優しき狂王はヒーローの世界へ   作:九つの大罪

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悪意の連鎖を背負い、仮面の英雄に討たれた王は、別の世界で生きる事に・・・


プロローグ

永き眠りの中から目覚めた記憶と色を無くした一人の青年がいた。

 

自分の名前以外全てを無くした青年は戸惑いながらも自分を受け入れ、支えてくれて、共に過ごしていった者達とともに前を向き、前に進み、そして、自分の色と新しい色を見つけ出した。

 

しかし、運命というのは無情で残酷なものだった。

青年は新しい色を見つけ出し手に入れたと同時に青年の過去の色も思い出し取り戻した。

 

取り戻した青年の過去の色は周りの大勢の人を巻き込み、青年たった一人を残し消えてしまった。失ってしまった呪いのような記憶と色だった。

 

何もかも思い出し取り戻した青年は決意した。

自分に鮮やかで優しい色を、時間を、思い出を与えてくれた大切な人達を失いたくない。失ってなるものか。

青年はそんな人々の前から姿を消すことを……

 

 

 

                 『みんなが僕を忘れますように』

 

 

 

青年は再び永い眠りについた。

そして、青年とともに過ごした人々の記憶から青年が消えた。

人々の記憶から青年が消えたことにより喪失感を感じる者、誰かを無意識に意識するもの、誰かを探す者、理由は知らないが悲しい気持ちになり涙を流す者がいた。

 

しかし、世界は再び青年を永い眠りから目覚めさせた。

再び目覚めた青年が目にしたのは、自分に優しい色を与えてくれた人々の内の二人の親友が憎しみ合っている現実だった。

そんな現実に青年は悲しみが溢れ涙を流した。

そして青年は再び決意し、行動を起こした。

自分に優しい色を与えてくれた人々を救う為に……。

憎しみの連鎖を断ち切る為に……。

笑い合える明日の為に……。

 

 

 

 

日本・東京

 

一人の王が黒い仮面の人物に心臓を剣で突き刺された。

 

「ごめんスザク……君を……騙す形に……なって……でも……僕は……君とルルーシュに……生きて……ほしい。」

 

「ライ……」

 

「勝手なのは……分かっている……けど……二人で……世界を……守って……ほしい……みんなを……みんなの……願いを……頼……む……」

 

「……その願い(ギアス)……確かに受け取った。」

 

仮面の人物……スザクは涙を流しながらもライの願いを受け入れた。

 

この日、一人の王が死に、世界から憎しみの連鎖が断ち切られ……一人の青年の物語に幕を閉じた。

 

 

 

 

 

とある遺跡

 

「……これで銀の王の物語は終わったけど……本当にいいのか?」

 

「ああ……それがライの為だ。」

 

そこには白い髪の男と緑色の髪の女……そして、その二人の間にライの遺体があった。

 

「確かに俺の力とCの世界を通してこことは別の世界に送ればライは生きて行ける。しかしC.C.。おまえにしては珍しいな。一度はライの色探しに自ら付き合い、ライが再び眠る時も付き合い。そして再びライを起こす際にはおまえの意思で起こしてその後はライをからかいながらもしっかり見守り、最後はライに生きてほしい……余程ライの事が気に入ったようだな。」

 

「……何が言いたい。」

 

クスクスと笑う男にC.C.と呼ばれた女は男を睨む。

 

「別に……このまま別の世界に送ってもいいが、どんな世界に行くのかはわからない……少し準備してくる。」

 

男はそう告げると奥へと行った。

 

残されたC.C.はライを見つめた。

その表情は寂しそうだった。

 

「ライ……お前がいないと、張り合いがないよ……」

C.C.は少々悲しそうに呟いた。

 

C.C.はおそらく今回のライのの行動、目的を一番理解していたはずだった。

しかし、それを止めることはしなかった。

ライの意思と覚悟を理解していたからだ。

そんなライの意思を理解しているのだが……

 

「……お前がいない世界は退屈だよ……ライ。」

 

C.C.はもうこの世界で目覚めることのないライに顔を近づける。

ライには生きてほしい。

しかし、離れがたい存在で……

自分にとって特別で……

長年生きてきた自分が初めて心の底から愛した存在に……

C.C.はライにキスをした。

涙を流してはいるがその顔はどこにでもいる恋する乙女だった。

 

 

 

 

 

「まったく……素直じゃねぇな。……ま、人の事言えないけどな。」

 

先程奥に行った男がC.C.から死角になる位置に隠れて彼女の様子を見ており、しばらくは彼女に時間を与えることにした。

 

 

 

 

 

 

「……時間だ。始めさせてもらうぞ。」

 

男がそう言うと男とライのいる位置の地面と遺跡の柱が紅く光りだす。

 

「もう一度確認するが……未練はないんだな。」

 

男の言葉にC.C.は……

 

 

 

 

 

            「未練はある。……だから、未練はない。」

 

 

 

 

 

そう答えた。

 

その言葉と彼女の表情に男は懐かしそうに小さく笑い。そうか……。と答えた。

 

「これでさよならだ。銀の王よ。これから行くどこかの世界でおまえの幸せを心から願おう。」

 

 

 

 

 

紅い光が消えた後には男とライの遺体の姿は無く静かな空間が広がった。

 

一人残されたC.C.は……

 

「ライ……私も願おう。これから先、おまえが進む道に幸があらんことを……。」

 

C.C.は涙を流し、ライのこれからを思い……願い……祈りをささげ、時間が許す限り祈り続けた。

 

 




ふと、思いついて書きました。

今後ともよろしくお願いいたします。

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