Ange Vierge~The Wings Tail~ 作:のわわーる
某艦戦ゲームと某超人気RPGの影響で執筆が疎かになっていました。まあ低速更新って宣言してるし気にするほどでもないか(ゴミ
ここから本編。
影をじっと見つめる。商店街を通り抜けた先の公園にあるベンチに腰かけながら節成は物思いにふけっていた。そして、何度目か数えるのも億劫になったが、ある言葉を脳裏に思い浮かべる。――何故こんなことになったのだろう、と。
―――
「お前、デートって……冗談は顔だけにしとけ」
突如として宗悟から放たれた"デート"という単語に、驚くというよりはほぼ呆れの感情を抱きつつ節成は宗悟を軽蔑の眼差しで見つめる。まさかこんな大事な話の最中に呆れたことを口にする奴だったとは。
「冗談じゃねぇぞ、本気も本気だ!」
それに反して自信満々な態度で話す宗悟。
「友情を深めるのであればお互いの事をもっと知る必要があるだろ?それなら二人っきりになれるデートが一番効果的ってわけよ!」
確かに一理ある、と節成は一瞬思ってしまったが、すぐにその思考を頭から消し去りあくまで否定の立場を貫く。そこには節成自身の頑固な考えと無意識の恥ずかしさがあった。
「いやありえないって。まだ知り合って一週間と少しくらいしか経ってないんだぞ?そんな期間でいきなりデートとか、仮にこっちがその気でもレミエルがなんて言うか」
幾ら友情を深めるためとはいえ、相手は女の子だ。そんな相手にいきなり思い切った真似をすることは節成には出来なかった。しかし、宗悟は節成の先走った考えとは違った言葉を口にした。
「確かにデートとは言ったが別にカップルになれとまでは言っていないぞ?あくまで一日二人で過ごしてみて、お互いの事を知り合うって事だ。節成君は何を先走っているのかねー?」
「ば、馬鹿うるせぇ!お前の言い方が悪いんだよ!」
そんなやり取りに気を取られて、節成たちは背後に"デート"にお誘いするとうの本人がいることに気付かなかった。
「でえと、ですか?」
節成はその声にギョッとする。振り返るとそこには聞きなれない言葉に首をかしげるレミエルの姿があった。
「でえとって、なんですか?」
「あ、いやその、それはだな」
レミエルの問いに言葉を詰まらせる節成。それを見かねた宗悟がこれ見よがしに首を突っ込んでくる。節成は反射的にそれを物理的に遮ろうとしたが、宗悟の腕力にはかなわずねじ伏せられてしまう。
「デートっていうはね、男女が二人で一緒に一日を過ごす事を言うんだ。お互いを知り合うために結構大事な事だったりするんだぜ?」
間違ってはいない。間違ってはいないのだが重大な事を欠いているように節成には思えた。そもそもデートとは相思相愛の仲の二人がするものなのではないのか。しかし節成の思いは裏切られ、宗悟の言葉をレミエルはすんなりと受け入れてしまう。
「そうなんですね、でえとって大事なんですね!」
やれやれと顔に手をやる節成。これでレミエルが誤解して知り合った人に片っ端からデートの申し込みをしてしまった暁には学園中から噂されてしまう。そんな少々想像が発展しすぎた節成の頭を更に揺るがす発言を、レミエルはするのであった。
「私、節成さんとでえとしたいです!」
―――
「本当に、何でこうなったんだ」
節成は頭を抱える。これも全部宗悟の仕業だ。あれから数日が経ち、結局レミエルの申し出を断れないままデートをすることになってしまった。宗悟にはお勧めのデートスポットを叩き込まれ、出来る限りのお洒落をしていけと言われたが、節成はそのようなお洒落な服など持ち合わせておらず、せいぜいパーカーなどを重ね着するのが精いっぱいだった。結局言われるがままこの場に来てしまったが、早とちりしたのか集合時間の三十分前に到着してしまい、今に至る。
「さて、本当にレミエルは来るのか――」
そう呟いた瞬間、話をすればと言わんばかりに片翼の翼を持った少女の姿が目に入った。レミエルだ、と知覚し姿を認めた瞬間、節成は己の目を疑った。
「節成さん、お待たせしましたー!」
元気に手を振り近づいてくるレミエル。その姿は制服姿とは当然ながら異なっていて、大胆に胸元の開いた、地球ではあまり見ないデザインの服を身にまとっていた。最早"服"と形容して良いのか分からないほどそれには装飾が施されていた。
「おまっ、その恰好……!」
「な、何か変でしょうか?一応、赤の世界で着てた服なんですけれども……」
赤の世界の服と聞いて、これがレミエルにとっての普段着なのだと何となく理解した節成は、早くなった鼓動を一端落ち着かせてもう一度レミエルと向かい合った。
「いや、変じゃない。その、凄く綺麗だ」
お世辞ではない、本当に綺麗だと思った。
「えへへ、ありがとうございます。実は青の世界の服にも少し興味がありまして」
確かに地球での服装はレミエル達別世界の住人にとっては珍しいものなのかもしれない。そう感じ取り、宗悟の言葉を思い出す。"デートに欠かせない場所とは――"。それに従おうと決心した節成は、慣れない言葉をひねり出すようにして吐き出した。
「……じゃあ、ショッピングがてら色々見て回るか」
「はい!」
―――
行動に移ってからはこっちのものだ、と言わんばかりに節成は持ち前の適応力を発揮していた。もとより環境への順応性は高いと自負していた節成だったが、この瞬間己のそれを人生で一番誇っていた。レミエルが見てみたいと主張する洋服などを商店街で見て回るうちに、次にすべき事がある程度だが先読みできるようになっていた。そんなことを考えながら二店舗目となるブティックに訪れた二人。地球の服にひそやかに目を輝かせるレミエルに目をやる。天使とはいえやはり年頃の少女の外見に相応している、と感じた。そして、初めて出会った時の彼女と自然と照らし合わせてみる。今の様子こそが、彼女の素なのだろうと、自然と頬が緩む。
「節成さん、この服なんてどうでしょう」
「うん、凄く似合うと思うぞ」
べたな褒め方だとは思うが、これが節成の限界だった。流石にこれ以上の褒め文句は思い浮かばない。そんな折、ふと目を横にやると小物を扱ったコーナーが目に入った。
「……レミエル、ちょっと席を外す。ここで待っててくれ」
「え?は、はい」
ふとした思い立ちだった。節成はなるべくレミエルを待たせないように、駆け足で店の奥に進むのであった。
―――
結局五分と経たずして節成は用を済ませて戻り、二人は商店街を歩いていた。あの後、少し気を落としたレミエルに行動の理由について問われたが、とりあえず"お手洗いに"とべたな理由を述べてやり過ごした。レミエルも一応納得はした様で、何か甘いもの一つで許してくれるようだ。以前渡したチョコレートを食べて以来、ハマってしまったらしい。後で何処かの店に寄ると約束し、二人はその足を郊外の小さな動物園に向ける。公園の一角を使っているに過ぎないため見れる範囲はたかが知れているが、他の世界から来たプログレス達には地球の動物が物珍しいらしく、割と人気の場所となっていた。節成につられ、園内の小動物エリアに訪れたレミエルは動物らを見つめながらつぶやいた。
「青の世界って、何と言うか、不思議ですよね」
「不思議?どこら辺が?」
節成にとっては当たり前な事が、レミエルら赤の世界の住民にとってはこの世界の全てが珍しいものだという事は理解していた。しかし、いざ不思議だと言われるとどうしてもこのような反応になってしまう。
「動物たちを見せ物にするなんて、改めて文化が違うなぁって。テラ・ルビリ・アウロラでは小動物は皆怖いって言ってますし」
曰く、赤の世界での小動物も硬い木の実を主食としているが、時に妖精を襲う事もあるらしく、妖精族の間では恐れられているらしい。妖精という聖なる存在を食い荒らす穢れたものとして、それを恐れる人や天使も少なくはないのだという。穢れたものに対する恐怖と聞いて少し顔をゆがめる節成。以前節成の幻視したレミエルの姿を嫌でも思い出してしまう。あの住民も単に穢れたものに対して恐怖していただけではあるが、レミエルを穢れたものと扱っていることに対しては納得できないでいた。
「――どうしました?」
「あぁ、いや、なんでもない」
どうやら自然と顔に不快さが出てしまっていたらしい。今の場に相応しくないと顔をはたく節成。余り長居をするのはよくないと感じ、別のエリアに向かう。少し歩き、二人は鳥類のエリアを訪れていた。
「鳥は好きです、私」
展示されている鳥たちを眺めながらレミエルが呟く。節成もそれに同感だと伝えるとレミエルは空を仰ぎ、少し儚げな表情を浮かべた。
「鳥は空を自由に飛べるから、好きなんです。私もいつか鳥みたいに自分の翼で自由に大空を飛んでみたいなって思います」
そこまで語ったところで再び展示されている鳥を見つめる。やはり儚げな表情のままであった。
「でも私は飛べないんです。鳥かごに捕らわれた、この子たちみたいに――」
節成はしまったと感じる。以前鳥が好きだと言っていたのでこの場に連れてきたのだったが、逆に悪手だったようだ。言われてみれば、この場は動物の自由を封じ見せ物にする場だ。そこまで考えていなかった節成はレミエルに詫びの言葉を入れる。
「すまん、不快だったな」
「いえ、大丈夫です」
二人はその場を去り、先ほど約束していたスイーツが食べられる店に向かう。元気を取り繕っている、とレミエルをみて感じる節成であった。
―――
「あれ、節成君だ、やっほー!」
「……相変わらずだな」
商店街に戻り、クレープ屋を訪れると見知った顔と出くわした。日向美海。1-Aクラスの生徒だ。以前ある一件で彼女を手伝ってからというもの、事あるごとに絡んで来ようとする。本人曰く"苗字似てるし、きっと運命だよ!"らしい。全く持って意味が分からない、と節成は内心煙たがっていた。
「そっちの子は……えっと、誰さんだっけ?」
「れ、レミエル、ですぅ」
節成の陰に隠れながら美海に自己紹介するレミエル。そんなレミエルを気に留めもせず、美海は天真爛漫な態度で絡んでくる。
「レミエルちゃんだね、よろしく!私は日向美海だよ!」
美海の挨拶に、顔だけぺこりと下げるレミエル。人見知りの身には眩しすぎるのだろう。
「それで、節成君たちもクレープ買いに来たの?」
「まあ、そんなところだ」
なるべく美海との絡みを少なくしようと、メニュー票と睨めっこをする節成。大のクレープ好きと自称し周りからもそう言われる美海は、何を買えばいいか悩む節成たちを見かねてお勧めの商品と思われる単語を羅列する。
「私のおススメは、クレープイチゴマシマシクリームマシマシアドチョコシロップ青蘭島スペシャルだよ!」
「何かの呪文か?」
呪文を一片も理解できなかった節成は結局スタンダードなイチゴの乗ったクレープを選ぶ。レミエルも選ぶのに疲れたのか、節成と同じものを注文した。
「わぁ、美味しそうです」
鮮やかな色をしたイチゴが乗ったクレープに、先ほどとは異なり元気に目を輝かせるレミエル。その様子を見て美海は満足げな顔をしてうんうんと頷く。
「クレープは美味しいよー!いっぱい食べてね!」
「何でお前がそんなに誇らしげなんだ」
ツッコミを入れるのに疲れた節成はやれやれと頭を抱える。
「それじゃあ、私はこの後ソフィーナちゃんと約束があるから!じゃあねー!」
先ほどの呪文を唱え、めいっぱいのイチゴとクリームが乗った巨大なクレープを受け取った美海は手を振りながらその場を去っていく。後には唖然とした顔の節成とレミエルが取り残された。
「……なんというか、嵐の様な方でしたね」
「全くだ」
しかし、結果的にレミエルの機嫌は割と良くなっていたようだ。その点のみ、節成は美海に心の中で感謝するのであった。
―――
嵐のような出来事ののち、クレープを手にしながら二人は集合場所にもなった公園のベンチに腰掛けていた。思った以上に時間を使ったのか、遠くの空は既に橙に染まっていた。クレープを美味しそうに頬張るレミエル。その表情はとても満足げなものであった。節成自身も、なんだかんだ今回のデートを楽しめたのだろうと振り返っていた。
「なあレミエル」
唐突に自分の名を呼ばれ、頬についているクリームも拭わずに反応するレミエル。そんな彼女に、言おうとした事を一瞬忘れ少々吹き出しそうになる節成だったが、それを抑えティッシュを鞄から取り出す。
「……クリームついてるぞ」
ティッシュでレミエルの頬を拭う節成。あの出来事のせいで思った以上に混沌とした一日だったので、これがデートだという事を忘れていた。自然と取った動作に少しの小恥ずかしさを感じる節成だったが、レミエルはそんな事とは無縁と思わせる笑顔を節成に向けた。
「えへへ、ありがとうございます」
そんなレミエルを見て、自然と節成も笑顔になる。レミエルが笑顔になると自分もつられてしまうな、とふと自覚する節成。その言葉を飲み込み、先ほど聞きそびれた事を尋ねる。
「なあ、今日は楽しかったか?」
尋ねられたレミエルは考えるまでもないとばかりに即答してみせた。
「楽しかったです、とても。私なんかがこんなに幸せでいいのかなって思うくらいに」
笑顔ではあるが、どこか儚げな表情を見せるレミエル。動物園での悪手があったが、結果的に楽しんでくれたようで何よりだと節成は思った。
「……夕陽、綺麗ですね。テラ・ルビリ・アウロラとは違って、青い色も混ざってます」
「彼の宇宙飛行士曰く"地球は青かった"とのことだからな。こういう所が青の世界って言われる所以かもしれないな」
そんな他愛ない会話の中で、節成は先ほど秘密にしていたある物を取り出す。レミエルと共に訪れたブティックで見つけたものだ。
「これ、プレゼントだ。さっき見つけたやつなんだが」
節成の差し出したものを受け取るレミエル。突然の贈り物に少しばかり戸惑っているようだった。
「あの……私、何か贈られるような事しましたか?」
「俺が贈りたいって思ったんだから、そうなんじゃないか?」
首をかしげながら、包装を解くレミエル。少し不安げにそれを見つめる節成。少し経ったのち、レミエルの手から白いヘアピンが姿を現した。白い花が添えられたそのヘアピンを眺め、レミエルは驚きの色を隠せなかった。
「凄く綺麗……。これを私に?」
無言で頷く節成。小恥ずかしさでレミエルに顔を向けられないので、そっけない反応になってしまったと少し後悔する節成だったが、そのようなことは気にもせず、レミエルは贈られたヘアピンを陽に照らして眺めているばかりだ。
「折角なんだから、付けてみなよ。きっと似合う」
「そ、そうですね。付けなきゃ勿体ないですよね」
節成に促され、ヘアピンを髪に留めるレミエル。左の前髪にそれを留めたレミエルは少し恥ずかし気に節成を見つめる。
「――どうでしょう。似合いますか?」
レミエルの金色の髪の中に白い花が覗き、自然な調和を見せている。まるで夕陽の中に咲く一輪の花の様だと節成は感じた。
「似合ってるよ、とても」
素直な思いを述べる。
「――ありがとうございます」
一日の終わりにレミエルが夕陽の中で見せた笑顔は、正に一輪の花の如き美しさだった。
Act.6 陽だまりの中で
大変申し訳ございませんでした。のわわーるです。
冒頭でも述べたように、色々な事が重なり更新が疎かになってしまいました。時期的に仕方がないですが、モチベが無いまま書いても結局進まないと感じたので結果的に三週間も更新が止まってしまいました。今後、しっかりと更新を続けられるようにします。
デート回でしたがなかなかに難しかったです、ボリューム足りないと感じたなら申し訳ないです。
次回以降もいつも通りプロットがまだ固まっておりません。必ず更新はしますが、また少し間が空いてしまう可能性もありますのでお許しください。
ありがとうございました!