【短編】英霊剣豪七番勝負。勝負二番目、アーチャー・インフェルノ 一切焼却  巴御前。いざ、尋常に 勝負!!   作:名無し烏

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第一刀 隔たれし刀

 空気が弾ける音がした。

 

「武蔵ちゃん!危ない!!」

 

 同時に聞こえるあの子の叫び。

次いで感ずるは衝撃、少し遅れて痛み。

 

「たった一手!たった一瞬!!たった一瞥!!!仲間を気にかけた、私の炎の巻き添えになるのではないかと!ああ、哀しい。儚い。報われない。守るべき者がいるからこその油断、焦り、失態!その(ことごと)く全てが狙い目、的、弱点であるとは知らずに私を斬ろうとするなど笑止、無双の名も(すた)るというもの!」

 

 敵の放った矢じりは私の身体には届いていない。私の剣士としての超感覚が腕を動かし、紙一重(かみひとえ)のところで刀を盾にして身体に穴が穿()くことだけは拒否した。それと引き換えに全身に強い衝撃、後方に大きく吹き飛ばされる。常時であれば悶絶しそのまま()き言の一つでも漏らすのだろう、しかし状況がそうはさせない。背が地面に叩きつけられると同時に受け身を取る。強い痛みを伴う違和感を感じるが気にしていられる余裕はない。すぐさま立ち上がり刀の切っ先を向けて構えを取る。

 

「燃えろ、恨みの炎!焦がせ、嘆きの炎!一切を焼却しろ、狂いの炎!!」

 

 突如、視界が真っ赤な炎に包まれる。私を中心に円を描き、地から噴き出したそれはどうやら私を閉じ込めるためのようだ。(じか)に触れているわけではないのに肌をジリジリと焦がされているような感覚は極めて不味(まず)い。すぐにでもここを脱出しなければ私は消し炭にでもされるのだろう。そう考えた私は先刻(さっき)やってみせたように一刀を振る、炎を断つために。

 

「無駄。無駄無駄無駄無駄無駄無駄。一切無駄。確かにその一振りは私の炎を断ち斬ることができるのでしょう。ああ、しかしやはり無駄。骨折りです」

 

 結果だけを表すなら確かに炎を断てた。しかし断ち斬ることはできなかった。斬った炎の奥からまたさらに炎が噴き出すのだ。この炎の牢獄は私が思っていたよりもずっと分厚いのだろう。それこそこの刀身よりも遥かに遥かに遥かに。

 

「安心してください。別にその牢獄に閉じ込め続けるわけでも、共々焼き尽くす気もありません。ただ、......ただ先に邪魔な虫を殺しておくだけのこと」

 

 少しずつ炎の勢いが増してきて、奴の声が小さくなってきた。直に完全に閉じ込められるのだろう。不味い、それは相当に不味い。あの子だけでは奴に立ち向かうことも、鍔競(つばぜ)りあうことも厳しい。何をしてでもここから脱出をしなければならない。

 

「大丈夫!武蔵ちゃん!!俺なら大丈夫だから、絶対にそこから助け出すから!!!」

 

 確かに聞こえたあの子の声。

恐怖に震えてはいるものの、勇気を振り絞って出した声。......そこまで言われたのならば仕方がありません。

 

「次にこの牢獄が破れた時、その身体に一文字が斬り刻まれるでしょう。覚えておくことね」

 

 奴に聞こえているかは分からないが、確かに伝えた。それだけで充分。ここはあの子を信じるとしましょう。

そうして私は(まぶた)(つむ)る。次のその瞬間(とき)が訪れるのを待って。

 

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