作者自身早くクロウとオズボーン君に本気の殺し合いをやらせたい衝動を抑えながらこの青春模様を描いています。
「いらっしゃいませ、1年Ⅳ組の猫喫茶にようこそ……ニャ」
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「って、わーーーーリィン君!うううう……できればリィン君には来て欲しくなかったのに……」
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「ふふふ、とても可愛らしくて素敵ですよ」
そんな風にクレアは微笑ましいものを見るかのように口をする。
「あ、クレアさん。お久しぶりです。あ、あんまりこの格好は言わないで下さい……えっとそちらに居る人達は……」
そういって恥じるかのように縮こまりながらもクレアの傍にいる見知らぬ二人の存在に気づいたトワはそんな風に問いかける。
「やっほー僕はミリアム・オライオンって言うんだ。よろしくね、トワ!リィンからの手紙で色々と話は聞いているよ!」
「えっと……クレアさんの妹さん……とかですか?」
「ま、ある意味では俺たちは全員兄弟みたいなもんだって言えるかもしれねぇな。鉄血の子っていう異名、お嬢ちゃんも聞いた事位あるだろ?」
「あ、はい。オズボーン宰相閣下の腹心とされる人達でリィン君からもそういえばクレアさん以外にも妹のような子とクロウ君に似ているところのある困った兄貴分みたいな人がいるって話を聞いた事が」
「その鉄血の子が俺たちってわけだ。ちなみに俺はコイツが10歳の頃からの付き合いでな。そっちのクレアお姉さん共々そいつに勉強を色々と教えてやったんだぜ」
「わぁ、じゃあリィン君の先生なんですね!」
「おう、勉強だけじゃなくてこっちは色々と教えようと思ったのにこの真面目ちゃんと来たら悉く断りやがってな。だからまあ劇の方はともかくステージなんてものをやるとは思わなかったから正直驚いているぜ。ふーんそれにしても……」
「え、えっと……」
自分に対して観察するような目を向けて来るレクターにトワは戸惑いの色を見せる。
「あーレクターったらじろじろ見ていやらしいんだーーーーー」
「違うっての。可愛い弟分がご執心の相手がどんな奴かと気になっただけだ。……割と意外だったな、てっきりこいつの好みはこういう可愛い系じゃなくて綺麗系だと思っていたからよ」
そんな事を言いつつレクターはチラリと横に居るリィンの身近にいた
「あーそっかそっか、レクターはリィンがクレアの事を好きだと思っていたんだねー」
「ミ、ミリアムちゃん……」
あまりにも直球過ぎるミリアムの発言にクレアは困った顔を浮かべる
「そういう事。まあ純情な思春期の少年の心理を考えれば無理からぬ事だと思っていたわけだが、こうして弟分が惚の字ではないかという専らの噂の相手にいざ会ってみると真逆のタイプだったから驚いていたわけなのさ」
「なるほどなるほど、ねぇねぇリィン、その辺どうなの?リィンはトワのどういうところが好きなの?」
「そうだーそうだーお前はこの娘のどういうところが好きなんだーおらーいっちょ言ってみろ」
「え、えええええええええええええええええええ」
純粋な疑問として無垢な瞳をリィンに向けながらそんな事を言うミリアムとそれに乗っかり囃し立てるレクター、そして突如としてリィンは自分の事が好きなのだという前提で話を進めだした二人へと困惑するトワ。だが、その様子は困惑しながらも何かを期待するように顔を赤らめながらチラリとリィンの様子を窺っていて……
Ⅳ組の生徒達も前々から噂されていた優等生コンビの実際のところが気になるのだろうすっかりとそちらの方へと意識が向いている。
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「もう、二人ともそんな事を言って。リィンさんがすっかり困ってしまっているじゃないですか、特にレクターさんは真面目なリィンさんをあまりからかわないでください」
そんな風にクレアは二人を、特にからかう気満々のレクターを嗜める。そういうところが真面目なリィンに良く思われていなかった理由なのにこの男はそれを知りつつ改める気は毛頭ないようである。
「え、えっと、とりあえずその、席に案内させてもらいますね!」
そんな風にトワについていこうとした三人はそこで訝しがる、リィンが何故か硬直したまま付いてこないのだ。というかよくよく考えてみればここに入室した瞬間からリィンは一言も喋っていなかった。常のリィンであれば何かツッコミを入れていいようなところでも地蔵のように固まっていた。
「リィン、どうしたの?」
おーいとミリアムが目の前で手を振ってもリィンは硬直したまま動かない
「リィン君、大丈夫?」
心配そうに猫の着ぐるみ姿のトワが覗き込むとようやく再始動を果たしたかのようにピクリと動いて……
「あ、ああ……大丈夫だ。すまない、あまりの衝撃に我を失っていた。……その似合っているぞトワ。むしろ、似合いすぎていて色々と危険だ。うん、その姿の君はあまりにも
まじまじと見つめながらそんな事をしみじみと深い実感の篭った様子で告げるものだからトワも俯きながら顔を赤くして
「え、ええと……その……ありがとう」
これまでもリィンが自分を褒め殺して来たことは多々あったがこうしてマジマジと容姿を褒めてくるのは初めてだったからだろう、トワは何時にも増して顔を赤くする。
そうして甘酸っぱい空気が漂ったまま二人はそこで固まってしまう。
「ふーむ、こりゃ思ったよりもガチな感じだったかな」
レクターはしみじみと弟分の春を喜ぶように呟き
「にししし、二人とも顔真っ赤だねー」
ミリアムは囃し立てるようにそんな事を言い
「……微笑ましい光景ですね」
クレアは胸にわずかばかりの寂寥感を覚え、寂しげな笑顔を浮かべながらも弟分を祝福する言葉を述べていた。
そうして何時もに比べてぎこちない様子でトワと会話しながら猫喫茶にて過ごしたリィンは、三人と別れオーラフ、エリオット、フィオナの三人を正門へと迎えに行くのであった。
Ⅳ組一同「後夜祭であの二人が踊る方に50ミラ」
クロウ「踊らないに賭ける奴がいねぇと賭けが成立しないだろうが」