真のエースアルバイトさん   作:反町龍騎

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第七話

 五月十三日。

 部隊の正式稼動後、初の任務がありました。密輸ルートで運び込まれたロストロギア、レリックをガジェットが発見。輸送中のリニアレールを襲撃。それを阻止、レリックを回収するという任務でしたが、六課前線メンバーの活躍もあって、無事解決。確保した刻印ナンバーIXのレリックは、現在中央のラボにて保管、調査中。初任務にしてはまず問題ない滑り出しだと、部隊長のはやてちゃん、六課の後見人騎士カリムやクロノ提督達も満足されているようです。

 ただ一つ分からない事は、任務中に突然現れた腸喰いと名乗る男。直接戦った小鳥遊三等陸尉に話を聞きましたが、知らないとの事。管理局データベースに問い合せても、そんな名前の人物は存在せず、それ以前に一度聞けば忘れるはずの無い名前です。話によれば、なのはさんに勝った小鳥遊三等陸尉ですら、まともな一撃を与えられなかったとか。ガジェットの事は知らないようだと言っていましたが、いい人ではないようなので注意が必要です。

 

 リインフォースII 個人的な勤務日誌より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 管理局本局の廊下を歩いていると、宗二の前から宗二の恩人であるゲンヤが歩いてきた。

 ゲンヤは宗二を見つけると、「よぉ」と手を上げる。そのゲンヤに宗二は「おはようございます」と頭を下げる。

 

「聞いたぜ、初任務だったんだってな。どうだったよ?」

 

「新人の動きを見る暇はありませんでしたが、ちゃんとやれてたんじゃないでしょうか」

 

「お前の方に変なのが来たらしいじゃねぇか。⋯⋯腸喰い、だったか?」

 

 気持ち悪い名前だぜ、と頭を搔くゲンヤ。

 

「ふざけた名前、ふざけた言動、それに似合わない戦闘能力の高さ。今の新人達が立ち会えば、全員でかかっても負けるでしょうね」

 

「そうかぁ、お前がそこまで言うほどか。他のモンにも伝えとくわ」

 

「そうしてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴィータがスバルを、フェイトがエリオとピンク髪の少女を、なのはがティアナを教えている様子を、ヴァイスとシグナムが見ていた。

 

「いや〜、やってますなぁ」

 

「初出動がいい刺激になった様だな」

 

「いいっすねぇ、若い連中は」

 

「若いだけあって成長も早い。ただしばらくの間は危なっかしいだろうがな」

 

「そっすねぇ⋯⋯。シグナム姐さんは参加しないんで?」

 

「私は古い騎士だからな。スバルやエリオの様にミッド式と混じった近代ベルカ式とは勝手も違うし、剣を振るしか能の無い私が、バックス型のティアナやキャロに教えられる事は何も無い」

 

 目を閉じ自重気味に言うシグナム。

 

「ま、それ以前に私は人に物を教えるたちではない。戦法など、届く距離まで近付いて斬れ、ぐらいしか言えん」

 

 その言葉にヴァイスは乾いた笑い声を上げ、

 

「すげぇ奥義ではあるんすけど⋯⋯。まぁ確かに、連中にはちと早いですかね」

 

「そうだな」

 

 二人の後ろから、第三者の声がした。そこへ顔を向けると、宗二がいた。その宗二にヴァイスは「ウッス、宗二さん。おはようございます」と挨拶をする。

 

「こうしてちゃんと会うのはいつぶりかな?宗二」

 

 腕を組み、微笑みかけるシグナム。多くの男が惚れ込むその笑みは、宗二に苛立ちを覚えさせる。

 

「お前は教えに行かないのか?」

 

「俺は魔導師ではありませんからね。あいつらに教えられる事なんてありませんよ」

 

「そうかな?お前は私と違い、教えるのが上手い。新人四人との模擬戦の時にも、エリオに教えていたじゃないか」

 

「あれを教導と言うのなら、俺より貴方の方が余程向いていると思いますが?」

 

「そんな事は無いさ。なのはにもヴィータにも、教えられない事はある。そしてそれは、お前が教えなければならない事だろう。主はやては、それを理解した上でお前を教導官に任命したのだろう」

 

「過剰評価にも程がある。――全く迷惑な話ですね」

 

「そうやって自分を卑下するのは、お前の悪い癖だ」

 

「癖ではなく事実を言っているだけなんですが?」

 

「あの〜そろそろやめにしません?」

 

 二人の放つなんとも言えない空気に耐えかねたヴァイスが、二人を止めるべく口を開く。

 

「それより宗二さんは何の用で?」

 

「特に用はない。強いて言うなら、どんな事をしてるか見に来たんだが⋯⋯。本当に俺が出る幕は無いな」

 

 宗二が踵を返し、その場を去ろうとした時、宗二の背中にシグナムが声を掛ける。

 

「宗二。久しぶりに一戦やらないか?」

 

 首だけを動かし、シグナムを見る宗二は一言。

 

「遠慮しておきます」

 

「⋯⋯そうか」

 

 シグナムは微かに息を吐き、寂しそうな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 炎が揺れ動く。

 人の泣き声が、叫び声が、呻き声が、痛々しく耳に届く。助けたいと、救いたいと、そう願っても届かない。

 流れる血が、流れる涙が、自分の力の無さを物語る。助けたい人一人助ける事が出来ない。小さ過ぎる掌は、すくい取ってもボロボロと零れ落ちる。

 これがもどかしくて、歯痒くて、煩わしくて。

 

 

 努力をしても届かない壁があると、凡人には出来ない事があると、その時初めて知らしめられた。

 悔しいと、初めて思った。それでも努力をするしか無いと、努力をし続けた。そして手に入れた力があの日、偽物だと告げられた。

 

 偽物だとしても、同じ舞台に立てるのならと、それを受け入れた。彼女を倒してもなにも得られなかった。彼女を超えたと思えなかった。

 

 ずっと、目を閉じればあの光景が蘇る。非力で無能な自分が現れる。悔しい、悔しい、悔しい。悔しさが、苛立ちを募らせていく。悪くない人に当たってしまう。ただの我儘、子供の駄々、その延長だと知っていても行ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと目が覚めた。時計を見ると、十二時を回っていた。寝付けなくなった宗二は、夜風に当たろうと外に出る。

 

 

 

 

 

「ま、何にしても大変だよな。教官ってのは」

 

 宗二が歩いていると、不意に声が聞こえた。その方を向くと、ヴィータとなのはが話をしていた。

 

「でもヴィータちゃんもよくやれてるよ〜」

 

 そう言いながらヴィータの頭を無でるなのは。

 

「撫でるなぁ!」

 

 それを嫌がる素振りのヴィータだが、あまり嫌がっているようには見えず、恥ずかしがっている様だ。

 

 その後も何か話しているようだ。聞こえてくる限り、新人四人の事を話しているようだ。

 

「そうだなのは」

 

「なに?ヴィータちゃん」

 

「宗二のやつ、あのままでいいのか?」

 

「うーん。宗二君がああなったのは、私達の所為でもあるからどうとも言えないんだよね」

 

「なんでそうなるんだよ?」

 

「多分、宗二君が怒ってるのってあの事だと思うし⋯⋯」

 

「あれは誰も悪くねぇよ」

 

「でも、そのあとの事で怒ってるかもだし⋯⋯」

 

 暗い表情になるなのは。そのなのはに苛立ちを覚えた宗二は、舌打ちをしてその場を離れる。

 

「お前は悪くない。悪いのは俺なんだ」

 

 そう言えたらと、何度思った事か。嫌になる。自分のこの無駄に張る意地が。これでは言えないではないか。謝れないではないか。いつか、素直になれたら。そう、心の何処かでは願っているのだろうか。

 

 今の宗二が、そんな事を思う事は無かった。

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