Ange Vierge~The Wings Tail~   作:のわわーる

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 のわわーるです。投稿が少々遅れましたが5話になります。

 余談ですが、一話で大体五千字くらいに収まるように書いているつもりです。最初少しオーバーしてしまいましたが……。


 ここから本編。


信じること

 あれから数日が経った。突如として起こった騒ぎにクラスは一時騒然としたが、節成の身を襲ったリンク時の逆流現象に後遺症はなく、あの後すぐにクラスに復帰することができた。あの出来事以降レミエルもクラスに少しは馴染めたようで、今ではクラスの女子生徒数名と話す姿も見れるほどだ。その光景に節成は安心を覚えるのだった。一方で節成とレミエルのリンク時のシンクロレベルが思わしくないことに関しては、一向に改善の兆しが見えなかった。一般的にシンクロレベルは、プログレスとαドライバーとの信頼関係、いわば"絆"によって大きく変動するものだ。あれ以降節成とレミエルとの間の信頼関係はある程度深まったと節成は自負しているのだが、何度か試してみたもののリンクは一度として成功しなかった。そして今日もまた、節成とレミエルはリンクの特訓をするのであった。

 

―――

 

「さて、今日で特訓も五日目なわけなんだが」

「まだリンク、成功しませんね……」

 

 放課後、お互いに帰宅部である二人はグラウンドの片隅でリンクの特訓をするようになっていた。あれから幾度となく試してはみているが、リンクが成功する兆しは未だない。進展と言えば、初リンク時に発生した逆流現象がなりを潜め、あの時のように突然倒れることは無かったくらいだろう。二人は一端リンクを試みるのを中断し、何が原因か探っていくこととした。

 

「そもそもリンクっていうのはお互いの絆がものをいうんだよな?それなら問題ない筈なんだが」

 

 あの"誓い"から数日が経ち、節成とレミエルが接する時間は間違いなく増えていた。授業の間の休み時間や昼食時には宗悟を含めた三人で世間話などを交わしている。レミエルも初対面とは見違えるほどの笑顔を見せるようになった。それを加味すればリンクが成功しても良いと思うのだが。

 

「他に何か問題があるんでしょうか」

「うぅむ――」

 

 二人が答えを見いだせずに唸っていると、その背後から道着を身にまとった生徒が近づいてきた。

 

「お前、確か1-Bのヒナタセツナか?」

 

 節成は自分の名前を呼ばれ、声のする方へ振り向く。そこには剣道着を着て竹刀を腰に構えたポニーテールの生徒が立っていた。自分の苗字を間違われ、少し顔をむくませる節成。思わず喧嘩腰の口調で言葉を返してしまう。

 

「ヒナタじゃない、ヒュウガだ。そういう君は?何者?」

 

 苗字を間違えたことを知り、やってしまったと見て取れる顔をする剣道着の生徒。その後、すぐさま節成に頭を下げながら謝罪の言葉を向けた。

 

「ご、ごめんなさい、読みを間違えてしまったみたい。――私は"御影葵"よ、1-Cクラスの。」

 

 御影葵と名乗った女子生徒だったが、節成はその名を知らなかった。

 

「えっと、俺は君の事知らないんだが。君は俺を知ってるみたいだな」

「この間のブルーミングバトルで急に倒れた生徒として噂されていたものでね」

 

 割と不名誉な理由で噂されていたことを知り、少々落胆する節成。そんな節成をなだめつつ、レミエルは葵に向け口を開く。

 

「その御影さんが、私たちに何か用ですか?」

「葵でいいわよ。どうやら特訓でもしてるみたいだったから、少し気になってね」

 

 どうやら葵は自分らの特訓に協力してくれるようだ、と理解した節成とレミエルは現状を葵に伝える。初のリンク時に気絶したこと。あれ以降リンクが上手くいかないこと。それを聞いた葵は自分の見解を口にする。

 

「聞いた限りだと、二人の間の信頼関係に関してはあまり問題なさそうね。となると、考えられるのは相性、か」

「相性?リンクに相性が必要なのか?」

 

 そのようなことは節成にもレミエルにとっても初耳だった。率直な疑問を葵にぶつける節成に対し、葵が続ける。

 

「冷静になって考えてみて。剣を使う人と銃を使う人、コンビを組んだらお互いの歩調は合うかしら」

「ぅ――うん?」

 

 葵の少々偏った例えにお互いに首をかしげる節成とレミエル。それを見て葵はやれやれといった調子で頭を抱える。

 

「――ごめんなさい、例えが悪かったわね。簡潔に言うと、お互いのタイプが合わなければ真価は発揮できないって事よ。さっきのをもっと簡単に例えると、百戦錬磨の剣豪に銃を持たせても大して扱えないって事よ」

「ま、まあそれくらいの例えなら分からなくもないか」

 

 どうやら葵は説明下手らしいようで、節成が主張する例えを理解するのに少し時間が掛かってしまった。対してレミエルはというと、未だに頭上ににクエスチョンマークが浮かんでいるような顔をしている。無理もない。

 

「要するに、俺とレミエルの相性が悪いからリンクが出来ないってことなのか?」

「断定はできないけど、その可能性は十分にあるわね」

 

 淡々と言葉にする葵に対し、節成は少し苛立ちを覚えていた。お前に自分とレミエルの何が分かる、と。だが葵の言い分にも一理あると、その感情を飲み込む。ここで葵に突っかかっても何の問題も解決しない。

 

「そうね……試しに私とリンクしてみる?」

 

 葵の急な提案に驚く節成とレミエル。リンクには特別な契約を結ぶ必要があるわけではないので、特定の誰かとしかリンク出来ないという事はない。リンクの成功を体験したことのない節成にとって、この申し出はまさに行幸と言えた。

 

「――わかった、やってみる」

 

 葵の申し出を受ける節成。一方でレミエルはそのやり取りを傍で聞き、何とも形容しがたい感情に襲われていた。節成が自分ではない誰かとリンクをする。特訓の為致し方が無いと理解してはいるが、どうしても心がモヤモヤする。レミエルにはその感情が一体何なのか、まだ知る由もなかった。

 

「始めるわよ」

 

 そんなレミエルを横に、節成と葵はリンクを行う体勢に入る。葵と互いに向き合い、目を閉じる。ブルーミングバトルをするのではないため、αフィールドは展開せずに葵の精神と己のそれを同調させる。レミエルとのリンクでは精神の同調時に目に見えない何かに阻まれているような感覚だったのだが、葵とのそれではすんなりとうまくいく。しかし、そのタイミングで節成は逆流現象の時に感じた感覚を覚える。あの時のように言い知れぬ不快感に身をよじることに対する恐怖。その影響で同調に若干の乱れが見えていた。額から汗がにじみ、体に力が入ってしまう。リラックスした状態で行わなければならないリンクに対し、節成の現状はいささか危なげがあるものだった。

 

「もっと精神をリラックスさせなさい。力んでいてはリンクなんてできないわよ」

 

 理解はしている。しかしどうしてもあの感覚が体から抜けない。節成の感情が恐怖に支配されたまま、リンクは失敗するかにみえた。その時唐突に、温かい何かが節成の精神を包み始めた。温かく、優しさを感じさせる物が節成の恐怖心を取り除いていく。その"何か"に、節成は葵の姿を幻視していた。葵の心が節成の心を包み込んでいく。その頃には節成の心からは恐怖という物が抜けきっていた。目を開けると、視界には普段とは違う"エネルギーの流れ"の様なものが浮かんでいた。その流れが自分と葵を包み込んでいる。自分の気力、精神が葵と繋がっているかのように。

 

「成功……したのか?」

「まあ、なんとかね」

 

 初めて成功したリンクの感覚に、節成は喜びを感じていた。自分の想像していた物以上に心地が良い。自分が葵を感じ、葵が自分を感じているかのようだった。精神が連結し、互いの心が読み取れる。葵の心は、何と言うか、"鋭い"ものだった。何事をも切り裂く強い信念を表すかのようなそれを、節成は感じていた。そこまで感じたところで、節成と葵の間のリンクが途切れる。その瞬間、節成の体を強い脱力感が襲った。思わず体がよろけ、あわや転倒といったところでレミエルに抱きかかえられる。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

「あぁ――大丈夫」

 

 レミエルに抱きかかえられた節成に葵が歩を進め、手を伸ばす。節成がその手を掴むと葵は一気に体を引っ張り、節成を立たせる。今度はしっかりと足に力を入れて転倒を防ぐ節成。その姿を認めた葵は節成に向け、称賛の言葉を放つ。

 

「まあ、上出来ね。これであのトラウマも克服できたでしょう」

 

 トラウマ。言われてみれば、リンクの逆流現象の際に感じたそれを必要以上に恐れていたことに節成は気付く。

 

「今の感覚を忘れないうちに、もう一度試してみなさい」

 

 そう言葉を残し、葵はその場を立ち去ろうとする。その姿勢に疲労一つ見せる事は無かった。

 

「ありがとうな、葵!」

 

 節成の感謝の言葉に、葵は背を向けながら手を降る。気にするな、とでも言っているのだろうか。レミエルもそんな葵に向け、お辞儀をする。リンク成功の感覚は得られた。あとは実践するだけだ。

 

「よしレミエル、もう一度やってみるぞ」

「は、はい!」

 

 そうして節成はレミエルと向き合い、再びリンクを試みる。レミエルの精神と己の精神を同調させる。もう先ほどの様な恐怖は感じない。自分の心を制御しつつ、レミエルの精神と繋ごうとする。今まで感じていた、見えない何かに阻まれる感覚も今回はない。今度こそいける。そう感じた矢先、唐突に現実に引き戻される。繋がりかけていた精神が無理やり引き離される感覚に、少々の眩暈を感じる。目を開くと、ぺたんと座り込んでいるレミエルの姿が目に入った。自分でも何が起こったのか理解しきれていないような表情だ。今まで通り、リンクが失敗したのだ。

 

「なんで――」

 

その結果に、レミエルは落胆の感情を隠し切れないでいた。

 

―――

 

 翌日の朝、レミエルがまだ教室に到着していない事を確認した節成は宗悟に昨日の事を伝えた。リンクが成功直前で途切れたという事を聞き、宗悟は疑問を覚える。

 

「リンクってそんなに難しいものなのかねぇ?俺が土屋原とやった時はすんなりとうまくいった訳だが」

「1-Cの御影とのリンクは初めてでも出来たのに、レミエルとはどうしても上手くいかない。どうも腑に落ちないんだよな」

「……お前、いつの間に他クラスの奴と」

 

 リンクには信頼関係が必要とはいうものの、相当悪くなければ大抵成功するものだ。節成はそれを知っているからこそ、どうしても成功しないレミエルとのリンクに対して疑問を隠せずにいた。

 

「俺、実はレミエルに嫌われてんのかな」

「うーん、そんなことはないと思うんだがね」

 

 相性の問題を葵に切り出された事もあり、自分とレミエルの関係に問題があるのではと感じ始める節成。そんな節成を案じ、宗悟も自分なりに解決に繋がる事を考える。二人にとってプラスになるような事。そんなことを考えていると、ある一つの方法が宗悟の頭に思い浮かんだ。

 

「思いついたぜ、この問題の解決策をよぉ!」

 

 唐突に放たれた宗悟の自信ありげな言葉に驚きながらも少しの期待を抱く節成。脳筋でそこまで頭が回らないはずの宗悟が珍しく自信たっぷりな表情を見せている。それに節成は否応にも期待を抱かずにはいられなかった。

 

「ふっ、聞きたいか?」

「もったいぶるな宗悟、脳筋なりの回答だろうがさっさと聞かせろ」

 

 回答を焦らす宗悟に冗談交じりに少々棘のある言葉を浴びせる節成。それに対して宗悟が口にした言葉は、節成の想像を悪い意味ではるかに飛び越えていくものだった。

 

「――デートだ!」

「――はァ!?」

 

 

 

 丁度節成が声を上げたタイミングで教室に入ってきたレミエルだったが、突如として発せられたその声に仰天していた。

 

 

 

 

 

 

 Act.5 信じること




 5話が終わりました、のわわーるです。

 正直勢いに任せて作ったプロットでしたが、ちゃんと繋がっていくようにはしているつもりなので(多分)大丈夫です。

 今回も活動報告で補足を加えていきますが、今回初登場となる御影葵を加えて、登場させた既存キャラをそれぞれ紹介していきたいと思っています。

 それでは今回はここらへんで。


 ありがとうございました!
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