Ange Vierge~The Wings Tail~   作:のわわーる

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 のわわーるです。

 やはり不定期になってしまう小説投稿、最近プロット作成に難攻しています。今までの様な速度では厳しいものがあるやもしれませぬ(今更)。


 ここから本編。


死を招く者

 対抗戦の組み合わせ発表を終え、静寂を取り戻した教室に節成ら三人の姿があった。次々と生徒が退室していく中、事を過剰なまでに深刻に捉えていた彼らはその場でいつものように話し合っていたのだった。

 

「まあ、あれだな。周りからしてみりゃなんであんなに深刻になってるんだって思われてそうだよな。」

 

 宗悟が軽い口調で言って見せる。事実、対抗戦はあくまで学園行事の一環である。結果如何で今後に影響するわけでもなければ、αフィールドのない戦いの様に命に関わるものでもない。

 

「そりゃそうだよな。正直自分でもなんでここまで真剣になってるのか、分からなくなることもある。ただ――。」

 

 レミエルの事を考えるとそうも言えない、と口に出すのを節成は直前になって留めた。とうの本人の前で口に出す言葉でもないし、また宗悟にどやされるとも思った。節成自身がレミエルに相当肩入れしていることの現れでもあるこの言葉は、いたずらに口に出すものではない。そう思った節成は結果的に口ごもってしまう。

 

「ただ、何ですか?」

 

 レミエルが節成に尋ねる。間違っても先の答えを言う訳にいかない節成は、当然別の言葉でごまかすのだった。

 

「――やるからには力を出し切らないとな。」

 

―――

 

 その翌日、勝利を得るにはまず相手を知ることから、という結論に至った節成とレミエルはチェルノの事を知る人物を探しだした。宗悟はパートナーとなるはねるとの情報交換の為、ホームルームが終わって早々単身陸上部へと乗り込んでいったとの事だ。

 

「まあ、アイツらしいな。」

 

 そう呟き、隣の席のレミエルへと目をやる。その表情は、どこか心ここにあらずといった調子であった。

 

「何考えてるんだ?」

「ふえっ!?え、ええと……チェルノさんの事、誰に聞けばいいのかなって……。」

 

 鳩が豆鉄砲を食らったような表情を見せるレミエル。少々違和感を覚えた節成であったが、追及はしないでおく。

 

「そうだな……黒の世界出身なら、その手の事情通なんかいるとありがたいけど、思いつくか?」

 

 レミエルに尋ねるも、彼女は顔をしかめ横に振る。そう簡単に思いつくはずがない、と感じ取った節成は、自身も候補を頭に思い浮かべる。認めたくはないが、真っ先に思い浮かんだのは美海だった。彼女の未知数の人脈であれば、あのチェルノとも面識を持っている可能性がある。だが節成にとって美海とは最も苦手な存在であった。親の都合で引っ越しが多い家庭だった事もあり、元々そこまで友人は多くなく、幼い頃はひっそりと学校生活を送っていた節成にとって、傍若無人に友人を生み出していく美海は眩しすぎたのだ。

 

「――ないな。」

 

 美海を候補から外し、再び思考の海へと意識を走らせる。少し経ち、ある人物が節成の脳裏に思い浮かんだ。レミエルもほぼ同じタイミングで思い浮かんだらしく。お互いに顔を見合わせた。

 

「ソフィーナ!」

「ソフィーナさん!」

 

―――

 

 チェルノの情報をソフィーナから聞きだすべく、その捜索を開始した節成とレミエル。レミエルは校舎内、節成は校舎の外と、二手に分かれて探す事となった。

 ソフィーナを探し、校舎内を歩くレミエル。放課後という事もあり、多くの生徒が廊下を行き来している。

 

「ソフィーナさんがいそうなところといえば――。」

 

 以前節成がソフィーナと訪れたという図書室へと歩を進めるレミエル。ふとどこかで見覚えのある人物とすれ違った。灰色の髪に黒い装束を身にまとった生徒。見ただけでどこか物々しさを覚えるその人物に、レミエルは思わず振り返る。その生徒もレミエルの事を知覚した様で、少しして立ち止まり、こちらを振り返った。

 

「あら、あんたが"片翼の天使"?」

「チェルノさん……。」

 

 思いがけず本人と出くわしてしまったことへの驚きもあったが、チェルノから感じられるどこか不可思議な雰囲気にレミエルは圧倒されていた。

 

「対戦表で見たわ、あんたが私の相手なんですってね。」

「そ、そうみたいですね。」

 

 余裕気なチェルノに対し、対峙しただけでたじろぐレミエル。そんな彼女の戸惑いを感じ取ったのか、含みを持った笑みを浮かべながらチェルノがレミエルに近づく。

 

「あたしの事嗅ぎまわってたみたいね、良い心がけだわ。対戦前の情報収集は基本だしね?」

 

 早々に確信を突かれて、動揺が顔に出てしまう。チェルノはレミエルの様子から自分が調べられているという事を見抜いたのだ。

 

「嗅ぎまわるなんて、そんなこと――。」

「隠さなくたっていいのよ、あんた達は至極当たり前の事をしているんだもの。あたしも、少しはあんた達のこと調べさせてもらったしね。」

 

 調べられていた。その事実を知り、レミエルの動揺が焦りに変わる。事前の情報収集を、自分達だけでなく相手もしているという事まで頭が回らなかったのだ。

 

「"レミエル。赤の世界出身の天使。片翼しかなく、それをコンプレックスに思っている。"――ってね。あんたのアルドラの事も知ってるわよ、"日向節成"って。」

 

 チェルノは淡々とレミエルらの情報を語ってみせた。改めて自分のふがいなさを突き付けられたようで、レミエルの目尻に少しづつ涙が浮かび始める。

 

「あんた達、まだリンクにも成功してないんですってね。お笑いだわ。」

「――!」

 

 一番知られたくない事が、他ならぬチェルノの口から吐き出された所でレミエルの足から力が抜けていった。膝から崩れ落ちるレミエルに対し、チェルノは見下す形で言葉を続ける。

 

「まあ、あたしがここまで知っててあんたらが何も知らないんじゃ可哀想だし、少しくらいはあたしのこと教えてあげるわ。その状態でどこまで理解できるか分かんないけどね。」

 

 チェルノは、レミエルが最早彼女に対し意識を完全に向けられていないと分かり切ったうえで自らの情報を明かそうというのだ。ほぼ意味を成さないその行動にすら気付くことができない程、レミエルの心は痛めつけられていた。

 

「あたしはね、死相が見えるの。簡単に言えば、誰がいつ死ぬか分かるってこと。この力で――っと、これは言っちゃいけないんだった。」

 

 淡々と自らの能力を明かしていくチェルノ。そんなことを知られても戦いになんの影響もない、そんなことを知っていてもあんたは勝てない、と言われているようでレミエルの心に敗北感が満ちていく。更に、その後に続いたチェルノの言葉がレミエルの心を一層激しく揺さぶる事となった。

 

「だからこんな事も分かるのよ。あんたのアルドラ――死ぬわよ。」

 

―――

 

「おっ、レミエル!こっちだ!」

 

 校舎から出てきたレミエルに居場所を知らせるために大振りに手を動かす節成。レミエルと二手に分かれて暫くして、正門前のベンチで本を読むソフィーナを見つけた節成は、ある程度の情報を引き出すことに成功していた。そんな節成の元にレミエルは力なく近づく。その様子を見た節成は、レミエルに疑問の言葉を投げかける。

 

「レミエル、何かあったのか?」

「節成さん……。」

 

 レミエルは、チェルノ本人に出会った事、自分たちの情報が知られていた事、チェルノが自分の能力について語った事を節成に伝える。ただ、"節成が死ぬ"という事だけは口に出す事が出来なかった。あの後冷静に考えて、真相が定かでないという事もあるが、どうにも本人にその様な事を口にすることができなかった。

 

「そうか……俺らの事も流石に知られてるよな。」

「これで情報戦のアドバンテージが消えたわね。」

 

 節成の傍らのソフィーナが会話に参加する。既にいくらか節成と情報交換を交わしたようで、先ほどのレミエルの言葉に対して、いくらか頷く様子もあった。

 

「これでさっきの噂が本当の事だって分かったわね。」

「ああ。"チェルノは死相が見える"ってやつだな。これが対戦にどう関わってくるかだ。」

 

 情報の照らし合わせが終わり、今度はそこから取れる対策の議論へと移ったが、その成果は思わしくなかった。なにせ、死相が見える事がどの様に活かされるかが不明瞭だ。更に、自分らがリンクに成功したことがないという情報まで知られているとなれば、対策は難しいという結論になってしまう。

 

「こりゃ、根本的な問題を解決するしかないかな。」

「根本的な問題、ですか?」

「簡単よ、リンクを成功させればいいの。そうすれば貴女の能力も分かるし、そうなれば対策もいくらか取れるかもしれないわ。」

 

 どちらにせよ、今のままでは勝ち目がない。対抗戦に勝つためには今まで失敗続きだったリンクの成功に掛かってくる。そのような結論に至った節成とレミエルは、原点回帰を余儀なくされた。

 

「結局の所、対抗戦までの間に特訓するしかないか。」

 

 そう呟く節成に対し、レミエルは同意の眼差しを向ける。そんな中、ソフィーナの口から二人の予想しなかった言葉が発せられた。

 

「ここまで関わってしまったのだし、折角だから私も協力するわ。」

「えっ……?良いんですか、ソフィーナさん?」

 

 驚きの色を隠せないレミエルに、ソフィーナが呆れたとも受け取れる口調で語る。

 

「私が助言しておいて負けたら、私の面目が立たないじゃない。それと、勘違いしないで。別に貴女達に肩入れするわけじゃないんだからね。」

 

 そんなソフィーナの言葉に節成はばれない様に笑みを浮かべる。ソフィーナの実は世話焼きな性格を見抜いていた節成は、結果的にこうなるのではと内心思っていたのだ。

 対抗戦までおよそひと月。レミエル達の戦いが、動き出そうとしていた。

 

―――

 

「ええ、レミエルと接触したわ。――わかったわ、その通りに。」

 

 月が昇る夜、何者かと言葉を交わすチェルノ。闇に紛れ、何者と会話しているかは見て取れない。数分と満たないうちに会話を終え、チェルノは闇夜の月を眺める。そんな彼女の口から、言葉が零れた。

 

 

「さあ――あたしに勝って、運命を変えて見せなさい。"片翼の天使"――。」

 

 

 

 

 

 

 Act.10 死を招く者




 ぬわつか。のわわーるです。

 プロットに悩みぬいておよそひと月程経ってしまいましたが、漸く10話を仕上げることができました。
 チェルノと関わり、戦いを避けては通れなくなったレミエル達をもう少し描けそうです。

 ところでさらっと節成の過去を文中に載せましたが、彼は親の転勤の都合で幼年期に各地の学校を転々とした過去があります。そんな事もあり友人が少なく、青蘭島に単身送りこまれ、初めて宗悟の様な親友と呼べる存在を得たことになります。
 青蘭学園という存在のおかげで、初めて心を赦せる"親友"と出会えた点は、レミエルとどこか似通っていますね。

 それではここらへんで、次回までも時間が開きそうです。

 ありがとうございました!
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