描写したいところをつまみ食いしていくダイジェスト形式になると思いますのでよろしくお願いします。
特別実習一日目はつつがなく終わった。出された課題は3つ
・東ケルディック街道の手配魔獣
これに関してはリィン、フィー、ラウラというすでに学生のレベルを大きく超えた戦闘力を有している三人を擁するA班にとっては特に問題なく一蹴。もうあいつらだけで良いんじゃないかなとならないようにリィンはアリサとエリオットも実戦経験を積めるように配慮を行った。
※「「そんな配慮は要らなかった!」」と二人は主張したがコレも二人の未来のためである。リィンは心を鬼にして愛する後輩を千尋の谷へと突き落とした。これでも師であるオリエ師範代、そしてサラ教官に比べればかなり優しい方だと本人としては自負しているようである。
・壊れた街道灯の交換
こちらも手早く実施して異常なく完了。工学系分野に深い造詣を持つアリサが実施して交換中の護衛を残り四名にて実施してつつがなく完了した。
・薬の材料調達
こちらも問題なく完了。大市でベアズクロー、西ケルディック街道の農家より皇帝人参を分けてもらった。同じく西ケルディック街道に位置する薬草の群生地よりベズーリーフを調達、薬草を見分ける際にはフィーが活躍。曰く、この手の薬草は緊急時に昔から調達していたとの事である。
途中、大市にて出店場所をめぐる商人同士のトラブルなどもあったがこちらもリィンらが仲裁した後にまとめ役であるオットー元締めが出張ってきた事で一応の解決を見た。そうして一日が終わり、後は寝るだけとはならず5人は後一つ残っている重要な課題へと取り掛かっていた、そう今日行った事に関するレポートの作成である。
「一応教官に提出する前に俺が軽く目を通して添削するので出来たものは順々に俺に見せるように」
そうリィンは告げて自らもまたレポートの作成に取り掛かる。無論学年主席たる彼にしてみればもはやこの手のレポートの作成は十八番と言っていい。ケルディックに来る前に収集していたこの地域の地理的な要因、元締めより聞かされたアルバレア公による増税、そしてその背景にある革新派と貴族派の対立等も合わせながらスラスラと作成していく。
「出来た」
「は?」
レポートの作成へと取り掛かり始めてわずか数分、フィーのその宣言に一同は呆気にとられる。
「だから、出来たよ今日のレポート」
そういってつかつかとリィンの下へと歩いてきてフィーはその作成したレポートを手渡してくる
「いや、出来たってお前……」
こんな数分でまともなレポートが出来るわけがないだろうとフィーから差し出されたレポートを見てリィンがピシリと固まる。
「じゃ、私はもう寝るね。おやすみ」
リィンからの返答を聞くこともなくそのままフィーは自分のベッドへと潜り込むと、すぐにスースーと実に穏やかな寝息を立て始める。
「リィン、フィーのレポートってどんな感じだったの?」
「いくらなんでもこの短時間で作成できるとは思えないが……」
「箇条書きとかそんな感じの内容だったり……」
そうして三人はフィーから提出されたレポートを手に取ったまま固まってしまったリィンの背後へと回り込みその内容を確認して呆気に取られる。そこにはこう書かれていた
来た。やった。終わった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
硬直していたリィンがフルフルと小刻みに震えだす、そうして黙ってそのレポートを置くとすっくとおもむろに立ち上がって……
「何を呑気に寝ているクラウゼル!このレポートとは到底呼べない代物はなんだ!!!」
そんな叫び声に叩き起こされたフィーは寝ぼけ眼をこすって
「………寝込みを襲うなんてケダモノ。トワと言い、そういう趣味?」
「誰が貴様に欲情などするか!それよりもこのレポート、いやレポートということすらおこがましいやる気の無い子供の日記のような何かは何だ!」
「会心の出来」
そんな言葉と共にブイとドヤ顔を見せつけるフィーへとリィンはしばらくひくついた後にとてもにこやかな笑みを浮かべて
「そうかそうか、コレがお前にとっては最善を尽くした結果だというんだな」
「そ」
「なるほどなるほど、それならば仕方ないな。なんといっても出来ないんだ、それは今までの環境により培われたものであって別段お前の責任というわけではない」
「わかってくれたみたいで嬉しい」
それじゃあおやすみと言おうとするフィーにリィンはそのままにこやかな笑みで
「ああ、出来ないならば出来るようになれば良いだけの事だ。俺が班長として責任を持って指導してやろう」
そうだなまずはレポートの書き方の基礎から叩き込んでやろう等と言いだしたリィンの迫力にフィーは冷や汗をかいて
「……ごめんなさい、手を抜いてました。書き直します」
「よろしい」
そうしてほとんど添削を受けるところもなくアリサが一番目に、多少の添削を受けながらラウラとエリオットが、何度も添削を受けた後に「……まあ、入学してすぐという事を勘定に入れて合格にしておいてやろう」というリィン先輩のありがたいお達しを受けて精も根も尽き果てた様子でフィーがそれぞれレポートを完成させて一日目は終了となるのであった……
・・・
実習二日目は波乱の幕開けとなった。昨夜出店場所を巡りトラブルとなった二人の商人マルコとハインツその
両者の屋台が同時に破壊されるという状況、そして昨日とは打って変わった領邦軍の無茶苦茶ながらもやけに迅速な対応、その二点から不審な物を感じたリィンは領邦軍の詰所を訪問。エリオットの策士ぶりなども相まってこの事件は領邦軍と結託してくれた計画的な犯行と推定。ケルディック市内にいたルナリア自然公園の元管理人を自称する酔っぱらいからの証言を下に、ルナリア自然公園に犯人たちが潜伏している事を突き止める。
そうして強行した現場にて抵抗する犯人を取り押さえ、
「弁えろと言っている。此処は公爵家の治めるクロイツェン州の領内だ。これ以上、学生ごときに引っ掻き回されるわけにはいかん。手を引かぬというのならば……このまま容疑者として拘束し、バリアハートに送っても良いが?」
告げられた言葉にリィンは灼熱のような憤怒を燃やしながらそれを押さえ込むように強く唇を噛みしめる。
(落ち着け……目の前の部隊を実力行使によって蹴散らす事自体は容易いがそんな事をしてしまえばそれこそ言い訳の余地なく犯罪者だ)
そう自分自身に言い聞かせながらリィンはこの場を打開するための手立てを考える。
第一案:実力行使によって領邦軍を蹴散らす
可能か不可能かで言えば問題なく可能である。この場にいる部隊は高々一個小隊。見たところ突出した実力者もいるわけではないし、ラウラやフィーもいるこの状況であれば問題なく蹴散らす事、それ自体は可能である。だがそれをしてしまえばそれこそ反論の余地なく犯罪者だ。故にこの案を取ることは出来ない
第二案:相手の士官に軍人としての誇りを今一度呼び起こすように説得を行う
これも効果は薄いだろう。昨日の挨拶の際、そして今日の対応を見るに目の前の兵士たちはどこまで行ってもアルバレア公の私兵集団だ。犬に人としての誇りを説いたところで意味はない。それこそ現実を知らぬ青臭い学生の綺麗事だと切って捨てられて終わりだ。
第三案、これがおそらく最も効果的となるだろう、だがそれをリィンとしては出来ることであれば使いたくないものだった。
第三案、それは
頼るべき権威、それは領邦軍の中でも絶大な武名を誇り、アルバレア公爵とて決して無下には出来ない帝国屈指の実力者光の剣匠ヴィクター・S・アルゼイド、その人である。
目の前の士官に言ってやれば良いのだ、たかだか
領邦軍においてアルゼイド子爵の武名は絶大と言っていい、授与された勲章の数、重ねた武勲は数知れず、加えてかの黄金の羅刹をはじめに領邦軍の中核を担う将官や佐官には彼の愛弟子が数多く存在する。
そんなアルゼイド子爵のご息女を貴様はあろうことか盗人扱いするのかと、そうしてアルゼイド子爵と揉めた時貴様の主君であるアルバレア公爵はわざわざ庇ってくれるほどに部下に慈悲深いお方かと。
アルバレア公爵にしてもそのような瑣末ごとで名高き光の剣匠と事構えるつもりはないだろう、アルゼイド子爵の武名と領邦軍における影響力は決して四大名門とて侮れるものではない。貴族でもない
この士官が此処まで自分たちに強気に出られているのもそれはアルバレア公の威光があると思っているからこそ。権威に頼るものは権威に弱い、おそらくそこまで言えば自ずと退く事だろう。
故に有効性という点で言えばこの第三案が最も有力である、というか実質現状それ以外に選択肢はないと言って良い。
だが、しかしそんな自ら築き上げたものでもない権威を振りかざす事はリィン・オズボーンにとっては最も唾棄すべき行いであった。
『光の剣匠』という自分が築き上げたものでもない力を振りかざす事、それこそが今までリィンが侮蔑してきた自分はリッテンハイム家の嫡男だからという理由で居丈高に振る舞っていたヨアヒム・リッテンハイムと一体何が違うのかと。
(いや、ある意味では俺はアイツ以下か)
なにせリィンがやることは「此処に居るお方をどなたと心得る、恐れ多くもかの光の剣匠の愛娘ラウラ・S・アルゼイド様にあらせられるぞ」と言ってそれを使い目の前の士官たちを脅すのだ。
(さしずめ俺はリッテンハイムのコバンザメ共と同じか)
大貴族の権威を振りかざす馬鹿殿の太鼓持ち連中、そんな連中と同列となることにリィンは我慢がならない。ラウラとて同じであろう、彼女は自分と近しいところがある、その手の権威を振りかざすような事に嫌悪を覚えるタイプの人種である。まずリィンがそのような事をすれば失望を禁じ得ない事であろう。故に心情的に言えばコレは使いたくない手段であった。
(だが、此処でこいつらを取り逃がせば彼らの生活は……)
せめて商品だけでも戻ってくればなんとかやり直せる。そう祈るような気持ちで呟いていた商人の青年の姿がリィンの脳裏に過る。彼はこの商品を集めるために資産のほとんどを費やしたと言っていた。商品が取り戻せなければ、それは即ち彼の破滅を意味する。
自分の誇りか。それとも見も知らぬ民の生活か、突きつけられた二択に対してリィンは静かに瞳を閉じて
(そんなものは決まっている)
自分が何のために軍人となるのかそれを今一度問いかけなおして、決断した
「フン、さっきから聞いていれば
口角を釣り上げながらリィンは殊更威圧的かつ挑発的にそう告げる
「何……!?」
「貴様!なんだその無礼な態度は我々を誰だと思っている!!」
「ちょ、ちょっと……」
「リ、リィン……」
「リィン先輩……?」
「・・・・・・・・」
挑発的に振る舞いだしたリィンに対してアリサとエリオットが慌てたように心配そうな声を挙げる。ラウラが何か考えがあるのかと訝しがる。フィーは興味深そうにリィンを見据える
「ふん、無礼な態度か。知らぬというのは哀れだな、故に教えてやるとしよう。貴様らが一体誰に向かって無礼な口を叩いていたのかを!」
おそらくこの件で自分はラウラからの信頼を失うだろう、だがそれでも構わない。優先すべきは罪なき自国の民の生命と生活、それこそが自分の目指す軍人の存在意義なのだから。失った信頼はまた言葉と行動によって取り戻すのみ
「良いか、こちらに居るお方は」
そんな覚悟と共にリィンがラウラの名を告げようとしたその瞬間に
「ーーーその必要はありません」
リィンにとっては旧知の敬愛して止まない女性の、凛とした声が響いた……
義弟のピンチにクレア義姉ちゃん颯爽登場!
これが姉弟の絆だ!仲良し家族鉄血の子!!!
ぶっちゃけあそこの場面ってラウラが光の剣匠の娘だって明かして
おうこら、お前ら誰を犯人扱いしているんかわかっているんか?って言えばクレア大尉の助力借りなくても解決したんじゃないかなーって思っています。
社交界で浮いているらしいシュバルツァー男爵家はともかく、アルゼイド子爵はあの黄金の羅刹の師でもありますし。光の剣匠なんて異名まである位ですし。
冤罪だと判明した時にお前らのような下っ端庇ってくれる程お前らのボスは部下思いなんか?うん?って脅しておけば。
まあラウラもリィンもアリサもエリオットもそういう権威を頼る、借りるという発想が湧かない&湧いたとしてもやりたがらないタイプなんでああなったんでしょうけど。
オズボーン君は昨年のクロスベルでの経験やらで色々と擦れたのでその辺に気づいてしまいました。