ハリー・ポッターと椿の聖母   作:よもつ

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3.旅立ち、1年目

ハロー、カメリアです。ダイアゴン横丁迷子事件以来ハリーとダドリーの心配性が重篤化しまして、トイレとお風呂以外の時間はどちらか、あるいは両方に監視されるようになりましたカメリアです。なんでさ。さすがに家の中で迷子にはならないって……

 

知らない人について行ったのはね、うん、今考えると私も馬鹿だなって思うよ。でも結果的にはちゃんと目的地に着いたでしょ?だからさ、終わりよければすべてよしということでひとつ手を打っていただき……あ、だめ?ソッカー、マードレ悲しい。

 

 

 

「いいか、メリー。ハリーや友達と離れて1人でフラフラするなよ、死ぬぞ」

「いや流石に死なな」

「カメリア」

「気をつけます」

 

 

 

9月1日、入学式の日。ダドリーはどうやらこのあとちょっと病院に行かなきゃいけないらしいから、見送りは残念ながら家の前で。荷物をすっかり車に積んで、いざ出発というときになってダドリーの「カメリア3ヶ条」が発表された。

 

いわく、1人にならない。不審者は程よく叩きのめす。知らない人について行かない。こんな基本的なこと言い出して……私、幼稚園児じゃないのに……最近2つ破ったばかりですね、はい反省してます。

 

 

 

「メリー、ハリー!そろそろ出るぞ!」

「はーい!じゃあママ、ダドリー、行ってきます」

「行ってらっしゃい。たくさん手紙をちょうだいね、2人とも」

「行ってらっしゃい。ハリー、メリーを頼むぞ」

「任せてダドリー!行ってきます!」

 

 

 

泣きそうな母と心配そうな弟に見送られ、私たちを乗せた車はキングス・クロス駅に到着。カートに荷物を移してプラットフォームに運ぶと、今までうんともすんとも言わなかった父が、ようやく口を開いた。

 

 

 

「カメリア、ハリー。ひとつ、私と約束をしてくれ」

「ええ、なあにパパ」

「……無事に、帰ってきてくれ。もの言わぬ体で、私たちを出迎えないでくれ」

 

 

 

弱々しく呟いて父は私たちを抱き寄せた。鍛えられた胸筋の向こうで、心臓が不安げに揺れている。ふむ、パパ上は割と心配しないで送り出すものと思っていたが……認識が甘かったようね。ママ上が盛大に狼狽えていたもの、そっちに目がいってしまってパパの気持ちが隠れてしまったのかしら。

 

大きな背中に手を回す。胸に頬をすり寄せれば、いっそう強く抱きしめてくれた。

 

 

 

「きっと大丈夫よ、パパ。私たちはパパとママの子供だもの。何があっても、乗り越えるわ」

「約束します。絶対、2人で帰ってくるって!」

「ああ、ああ……ずっと、待っているよ」

 

 

 

父は潤んだ瞳をぱちぱちして、頬にひとつ唇を落とした。ハリーの頬にも同じようにキスをして、今度こそ、いっておいでと微笑む。ダドリーの病院もあるから見送りはここまでだ。父は名残惜しそうにホームを後にした。仕方の無いことだけど、ハリーは少し寂しそうかな。しょぼりと肩を落とすハリーの頭を撫でると、にぱっと嬉しそうに破顔した。ちょろかわいいなぁこいつぅ。

 

 

 

「さて、汽車を探さないとね。9と4分の3番線、だったかしら」

「うん。でも、どこにも見当たらないよね。9番線と10番線はあるけど……」

「弱ったわね……とりあえず9番線近くに行ってみましょう。他にも人がいるかも……あ、あの人たちがそうじゃない?ほら、赤毛の集団」

「ふくろうを連れてるね!よーし、話しかけてみよう!」

 

 

 

目の前を横切っていった大荷物の集団を追いかけてカートを転がす。あの人たち、人でごった返してる場所を歩くの慣れてるんだなぁ。きっちり纏まって行動することであいだに人が入るのを阻止してはぐれないようにしてるんだ、これは(私の迷子防止に)使えるぞう。

 

赤毛一家は不意に立ち止まると、お母さんが長男らしき少年に先を促す。パーシーと呼ばれた彼は軽く頷きを返して……なんと、9番線と10番線のあいだの柵に突っ込んでいった!ちょっ、まっ、怪我するわよ危な……ん?

 

 

 

「メ、メリー、今……!」

「人が消えたわ……!」

 

 

 

人波に遮られてその瞬間は見えなかったけれど、確かに、彼は姿を消した。あそこには何か魔法がかかっているのね。すごい、ファンタジーみた……私もファンタジーの住人だったわ、慣れなきゃ。ああでも本当、不思議だわ……何度見ても魔法って感動しちゃう。

 

双子の息子さんにからかわれてご立腹のご婦人にそっと声をかける。ご婦人はいくつか瞬いて、やわく微笑みを浮かべた。聞けば一家の下から2番目の息子さんが今季ホグワーツに入学するそう。ひょろっと背の高い痩せた少年がお母さんに背中を押されて恥ずかしそうに笑う。

 

 

 

「あら、貴女も今年入学なの?大人っぽいわねぇ、フレッドやジョージと同い年かと思ったわ」

「うふふ、よく言われます。おかげでピンクでふりふりのオンナノコな服が全然似合わないんです」

「大変なのねぇ……彼は弟さん?」

「いいえ、従弟です。あ、あの子成功したのね、良かったわ……私は大丈夫かしら?」

「心配性ねぇ、怖がって立ち止まったりしなければ大丈夫よ。初めは少し走っていった方がいいかもしれないわね」

 

 

 

先に消えたハリーを追い、柵に向かって走り出す。目は閉じない、絶対に目は閉じない!閉じたら余計に怖くなる気がする!迫る柵にけれど意地でも目を見開いて突撃すれば、瞬きひとつの間に世界は暗くなり、ついでじんわりと光が増えていく。

 

そして、世界がひらけたならば。蒸気を吐く深紅の機関車が悠々とその姿を晒していた。

 

 

 

「……すっごいわ……!」

 

 

 

荷物でいっぱいのカートを押す少年少女、見送りの大人たち。頭上ではたくさんのフクロウと、足元には数多の飼い猫……飼いカエルもいるようね。ほらほらこっちにおいで、お猫様に食べられてしまうわよ。

 

 

 

「メリー!やっと見つけ……どうしたのそのカエル」

「落ちてたのよ、きっと飼い主とはぐれたのね。しばらく連れていてもいいかしら?」

「別にいいよ、僕は気にしないもん。ほらメリー、空いてる席が無くなっちゃうよ!早く!」

「ああもう、そんなに押さないの!」

 

 

 

車内をうろつくこと数分、やっと見つけたコンパートメントは最後尾の車両。予約札代わりに軽食が入ったポシェットを置いて、トランクを取りに行く。え、重くて持ち上がらないの?そっか、ハリーは長距離特化の持久型筋肉が発達してるものね、こういう瞬間的パワープレイは得意じゃないか。貸してごらん、よいしょっと!

 

 

 

「おおすげー!パワフルだな、君!」

「ホントだ、これは僕たち必要なかったか?」

 

 

 

背後からそっくりなふたつの声が降ってくる。同じ人が喋ったのかと思うくらいよく似た声だ、ついでに言うとさっきも聞いたような……あ、赤毛一家の双子さんだわ。ハリーと顔を見合わせてくるりと振り抜くと、同じ顔をした兄弟が悪戯っぽくニマリとした。

 

 

 

「手伝おうかって言おうとしたけど……いらない?」

「まあ、いいの?ふふ、せっかくだからお願いしてもいい?」

「よしきた!おいジョージ、麗しきレディのお願いだ!荷物をお運び申し上げようぜ!」

「OKフレッド!さ、2人とも。君らのコンパートメントまで案内してくれるか?」

 

 

 

気のいい双子はハリーが苦戦していたトランクをあっさりと持ち上げ、コンパートメントに収めてくれた。2人ともとっても元気だけど、なんとなーく見分けがつくような。ゴーインマイウェイ、他人を引っ張るムードメーカータイプなのがフレッドで、フレッドや引っ張られてる人のフォローをするのがジョージっぽい。初対面だから間違ってるかもしれないね、気にせんどこ。

 

お手伝いのお礼に渡したパウンドケーキを絶賛されたり、2人がハリーの傷に見とれたりしていると、外からご婦人の呼び掛けがあった。つられて双子の意識が窓の外に流れる。た、助かった……褒め殺されるところだったわ……ご婦人グッジョブ!

 

 

 

「フレッド、ジョージ!あまり悪さをしないように……あら!さっきのお嬢さんじゃない!」

「はい、ミセス。またお会い出来ましたね!私はカメリア・ダーズリーと申します。こっちは従弟のハリー」

「さっきはありがとうございます!僕、ハリー・ポッターです!」

「ハ……ハリー・ポッター!?」

 

 

 

おっとー?これはこないだもあった反応だぞー?とりあえずトーンを落としていただきたく……あら妹ちゃん握手したいの?ハリー、手を伸ばしてあげて。あーもうわちゃわちゃしないでツインズ、うちの子が潰れちゃうわ!さっさと外に出てマダムにお別れを言ってきなさい!もうすぐ汽車が出てしまうわよ。

 

ご婦人のもとへいく双子にまたねと手を振って、ぐっしゃぐしゃに髪が乱れたハリーを呼び寄せる。手ぐしで軽く整えてやると、嬉しそうに目を細めた。あああかわいいのう、かわいいのう、マードレいっぱいお菓子あげるね。たんとお食べ、ああかわいいのう、いとしいのう。

 

甲高い汽笛を連れて、特急は走り始める。赤毛の妹さんが泣きながら汽車を追いかけようとするのをご婦人が止めて、双子が窓越しにからかいながら慰めていた。

 

 

 

「ふふ、いい出会いだったわね。素敵なご家族だわ」

「うん、兄妹の仲もいいしね。……うちには敵わないけど!」

「なんで張り合おうとしてるのよ」

 

 

 

ビュンビュン通り過ぎていく景色から視線を外し、膝の上の本を開く。今日の読書は変身術の教科書だ。何度か通して読んでみたが、初年度とは思えないくらい内容が濃い。そして面白い。ハリーは魔法薬学の辞書を引っ張り出して眺めている。……なんでヤギの胃に入ってるのよべアゾール石……結石かよ……胃液で溶けないのかよ……。

 

変身術の教科書を閉じてハリーとふたり辞書を読んでいると、赤毛の男の子……ロンがやってきたり、カエルの飼い主が泣いてペットとの再会を喜んだり、プラチナブロンドくん……もといドラコがロンと喧嘩したり、それを仲裁したら何故かトランプでポーカーが始まったり……よく分からないけどロンとドラコが結託して私を潰そうとしたので優しく蹴散らしました。

 

 

 

 

「……カメリア……君、結構策士だな……」

「当然よ、まさか泣きそうな顔でジョーカーを持ってるなんて誰も思わないでしょう?これも作戦のうちってね」

「こわ……カメリアこわ……」

「メリーは昔からこうだよ、いつも笑顔で相手をねじ伏せるんだ……ロンもドラコも早速洗礼を受けちゃったね……」

「喧しい。さあ次は何にしようかな……そうだ、勝った人には私のパウンドケーキをあげるわ」

「頑張ります」

「えっどうしたのさハリー、いきなりやる気になって」

「メリーのお菓子はめちゃくちゃおいしいんだ、特にパウンドケーキは得意中の得意料理だよ」

「よーし僕も頑張るぞ」

「今度こそ負けないからな……!」

「一昨日来やがれ♡」




共通の敵がいると結託するロンとドラコ。
ゲームを通して仲良くなってしまえばいいと思います。

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