Ange Vierge~The Wings Tail~   作:のわわーる

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 のわわーるです、低速更新に関してはモハヤナニモイウマイ。

 箸休め的な回が続きますが続きのプロットはぼんやりと見えていますので多分大丈夫です、多分。


 ここから本編。


黒魔女

 レミエルとのデートから数日。あれ以来レミエルと話す回数は目に見えて増えた。宗悟のアドバイスもあながち間違いではなかったようだ。その宗悟だが、現在テスト対策に追われているのだという。宗悟は自他共に認める脳筋であることは最早クラス中が周知の事実なのだが、数か月が経って改めて学力の低さが浮き彫りになっていた。そんな彼に付き合わされて、節成は学園内のカフェテリアを訪れていた。カフェテリアはその過ごしやすい環境と生徒であれば格安で提供されるドリンク類の存在から、団らんや自習に用いる生徒が多い。宗悟もまたその環境にあやかり、いよいよ本腰を入れてテスト対策に乗り出すらしい。

 

「おっ、来たな節成!」

「来てやったぞ。アドバイザが欲しいとか言ってるが、ろくに教えられるかは分からないからな。」

 

 宗悟は、自習にはアドバイザが必要だと主張し節成を誘ったのだが、節成にはそれが退屈しのぎの話し相手程度のものだと分かり切っていた。事実、以前に宗悟の勉強に付き合った時もまともなアドバイスすらスルーされ、結局世間話で終わってしまった。その為、節成には今度こそはという気持ちも多少はあった。

 

「で、早速だが分からないところってどこよ?」

「全部。」

 

 頭を抱えた。同時に深いため息をつく。授業中の宗悟を見た感じ話はしっかり聞いているのだが、それが頭に入っていないらしい。

 

「――それじゃあとりあえず社会科辺りから始めるか。問題集か何かあるか?」

 

 そう尋ねると、宗悟は鞄の中をまさぐり始める。しかし、暫く探ったのちその動きが止まった。節成は今後の展開を察し、再び頭を抱えた。そして、宗悟に戒めの言葉を贈ろうとした矢先に、聞き覚えのある声を含む会話がカフェテリアの片隅から響いてきた。

 

「んにゃー!わかんない!」

「全く……。いい?もう一度言うわよ――」

 

 節成が声のした方へ顔を向けると、そこには日向美海と見知らぬ生徒の姿があった。フリルの入った黒い衣装に身を包み、その背中からはレミエルの物とは異なる、まるで蝙蝠の様な翼を覗かせている。視線に気づいたのか、美海が顔をこちらに向け、手を振りながら迫ってくる。

 

「あっ、節成君だー!おーい!」

「ちょっと!話の途中で席立たないで!」

 

 黒衣の生徒の制止も聞かずこちらに歩いてくる美海。宗悟はそんな彼女の為にいつの間にかわざわざ椅子を持ってきていた。節成は三度頭を抱えた。少しづつ頭痛がしてくる。

 

「こんにちは!節成君たちも勉強?レミエルちゃんはいないの?」

「俺じゃなくてこの馬鹿の勉強な。レミエルは用事があるって話だから一緒じゃない。」

 

 そう言いながら節成は宗悟を指さす。"馬鹿"と罵られた本人はというと、そんなことは気にも留めずに美海との会話を図っていた。

 

「君、1-Aの日向美海ちゃんだろ?俺、国後宗悟ってんだ!」

「宗悟君だね!よろしくー!」

 

 がっちりとハンドシェイクを交わす二人。お互いに気が合うのだろうか、調子づいて色々と話しているようだ。厄介な二人が出会ってしまったと苦笑いしていると、先ほど美海の制止に失敗した生徒がため息を零しながら歩いてくる。

 

「馬鹿同士が出会ってしまったわね。」

「あぁ。馬鹿が二人だ。」

 

 そんな彼女と、初対面ながらに感想が合致してしまう。目の前の惨状から目を逸らすように、節成はその彼女に尋ねた。

 

「で、君は?」

「私?私は"理深き黒魔女"、ソフィーナよ。」

 

 ソフィーナ。その名前に節成は聞き覚えがあった。以前美海と偶発的に出会った際、去り際に言った言葉の中にその名前が含まれていたのを思い出す。

 

「君がソフィーナなのか。奴とつるんでる人な訳だから、似た感じを想像してた。」

「……馬鹿にしてるの?」

 

 ソフィーナは笑顔を向けてくる。目が笑っていなかった。プライドが高そう、といったのがソフィーナの第一印象だ。

 

「冗談だよ、冗談。」

「そう、ならいいのだけれど。」

 

 そんな言葉の応酬を交わし、テーブルの向かい側の二人を見つめる節成とソフィーナ。最早勉強などほったらかしの状態という惨事が眼前に広がっていた。いつの間に取り出したのか、今流行りの携帯ゲームを二人して遊んでいるようだ。事態を打開することが最優先事項だと目線で交わし、節成とソフィーナは席を立つ。

 

「いいかお前ら、今から図書室に行って問題集と資料集を取ってくる。」

「遊ぶのはいいけど、私たちが帰ってきたら私がいいって言うまで問題解かせるわ。覚悟しておくことね。」

 

 はーい、と軽い返事が返ってきたところで節成ら二人はカフェテリアを後にし、図書室へと向かう。二人の心の中には、彼らが逃げ出す事への一抹の不安があった。

 

―――

 

「君も随分苦労してるんだな。」

「お互いさまみたいね。」

 

 図書室へと向かう道中、同じ境遇の二人は愚痴をこぼし合っていた。そんな中、今まで聞いていなかったことを節成は切り出す。

 

「ところでなんだが、"理深き黒魔女"って何だ?」

 

 節成には"黒魔女"という言葉にあまり聞き覚えがない。しかし、魔女と自称する以上この世界の住人でない事は確かである。

 

「よく聞かれるわ。ダークネス・エンブレイスではそう呼ばれてたの。……まあ肩書きみたいなものよ。」

 

 肩書きと聞いて節成は舌を巻いた。一般的に肩書きなど早々付くものではない。ダークネス・エンブレイス――つまりは黒の世界ではどうなのかは分からないが、どちらにせよ結構な人物の様だ。

 

「肩書きねぇ。黒の世界では何を?」

「学問、魔術、統治。いろんなことを教えられたわ。ま、次期魔女王候補の中ではどれも最も優秀だったわ。」

 

 ソフィーナの語る言葉の中に、節成の理解の範疇を超える言葉が含まれていた。限りなくスケールの大きいような単語だ。

 

「――ちょっと待て。"次期魔女王候補"?」

「そうよ。私、次の魔女王の座を継がされるの。」

 

 節成は驚愕した。"魔女王"。それはダークネス・エンブレイスを治める絶対的な君主の事だ。その魔術は他のそれを寄せ付けぬほど強力且つ絶大であり、文字通り黒の世界最強の名を欲しいままにしているらしい。

 

「おいおい、何でそんな大層なお方がこんな学園にいるんだ。」

「私だって望んでここにいる訳じゃないわよ!学問は低レベルだし、立場が立場だから友達は出来ないし……。今の魔女王の命で仕方なくなんだからね!」

 

 そこまで聞いたところでふと疑問に思う。そんな彼女が美海と行動を共にしている理由だ。聞いた限りでは彼女に釣り合うとは到底思えない。美海持ち前の友達作りの才能を持ってしても友人関係を築くことは容易ではないだろう。それが何故。

 

「――不快なら答えなくていい。何故美海にあそこまで肩入れする?」

 

 率直な質問だった。正直、ほぼ初対面の段階でそこまで踏み入ってはいけないような気もしていた。だがどうしても気になってしまったのだ。その為、答えが返ってくるとは期待出来ないと思っていた。事実、ソフィーナは沈黙を貫いている。二人の間に険悪な空気が漂っていると節成は感じた。

 

「悪い、今の質問は忘れてくれ。」

「――ええ、忘れるわ。」

 

 意図的に視線を逸らすソフィーナ。結局、図書室からカフェテリアに戻るまでの間それ以上の会話は交わされなかった。

 

―――

 

 カフェテリアに問題集を持って戻ると、そこには机に突っ伏した宗悟と美海の姿があった。その傍らには菓子の袋が散乱している。結局あの後菓子を用いた宴が催されたようだ。節成とソフィーナはその光景を見て呆れかえる。

 

「――何やってたんだこいつ等。」

「全くね。私達、とんだ貧乏くじ引いたのかも。」

 

 まるで飲み会後の酔っ払いだと形容できるほどの光景を目の当たりにし、先ほどの疑問が再び頭をよぎる。しかし節成はそれを一先ず振り払い、宗悟らを叩き起こすことから始めようとする。寝ぼけているのか、未だ夢の中なのか、宗悟ら二人は引きずらなければ動けないような状態となっていた。

 

「流石にこんなになるのはおかしくない?」

「あぁ、おかしいな。本当に何やってたんだ――」

 

 と言いかけたところでとある箱が目に入る。そのパッケージにはコミカルな文字で"ウィスキーボンボン"とあった。節成とソフィーナはこの惨状を生み出した張本人を目の当たりにし、大きくため息をつく。まるで酔っ払いだと思っていたところが、本当に酔っぱらっていたらしい。節成の頭痛が更に酷くなった気がした。

 

―――

 

 その後二人を保健室へと運び込んだ節成とソフィーナは、再びカフェテリアへと戻っていた。先ほどの重労働の疲れを癒すためである。

 

「ともあれ、お疲れ様。」

「お疲れ様。結局勉強どころじゃなかったわね。」

 

 あの状態で勉強を教えられる訳もなく、結果的に今回の自習は大失敗に終わった。どうやらソフィーナらも同じ目的だったらしく、奇しくも同じ境遇に立った二人の意見が一致し、今に至る。

 

「本当に、世話の焼ける子なんだから……。」

 

 ふと言葉を零すソフィーナ。その表情は困っているようで、しかしどこか嬉しそうなものであった。その様子を見た節成は、先ほどの疑問の答えを察した。立場上、友達が出来ないとソフィーナは自ら語ったが、美海とは仲がいいように見える。それは美海が立場など気にせずにソフィーナと付き合っているという事になるのではなかろうか。そんな事を思った節成は、美海に対する見方を変えるべきなのではないかと感じた。気さく過ぎる態度の裏にはどんな人物にも分け隔てなく接する非常に寛容な心があったのだ。そして、ソフィーナ自身もそんな美海に対し自ら世話を焼いている。そんなことを思い、節成にも自然と笑みがこぼれる。

 

「――あら、随分と嬉しそうな顔ね。」

 

 ソフィーナの言葉で現実に戻される節成。

 

「そう見えるか?」

「ええ、とても優し気な顔。貴方も結構な物好きなのね。」

 

 物好き。ソフィーナは見透かしたような眼で語り掛けてきた。なんだかんだ言ってはいるが、節成自身そこまで友人が多いわけではない。そんな節成に気さくに声をかけてきたのが宗悟だったのだ。あれ以来、なんだかんだと関係は続いている。彼女も自分の境遇と世話焼きな性格を見抜いていたようだ。

 

「似たもの同士みたいだな。」

「そうみたいね。」

 

 顔を合わせて笑う二人。節成の心の中は、優しい感情で一杯になっていたのであった。

 

―――

 

「神通先生、流石にまだ早すぎるんじゃないかしら?」

「いや、むしろ遅いくらいだと私は思う。」

 

 職員室で会話をする二人。その表情はお世辞にも明るいものとは言えないものだ。

 

「だって、まだブルーミングバトルの演習は指で数えるほどしかやっていないのよ?」

「いずれ通る道だ、遅いより早く体験しておいた方がいい。そう思わないか、安堂先生。」

 

 安堂と呼ばれた教師。その手の下に置かれた書類の表紙には"ブルーミングバトル クラス対抗戦"の文字が刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

 Act.7 黒魔女




 年を越す前に更新できました、のわわーるです。

 正直色々な事をしていて年内に更新できるか自信が無かったのですが、何とかモチベーションを維持することができました。

 8話に関しては年末忙しくなるため、年が明けてからになってしまいそうです。何卒ご容赦ください。

 今回レミエルの出番がありませんでしたが、次回はちゃんと出ます……ちゃんと出します。


 それではこのあたりで。

 ありがとうございました!
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