけ見れば、妹に馬乗りの立ち乗りであります。

全く、怪しからんな。

 

 

 

「こっちも、おはよう?」

 

 

「実の妹と兄だ、間違いなんて起きないし起こらせないから、だから妹=サン、あの、俺の下腹部に目線向けながら挨拶するの止めて貰ってもいいすか?」

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