長い廊下を歩き、ホテルのような高級感あふれるドアの前に立つ
(・・・1026室
ここで合ってるよな)
俺は渡された部屋の鍵を回す
ガチャリ
開いたのを確認し、部屋に入る
「改めて見たが・・・ここはホテルか?」
玄関を開け、すぐ左手側に洗面所と風呂場
その横にトイレ
大きめの部屋に入ったらすぐ左手側に二つのベッドとその脇にあるクローゼット
などと、
そこらのビジネスホテルより遥かにいい部屋だ
「うわ〜、布団がフワフワ」
柔らかい布団の感触を楽しみ、睡魔の誘いに乗ってしまいたくなる
しかし・・・
『ズドン!』
壁の向こうから大きな音が伝わってくる
「・・・・なんで物が落ちたような音じゃないんだ?」
明らかにこう何か壊れたような音だ
そして再び同じ音が・・・
「うるさいな・・・」
文句言おう
そう決めてドアを開け、隣を見れば・・・
「一夏、お前の部屋だったか」
そこにはドアを背にして座りこんでいる一夏がいた
「た、助けてくれ
箒に殺されそうなんだ」
部屋を指差しながら必死な形相の一夏の慌てよう・・・
(何イベントだっけかな・・・)
小説第一巻・・・思い出したのは箒のシャワールームの挿絵・・・
「あ〜、なるほど・・・
一夏のラッキースケベめ、箒のあの姿見たんだろ」
「なっ、何で!」
思い出したのだろう、顔を赤くして慌てふためく
そこで悪戯をする
「はて?俺は"あの"姿って言っただけだぞ?
一体どんな姿だったんだ?」
ハメられたと気づいた一夏は更に顔を赤くさせて、口をパクパクさせる
上手く言葉が言えないのか、「あっ」やら「ちがっ」やらと言葉になってない言葉が漏れている
そんな一夏を見て、笑いながらも視線を一夏の背後のドアに向ける
このままでは再びうるさくなるので・・・
「篠ノ之、隣の新城だ
開けてくれ、話がしたい」
「しっ、新城!?
ちょ、ちょっと待ってくれ!」
たぶん服を着てるのだろう
中が騒がしい
そんなこんなで待ってるうちにギャラリーの姿がチラホラと・・・
(って・・・マズイ、マズイ
周りの女子、無防備すぎる・・・)
確かにここは普通は女子高なのだろうが、例外で男子もいるのだ
下着姿は、理性的にマズイ・・・
するとちょうどドアが開く
一夏は・・・入れてやるか
「で、話とはなんだ?」
制服姿の箒が腕を組みながら聞く
しかし改めて見るが、やはり美人
髪をおろして、巫女さん姿になればきっと大和撫子になるだろう
そして、そんな箒がこの鈍感唐変木を好んでるのは小説で知ってるわけで・・・
「一夏、お前は篠ノ之と平穏にルームメイトになりたいか?」
「ん?
そりゃあ、幼なじみだしな」
「そうか、なら俺が手助けしてやる
だから、篠ノ之と話がしたいが、お前に聞かれたくないことがあるんだ
ここは俺を信じて、シャワールームで待っててくれ」
「おう、わかった」
ふぅ、単純で助かった
「一夏に聞かれたくないこととはなんだ?」
ちょっと警戒してる体勢・・・
そりゃ、まだ親しくない男子だしな
けど、まぁ、一応味方だぞ?
だって、公式なカップリングは箒だし〜
一夏の機体的にも箒と組むべきだしな・・・
一夏とシャルルも捨てがたいが・・・
まぁ、それは置いといて・・・
「単刀直入に聞く
篠ノ之、一夏のこと好きだろ?
って、うわっ!」
木刀一閃
間一髪で避けた・・・
女神仕様で反応速度上がってるのか?
「それをど、どこで聞いた!」
顔真っ赤で睨んでくる
ヤバい、ここで死亡フラグはヤバい
「お、落ち着け!
考えてみろ、こんな女子高に例外で俺と一夏だ
少なくとも何回か女子を意識する場面に出会う可能性がある上に、男に飢えてる女子に餌二人が来たんだ!
一夏にアタックする女子は多いはずだ
いくら唐変木な鈍感一夏でも墜ちるのは時間の問題だろう?」
「む・・確かに」
木刀を引き、悩み込む箒
これで怪我をする心配はないな
後は平穏のために・・・
「だからな、同居という最大のチャンスがある今のうちに一夏に優しく接して、一夏の心を掴み、一歩大きくリードするんだ
アイツは意外にも天然タラシだ
敵は多くなるはずだぞ」
小説でもメインヒロインの箒より、シャルルやラウラのほうが倍近い人気という結果だったしな・・・
「そうだな・・・今のチャンスを生かす」
もう一押し・・・
「はっきり言って、唐変木な鈍感一夏はC近くじゃないと気づかないはずだ
ハッキリした意思表現や好印象を与えるアピールをだ!
例えば弁当を作ってやったり、
今日だったらISの基本を一週間で覚えるように協力したりしたらどうだ?
照れ隠しも暴力を振るったりしたら、アイツのことだ
変に勘違いするに決まってる
いいか?
行動は積極的かつ慎重にだ!
男は優しい女に弱いもんだぜ?」
そこまで言うと箒はコクコクと頷く
小動物みたいにちょっと可愛く見えてしまった
「あ、ああ!
そうだな新城!、いや司!
礼を言う!ありがとう!
これからは箒と呼んでくれ!」
ガッチリ握手を交わす
これなら隣も静かになるだろう
ゆっくり寝れる
「一夏、もういいぞ」
「ん?わかった」
一夏が出てくるなり、箒が顔を赤くしながら一夏に何か言ってるようだ
「さて、邪魔者は消えるかね」
音を立てず、そっと部屋を出る
そして、その夜
司は邪魔されずにゆっくり寝れた