(完結)鉄血の子リィン・オズボーン   作:ライアン

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帝国解放戦線の奴らとっくの昔に加害者側になっているのに何時までも被害者面していてうざいんだお……
でもそのへんをオズボーンが父親の主人公に指摘させるのは作劇的に微妙なんだお……
だから主人公の親友ポジに代わりに言ってもらうお!

いやーこういう主人公には言えない事を言うのが親友、相棒ポジの役目ですよね!


鉄血の子と《黒銀の鋼都》ルーレ⑤

 作戦は順調に進んでいた。ザクセン鉄鉱山への侵入を果たしたリィン達は、途中で囚われていた人質の半数の解放に成功。当初の予定通りにマキアスとエリオットの両名へと人質の保護を任せて残り半分も解放するべく、奥へと進んでいた。

 マキアスとエリオットが選ばれた理由は至って簡単である、二人がリィンと同じく革新派の要人を父に持つ者だったからだ。戦力的にリィンはどうしても外す事は出来ない、しかしエリオットとマキアスに関して言えばアリサ共々、今回のメンバーの中では戦力的には下位に位置する。鉄血宰相の息子に加えて、帝都知事と赤毛のクレイグの息子までもが居ては流石に革新派色が強くなり、学院生としてイリーナ理事から人質の救出を依頼されたからと強弁するのが難しくなる、それゆえの判断であった。

 

 そして突入した中央コントロール室で、リィン達は今回の事件の実行犯達と対峙する。

 そこにいたのは帝国解放戦線きっての武闘派足る幹部《V》とその部下、もとい同志達。

 怒り心頭な様子でアリサは告げる、此処に何かあったら帝国そのものが危ないのだと。

 しかし、そんな彼女の常識的な(・・・・)意見に頷きながらVは応える、これはあのくそったれな鉄血野郎の首を取るために必要(・・)なのだと。憎悪をむき出しにして。

 そんな憎悪を前にしてアリサは問いかける、何故そこまでオズボーン宰相を憎むのか、と。心優しい彼女にはわからなかった、誰かを殺したい程憎んだ経験など彼女にはなかったから。

 まして、そのために無関係な人々を巻き添えにしてまでそれをやろうとする気持ちなど彼女には到底理解できないものだったから。

 

「貴様らにはわかるまい……!」

 

「あの男の“改革”の下、どれだけの人間が“故郷”を失い寄る辺なき身となったかを……!」

 

 そして解放戦線の面々は怒りを顕に告げる、恵まれた(・・・・)お前たちに自分たちの気持ちはわからないと。

 そんな解放戦線の八つ当たりも良い言葉にアリサはひるむ、何故ならば彼女は故郷を失ったことなどないから。

 父を失い、母は仕事に取り憑かれて、寂しい思いをした。それでも恵まれているか否かで言えば、自分は恵まれた立場にいる自覚があったから。

 そんな自身の不幸を盾にとったような発言にアリサは反論を出来ない。だって、彼女には目前の相手の言った通りに彼らの気持ちがわからないから。

 「恵まれたお前たちにはわからない」等という事実上の言論封鎖を行われてしまえば、紡げる言葉等ないのだ。

 

 ーーーだからこそ、反論の言葉を紡いだのは同じく宰相に故郷を奪われ、だが宰相の息子と“親友”になったという数奇な運命を持った男だった。

 

「で、あんた達が宰相の野郎に恨みを抱いているのはわかったが、それと今回、巻き込まれた鉱員のおっさん達と一体どういう関係があるってんだ?」

 

「何……」

 

「あんた達は言ったよな、宰相の奴をぶっ殺す“必要な作戦”だって。つまりあんたらは此処の連中や今までの行いを“必要な犠牲”と正当化(・・・)したわけだ。

 ーーーなあ、国のための“やむ得ない犠牲”としてあんた達から故郷を奪った鉄血宰相殿とあんた達の行いに何の違いがあるってんだ?」

 

 むしろ曲がりなりにも国のためという大義のある鉄血の方があんた達よりもマシなんじゃねぇのかと告げるクロウの言葉に解放戦線の面々は怒りを露にして

 

「黙れ!貴様のような恵まれた者に我らの気持ちがーーー」

 

「俺も故郷を鉄血の野郎に奪われた。あいつの推し進めた鉄道網の拡充計画のためにな。

 そんで先祖代々の土地を失ったショックで祖父さんはぽっくり逝っちまって、生きがいは失った親父は飲んだくれて、お袋は逃げた。俺はそんな親父から逃げるように学院に入学したってわけだ」

 

「ならば何故我々の邪魔をする!貴様とてあの男が憎いはずだ!それとも、そこにいるやつの息子に絆されでもしたか!!!」

 

 その言葉にクロウは少しだけ考え込むような素振りをして

 

「ま、確かにあの野郎は俺だって憎いさ。それが国のためだろうが何だろうが、あの野郎は俺から故郷と家族を奪った。到底納得なんて出来やしねぇさ」

 

 自分は鉄血宰相の事を憎んでいるのだとそう宣言する。決して割り切れずにくすぶり続けている怒りの焔が自分の中にはあるのだと。

 しかし、そこでふいにクロウは口元を綻ばせて

 

「だけど、どうやら俺はあんた達の言うようにどうにも絆されちまったみたいでな。

 そこの真面目大王と来たら、本気で国のため、見も知らぬ民の為とやらに自分はこの命を捧げるとかほざくんだぜ?

 だったら、俺も何時までもうだうだとこいつの親が仇だから、こいつも俺の敵なんだと憎しみを引きずるなんてダサい(・・・)真似は出来ねぇだろ、親友(・・)としてよ」

 

 ウインクをしながら告げる、奪われたからその恨みを晴らす、その過程で誰が巻き込まれようが知ったことかと他者を思う気持ちなどなく、ただ自分の怒りをぶつけるためだけに行動する、そんな行為は間違いなく正しくない(・・・・・)行いなのだと。

 

「……あんた達の気持ちはわかるつもりだ、けどなあんた達が、いや俺達(・・)が不幸な目に合ったことは決して無関係の他者を巻き込む免罪符にはならねぇんだよ。

 ーーー少なくとも、帝都での一件に、ガレリア要塞での一件、そして今回の一件。これだけの事をしでかして、無関係な罪もない奴らを大勢巻き込んだ、中には死んだ奴も居る。

 その時点でアンタたちは自分から鉄血の野郎のやり口を非難する資格を手放した、何時までも自分たちは被害者ですみたいな面で居るんじゃねぇよ。今のアンタ達は歴とした加害者だ、自覚しろ(・・・・)

 

 お前たちはもうすでに奪われた側から奪う側に回ったのだと、憎き仇敵と同じ穴の狢なのだとクロウ・アームブラストは容赦なくテロリスト達の非を指摘する。

 

「……君たちには君たちの事情があるのだろう。だが冷たい言い方になるが、それはあくまで君たちの事情でしか無い。

 少なくとも、今この場で巻き込まれた人達は君たちが憎む宰相閣下と縁もゆかりも無い者達だ。故に、私は私の事情を押し貫かせて貰う。貴族は領民を護るべし、そんな幼い頃に教わった義務を果たすためにね」

 

 そしてそんなクロウの言葉にアンゼリカもまた続く。そちらに譲れぬ事情があるようにこちらにも譲れぬ事情があるのだと。そこに、普段のふざけた様子は欠片もない、今の彼女は紛れもない“真の貴族”であった。

 

「く、何を偉そうに!そもそも今回の一件、ログナー家が清廉潔白だとでも思っているのか!?」

 

「わかっているさ、親父殿が今回の一件に噛んでいる事はね。だからこそ身内の恥をすすぐべくこうして行動しているのさ」

 

 一体誰が領邦軍に封鎖の指示を出していると思っているのかというテロリスト達の言葉にもアンゼリカは揺るがずに応える。そんなことは百も承知だと。痛いところをつかれた故の苦し紛れの負け惜しみでは、彼女の高貴なる決意を崩すことは出来なかった。

 

「……もう良い、これ以上の問答は無意味だ。どの道、目の前のテロリスト共に“死”以外の道など在りはしないのだから」

 

 テロリストには断固たる措置を持って臨む、これは国際的な常識だ。そして《帝国解放戦線》に関しては既に帝国政府より直々に指名手配されている、“生死を問わず”という形で。それの意味するところは、可能であれば情報を搾り取るために生け捕りにせよ、だが難しいようならば殺しても構わないである。

 帝国法に基づいても何らかの司法取引でも行われない限り、まず死刑が下されることは確実であった。

 

「誤った選択は、正しい懲罰によってこそ矯正されるべきだ。こいつらに対して必要なのは交渉でも説得でもない」

 

 何故ならば目の前の連中にはそもそも自らの行いを省みる気など無いのだから。「お前たちにはわかるまい」とこいつらは語った。ああ、全く以てその通りだ。自分には到底理解できない。

 父の行いを非難しておきながら、平然と無関係な者達を巻き込める恥知らず共の心などわかりたくもなかった。少なくとも、父の改革には確かな“大義”が存在した。ギリアス・オズボーンがエレボニアの大多数(・・・)の者に益を齎した事は決して否定できないはずだ。

 だが、こいつらの行いはなんだ?こいつらの行いで一体誰が幸福になったというのか?

 選んだのだろう?他ならない、自分の意志で。他人が泣くことになろうと復讐という自らの我儘を押し通す事を。

 ならば、既に目の前の連中に父を非難する資格などない。

 

「語りたい事があれば裁判の場で語ることだ。そこにどんな事情があろうと、貴様らがこの国に仇なすというのならば俺はそれを討ち果たす」

 

 そこには慈悲など欠片もない。基より軍人とは祖国のためならば尊敬に値する敵(・・・・・・・)は愚かときには友誼を交わした友でさえも討たねばならない存在なのだから。

 故に、これほどの事を仕出かしたテロリスト共にかける情けなど彼の中には全く存在しなかった。

 そしてそんな親友の語る無慈悲な言葉にクロウ・アームブラストとアンゼリカ・ログナーもため息をつきながら、否定しない。何故ならば彼の対応は正しいから。テロリストに対しては断固たる処置を取る、それは無慈悲に思えるかもしれないが、秩序を維持するためには必要な行為なのだから。

 フィー・クラウゼルはそもそも気にも留めない。何故ならば猟兵だった彼女にとって“戦い”とはそういうものだから。“金”、“家族”、“誇り”、それぞれ掲げる物に違いはあるだろう、だが譲れない何かを皆が持っている。そしてそれを賭けてぶつかり合うのが戦場だ。如何なる事情がそこに在ろうと、関係ない。何故ならば敵の事情等無視して、こちらの事情を押し通すために行うのが戦いなのだから。

 ただ一人、アリサ・ラインフォルトはそんな先輩の様子に少しだけ恐れを感じていた。何故ならば彼女は優しい少女だから、“敵”だからという理由でそれらを切り捨てる事ができないから。マキアスとエリオット同様、彼女もまた“戦士”には向いていない人種であった。

 

「……は、本当につくづくあの野郎に瓜二つだな」

 

 鋼の戦意と共に双剣を構えた仇敵の姿を見据えて、《V》は吐き捨てるように口にする。

 ああ、そうだあの男もそうだった。“敵”に対してはどこまでも無慈悲に冷徹に自分の部下たちの命を刈り取っていった。

 仕掛けたのがこちらでいる以上、非は自分たちにある。10人に聞けば10人がお前達が悪い、それはただの逆恨みだとそう告げるだろう。

 それがどうした(・・・・・・・)。そんなことは百も承知だ、その上で自分はあの野郎に一泡吹かせないと死んでも死にきれないのだ。

 基より清廉潔白な聖人君子とは程遠い身。今更あの世で女神に裁かれる罪状が一つや二つ増える程度知ったことではないとどこまでも身勝手な逆恨み(・・・)を《V》は滾らせる。

 

「ああ、そうだ。てめぇの言う通りだ。どのみちもう俺らは言葉じゃ止まれねぇ!

 あの野郎を飲み込むでっかい焔になるまでだ!そしてそれに立ちはだかるっていうのなら、まずはてめぇらを先に飲み込むまでだ!!!」

 

「そんな未来は有り得ない。何故ならば、貴様はこの場で俺に殺されるのだからな」

 

 憎悪の咆哮に応じるのは絶対零度の如き冷徹な声。

 そんな宣戦布告と共に、両者は激突を開始した。

 

 




「裁判の場で語ることだ(貴様らが生きていたらな)」

ちなみにクロウの解放戦線に語った言葉は単なる欺くための演技ではありません。
どちらかというと自分自身にも言い聞かせている色の強い本音となります。
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