【短編】英霊剣豪七番勝負。勝負二番目、アーチャー・インフェルノ 一切焼却  巴御前。いざ、尋常に 勝負!!   作:名無し烏

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第三刀 共有された記憶

 奴の薙刀(なぎなた)が眼前を断つ。空気を裂き断つそれに直撃でもしたものなら私の上半身は吹き飛ばされるのだろう。奴の矢が頬を(かす)る。先ほどのモノとは比べ物にならないほど魔力を込められたそれは再び歯で受け止めようものなら頭ごと持っていかれるだろう。奴の刀が私の爪撃を相殺(そうさい)する。神経毒でも盛られたように腕が痺れるそれは奴の筋力が桁外れていることが(うかが)い知れる。

 

「アキレウスゥゥッ!!!!!」

「グルァァァァッ!!!」

 

 憎きあいつの名前を叫ぶ。私の狂化は眼前の敵を”アキレウス”と誤認することで発動する。他の条件がトリガーとなり、勝手に発動するときもあるが。......それよりも先ほどから気になることがある。奴と剣戟(けんげき)を重ねる毎に私のモノではない記憶がフラッシュバックするのだ。同じ狂化を持つもの同士、記憶の回路に同調が起きているのだろうか。

 

「コロス!!!!!」

「ガルァァァァァァァッ!!!!」

 

 

 

 

―――ほら、また―――

 

 

 

 夢のような感覚。

幼き記憶、涙を流す自分。(たけ)き記憶、戦場を駆ける自分。尊き記憶、愛しき人との静かな夜。そして、―――悲しく、辛く、痛い記憶、大切な人との、先ほどの男との別れ。

 

 ―――同じだ。同じだ同じだ同じだ。あの時の私と同じだ。

己の尊き国を奪われ、己の愛しき家族を失い、己の猛き誇りを踏みにじられた。あの特異点()の私と同じだ。呪わしき己が過去。それは理性を阻み、怒りに溺れさせる。戦士でなく獣、そのような畜生に陥っていたあの時と同じだ。

 

 この女は辛い過去を背負っているのだろう。

 この女は耐えがたき運命を宿しているのだろう。

 この女は失いたくなかった何かを持っていたのだろう。

 

 それら全てが枷となり、重荷となり、呪いとなり奴を苦しめるのだろう。

今の私は己が意志で狂うことができるが、今の奴は違う。......ただ逃げているだけなのだ、過去から。運命から。何かから。

 

 

 

 

 ―――――それではダメなのだ―――――

 

 

 

 

「ウグルァァァァァァァァ!!!!!!!」

 

 夢から醒める。どうやら狂化に陥ってた私の戦闘本能は上手く戦いを切り抜けられたらしい。改めて奴を見澄ます。狂々爛々(きょうきょうらんらん)と鈍く燃える瞳の奥に奴の悲しみを垣間見えた、そんな気がした。辛いのだろう、大切な何かを失ってしまったことが。悔しいのだろう、その何かを明確に思い出すことのできない自分が。許せないのだろう、この世の全てが。奴の矜持(きょうじ)から大きく外れて燃える怒りの(ほのお)、それは奴自身の身もジリジリと焼き焦がしてしまうのだろう。そう、だからこそ、

 

 

 ――――それではダメなのだ――――――

 

 

 肩の力を抜き、一つ大きく深呼吸を挟む。視界は先ほどより良好となり、意識もはっきりとする。つまり私の意志で私の狂化を解除した。正式なマスター、そして魔力回路を得ることによってどうやら安定して制御できるようになったようだ。これでいい、恐らく狂化していない状態で奴と戦えば勝率は大きく下がるだろう。最悪手も足も出ないかもしれない。

 

「ペンテシレイア!!どうして!?」

「やかましい、これではダメだと判断しただけだ」

 

「ガルァァァァァァァァッ!!!!!!!」

 

 奴は哀しくも吠える。

やるせない、今までの私ではおおよそ抱くはずのないそんな想いを抱いたまま、

 

 

「危ないッ!!!!!」

 

 

 

―――私は奴の刀の一突きをそのまま身体で受け止めた。―――

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