真のエースアルバイトさん   作:反町龍騎

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StrikerS編
第一話


 あの日から彼は、魔導師を嫌いになった。

 その日、火災事故が起きた日。彼は、必死に助けようとした。だが助ける事が出来なかった。

 助けたかったのに。救いたかったのに。

 自分に、魔法が無いから。だから助けられなかった。瓦礫を一つ一つのけて、必死で救い出そうとしたのに、爆発が起こり、救えなかった。

 その後、白いバリアジャケットの魔導師に助けられた。

 自分が必死でのけようとして、のけられなかった瓦礫の山を、彼女は魔法という力で難なくのかし、彼を救い出した。

 自分の出来ない事を平然とやってのける。彼は、そんな魔導師が嫌いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある日、小鳥遊宗二は上官に呼ばれ、陸士108へと来ていた。

 

「それで宗二君。君にいくつか聞きたい事があるんやけど」

 

 この独特な喋り方をしている女性は八神はやて。彼女は宗二が管理局のアルバイトとして入った時からの顔見知りである。

 

「なんでしょう、八神二佐」

 

 机に置いていた書類の中から、一枚を取り出す。

 

「先週の体力測定の話やけど、この数値はちょっとおかしいんと違うかな」

 

 はやてが取り出したのは先週行われた体力測定の書類だ。

 

「おかしい、とは?」

 

「まずシャトルラン。君はこれを二五〇往復したそうやな」

 

「それが?」

 

「二五〇往復ってことはつまり、一万メートル走ったいうことや。それに、息も乱れてなかったそうやな」

 

「そんなものは、鍛えていれば誰でも出来ます」

 

 ふむ、と顎に手をやり考え込むはやて。

 

「なら次は百メートル走や。記録は9.92。すごい記録やね」

 

「それほどでもないですよ。地球の最速記録は9.58ですから」

 

「それでも凄い事やと思うで」

 

「まぁ、それは素直に認めますよ。その記録はメダル候補ですから」

 

 はやての黒い笑みに、宗二も黒い笑みで応じる。

 

「次に握力やけど、百キロ超。相当やね」

 

「そうでもありませんよ。鍛えていれば、そのくらい出来ます」

 

「でもこの記録は百キロ超、なんよ」

 

 人差し指を立て。

 

「超って言う事は、まだ先があるって言う事やろ?」

 

「まぁ、でしょうね」

 

「こんな記録、どうやったら出せるんやろね」

 

「鍛えてますからね」

 

 目を細くしてはやては、宗二の目を見る。真っ直ぐと、だがはっきりとした嫌悪感を抱いている事が伺える。そんな宗二を見て、ふう、と息を吐き、

 

「次に垂直跳びやけど、8.32メートル。恐ろしい記録やね」

 

「一般的に見れば、そうですね」

 

「なら君は、一般とは違うって言いたいんかな?」

 

「ここに一般人がいると?ここには魔法を使う者達がいます。その中でその記録は、むしろ低いほうでは無いでしょうか?」

 

「魔法を使ってるなら、そうやろうね。でも、君は――」

 

 はやての言葉を遮る様に、宗二の上官――ゲンヤ・ナカジマが、咳払いをする。

 

「ちびたぬ。それは言わねぇ約束だぜ」

 

「失礼しました。ナカジマ三佐」

 

 そのやり取りを見て、宗二は不快感を示す程度に大きな溜息を吐く。

 

「言いたい事があるのなら、はっきり言ってくれませんかね」

 

「ならお言葉に甘えて」

 

 一度目を閉じ、再度目を開けた後、はやては言う。

 

「君を、機動六課に迎えたいと思うてる」

 

「…………は?」

 

 予想だにしなかった言葉に、間抜けな声が漏れる。

 

(機動六課、聞いたことがある。このちび黒たぬきが設立させようとしている部隊。そこには、反吐が出そうなほど優秀な魔導師達が集まる、少数精鋭部隊だとか。少数精鋭。だとすれば、俺にそれを持ってくるのは変な話だ)

 

 宗二は目を細め、はやてに問う。

 

「機動六課、とは?」

 

「正式名称『古代遺物管理部 機動六課』。まあ、ロストロギア関連の回収を専任とする部隊やね」

 

「なるほど。――その部隊には、あなたをはじめ、Sランク魔導師が多く集まる少数精鋭部隊と聞きます」

 

 少数精鋭。ここをより強調する。そして宗二は、今までよりもさらに鋭い目つきとなり、

 

「何故、そのような部隊で、自分に白羽の矢が立ったのでしょうか」

 

「それは勿論、君が優秀な局員やからや」

 

 笑顔で答えるはやて。「それに」と加え、

 

「機動六課の部隊長達は皆、君の実力を知ってる」

 

「部隊長、とは?」

 

 嫌な予感がする。

 

「高町なのは一等空尉、フェイト・T・ハラオウン執務官。副隊長として、ヴィータ三等空尉、シグナム二等空尉」

 

 嫌な予感的中である。宗二は昔から、この者達が嫌いだった。その時はまだ嫌いというわけではなかったのだが。

 

「勿論、事務員としての実力ですよね?」

 

「勿論前線メンバーとしての実力や」

 

「はぁ……?」

 

 意味が分からない。

 

「あのですね。俺は魔法が使えないんですが」

 

 宗二は魔法が使えない。実戦で、という意味ではなく、使えないのだ。魔法自体が使えない。そのため、デバイスを展開できず、デバイスを持ってすらいない。

 だが、魔法を使えない。この言葉は、宗二にとって禁句なのだ。それを自分から言った事により、ゲンヤは目を見開いて驚いている。それほどまでに、タブーを自分から口にするほどはやてが嫌いなのかと。

 

「知ってるよ。それは調べればすぐに分かる事や」

 

 はやてはあえて真剣に、宗二を見つめ答える。

 

「魔法が使えなくても、高町一尉やハラオウン執務官に一対一で勝つ事ができる。そう、私達は思ってるよ」

 

 私達、というのは、先に上げた四人も入っているのだろう。

 

「タチの悪い戯言ですね」

 

 そう、宗二ははやて達の推測を一刀両断する。勿論、こんな事で諦めるはやてではなく。

 

「なら、一対一で戦ってみよか」

 

「八神二佐と、ですか?」

 

「ちゃうちゃう。――高町一尉と」

 

 再び黒い笑みを浮かべるはやて。そのはやてに、あからさまな嫌悪感と不快感を示すように、宗二は眉根を寄せた。

 

「それを行う必要が?」

 

「あるよ。君が負けたら、私らは素直に君を諦める」

 

 ぴくり、と宗二の眉が動く。

 

「君が勝ったら、機動六課に入ってもらう」

 

「俺が手を抜く、とは考えないんですか?」

 

「焦ったらあかんよ。君が勝ったら、機動六課に入ってもらう以外に、上官権限で君の給料を増給することが出来る」

 

 三度の黒い笑み。

 はやては知っているのだろう。宗二の両親がすでに死んでいる事を。

 宗二の両親は、宗二に自分達の全財産を譲渡した。だがそれは、五年も前の話。両親が残してくれた金は無限ではない。必ず減っていく。それに宗二はアルバイトである。アルバイトの給料と貯金だけでは、足りないのだ。それすらも理解した上での発言だろう。

 

「どうやろか?」

 

 宗二の顔を、覗き込むように見るはやて。

 宗二は大きな溜息を吐き、

 

「分かりましたよ。やりますよ」

 

 足元を見られては、そう言うしかなかった。

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