家族に帰ってくるなと言われたのが一番つらかった( ω-、)
自粛とは、自ら進んで行いや態度を改めつつしむこと。
つまり、本来なら他人から強要されることではありません。
ですが、世界中を巻き込んでのコロナ騒ぎのせいで、自粛したくても大人の事情でできない人たちまで要請と言う名の強要と同調圧力によって肩身の狭い想いをしているのが今の日本の実情です。
もちろん、先に言ったことは個人的な感想なので異論は受け入れます。
それは世間一般に留まらず、鎮守府も例外では……いえ、軍の一施設である鎮守府は自粛などと言う他人任せな要求ではなく、待機命令という明確な強制力を持って、部屋単位でロックダウンされています。
食事は食堂でではなく各部屋への配給。
部屋からの外出は出撃する者以外認められず。各部屋との交流は、今回の騒動で支給されたパソコンやスマホにインストールされた通話アプリでのみ。
出撃した人も、報告はパソコンによるメールで行っています。
待機が始まって早二週間ですが、すでに極一部の艦娘を除いて不満は顕在化しつつあります。
気持ちはわかりますけどね。
先に言いましたが、鎮守府の場合は世間様と違って自粛ではなく待機。
完全に強制です。
故に、ちょっと買い物でも~と出かける事も食料から生活必需品まで配給されるので出来ず、部屋から一歩でも出れば、憲兵さんによって部屋よりも狭く薄暗い懲罰房へと連れて行かれます。
最初の内こそ、強制とは言え実質的な休暇を喜んでいた艦娘たちですが、三日目には各自が部屋でもできるトレーニングやストレッチ等で汗を流して気を紛らわせ始めました。ですが、この騒動が始まるまでは訓練と出撃に明け暮れていた艦娘たちが狭い部屋の中に閉じ込められて平静を保てるはずもなく。
一週間経った頃には、大本営に直接文句は言いにくいので司令官への不平不満がネット上で噴出し始めました。
やれ、待機してたら防衛に支障が出るだの、鎮守府では感染者が確認されていないんだから部屋から出ても良いだろとかが目立ってましたね。
あ、あと、酷いのになると、各部屋に人数分の洗って使える布マスクが配給されたんですが、マスクを配る余裕があるなら深海棲艦を配れなどと宣う戦闘狂もいました。
まあ、鎮守府は世間から隔絶された環境なので、コロナの感染者がいないと判明したら徐々に緩和されていくはずですから、国民のヘイトを一身に集めている某総理みたいに、司令官にも艦娘からのヘイトをしっかりと受け止めてもらいましょう。
で、どうして冒頭からこんな話を長々としたかと言いますと……。
「もう限界です!ここからだしてください!司令かぁぁぁぁぁん!」
うちの馬鹿姉。
もとい朝姉が、二週間目を迎えた今日で限界を突破し、発狂したのを目の当たりにして現実逃避したくなったからです。
あ、自己紹介が遅れました。
私は朝潮型二番艦の大潮。
他の鎮守府の大潮はどうか知りませんが、この鎮守府では朝潮型一の常識人で通っています。
いえ、常識人に成らざるを得なかったんです。
よく、他の鎮守府の大潮は無駄にアゲアゲ言って明るいムードメーカー的なキャラと聞きますが、うちの鎮守府は朝姉が馬鹿なので私がしっかりするしかなかったんです。
朝姉だけではありません。
満潮と霞は、改二になって多少ツンが和らいだとは言え朝雲も含めて未だにツンデレを拗らせていますし、荒潮は未成熟な少女特有の魅力を使って司令官で遊ぶオープンスケベ。
山雲と霰は何を考えているかわかりませんし、峯雲なんてただのオッパイです。
まあ、あとの三人は実害が少ないですが、先に言った四人は手綱を取るのが一苦労でして、自粛警察じゃないですが、騒ぎが起きる度に自粛してって言いたくなります。
おっと、脳内で愚痴ってる場合じゃないんでした。
「うるっさいわねぇ。司令官とはパソコンを通して話してるんだから良いじゃない」
「嫌です!画面越しではにおいが嗅げません!」
「においならぁ、朝潮ちゃんの『司令官の下着これくしょん』のを嗅いどいたらぁ?」
「もうにおいが薄くなってるから駄目です!今日の、今はいていらっしゃる下着ででもないかぎり満足できません!」
ドアにすがり付いてドンドンと叩いている朝姉を、満潮と荒潮が宥めようとしたようですが完全に暴走している朝姉には意味がありませんでしたか。
あ、ちなみに。
うちの鎮守府の駆逐艦寮の部屋割りは駆逐隊単位なので、私たち第八駆逐隊以外の姉妹は別部屋です。
けっして他意はありません。
「ちょっと大潮!達観してないで姉さんを止めてよ!」
「え~、やだよ面倒臭い。満潮が何とかして」
「面倒臭いってなによ面倒臭いって!あ!こら姉さん!ドアを爪で引っ掻かないで!」
良いじゃん、好きなだけ引っ掻かせれば。
は、置いといて。
面倒臭くもなりますよ。
満潮は本来、霞と並んで朝潮型姉妹のツッコミ担当なのに、朝姉がにおい云々と言い出してからの一連のボケ、いえ、性癖暴露に一切ツッコまなかったじゃないですか。
もしかして私にツッコまさせるつもりですか?
嫌ですよ。
私たち姉妹の長女である朝姉がにおい、しかもオッサンのにおいフェチで、事もあろうにオッサンの使用済み下着をくすねてコレクションしていた事実にツッコみたくありません。
「コロナが終息すれば会えるわよぉ。だから、今は我慢しましょぉ?司令官はほらぁ「今、流行りだからな」なぁんて不謹慎なことをキメ顔で言いながらぁ、コロナビール飲んで元気にやってるわよぉ」
「なんですって!?それなら余計に行かないと!」
「どうしてぇ?」
「司令官はお酒を飲んだあと、絶対にアサシニウムを摂取しなければ壊れてしまうんです!」
な、なんだってー!
とは、言いませんよ。言うもんですか。
だいたいアサシニウムってなんですか?後ろに光線(意味深)ってつきません?しかも摂取?経口摂取ですかそれとも静脈注射ですか?
まあどちらにしても、真っ当じゃない物を真っ当じゃない方法で体内に入れるんでしょう。
「もう!待機命令されてんだから出て良いわけないでしょ!?それともなに?姉さんは命令違反して司令官に会いに行く気!?」
お?それは良い手ですよ満潮。
朝姉はなんだかんだ言って命令に忠実。故に、命令違反という言葉は、朝姉にとっては強烈なパワーワードのはず……。
「命令なんて知ったことじゃありません!司令官に会うぅぅぅぅ!司令かぁぁぁぁぁん!」
なんと言うことでしょう。
朝姉が声高に「命令なんて知ったことか!」と言う場面に遭遇するだなんて、今の今まで夢にも思いませんでしたよ。
あまりに意外すぎて、満潮と荒潮は顎を外れんばかりに開いて驚いてますし、今の声を聞いたと思われる隣の七駆の部屋在住の漣ちゃんが発信源となって、ラインの駆逐艦専用チャットが驚愕の嵐に包まれています。
パッと目についたところだと……。
朝潮ちゃんが壊れた?
いや、平常運転です。
日本は終わりだ?
いやいや、朝姉が壊れたくらいで日本は終わりません。
明日は地震ね?
いやいやいや、本当に地震が起こるなら、敵棲地に朝姉を二週間放置すれば勝てますね……って、うちの姉を地震兵器にしないでください。
元からあんなじゃない?
いやいやいやいや、失礼な。アレでもまともな日はあるんです。むしろ普段の奇行は真面目が行き過ぎて暴走してるだけで、根は真面目な良い子なんです。
おっと、暇な待機中に起きた珍事で好き勝手に盛り上がっている面々に内心ツッコンでしまいましたが、あとでコレを見た朝姉が落ち込みそうだから自粛してくれないかなぁ……。
「待機任務に入る前、司令官と約束したんです」
「なんてぇ?」
「今度のコロナは危ないかもしれません。司令官の身が危なくなれば私が助けるって……」
どっかで聞いたようなセリフですね。
それってアレですか?
艦だった頃の朝姉に乗艦してた佐藤大佐が、野島の艦長に言ったセリフのパクリですよね?
「だから司令官のところに行くのぉぉぉぉぉお!?放して!放しなさい満潮!」
「だから出ちゃダメって言ってるでしょ馬鹿姉!荒潮も手伝って!この馬鹿姉を縛り付けるわよ!」
「荒潮のぉ、好きな縛り方で良ぃいぃ?」
「何でも良いから早く!」
え?荒潮が好きな縛り方ってあれでしょ?
最近、等身大の司令官人形で練習してた亀甲縛りでしょ?あ、間違いありません。
練習の成果なのか、一切の無駄がない滑らかな動きで朝姉を縛り上げました。しかも、いつの間にやら取り付けてあった天井のフックで吊るしちゃいましたよ。
「ねぇ、荒潮。縛り方が緩いんじゃない?余裕そうな顔してるわよ?」
「満潮ちゃんはわかってないわねぇ。圧迫感を感じさせず、されども身動き一つとれず、徐々に徐々に快感を与えるよう縛るのが緊縛の極意なのよぉ?」
「あ~確かに。姉さんが身じろぎするたびに、顔がエロくなってる気がする。あ、今喘いだ」
「食い込むからねぇ♪」
「どこに?」
「あそこにぃ♪」
自粛、いや自重しろ馬鹿妹ども。
あんまり行き過ぎるとR15かR18タグつける必要が出てくるでしょ。
「あ、荒潮……」
「なぁにぃ?朝潮ちゃぁん♪」
「ひぐぅ……!や、やめ、ロープをひっぱらな……くぅっ!」
「あぁ、良いわぁ♪初めての快感に頬と下着を濡らす朝潮ちゃん凄く良いわぁ♪」
だからやめろ。
しかもスマホで撮影まで始めてるじゃないですか。シャッター音が一回しか聞こえませんでしたから動画ですか?悶えてる朝姉を撮影して何を……。
「荒潮、アンタって子は……」
「悶え、喘ぐ朝潮ちゃんをネット配信したらぁ、私のチャンネルの登録者数増えるかしらぁ」
「増える前に垢バンでしょ」
そりゃそうだ。
見た目が完全にJS、またはJCな朝姉の緊縛プレイなんてモノをネットで流したら大問題ですよ。
大きいお友達は歓喜するかもしれませんが、最低でも全国に500万人いると思われる朝潮が社会的に轟沈します。なので、そろそろ止めるとしましょう。
「司令官、見てるんですよね?」
と、お茶の間では絶対に流せない乱痴気騒ぎをしている三人に聞こえない程度の声で虚空に向かって呟くと、私のスマホが鳴り始めました。やっぱり見てましたね、あのオッサン。
どこに仕掛けているかはわかりませんが、朝姉LOVEの司令官なら、この部屋に隠しカメラと盗聴器を仕掛けてると思ってたんです。
「もしもし」
『どうしてそうなった?』
開口一番にそれですか。
でも、それはこっちのセリフです。
どうすんですかこの惨状。
もう完全にプレイ中ですよ。
縛った方も縛られた方も火がついちゃってますし、ムッツリスケベの満潮なんて、ガン見しながらモジモジしてハアハア言ってます。
『何とかならないか?』
「何とかして良いのなら」
今の状況なら、どうにかするのは簡単です。
朝姉は荒潮が縛ってくれましたし、満潮は騒ぎが終息すれば、ナニをするためにベッドへGOするでしょう。
つまり、現在進行形でロープを引っ張り、朝姉をあんあんはぁはぁ言わせている荒潮を制圧すれば良いだけです。
『頼む』
「了解しました。じゃあ……」
正直に言うと、私もストレスが溜まってたから発散したかったんです。
だって三馬鹿が私の迷惑も考えずに好き勝手言って暴れまくるんですよ?
だからお仕置きも兼ねて徹底的にやります。
朝姉はその状態のまま猿ぐつわを噛ませてお尻ペンペンの刑。満潮と荒潮は、自分の体をまさぐれないように簀巻きにして、その様子を見物させてやります。
では、段取りも決まりましたので……。
「ドーン!と、行きますよ!」