ハリー・ポッターと椿の聖母   作:よもつ

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初めまして、四方津と申します。
色々なハリポタ二次小説を読んでいたら、気付いたときには筆を執っていました。うっかり!
気まぐれ更新ですが、完結目指して頑張ります。道はあまりにも長いですね!
地雷多めと思われます。ご自衛のほどよろしくお願いいたします。
拙いものですが、お楽しみください。

11月12日 カメリアさんの名前を修正しました。ご指摘くださった方、気付いたけどそっと胸にしまい込んでくださった方、ありがとうございます。
四方津は大変な浅学なので、これからもおかしな点はどんどん教えてくださるとうれしいです!


序章 聖母の目覚め
0.聖母、降誕。


 我輩は娘である。名前はもうあります。カメリア=ペチュニア・ダーズリーです。ファーストネームとミドルネームの一番後ろの一文字が同じで、くどく感じるのは私の中身のせいかしら。まったく神様もうっかりさんだわ、魂のお洗濯をお忘れになるなんて。きっと両親はちっとも気づいてはいないのでしょうね、自分の子供の精神が、三十代日本独身女性のそれだなんて!

 

 ありふれた、普通の人間だったと思う。子どもが好きで、保育士になって。毎日小さな怪物たちと戦って、たまにモンペアやら馬鹿親(親ばかにあらず!)に手を焼いて、それでも仕事(子ども)を愛していた、普通の女だった。仕事が恋人だったけれど、それを悔やんだことは一度だってなかった。男の相手よりも子どもたちと遊ぶことが楽しかった。

 

 そんな私の最期もまた、私らしく。子どもたちを連れた月に一度の園外へのお散歩の日に、暴走した大型トラックから園児を庇って、ぷちりと潰された。恐らくは居眠り運転であろうドライバーは絶対に許さない(子どものトラウマになったらどうしてくれるんだ!)

 

 

「それがどうしてこうなったのかしら?」

 

 

 ぽつりと呟いて自分の手を見る。ふくふくとした、健康的な肉感の手のひらと、短い指。かつてと比べものにならぬ白い肌。目が覚めたら乳児になっていたあげく、人種まで違う?誰か夢だと言って頂戴!パニックに陥った赤子の私は、そっと目を閉じた。現実逃避したとも言う。残念ながら現実であったが。ジーザス!

 

 そんなこんなで二度目の人生も11年目に突入しようとしている今日この頃。前世特権を余すことなく発揮してSHC(スーパーハイスペックカメリアさん)と化した私に死角などない。ないったらないのだ。かつて人生の敵と定めた英語は母国語になったので覚えざるを得なかったし、くそまずい母国の料理を一刻も早く食べなくて済むようになるべく、幼い頃から母とキッチンに立って料理の腕を磨き、ついでに母の飯まずも矯正。弟と、両親が死んだとかで預っている従弟は保育士スキルをフル活用して育て上げたのである。これをハイスペックと言わず何をハイスペックと言うのか。

 

 

「うー、ねーちゃーん」

「カメリアぁ」

「はいはいよしよし」

 

 

 (カメリア)には双子の弟と母方の従弟がいる。どちらもかわいい私の兄弟であり、息子のようなものだ。ソファに座る私の両隣から膝に懐く2人の髪を梳くと、ブロンドは嬉しそうに額を腹に擦りつけ、黒髪はむずがって余計に膝に沈んでいく。うむう、身動きがとれぬ。

 

 弱ったなあ、そろそろママ上と一緒にご飯を作る時間だぞ。うっかりあやしたのがいけなかったのかしらん。最近はあまりないが、ママ上は目を離すと具材を煮過ぎたり、具材のうまみが詰まった煮汁を捨てようとするからなあ。できれば監視げふんげふん観察していたいところなんだなあ。

 

 

「メリー、私のかわいいカメリアちゃん、そろそろディナーの支度を……あら?」

「もう少し待っててねママ。ハリー、ダドリー、起きて頂戴」

「いいわいいわ、そのままで。今日はママが作るから、メリーはゆっくりなさい。2人ともよく寝てるわねえ」

「うん、昨日は遅くまでゲームをしていたみたいよ」

「まあ、起きたらママとお話しなくちゃね」

 

 

 ころころと笑い声を上げた母はお茶目にウインクをして、キッチンに消えていった。従弟を引き取った直後の嫌悪感や拒絶感は今や見られず、穏やかに2人を見守るスタイルはまさに理想的な母親像そのものである。はは、まったく苦心した甲斐があるというものだ。まさか齢十に満たぬ娘に、自分の思考と行動を誘導されているなど露程も思うまい。最も中身はアラフィフなのだが。つまり両親の両親と同じくらいなのだ。わあ気付きたくなかった!絶望だね!

 

 レムレムする愛し子2人を撫でつつ、遙か遠い魂の故郷の歌を口ずさむ。話は変わるが日本の国歌って子守歌に最適なリズムだと思うんだ。事実、私はこれで何百回も弟たちを寝かしつけてきた。英語の子守歌と比べて2割増しで夢の世界に飛び込むのが早い。あれっもしかして歌詞がわからないせいか?読経聴いてると眠くなるのと同じ原理なのか?10年目の真実。

 

 

「帰ったぞ、カメリアはいるか?」

「おかえりなさい、パパ。どうしたの、そのピンクの小袋」

「ふっふっふ、よくぞ訊いてくれた!さあメリー、お前にプレゼントだ。開けてごらん」

「いったい何かしら……わぁ、素敵な髪留め!ありがとう、パパ。でも、私一人だけもらうのは、ちょっと」

「安心しなさい、ダドリーとハリーには別に用意してある。ほら、これだ。新しいグローブとランニングシューズ!」

「ああ、よかった。そうね、ダドリーのボクシンググローブ、痛んでいたものね。ハリーも足が合わなくなっていたみたいだもの、きっと喜ぶわ」

 

 

 ひょこりとリビングに顔を出した父に微笑むと、弟に似た短いブロンドをかき上げて青い瞳が細められた。ハンサムかよ。

 

 父は母よりも若干、ほんのちょっぴりハリーと距離を置いている。”普通”を愛する父にとって、なぜか周りで超常現象が頻発するハリーは本来、天敵にも等しい。それでも、弟と扱いは変わりなく愛しているのだから、親の情とは素晴らしいものである。娘がいる影響か、中年太りを防ぐためにジムに通ったりジョギングをしたりとダイエットに余念がないので、30代にしてはなかなかのスタイルを誇る父。うん、ハンサム。その調子で一生かっこよくいてくれ。

 

 

「んん、うー……あ、パパおかえり」

「ただいまダドリー、ははは、いつまで姉さんの膝を借りるつもりだ?」

「もう起きるさ、おはようメリー」

「ええ、おはようダドリー」

 

 

 むくりと起き上がった弟は刈り込んだ頭をガシガシ掻いて、恥ずかしそうに目を伏せた。あああ天使かよ。昔のちょっと太ってもちもちしてたダドリーはかわいらしかったが、何を思ったか一年前の誕生日から始めたボクシングのおかげで、今や学校1のイケメンである。まあ私にとっては永遠にかわいい弟だが。ちょっと口下手なところも器用貧乏なところもお姉ちゃんは知ってます。一時期両親の甘やかし攻撃で調子乗っていじめっ子の道に入ろうとしていたのも懐かしい話。この話を掘り返すとすねてしまうが、戒めのために必要なことなのです、許せ弟よ。

 

 

「わ、新しいグローブだ!ありがとうパパ!メリーのは何?」

「髪留めよ、ほら、綺麗でしょう?」

「うん、メリーの髪色に合いそうだ。付けてみてよ」

 

 

 甘く瞬いた弟に促され、かつてとは違う、紅茶のような赤い髪を金色のバレッタで留める。さすが父だ、私に似合うもの、私が好むものを熟知している。繊細な模様が施されたそれを指先でなぞり再び礼を言うと、父は弟に似た笑顔を見せてくれた。

 

 

「メリーちゃん、ディナーが出来たわ!坊やたちを起こして……ダドリーちゃんは起きてるのね」

「おはようママ、起こすのはハリーだけだよ」

「そのようね。じゃあ、ハリーを起こしてあげて?」

 

 

 夕飯の支度を終えた母の言葉に一つ頷いて、柔らかい黒髪を優しく撫でる。起きろ起きろと念じながらの行為は相手にも伝わったようだ。むにゃむにゃと目元を擦って、彼はエメラルドの瞳を開いた。

 

 

「おはよう、私のかわいい息子(ハリー)

「ん、おはよ、僕のカメリア(マードレ)

 

 

 ぴょこぴょこ跳ねた寝癖を押さえ、照れくさそうに頬を染めるハリーは控えめにいっても天使だと思う。いや真面目に。




序章、プロローグです。
保育士してたらハリーのお母さんと化したカメリアさん。マードレ(madre )はイタリア語でお母さんという意味。
本当のお母さん(リリー)やペチュニアを差し置いて私がママなんて呼ばれたらいけないでしょ、と変な気を回したカメリアさんが教え込んだ裏エピソードがあったりなかったり。

この話の中では、8歳の時にハリーは陸上の長距離を、9歳のときにダドリーはボクシングを、5歳前後でカメリアさんが種々の武術を習い始めました。
みんな地区大会出られる程度には強い。特にカメリアさん。

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