Ange Vierge~The Wings Tail~ 作:のわわーる
だいぶ間が空きましたがそろそろという事で執筆。もう少し空白の期間短く出来るといいなぁ……。
ここから本編。
「はぁぁ……。」
二人のため息が重なり合う。担任の冬木が唐突に告げた"ブルーミングバトルクラス対抗戦"。とりあえず情報を集めようという事となり、宗悟を連れ三人で図書室を訪れた節成とレミエルだったが、その心境は暗いものだった。以前のブルーミングバトルの実践演習でリンクに失敗して以来、節成のみに限らずクラスの複数人と何度か練習はしたものの未だに一度たりともリンクに成功したことはない。その事実に節成は焦りを感じているのだが、突破口がどうあがいても見つからない。そんな中告げられた対抗戦、焦りが更に生まれないはずが無かった。レミエルにとってもそれは同じ事の様で、重なり合ったため息に顔を合わせ、再びのため息を二人して零した。
「おいおい、そんなんで本当に大丈夫なのかよ、対抗戦。」
そんな二人の様子を見て、流石に心配したのか宗悟が声をかける。
「大丈夫に見えるか?」
「……悪りぃ。」
節成が再びため息をつく。そんな節成を見かねたのか、レミエルがいくつか資料を持ってきたようだ。図書室を訪れた本来の目的がすっかり頭から抜けていた節成はふと我に返る。
「そういやブルーミングバトルについて調べるんだったな。」
「忘れてたんですか、節成さんらしくもないですね……。」
気を取り直して資料からリンクに関して何かしらのヒントを探し始める節成ら三人。暫く経ち、宗悟がそういえばと言わんばかりに話を切り出した。
「――クラス対抗戦って、時期的にはまだ早いだとか言ってなかったか?」
「は?――そういやそれっぽい事言ってたな。」
宗悟の疑問を聞き、先刻の冬木の言葉を思い出してみる。確かにそのようにも取れる様なことを言っていた気がする。つまり裏を返すと今年のクラス対抗戦は特例という事になるのだ。
「何でまた今年に限って例年よりも早く、しかも全員の総当たり戦なんかにしたんだろ?」
「技術向上の為だとか言ってたけど、まだ一学年の前半なのにそこまで急ぐ理由にならないような気がしないでもないな……。」
宗悟と節成がそんな話をしていると、レミエルが何か見つけたのか二人の会話に割って入ってくる。
「二人とも、この資料見てください。"青蘭学園の歴史"って項目です。」
どれどれと資料を覗く二人。そこには文字通り青蘭学園の歴史と共に、毎年開かれるブルーミングバトルの催しについての記述もあった。それによると、例年では新入生のブルーミングバトルクラス対抗戦は夏休みの終わった後、つまり秋頃に行われるとのことであった。現在は春から夏に季節が変わろうとする時期なので、相当な期間を前倒ししての開催という事になる。
「――どうも不可解なんだよなぁ、気のせいかな。」
「上手くいっていないリンクを理由に陰謀論でも立ててるんじゃねぇのか?」
現実を見ろと宗悟に言われた気がして、それ以上この話題に口出しをするのは止めようと思った節成だった。
―――
結局、図書室での情報収集では有益な物は得られず、その日はその場で解散となった。冬木の宣言から図書室での情報収集と続いたため、辺りはすっかり暗くなっていた。その週の買い出しを済ませていない事に気づいた節成は、レミエルを寮に送り届ける役目を宗悟に任せ、一人商店街を訪れていた。買い出しと言ってもそこまで自炊をしているというわけではなく、基本的に冷凍食品を買い溜めしておくにとどまる。我ながら貧相な生活をしているなという自覚を節成は持っていた。ただ、学生という立場上あまり時間を割けずにいるのだ。割り切るしかないなと、節成は自身の中でこの話題にけりをつけ、結局有益な物が得られなかったレミエルとのリンクについて考える。
節成がレミエルとのリンクを試みたのは二回。一度目は初のブルーミングバトルの実践演習、二度目はその後の自主的な練習だ。結果を見れば二度の挑戦双方で失敗をしている訳だが、少しの疑問点が節成の心に引っかかっていた。
まず一度目のリンク、初回故に仕方がないと自分に言い聞かせてはいたが、気を失っていた間に見た幻覚――と言い切っていいのかは分からないが、図らずも垣間見えたレミエルの過去らしきビジョン。冬木に相談はしたのだが、結局"稀によくある"等とどっちつかずの返答しか得られなかった。
そして二度目。リンクの回数を数えれば正確には二度目ではないのだが、特訓五日目のあの出来事だ。御影葵の助力もあり、リンク成功と思った矢先に起きた唐突なリンクの拒絶反応。こちらも冬木に"そこまで行ったのになんで成功しなかったんだ"と逆にどやされてしまった。
感覚は掴んでいた。しかし、リンクに成功しない。考えるうちに再び節成に焦りの感情が浮かび始め、自己問答を始める。対抗戦までに何をすればいい。練習をする。同じ結果になるだけだ。レミエルと話し合う。もうやったし結果は変わらなかった。では何を――。結局答えが出ないまま、帰路を進んでいく。
――唐突に何者かがすれ違いざまに言葉を投げかけた。
「そのまま進むと、死ぬわよ。」
「――ぇ?」
突然の事だったため、節成は意味を理解出来なかった。声の主を確かめようとその場に立ち止まり、自分が来た道を振り返ろうとする。次の瞬間、節成の背後を何かが猛烈な速度で通り過ぎていった。一瞬の出来事に言葉を失う節成。冷静に辺りを見回すと、そこは大きめの交差点で目の前の信号は赤く点灯していた。節成の身は既に車道へとはみ出しており、少し考えると先ほど通り抜けていた物体が大きめのトラックであった事が理解できた。考え事をする余り、前方不注意になっていたようだ。つまり、先ほどの投げかけ――いや、"警告"が無ければ今頃――
「死んでた……?」
恐怖が後から襲い掛かってくる。思わず腰が抜け、その場にへたれこんでしまった。後ろを振り返り、今一度先ほどの声の主を探す節成。視線の先には恐らく先ほどの声の主と思われる人影があったが、程なくして夜の闇に消えていってしまった。最後に一つ、街灯に照らされ輝く"鎌"の光を残して。
―――
「って事があったんだ。」
翌日の朝、いつものように宗悟とレミエルに話す節成。とても死にかけた奴の話す事とは思えないという反応をする宗悟に反し、レミエルは本気で節成の身を案じていた。
「だ、大丈夫なんですか?怪我とか、無いんですか?」
「大丈夫だって、安心しろよ。」
自分の体を大げさに見せる節成。節成の話した事は真実で、実際怪我の一つも無かった。ただ、一歩間違えれば本当に死を迎えていたという事実に、節成は無理に明るくふるまわなければいつもの雰囲気を保てないでいた。そんな折、ホームルーム開始を知らせるチャイムと同時に冬木が教室に入ってくる。
「よし、全員揃ってるな。昨日の今日だが、ブルーミングバトルクラス対抗戦の対戦表が完成した。」
クラスがどよめくが、それもそのはずである。昨日に開催を宣言し、その翌日の朝に既に対戦表が出来上がっているというのだ。本来であれば決定から暫く時間のかかる工程をすっ飛ばして対戦表の完成と宣言する。つまりそれはこの対抗戦が以前から既に早期開催として計画されていたことを示していた。
「出来レースって事か……。」
奇しくも昨日の妄想が的中してしまった節成に嫌な予感が走る。具体的にはさっぱりわからないが、何かしら悪い方向に物事が進むような、そんな予感が節成にはあった。
「では早速だが対戦表を発表する、前部ブラックボードに注目しろ。」
青蘭学園では従来の黒板の代わりに、センサーを用いて文字を書くことのできる電子的な黒板を採用している。映像パネルを利用しているので普通の黒板として利用するのみならず、この様に資料を直接パネルに映すことも可能なのである。
その黒板に、このクラス――1-Bクラスの生徒と他クラスの生徒との組み合わせが立ち絵付きで公開されていく。その中に宗悟とはねるの姿があった。どうやらαドライバーとプログレスの組み合わせは、パートナーの申し出をしていない場合、ある程度実習を考慮されているらしい。節成はレミエルとのパートナーの申し出を以前正式に行った為、このクラス対抗戦でも組み合わせが固定される筈だ。対戦表も最後の方となり、漸く節成とレミエルの組み合わせが公開される。対戦相手は黒い衣装に身を包んだ生徒。黒の世界出身の生徒なのだろうか、所々にそれらしき装飾が見受けられる。
「――っ!」
節成は目を疑った。対戦相手のプログレスの手にしている獲物。それは"鎌"であった。まるで死神のそれを彷彿させる異形の鎌に、節成は見覚えがあった。昨晩、節成に対し警告の言葉を零した者。その去り際に見せた"鎌"の光。
「チェルノ・チェリッシュ――。」
レミエルがその鎌の持ち主の名を口にする。対戦の日時は一週間後。クラス対抗戦のトリを飾る日時となっている。
天使と死神の対峙。――節成は息をのんだ。
Act.9 死神の鎌
疲れました、のわわーるです。
だんだんと一話ごとの文字数が少なくなっている気がしないでもないですが気のせいです、きっと気のせい。
目標としては後三話程で一区切りつけたいなと思ってはいます。ちゃんと続くか、次の更新がいつになるかは分かりませんが……。
それではこのあたりで。
ありがとうございました!