真のエースアルバイトさん   作:反町龍騎

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第二話

 宗二はなのはと模擬戦をするために、ゲンヤと一緒に模擬戦場へと移動した。

 そこにはすでに、話を聞き付け多くの職員がいた。

 そして宗二の反対側からなのはとはやてが入ってくる。

 なのはは宗二を見付けると、宗二のもとへやってくる。

 

「久しぶりだね。宗二君」

 

「そうですね。高町一尉」

 

 なのはが笑顔で話しかけても素っ気ない態度と返事。なのはと宗二の心の距離がそれに表れている。

 

「あ、あの、宗二君……。昔みたいに、なのはでいいんだよ?」

 

 昔というのは出会った頃の事。そして、その時とは何もかも違うというのに、この高町なのはという女は、他人の心に土足で無神経に入り込んで、踏み荒らしていく。

 その行いで救われた者もいると聞くが、宗二に関しては、その行いはテロリストと同じ。

 だから宗二は素っ気なく、だがはっきりと答える。

 

「いえ、自分はアルバイトですので。それに自分は魔法を使えない存在。あなたのような、エース・オブ・エースとは、住む世界が違うのです。それにあなたは上官でもある。上官に対してその呼び方は、失礼、というものでしょう?」

 

 宗二の言葉により、悲しさと寂しさから俯いてしまうなのは。

 それを察したはやては、

 

「えー、これより、高町なのは一等空尉と、小鳥遊宗二アルバイト局員による模擬戦を始めます。両者中央へ」

 

 はやての言葉により、中央に立つ二人。

 

「高町一尉は非殺傷設定を解除しない限りは、何を使用しても構いません」

 

 はやての言葉に、どよめきが生まれる。当然だろう。なのははオーバーSランクの魔導師だ。そんな彼女に非殺傷維持以外、何をしてもいいというのは、いくらなんでも一方的な展開になる。だからこそのどよめきである。

 その事について、いろいろと好き放題言われている宗二はどこ吹く風。なのはにハンデがつこうがつくまいが、宗二にはどうでもよかった。彼はただ、勝ちに行くだけなのだから。

 

「小鳥遊アルバイト局員は、殺さない限りは何をしても構いません」

 

 はやては二人を見た後、

 

「それでは試合、開始!」

 

 先に動いたのは宗二の方。

 一直線になのはへと向かっていく。だがそれは、あまりにも無謀な事で。

 ここからあっけなく、ものの数秒で終わるだろうと、観戦している局員たちは思う。

 だがなのはは、大多数の局員とは違い、なのは自身の力を過信してはいないし、宗二の力を侮ってもいない。

 

「アクセルシューター」

 

 なのはが自分の周りに桜色の球体を、十個ほど浮かべる。

 

「シュート!」

 

 そのうちの四つが宗二を襲う。

 一発目。それは宗二の顔面目掛けて飛んできた。それを首だけを動かして避ける。

 二発目。それは宗二の足元を狙って飛んできた。それを飛んで避ける。

 三発目。それは最初の二つで気を逸らし、宗二の背中を狙って飛んできた。それを宗二は身を屈めて避ける。その後、さらに飛んでくるであろう四発目目掛けて、模擬戦場のタイルを一枚蹴り飛ばした。

 それも、相当なスピードで。

 

「嘘だろ!?アクセルシューターを避けるだけじゃなく、タイルを蹴り飛ばすなんて」

 

 誰かが言った。

 宗二が避けたアクセルシューターが、タイルに向かっていく。ただのタイル一枚でどうにかなるほど、アクセルシューターは柔ではない。アクセルシューターによってタイルを壊したはいいが、その先に宗二の姿は無い。

 どこにいったのか。右か?左か?なのはは左右、どちらから来てもいいように、両方を警戒する。だがそれは注意不足だ。

 何故なら宗二は、上から来るのだから。

 

「うらあああああぁぁぁぁぁっっ!!」

 

 流石にエース・オブ・エースだ。宗二の踵落としをレイジングハートで防ぐ。

 そして悲しいかな。魔法という力が無い宗二は、細身のなのはに押し返される。

 

「シュート!」

 

 空中にいる宗二に対して、先程かわした四つのアクセルシューターが、再び宗二を襲う。

 宗二はそれを、殴って消滅させた。

 場内がどよめいた。それもそのはず。魔法に対して素手で殴るなど、それも消滅させるなど、そんなありえない事をやってのけてしまったのだから。

 そんな偉業を成し遂げた宗二は着地すると、またもなのはに真正面から突っ込んでいく。

 

「アクセルシューター」

 

 なのはは宗二を迎撃すべく、またも桜色の球体を二六個、自分の周りに浮かべる。最初の物と合わせて三二個。

 

「シュート!」

 

 それを全て、宗二目掛けて放ったのだ。

 宗二は足を止め、アクセルシューターに手の甲を当て、手首を曲げて受け流していく。三二個全てだ。

 これには流石に、なのはすらも驚いてしまう。だがそれは一瞬。されど一瞬。この一瞬があれば、宗二がなのはの懐に入る事が可能だ。

 ダンッ!と、地面を踏み込み、

 

「うらああああああぁぁぁぁぁぁッッ!!」

 

 なのはの顔面を殴り飛ばす。

 あれだけの事をしでかしては、流石に疲れたのだろう。肩で息をしている。

 その宗二はなのはではなく、自分の左拳を見つめていた。その拳は、血で染まっていた。

 何故宗二の拳が怪我を負っているのか。

 

(咄嗟にあの球で防いだか。流石にエース・オブ・エース、なんて肩書きを持ってるだけはあるな)

 

 自分の左拳を見つめながら、そんな事を思う。

 流石にあの程度で倒されるほど弱くはなく、なのはは立ち上がる。そしてレイジングハートを構え、笑顔。

 

「流石宗二君だね。やっぱり強い」

 

 その言葉に宗二は不快感を示し、眉根を寄せる。

 

「……高い所から偉そうに」

 

「え?」

 

「言ってんじゃねぇぞォッ!」

 

 宗二は咆哮し、三度なのはの元へ突進する。

 その宗二に対してなのはは、

 

「ショートバスター!」

 

 威力と射程を犠牲にして、チャージ時間の短縮を目的とした砲撃魔法を放つ。

 これに対して宗二は、地面を踏み込み、この桜色の砲撃魔法を殴るという選択肢を取った。

 

「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉォッ!!!」

 

 そしてあろうことか、それを相殺したのだ。

 そしてなのはの二度目の驚愕。勿論宗二はこれを見逃さず、こちらも二度目のなのはの懐に入る。

 そして強烈なボディブロー。しかしなのははこれを防御魔法で防ぐ。そして即座に宗二にバインドをかける。

 

「ブラスターⅠ」

 

 使用者、デバイス、双方に限界を超えた強化をもたらす機能。その上、三発のカートリッジを使用する。それを使用し放つ技は、大威力の砲撃魔法であり、なのはの代名詞とも言われるスターライトブレイカーと並ぶ必殺魔法。

 

「エクセリオン、バスターッ!」

 

 非殺傷といえど、これを食らえば気絶は免れまい。

 そんな圧倒的な力を前に宗二は、強引にバインドを引き千切り、あろうことか迎撃の態勢を取った。

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉォォォォォッッ!!!」

 

 両拳のラッシュ。それが目にも止まらぬ速さで繰り出される。

 今までの事には驚かされたが、流石に圧倒的な力の前には、手数など無力である。数秒の内に、宗二は桜色に飲み込まれた。

 これで模擬戦は終了したと、誰もが思った。

 

 

 

 

 

 その時である。

 

「うっらあああぁぁっ!!」

 

 桜色の中から宗二が飛び出し、なのはの鳩尾に拳を埋め込む。

 

「カハァ……ッ!」

 

 高町なのは、この試合初のクリーンヒット。殴られた所を押さえ、苦しむなのは。だが、これで終わるほど宗二は優しくは無く、なのはの顎をアッパー気味に殴る。

 それが決定打となり、なのはは倒れた。

 その所為で、場内が静寂に包まれる。

 

「勝者、小鳥遊アルバイト局員!」

 

 はやての言葉により、場内の時は動き出す。

「凄い」や「どうやれば、あんなに強くなれるんだ」などといった声が聞こえる。

 そんな中で宗二は、膝から崩れ落ち、その場に倒れた。

 無理も無い。絶大な威力となったエクセリオンバスターを無防備で食らったのだ。

 はやては救護班を呼び、なのはと宗二の二人を医務室まで運ばせた。

 ゲンヤは、ここまでの戦いをやってのけた部下を誇りに思った。

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