Aqoursとすこしふしぎな物語   作:ヴェルミナティー

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善子とヨハネ 中編

「よっ、善子ちゃん、それって」

 

顔が青くなったずら丸が私に問いかける。

 

「うん。まぁ、話を続けるわね」

 

 

 

 

 

 

「ひっ」

 

正直、息が止まるかと思ったわ。

鏡の中のもう一人の自分が声をかけて来ただなんてね。

おまけに、ついさっきまで読んでいた本にもトイレの怪談があったのよ。

 

『ねぇ、どうしたの?』

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

それはもう一目散に逃げ出したわ。

あの時は本当必死だった。振り返ればどうなるか、なんて考えるまでもなく全力疾走。今の私の全力より早かったかもね。

 

「はぁはぁ」

 

息を切らせながら自宅についてね。ランドセルにくくりつけた鍵を焦りながら取り出して、鍵を開けて。

すぐに部屋に飛び込んだわ。これで一安心、そう思った瞬間。

 

『ねぇ。ドアの鍵、かけなきゃダメじゃない』

 

()()()()()()()もう一人の私がそう言ったところで、意識が飛んだわ。

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

ずら丸が無言になった。

まぁ、当然よね。

 

「どう、信じられないでしょ?」

 

ずら丸は少し考える素振りを見せて、

 

「でっ、どうなったずら?」

 

そう聞き返す。

 

「うっ、まだ聞きたいの?」

 

「そこまで聞いたら、最後まで聞きたいずら!」

 

はぁ。

 

「しょうがないわね」

 

 

 

 

 

お母さんに起こされて目を覚ました時、私はベッドで寝ていたわ。

その時は悪い夢を見ていただけと思ってね。

お母さんに促されて、顔を洗いに洗面所に行ったの。で、顔を洗ってタオルを探してたら...

 

「タオル、タオル」

 

『はいタオル』

 

鏡の向こうの私がこっちに手を伸ばしてタオルを渡してくれたところで、二度目の気絶をしたわ。

 

 

 

 

 

「あなた、だれなの!」

 

流石に二回も気絶したら現実を受け入れたわ。

倒れてたところをお母さんに見つかってね。病院に連れていかれそうになったのをなんとか誤魔化して。自分の部屋の鏡に写った彼女にそう聞いてみたの。

 

『私はあなたよ。鏡の中のあなた』

 

そのまんまな返され方をしたわ。

 

「なっ、なんで鏡の中の私が私に話しかけてくるの!?」

 

文書にしてみると無茶苦茶な事になってるわね。

 

『フフフ、私は特別かチカラを持ってるの。だからあなたとこうしてお話しが出来るのよ!」

 

「特別な、チカラ...

 

 

 

...すごい!カッコいい!!」

 

 

 

 

「馬鹿ずら」

 

「こら!」

 

 

 

 

まだ子供だったのよね。疑ったりしないで、素直にそう思ったわ。

で、鏡の中のその子と色々話しがあってね。まぁ、私自身なんだから当然なんだけど。

すぐに仲良くなって、お母さんたちの目を盗んで一緒に遊ぶようになったの。

 

 

 

 

『天使?あなた、そんなにツイてないのに?」

 

「うっ、だって...」

 

『ククク、私達は天使なんかじゃないわ。堕天使よ!神様が私達の可愛さに嫉妬しちゃったの!だからこんなにアンラッキーだけど、いつか神様にはんぎゃくしちゃうんだから!』

 

「堕天使...はんぎゃく...カッコいい!」

 

 

 

「善子ちゃん...」

 

「なによ!」

 

 

 

それで、ある時ね。

 

『ねぇ、善子。私に名前をくれないかしら』

 

「名前?」

 

あの子がそんなことを言ってきたの。

 

『そう、名前。私は善子(あなた)だけど同じ善子じゃ呼び合い辛いでしょ?』

 

「たしかにそうね。わかったわ、一緒に考えましょ!」

 

私とあの子は一緒に名前を考える事にしたわ。

一緒に本とかで調べてね。

で、その時見つけだのが...

 

「ねぇ!【ヨハネ】なんてどう?津島ヨハネ。呼びやすいわ!」

 

『津島 ヨハネ。えぇ。いい名前ね!』

 

「でしょ!【もくしろく】っていうのを書いた人なんだって!」

 

『もくしろく...なにそれカッコいい!」

 

 

 

 

 

「感性が同じずら」

 

「当たり前よ」

 

 

 

 

 

ヨハネ(あの子)と過ごす日々は楽しかったわ。

それにあの子、見た目は小さい時の私と同じなのに、何処か大人びててね。

カッコよくって、憧れてた。

私はあの子(ヨハネ)あの子(ヨハネ)は私。

お互いを理解し合っていた。そう思ってた。

 

 

 

 

「善子ちゃん?」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

私はいつの間にかヨハネに依存してたの。

この子がいればいい、他の子なんていらない。

そんな風に考えるようになっていた。

そんなある日ね...

 

「善子ちゃん。明日のお休み、何時に遊ぶ?」

 

「へ?」

 

突然クラスメイトの子、私が何度か話した事のある子がそんなことを言ってきてね。

 

「なんのこと?」

 

覚えなんてなかった。

 

「善子ちゃんから言ってきたんだよ?」

 

「そうだよ、明日一緒にあそぼって」

 

やっぱり身に覚えがない、いいえ、心当たりが一つだけあったわ。

私はその子達を置いて、急いで家に帰ったの。

そして、鏡の中のヨハネに問い詰めた。

 

「なんで勝手に約束なんてしたの!?」

 

『だっ、だって。たまには善子も他の友達と遊んだ方が...」

 

至極当然な意見ね。でも、私は裏切られたように思ったの。

 

「そんなの必要ない!私はヨハネさえいればいいの!!」

 

『でも、私はあなたなのよ?』

 

困ったような顔を浮かべるヨハネ。

 

「善子ー、なにを一人で騒いでるのー」

 

お母さんの声も耳に届かないまま、私は...

 

「ヨハネのバカ!しらない!!」

 

そんな事を言って家を飛び出したの。

 

本当、バカな事をしたわね。

ヨハネが言ってたのは正論。

私とヨハネの関係は同一人物。

なのにそれが認められなくて、ヨハネにひどい事を言って。

なにも考えずに外に飛び出して。

そして私は...

 

 

 

 

 

 

車に轢かれたの。

 

 

 

 

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