なので推敲とかまともにできていないので、その辺は生暖かくスルーして頂けると幸いです(・∀・)
うちのクズ司令官はロリコンでシスコン、更にマザコンよ。
まるでどっかの赤いなんとかさんみたいな人だけど、提督の性質なのか艦娘にやたらとモテる。
具体的に言うと、バレンタインデーに執務机がチョコレートで埋め尽くされるほどね。
「毎年の事だけど、みんな諦めが悪すぎじゃない?司令官って姉さん以外には興味がないって公言してるのに
、どうしてみんな飽きもせずチョコを渡すのかしら」
「そう言う満潮姉さんもでしょ?今だって、嫌がる私に無理矢理チョコ作りを手伝わせてるし。しかも
そう、あのクズは朝潮姉さん以外に興味がない。
いや、こう言うと語弊があるわね。
正確には、朝潮姉さん以外を恋愛対象として見ていないって言うべきね。
しかも、満潮姉さんが言ったとおりそれを公言している。にもかかわらず、チョコレートを渡す艦娘が減らないのは、ひとえにクズなりの頑張りを艦娘達が認めて感謝してるってことの現れなんでしょう。
じゃないと、脈も無い相手にチョコレートなんて贈ったりしない。
要は、日頃の感謝を形にして贈ってるのよ。
「って、言い訳してるんでしょ?アンタも、他の艦娘達も」
「それは満潮姉さんも、でしょ?」
私がそう言い返すと、満潮姉さんは何も言わずに湯煎で溶かしてる最中のチョコレートに視線を落とした。
その無言は肯定と取るわよ。
満潮姉さんもやっぱり、他の艦娘と同様に諦めきれてないんじゃない。
「ねえ霞。どうして司令官は、私たちにも指輪をくれたのかな」
「さあ?大方経験値が勿体ないとか、多少でも性能を上げようとか考えたんじゃない?」
「それじゃあ戦艦や空母に指輪を贈ってない事に説明がつかないわ。駆逐艦とケッコンカッコカリするより、戦艦や空母とケッコンカッコカリした方が艦隊運用的には正しいはずよ」
確かにその通りね。
駆逐艦とケッコンカッコカリしたって性能の上昇は誤差の範囲だし、ただでさえ燃費が良い駆逐艦の燃費を向上させるよりは上位艦種とケッコンカッコカリした方が運用上は正しい。
それなのに、あのクズは駆逐艦、しかも他の有用な駆逐艦を差し置いて朝潮型のみに指輪を贈った。
最初に指輪を貰ったのはもちろん朝潮姉さん。
朝潮姉さんは変なスイッチが入らない限り真面目で堅い人だから、自分に指輪を贈ろうとする司令官の考えが理解できずに十円ハゲができるくらい悩んだわ。
指輪を受け取るように姉妹総出で説得したのも今では良い思い出……かな。
「次に貰ったのが霞だったよね」
「ええ、正直貰えるだなんて思ってなかったから、思わず馬鹿とか言っちゃったし」
あの人はとにかく朝潮姉さんを優先していた。
私や大潮姉さん、他にも沢山の艦娘が朝潮姉さんより先に改二が実装されていたのに、あの人は「朝潮が改二になったときに指輪を渡すんだ」と言って、本当にそうした。
そのせいで海域の攻略にも苦労したわ。
改二が実装されて、しかも練度を満たしているいる艦娘から文句があがった事もあった。
それでもあの人は、朝潮姉さんですら冗談だと思っていた「改二になった君に指輪を贈る」という約束を守り通した。
まあ、他の艦娘の改二改装を後回しにするのはやり過ぎだとも思ったけど、それがあの人なりの想いの示し方だったんじゃないかな。
でも……。
「今は受け取った事を後悔してるわ。それは満潮姉さんも同じじゃないの?」
「うん……。指輪を貰ってなかったら、こんなに辛くはなかったと思う」
満潮姉さんは司令官の事が好きだ。
姉妹の中でも、朝潮姉さんと同じくらい司令官の事を想ってる。口には決して出さないけど、その事は朝潮姉さんを含めた姉妹全員がわかってるわ。
「いっそ、気持ちを伝えて玉砕しちゃったら?」
「自分が出来もしない事を人にやれって言わないで」
「そうね……。ごめんなさい」
私も例に漏れず司令官の事が好き。
最初の頃は頼りないオッサンくらいにしか思ってなかったのに、何年も一緒に苦楽を共にしている内に気付いたら好きになっていた。
その事を自覚したのは、手作りしたチョコレートを初めて贈った日。
最初は、くだらない事で悩む朝潮姉さんにイラついてるだけだと思ってたのに、途中から、あの人がずっと贈りたがってた指輪をやっと贈れるって喜んでたあの人の気持ちをないがしろにしようとしている朝潮姉さんが許せないんだって気付いたのが運の尽きだったわ。
「不様よね。自分が恋してる気づいた途端に失恋しちゃうなんてホント、情けないったら」
「みんな似たようなモノよ。私だって……」
チョコレートを混ぜる満潮姉さんの手が止まった。しかも、今にも泣きそうなほど顔を歪めてるってオマケ付き。
満潮姉さんはみんな似たようなモノなんて言ったけど、朝潮姉さんの次にあの人との付き合いが長い満潮姉さんの苦しみが私なんかと同じなわけがない。
以前、朝潮姉さんに指輪を渡した次の日に、たまたまその日秘書艦だった満潮姉さんは、いつも通り素っ気ないフリを装ってあの人と朝潮姉さんを祝福した。
その満潮姉さんに、あのクズは「もし、朝潮より先に満潮が着任していたら、俺が惚れてたのは満潮だったかもしれない」なんて言ったらしいわ。
あのクズは、満潮姉さんの気持ちも知らずに満潮姉さんが最も傷付く言葉を嬉しそうに吐きやがったのよ。
「あの日みたいに、今晩付き合おうか?」
「いい……。アンタに迷惑かけちゃうじゃない」
「気にする事ないわよ。私もたぶん、一緒に泣いちゃうし」
あの日もそうだった。
朝潮型の部屋になかなか帰ってこない満潮姉さんをみんなで捜してたら、倉庫の片隅で泣いている満潮姉さんを見つけた。
満潮姉さんが泣くなんて滅多に無い事だから混乱したわ。でも、満潮姉さんの気持ちは知ってたから、きっと指輪の件で自分の気持ちが抑えきれなくなったんだろうって察しがついた。
だから私は、他の姉妹達に「満潮姉さんは見つけたから部屋に戻ってて」と言って遠ざけ、この人が溜め込んでいた司令官への気持ちを代わりに受け止めた。
制服が、満潮姉さんの涙でびしょ濡れになるまでね。
「あとは固まるのを待つだけね。ラッピングはしといてあげるから、アンタはとっとと執務室に行きなさい。今日、秘書艦でしょ?」
「じゃあ、お願いしようかな」
「ええ、お願いされてあげる。お礼は間宮券一枚で良いわよ?」
「わかった。バレないようにクスねとくわ」
イタズラっぽい笑顔で間宮券をねだってきた満潮姉さんに、同じくらいイタズラっぽい笑顔でそう返した私は、暗に一人になりたいと言った満潮姉さんを残して執務室に向かった。
きっと今日は一日、チョコレートを渡そうと執務室に殺到する艦娘たちを捌くのに追われるんだろうなぁ……。
「や、やっと来てくれたか霞。助けてくれ」
「手遅れだったか……」
執務室に入るなり、目に飛び込んできた光景に思わず頭を抱えてしまった。
どんな光景かと言うと、執務机に留まらず司令官までチョコレートが入っていると思われる箱の群れに埋まってるの。
誰のとまでは言わないけど、中には自分を模った1/1サイズのチョコレート人形も
油断してたなぁ。
私が居ると並ばされるから、今年は私が来る前に殺到しちゃったんでしょう。
「相変わらずのモテっぷりね。虫歯にならないように歯磨きだけはいつも以上にしっかりしないね」
「はいママ」
「ママって言うな。それより、さっさとそこから這い出して仕事を終わらせなさいな。今日から九日間、夜の方が忙しいんだから」
私たち朝潮型姉妹には他の艦娘たちには言えない取り決めがある。
それはバレンタインデーの次の日以降、朝潮姉さんを除いた八人でジャンケンをして決めた順番に従って司令官にチョコレートを渡し、司令官と一晩限りの恋人になって、一夜を司令官と過ごす秘密の決まり事。
もちろん、バレンタインデー当日は朝潮姉さんよ。
そして今年は、二日目の権利を私が勝ち取った。
「今年も例のアレをするのか?」
「当然よ。年に一度とは言え報われるから、私たちは姉妹でいられるの。もし、無しにしようとか言い出したら八人でアンタを監禁しちゃうんだから」
「それはご褒美か?」
「ええそうね。贔屓目に見ても中学生くらいの私たちに監禁されて飼われるのが嬉しいならご褒美でしょうよ」
どちらかと言うと、私たちにとって……。いや、私にとってのご褒美かな。
この人が愛してる朝潮姉さんからこの人を引き離し、監禁して食事から排泄、その他諸々まで管理して私専用の奴隷にする。
そんな危うい妄想を、この時期はどうしてもしてしまう。病んでるって自覚はあるから、辛うじて実行せずに済んでるけどね。
「今年の二日目は誰だ?」
「私よ。今年は寝かせる気が無いから覚悟しといてよね」
「ああ、覚悟しておくよ」
そう言ったのを最後に、私と司令官は今日の仕事に取りかかった。
今日以降を少しでも楽にするために、次の日の仕事まで前倒しにしてね。
それを終わらせて部屋に戻ったら、満潮姉さんがチョコレートの入った箱と手提げ袋を持って何故か部屋の外で待っていた。
部屋の中が騒がしいけど、何かあったのかしら。
「仕事は終わったの?」
「ええ、次の日のも前倒しして終わらせたからこんな時間になっちゃったけど……何かあったの?」
「朝潮姉さんが熱出して寝込んだ」
「はぁ?寝込んだ!?なんで!?」
今朝はいつも以上に元気で、暴走一歩手前なくらいテンションが高かった朝潮姉さん熱出して寝込んだ?
テンションが上がりすぎて熱が出ちゃったのかしら。それとも風邪引いた?
「なんかね、私たちに負い目を感じてたんだって」
「負い目?」
「うん、今も熱に魘されながら、ずっと「ごめんなさい」って繰り返してるみたいよ」
「あ~……何となくわかった」
朝潮姉さんは真面目が行き過ぎて暴走し、私たちに迷惑をかける事がよくある。
具体的に言えば三日に一度くらいね。
大半は司令官が変な事を言い出すのが切っ掛けだけど、私たちの事を心配しすぎて暴走することもあるわ。
今回のもたぶんそう。
朝潮姉さんは、私たちも司令官の事を好きだって知っていながら、自分一人が司令官の愛情を一身に受けている事に罪悪感を感じてたんだと思う。
それが今日、限界を超えて発熱と言う形で顕在化してしまった。ってとこでしょう。
「だから、今年は予定変更よ。姉さんをトリにして順番を繰り上げる。もちろん姉さんも了承してるわ」
「じゃ、じゃあ……」
「そう、今晩司令官の相手をするのはアンタよ」
そう言って、満潮姉さんは持っていたチョコレートの箱を差し出してきた。
本来なら、朝潮姉さんにしか許されていないバレンタインデー当日にチョコレート渡す権利を私が得る。
正直に言えば嬉しいし、ラッキーだとも思ってるわ。
でも、素直に喜べない。
チョコレートを差し出す満潮姉さんの震える手を見たら、とてもじゃないけど素直に喜べない。
「変な気を使ったらぶつわよ」
だから、私の次の日に司令官にチョコレートを渡す予定になっていた満潮姉さんに権利を譲ろうと考えた。
でも満潮姉さんには、私の考えてる事なんてお見通しだったみたい。
差し出されたチョコレートから、満潮姉さんの顔に視線を移した途端に釘を刺されちゃったもの。
「で、でも満潮姉さんの方が……!」
私よりもずっと司令官を愛してる。私以上に、私が得てしまった権利が欲しいはず。
そんな事は、今にも泣き出しそうな顔を見れば嫌でもわかるわ。
「私の事なんて気にしなくて良いの。アンタにとって、唯一素直に司令官に甘えられる日なんだから楽しんできなさい」
「それは……!」
満潮姉さんも同じでしょう?
って言おうとした私を黙らせようとしたのか、それとも泣き出しそうな顔を見られたくなかったのか、満潮姉さんは私を抱き寄せて落ち着かせるように頭を撫で始めた。
私の頭を撫でる手どころか、体全体が小刻みに震えてる。
「あんまり気に病むと、アンタまで熱出して寝込んじゃうわよ?」
「でもそうすれば……」
順番が繰り上がって、満潮姉さんに今日の権利が回る。そう言おうと思ったけど、私を抱き締める腕の力を強めた満潮姉さんに止められた。
「馬鹿ねぇ。順番がズレたのは私的にも願ったり叶ったりなのよ?」
「どう……して?」
「だって明日は私が秘書艦だもの。朝からず~っと一緒に居られるのよ?そっちの方が良いに決まってるじゃない」
嘘だ。
確かに朝から次の日の朝まで一緒に居られるのは魅力的だわ。でも、バレンタインデー当日にチョコレートを渡して、そのまま一晩一緒に居られる権利に比べたらそれすらも霞んでしまう。
それだけ女の子にとっては大切な日なのに、満潮姉さんは自分に嘘をついてまで私に今日を楽しんでこいって言ってくれてる。
そこまで言われても尚、今日の権利を譲るなんて言うのは満潮姉さんの気持ちに泥を塗ることになってしまう。
「わかった……。ありがとう、お姉ちゃん」
「うん、どういたしまして。あとこれ、着替えが入ってるから」
だから私は、そう言ってチョコレートと着替えが入った手提げ袋を受け取り、小さく手を振る満潮姉さんから離れた。
向かうは司令官の私室。
本当なら朝潮姉さんが行くはずだった、司令官と朝潮姉さんの愛の巣よ。
「それで、今日は朝潮ではなく霞と言う訳か」
「そうよ。ガッカリした?」
私は司令官の私室に着くなり事情を説明した。
だって私が部屋に入るなり「なんで霞が?」って顔しやがったんだもの。
まあ、朝潮姉さんが来るとばかり思ってたこの人からしたら当然の反応なんだけど……やっぱりちょっと傷付くわね。
「正直に言っても?」
「いい訳ないでしょ。殴るわよ」
このクズは……。
肩を竦めて「お~怖い怖い」と戯けてもガッカリしてるのが丸わかりよ。本当に殴ってやろうかしら。
「ちょ!ちょっと!せめてお風呂にくらい入らせてよ!」
「ダメだ。風呂に入られたら匂いが落ちてしまう」
「この変態……」
私の抗議など聞く耳持たず、司令官は私を抱き上げて膝の上に座らせた。
所謂、座った状態でのあすなろ抱きね。
司令官はこの体勢で匂いを嗅ぐのが好きらしく、他の姉妹達にも漏れなくしてるらしいわ。
いや、峯雲姉さんだけは逆向きだったっけ。
「……ところで、チョコはくれないのか?」
「今日は散々食べたでしょ?それなのにまだ食べ足りないの?」
「ああ、朝潮型がくれるチョコは別腹だからな」
「あっそ、そんなに太りたいならあげるわよ」
ねだられるのを待っていた私は、司令官の顔にチョコレートが入った箱を押し付けた。
この人もそれを予想してたのか、鼻っ柱に直撃しないように、しっかりとほっぺたで受け止めたわ。
「相変わらず、霞と満潮が作るチョコは塩っぱくて苦いな」
「当然よ。気持ちがこもってるからね」
どれだけ砂糖を入れて甘くしても、私と満潮姉さんが作るチョコレートは塩っぱくなる。
市販の板チョコを溶かして固めただけでも、何故か苦くなる。味見した時は普通なんだけど、どうしてもそうなってしまう。
それはきっと、この人が私たちの気持ちを受け止めてくれているから、塩っぱくて苦いチョコレートに感じちゃうんでしょうね。
「もう、甘いチョコレートは作れないのかな……」
「作れるさ。いつか、きっとな」
他人事みたいに言いやがって。
私と満潮姉さんがそんなチョコレートしか作れなくなったのは間違いなく貴方のせい……。
「いや、
「ん?何か言ったか?」
「ううん、何でもない」
司令官の手の温もりを頭頂部に感じながら、私はあの日の事を思い出していた。
私と似たような性格をしている満潮姉さんに背中を押して貰って、初めて作ったチョコレートをこの人に贈った日のことを。
「まあ、少し手間取ったけど、できたからあげるわ」
「なんだ?これ」
市販の板チョコを溶かして型に流し込んで固めただけにすれば良かったのに、私は初めて作る手作りチョコに妙に拘った結果、私が作ったソレはこの人にチョコレートだと気付いてもらえなかった。
「何って、チョコよ。そんなこともわかんないの?」
「チョコだと!?このダークマターみたいな外見で所々人の顔のように見える物質がか!?」
今思いだしても、司令官が言ったとおり食べ物には見えなかった。
控え目に言って汚物ね。
もし私が贈られる側だったら、迷わずゴミ箱にダンクシュートしてたと思うわ。
それなのにこの人は……。
「は、早く受け取ってったらぁ!」
それまで経験したことがないほどの熱を顔に帯びてそう言った私を気遣って、この人は美味しいはずがないチョコレートを頬張ってこう言ってくれた。
「歯が溶けてしまいそうなほど甘いな」って、顔を真っ青にしながらね。
その日に、私はこの人への恋心を自覚した。
日頃の感謝を伝えるって事で渡しときなさい。って満潮姉さんに諭されてチョコレートを贈った事で、私はこの人への恋心を自覚させられた。
邪推するわけじゃないけど、もしかしたら満潮姉さんは、自分と同じように苦しんでくれる仲間が欲しかったのかもしれないわね。