(完結)閃の軌跡0   作:アルカンシェル

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10話 ロレントへの出張

 

 

 あの日からリィンの仕事に事務以外の仕事が増えた。

 仕事内容は斥候。

 民間人の魔獣の目撃情報から、その存在を確かめ探索。外見情報を記録してギルドに報告する。

 

「まさか父さんの趣味に付き合っていた経験がこんな風に役に立つなんてな」

 

 息を潜め、気配を消しながら魔獣の気配を探すのはまさに狩猟と同じだった。

 唯一違うのは獲物を仕留めるための猟銃も弓矢もないことくらい。

 

「見つけた……」

 

 茂みの中からリィンは目的の手配魔獣を見つける。

 一見すると魚のような外見。

 普段はどんな方法でかは不明だが空中に浮く魚類型魔獣。

 一際大きな個体が一体に、同種の小型の個体が四体。

 リィンはもらったばかりのオーバルカメラで数枚の写真を撮る。

 

「…………あれくらいなら」

 

 カメラをしまいながら、リィンは腰に佩いた太刀の柄に触れる。

 魔獣は休んでいるのか、動く気配はない。

 今なら奇襲をかけて取り巻きを一網打尽にできる。

 そして一対一なら少し大きいくらいの魔獣なら一人でも十分に戦える。

 

「……いやダメだ」

 

 逸る気持ちを抑える。

 通常の魔獣と比べて手配魔獣の危険性については散々講習を受けた。

 例え、万全な状態だったとしても手配魔獣には複数人でチームを組むのがセオリーであり、決して油断してはいけない。

 

「よし……」

 

 自制を完了させたリィンは静かに後退を始める。

 足元の木の枝を踏む、なんてベタな展開もなく、リィンは獣道を抜け街道へ出るとボースの街に向けて走り出した。

 

 

 

 

「よし……ちゃんと撮れているな」

 

 オーブメントショップから出たリィンは現像したばかりの写真を見て頷く。

 被写体は遠いが、輪郭は鮮明に撮れているし、群れとなっている個体の数も分かる。

 この写真があれば、いざアネラスたちが退治に行く時の一助になるだろう。

 初めての仕事の手応えにリィンは確かな手応えを感じながらギルドへの帰路につく。

 

「ただいま戻りました」

 

 いつの間に慣れてしまった口上と共にギルドのドアを開けると、リィンを出迎えたのはルグランと依頼人らしい人がいた。

 内密の話ならすぐに出て行こうと思ったが、目配せでルグランはそれを否定する。

 

「ふむ……やはり帰って来たのはリィン君が一番早かったか」

 

 その言い方にリィンは首を傾げた。

 

「どうかしたんですか?」

 

「うむ……実は急な依頼での。この荷物をロレントの教会に届けて欲しいという依頼での」

 

 顔をしかめながらルグランはカウンターの上に置かれた箱を一瞥する。

 

「今日の待機はグラッツさんでしたよね?」

 

 こういう時に備えてギルドには常に即行動できる遊撃士が一人は待機していることになっている。

 だから普通にグラッツが請け負えば問題ないと思ったのだが、ルグランは首を横に振った。

 

「グラッツは別の緊急依頼を受けてしまってつい先程出て行ってしまったんじゃよ……

 緊急依頼が重なることは滅多にないんじゃがの」

 

 どうしようかと唸るルグラン。

 そんな彼を尻目に依頼主は焦った様子でリィンを指差して言った。

 

「彼は遊撃士じゃないのか!?」

 

「ええ、彼は事情があってギルドで保護しておる子供でな……

 下働きをしてもらっておるんじゃが、流石に資格のない者に大事な荷物を任せることはできんのですよ」

 

「いや、この際彼でもいい。とにかくこれを今日中にロレントへ届けてくれ」

 

「えっと……」

 

 ずいっと差し出された箱にリィンは困って、ルグランに視線を送る。

 

「定期船の最終便に乗ることを考えれば、今から出んと間に合わないのは事実じゃな」

 

 すでに時間は夕方に近い時間帯。

 街道を歩いて行くにしても、遊撃士の足でもロレントへは急いでも半日かかるらしい。

 今日中というタイムリミットを考えるなら、定期船の最終便に乗らなければいけないのは必須だった。

 

「ルグラン爺さん、俺なら構いませんよ」

 

「ふむ……」

 

「遊撃士の資格がない俺が直接届けるのが問題なら、ロレントの遊撃士ギルドに届けるというのはどうですか?

 そうでなくても、俺が荷物を持って定期船の待合所で待機して、間に合えばアネラスさん達の誰かにそこで引き継いでもらえばいいんじゃないでしょうか?」

 

 リィンの妥協案にルグランは考え込むこと数秒。

 

「仕方あるまい。時間もないことだしの」

 

 不本意ながらも頷いたルグランに、リィンは忘れないように先程現像した写真を提出する。

 

「とりあえずルグラン爺さん。これが西ボース街道の脇道で発見した手配魔獣の写真です」

 

 そして、依頼主に向き直る。

 

「それでは御預かりします」

 

 受け取った箱は小さくて軽い。

 何が入っているか、想像できないリィンは何気なく尋ねた。

 

「ちなみに箱の中身は聞いても大丈夫ですか?」

 

「薬の材料じゃよ」

 

「え……」

 

 ルグランの答えに、軽かったはずの箱がとてつもなく重いものに感じた。

 

 

 

 

 

 地方都市ロレント。

 リベールの北東に位置し、農業や鉱業が産業の中心となっている。

 その立地上田舎と呼ばれているが、オーブメントに欠かせない七耀石の産地として非常に重要な都市である。

 

「ここがエステルさんたちの故郷か……」

 

 仕事でなければもう少し気の利いた感慨があったのかもしれないが、今は鞄の中が気になって仕方がない。

 仕事の内容は『薬の運搬』。

 ロレントの鉱山で魔獣が大発生した。

 遊撃士により、魔獣は掃討されたが一次襲撃の際に鉱員の多くが魔獣の毒にかかってしまった。

 ロレントの教会に備蓄されている薬では数が足りず、ボースの教会に救援が要請された。

 それが依頼の顛末だった。

 

「とにかく早くギルドに行かないと」

 

 地図を取り出した所で、耳に聞き覚えのあるリュートの音が聞こえてきた。

 

「ああ、我が愛しのリィン君。こんなところで君と出会えるなんてまさに運命――」

 

 リィンはオリビエを無視してその横を通り過ぎる。が、肩を掴まれて足を止めた。

 

「待ちたまえリィン君。久しぶりの再会だというのに無視はひどいじゃないか!」

 

「オリビエさん、すいませんが俺は今仕事中なんで遊んでいる暇はないんです……

 というか、まだ生きてたんですねオリビエさん」

 

「おおう、いきなり相変わらずの辛辣ぶりだね……思わずゾクゾクしてしまうよ」

 

「そういうオリビエさんは変態ぶりに磨きがかかってますね」

 

「いやあ、それほどでも」

 

「褒めてません」

 

 相変わらずのオリビエにリィンはため息を吐く。

 

「とにかく今はオリビエさんにかまっている暇はないんです。後で遊んで上げますから大人しくしていてください」

 

「ふむ、それはそれで魅力的な提案だけど、実はこうしてボクたちが再会したのは偶然じゃないんだ……

 シェラ君に頼まれてね。リィン君の出迎えに来たのだよ」

 

「え……? シェラザードさんに?」

 

 リィンはその名前でようやくオリビエの方へと向き直る。

 

「事の顛末はボクも把握しているよ……それじゃあ挨拶も済んだことだしギルドへ行こうか」

 

「挨拶って……」

 

 出会い頭にいきなり愛を囁く、それも同性に対してやるのは挨拶ではないと思うのだが、そこはオリビエなのだからと納得するしかなさそうだった。

 ともかく、先導するように歩き出したオリビエにリィンはため息を吐きながら後に続いた。

 

「あの……こんなにのんびり歩いていていいんですか?」

 

 しかし、普通の歩調にリィンは思わず尋ねる。

 リィンが運ぶ荷物が毒消しのための薬の材料なら、少しでも急がないといけないはずなのにオリビエに焦った様子はない。

 

「むしろこんな時だからこそ、ゆっくりと歩いているのだよ……

 幸いなことに件の毒は一刻を争うほどの危険なものではない。もちろん処方が早い方が苦しみは短くて済むが、だからと言ってボク達が焦って急がなくても大丈夫なのだよ」

 

「だけど早いに越したことは――」

 

「まあまあ少しは肩の力を抜きたまえ、むしろ歩いてくるようにというのはシェラ君からの指示でもあるんだから」

 

「そうなんですか?」

 

「大方君のことだ。ボクがいなければ走ってギルドに向かっていただろう?

 それで転んだり、誰かとぶつかったり、はたまた地図を読み間違えたり、ギルドの前を素通りしてしまっては意味がないと思わないかい?」

 

「う……」

 

 図星を指されてリィンは呻く。

 一刻も早く。

 それは定期船に乗っている時から気が逸っていたのは確かに指摘された通りだった。

 初めての空の旅だったが、それを楽しむ余裕なんてあるわけもない。

 今回ばかりは全面的にオリビエの意見が正しい。

 リィンは大人しく彼の先導を受け入れて――

 

「というわけだから、まずは駆け付けの一杯と行こうじゃないかっ!」

 

 仰々しく身を翻して見せたのは居酒屋『アーベント』という看板が掲げられた店の前だった。

 

「…………さてと、確かギルドは時計台の近くだったな」

 

 一瞬でもオリビエのことを認めた自分が恥ずかしくなる。

 くるりと踵を返したリィンにオリビエは肩を掴んで引き止めた。

 

「冗談だよ冗談。ギルドはこの先だよ」

 

 何事もなかったかのように歩みを再開するオリビエの背に、リィンはジト目をして声をかける。

 

「オリビエさん、次にこんなことをしたら――」

 

 おもむろにリィンは腰に佩いた太刀の鍔を鳴らしてみせる。

 

「おっとボクとしたことが道を間違えるところだった」

 

 そう言ってオリビエは反転して歩き出した。

 その背に、リィンは本当に相変わらずだとため息を吐いた。

 

 

 

 

 

「すいません。ボースの遊撃士ギルドから来た者ですが」

 

「ええ聞いているわ。ようこそロレント遊撃士支部へ」

 

 リィンを出迎えたのはきれいな女性だった。

 が、そんな彼女に見惚れるよりもリィンは緊張した手付きで鞄から箱を取り出してカウンターに置く。

 

「こちらが荷物です」

 

「はい。御苦労様です」

 

 中身を確認して女性は頷き、待機していた遊撃士に声をかける。

 

「それじゃあリッジ、これを教会に届けてもらえる?」

 

「分かりました」

 

 箱を受け取ると遊撃士は颯爽と駆け出して行った。

 

「……はぁ」

 

 リィンはようやく緊張が解けて息を吐いた。

 

「ふふ、お疲れ様。だいぶ緊張したみたいね」

 

「はい……」

 

 アイナの言葉にリィンは疲れた様子で頷く。

 ただの荷物を運ぶだけの子供でもできるお遣いなのに、ものすごい疲労感だった。

 手配魔獣の調査の仕事もこんな緊張感はなかった。

 

「これが遊撃士の仕事ですか……奥が深いですね」

 

「そうね。たかが荷運びや薬草の採取なんかでも、その時の状況で人命に大きく関わることになる……そういう意味ではいい経験だったかしら?」

 

「ええ、確かに……もしも俺がいなかったらどうしていたんですか?」

 

「それなら大丈夫よ……

 空港には旅客船とは別に小型飛行船があるの、有事の際はそれを使うこともできるのよ」

 

「それじゃあ俺が出しゃばる必要はなかったんですね?」

 

「いいえ、方法があるからといっても気安く使える方法じゃないの……

 だからリィン君がいてくれて協会としてはすごく助かったわ。オリビエさんも御苦労様」

 

「なにこのくらい、大したことじゃないよ」

 

 礼を言われていつものように気取った様子で受けるオリビエにリィンは苦笑する。

 

「あれ……? そういえばどうして俺の名前を?」

 

「導力通信でルグランお爺さんから連絡は受けているし、あなたのことはシェラザードからも聞いているわ」

 

「そうでしたか。挨拶が遅れて申し訳ありませんでした……

 ボース支部でお世話になっているリィン・シュバルツァーです」

 

「御丁寧にどうも。私はロレント支部の受付をしているアイナ・ホールデン。改めてようこそロレントへ」

 

「え……?」

 

 彼女の名前を聞いて、リィンは思わず声をもらした。

 不躾だと分かっていながらも、リィンは思わず目の前の女性をまじまじと見てしまう。

 

「おやおや、リィン君ってばアイナ君に熱い視線を向けるなんて……

 ああ、ボクというものがありながらリィン君の浮気者っ!」

 

「変なこと言わないで下さい……

 エステルさんやヨシュアさんたちから聞いていた印象とだいぶ違うと思っただけですよ」

 

 美人の女性だとは聞いていた。

 確かにそれはその通りなのだが、同時にシェラザードを越える大酒飲みとも言っていた。

 とてもではないがそうは見えない。

 一見すれば、深窓のお嬢様とでも言えばいいのだろうか、とてもギルドで仕事をしているような人には見えなかった。

 

「ところでリィン君。あなたはこれからどうするつもりなのかしら?」

 

「え……どうって?」

 

 何のことを言われているのか分からずにリィンは首を傾げる。

 

「ボースへの定期船は今日はもうないから、どうするのかって聞いているのよ」

 

「あ……」

 

 言われて思い出す。

 薬のことで頭が一杯だったから考えている余裕がなかったが、最終便でロレントへ来たのだからボースへ逆に帰る定期船はもちろんない。

 

「えっと、確かボースまで歩いて半日でしたよね?」

 

 今から出発すれば明け方にはボースに戻れるだろう。

 しかし、そんなリィンの答えを予想していたのかアイナは呆れたようなため息をもらした。

 

「本当にシェラザードが言っていた通りの真面目な子ね……

 リィン君、今日はロレントのホテルに泊まっていきなさい……

 それと明日のボース行きの定期船の予約は取ってあるから、それでボースに帰りなさい」

 

「え、でも……」

 

「ミラの心配だったら気にしなくていいわ。ギルドの経費として出すから」

 

「そんな悪いですよ」

 

「リィン君。今回、あなたは下働きとはいえギルドの一員として仕事をしてもらったの。だからこれくらいのサポートは当然よ……

 それに空賊事件の時にあったことを考えれば、なおのこと夜の山越えは許可できないわ」

 

「う……」

 

 それを言われるとリィンも言い返せない。

 

「とにかくせっかくロレントへ来たんだから少しくらい観光して行きなさい」

 

「では、僭越ながらボクがリィン君にこのロレントの街を案内してあげようじゃないか」

 

 そう名乗りを上げたのはオリビエだった。

 

「リィン君にはボースで迷惑をかけたからね。今日の夕食はボクに奢らせてくれたまえ」

 

「謹んで遠慮させていただきます」

 

「ははは、遠慮なんてしなくたっていいじゃないか」

 

「その迷惑の発端が何だったのか、もう忘れたんですか?」

 

 ジト目でリィンはオリビエを睨む。

 

「あれは悲しいすれ違いが生んだ悲劇だった」

 

「どう考えても喜劇でしたよ」

 

 リィンの怒りも何処吹く風とオリビエは相変わらず飄々としていた。

 

「あら、オリビエさんったら私より先にリィン君を食事に誘うの?

 シェラザードから聞いて、楽しみに待っていたのに?」

 

 そんなオリビエにアイナが言葉をかける。

 

「え……? まだ誘ってなかったんですかオリビエさん?」

 

 その言葉は意外だった。

 オリビエのことだから、ロレントに着いたその日に彼女を飲みに誘っているものだとばかり思っていた。

 

「分かってないなぁリィン君。出会った直後にお酒に誘うなんて紳士のすることではないのだよ」

 

「シェラザードさんには会った次の日に誘ってましたよね?」

 

「だから分かってないのだよリィン君。人によってその人にあった口説き方というものがあるのだよ」

 

「あら、それじゃあ私はいつになったら誘ってくれるのかしら?」

 

「ふふ、それなら今夜にでもどうかな?」

 

「ええ、仕事が終わったら喜んで」

 

 にこやかに快諾するアイナにオリビエはガッツポーズを取る。

 

「それじゃあ、それまでリィン君のことをお願いできるかしらオリビエさん?」

 

「ふむ、ではリィン君! 行こうじゃないかっ!」

 

「ちょ!? オリビエさんっ!?」

 

 強引に手を取られ、リィンはギルドから連れ出された。

 

「オリビエさん、ちゃんと自分の足で歩きますから放してください」

 

「ふふふ、こうして腕を組んで歩くなんてパルム市からハーケン門の道中以来だね」

 

「過去を勝手に捏造するのはやめてください。リベールに行く人は他にもいたじゃないですか……

 はぁ、ハーケン門まで鉄道が敷かれてればよかったのに」

 

「流石に戦争してまだ十年の隣国の目の前まで鉄道網を敷くのは、刺激が強過ぎるのだろうね……

 だが……リィン君……君は帝国の至る所に張り巡らされた鉄道網のことをどう思うかい?」

 

「何ですか、藪から棒に?」

 

「いやなに帝国に住む人間として単純な疑問だよ」

 

「どう思うも何も……別に旅行がし易くなったくらいの印象しかないですよ?」

 

 故郷のユミルに直接鉄道は来てないが、ケーブルカーの停留所では鉄道への乗換えができる。

 そのこともあって、温泉郷ユミルの観光客は増えたことの印象しかない。

 

「まあ、強いて言うならそれがあったから俺もリベールに来ることを決められたんですけどね」

 

 流石に歩いて帝国の北に位置するユミルから南のリベールまで歩く決意ができたとは思えない。

 

「そうか……」

 

 真剣な顔をするオリビエの姿にリィンは激しい違和感を感じながら先程の話を思い出す。

 

「それにしてもオリビエさんが女の人をすぐにお酒に誘わないだなんて、意外ですね」

 

「ふ……ボクは失敗を糧にできる男だよ。リィン君……

 シェラ君を超えると言われるアイナ君に何も知らずに挑むなんて、帝都の宮殿に裸で突撃するようなものだよ」

 

「言いたいことは分かりますけど、例えを選んでください。不敬ですよ」

 

 言っても無駄だと分かっていながらも、リィンは突っ込む。

 

「ようするにアイナさんが怖かったんですね? それで覚悟が決まらずに今までズルズルと」

 

「だって情報を集めれば集めただけアイナ君の伝説が聞かされるのだよ!

 ああ、果たしてボクは生きて明日の朝日が拝めるのだろうか。おお、女神よっ!」

 

「……はぁ」

 

 泣きついてきたと思ったら、両手を合わせて空の女神に祈るオリビエにリィンはため息を吐く。

 相変わらずの鬱陶しさ。

 しかし、見放そうと思えないのはオリビエの人徳なのだろうか。

 

「どうしてそこまでしてお酒を飲みたがるんですか?」

 

「それはほら、美女と美食のためならボクは死ねるからね」

 

「それじゃあ潔く散ってください」

 

「ああっ! リィン君ってば冷たい。でもそんな君も仔猫みたいで素敵だよ」

 

「気色の悪いこと言わないで下さい」

 

 などと言い合いながらもリィンとオリビエは気ままにロレントの街を歩いた。

 日が完全に落ちる頃に仕事を終えてシェラザードと合流し居酒屋『アーベント』に入り、そして――

 

 

 

 

「あれ……ここは……?」

 

 唐突に目を覚ましたリィンはすぐに自分の状況を理解できなかった。

 周囲を見回すとそこは人がいなくなった居酒屋の景色。

 そこが夕食を摂っていた場所だということを思い出す。

 

「確か……」

 

 遊撃士ギルドを出て、オリビエとロレントの街を散策した。

 写真を撮りながら歩き回り、最後に時計台に昇り、夕焼けに染まるロレントの街を一望した景色を撮った。

 そして仕事を終えてきたシェラザードと合流して居酒屋アーネンエルベに赴いた。

 ロレントの名物で作られた野菜料理を食べ、賑わい出した店内で突然オリビエが歌い出した。

 そんなオリビエに丸め込まれて一緒に『星の在り処』を歌わせられたりしたことは覚えているのだが、席に戻りシェラザードから飲み物を勧められたところまでは思い出すことはできた。

 しかし、そこから先の記憶が途切れていた。

 

「……頭が痛い……」

 

 それに胸焼けもする。

 変な場所で変な体勢で寝てしまったから、それでは説明がつかないほどに身体は不調を訴えていた。

 

「あら、目が覚めた?」

 

「…………アイナさん?」

 

 重い身体を起こしたリィンは突っ伏していたテーブルの向かいに彼女が座っているのに気が付いた。

 

「ほら、お水よ。飲める?」

 

「ありがとうございます」

 

 差し出されたコップを礼を言いながら受け取って一気に呷る。

 

「はぁ……」

 

 それだけで気だるい身体が随分と楽になる。

 

「ごめんなさいね。どうやらシェラザードがあなたの飲み物を火酒にすり替えたみたいなの」

 

「あーそうだったんですか……通りで……」

 

 未成年なのにお酒を飲んでしまった罪悪感よりも身体の気だるさで気分が最悪だった。

 と、その元凶の姿を探してリィンは目を疑った。

 

「え……?」

 

 周りの光景は以前のヴァレリア湖畔でのものとよく似ていた。

 テーブルに所狭しと置かれた酒瓶。

 グラスを持ちながら潰れているオリビエ。

 そして、あの時とは違い、シェラザードまでオリビエと同じ様にテーブルに突っ伏して寝息を立てていた。

 

「……え?」

 

 思わず目を擦って見ても、そこに潰れているのはシェラザードだった。

 そして、横を見る。

 気を失っていたリィンにはいつ現れたかは分からないアイナは素面のような顔だった。

 一見すれば彼女はお酒を飲んでないように見えるのだが、彼女の手元にはすでに空けられた酒瓶が所狭しと並んでいる。

 酒豪というならリィンはユン老師を思い出すが、その老師でもここまで飲んで平気な顔をしてはいなかった。

 

「それにしても『星の在り処』を歌っていたんですって? 私も聞きたかったな」

 

「そんな、人にお聞かせできるほどのものじゃなかったですよ」

 

 拍手をもらえたがそれはオリビエのリュートによるものが大きかっただろう。

 音程を外したところも一つや二つではない。

 今冷静に省みると、顔が赤くなってしまうほどに不出来なものだった。

 

「あら、謙遜することはないわよ。シェラザードも絶賛していたし、オリビエさんも歌で一番大事なのは『心』だって言っていたし」

 

「はは、すごく言いそうですね」

 

 容易く彼の言動を想像できることにリィンは苦笑する。

 だが、ふとリィンはその笑みを消して俯く。

 

「あら? どうかした?」

 

「いえ、何でもありません」

 

「そう……ねえリィン君、あなたはお酒を飲んじゃったんだから少しくらい愚痴を言ってもいいのよ」

 

「いや、それは不可抗力だったからで、そんな今日会ったばかりの人に愚痴を言うなんて……」

 

「あら、やっぱり何か溜め込んでいるものがあったのね?」

 

 アイナの物言いにカマを掛けられたのだと気付いてリィンは口を閉じる。

 アイナはそこから追究せずに、自分でグラスに酒を注ぎ、ゆっくりと飲んでいく。

 どれだけの時間がそうやって過ぎただろうか。

 気が付けば、リィンは閉じたはずの口を開いていた。

 

「時々……こうして笑っていることが不安になるんです……

 リベールで会う人たちはみんな良い人たちばかりで、来て良かったって思います。それは間違いないんです」

 

 ユミルに篭っていたら出来なかった経験をしている実感はある。

 それが得難いものだと思う半面で、時々不安が過ぎる。

 

「でも、だからこそ思ってしまうんです。それは逃げているだけじゃないのかって」

 

 ギルドの下働きは遣り甲斐を感じている。

 アネラスとの鍛錬も、ユン老師との時よりも確かな手応えを感じているのは確かだった。

 しかし、だからこそ――

 

「居心地のいい場所にいて、不都合なものから目を逸らしているだけなんじゃないかって、ふとした拍子に不安に駆られるんです」

 

 確かな手応えを感じる反面、以前よりも鍛錬の密度や厳しさは減っている。

 それに仕事に時間を割いてしまっているから、剣の鍛錬の時間も短くなってしまっている。

 だから時々思ってしまう。

 自分は本当に前に進めているのか。

 居心地のいい場所で進んでいる気になっているだけじゃないのか。

 もっと必死にならなければいけないのではないか。

 

「そう言えるのはあなたが前に進めているからじゃないのかしら?」

 

「え……?」

 

「シェラザードやオリビエさんから聞いていたあなたの印象だと、私はもっと余裕のない子を想像していたわ」

 

「…………そうですね。シェラザードさん達と会った時は本当に余裕はなくて……」

 

 今は少しだけ心の余裕があることを実感している。

 

「少し前のあなたなら、そんなことを考えることもできなかったんじゃないかしら?

 だっていくらギルドの仕事があったとしても、その気になればいくらでも剣の修行はできるんだから」

 

「それは……アネラスさん達に止められたから」

 

「本当に切羽詰っている人は誰かに止められたからって、その通りにはしないわよ……

 でも、それはいいことだと私は思うわ……

 何事も息抜きは必要よ。それができなかったから、苦しくて故郷を飛び出したんじゃないのかしら?」

 

 言いながらアイナはリィンに向けて手を伸ばす。

 その手はリィンの頭に乗っかって、優しく撫でる。

 

「……あの……アイナさん……」

 

「そんなに焦らなくても大丈夫、リィン君はちゃんと前を向いているわ」

 

 撫でる手に気恥ずかしくなりながらも、リィンはされるがまま受け入れる。

 

「今日だって、あなたのおかげで助かった人がいた……

 君にとっては寄り道かもしれないけど、私はその寄り道に胸を張ってほしいって思うわ」

 

「そーよ。あんたは真面目過ぎよ」

 

 続くその言葉はアイナではなかった。

 

「あら起きたのシェラザード」

 

「あー……懐かしい夢を見たわ……あの頃のアタシは、若かったわよね……」

 

 身体を起こしながらシェラザードは夢の余韻に浸るように呟く。

 

「ふふ、久しぶりに良い感じに酔ったみたいね」

 

 そんな彼女の仕草にアイナが微笑むと、潰れていたもう一人が呂律の回ってない言葉をもらす。

 

「しぇやザードきゅん……ぼぼ、ボクはねぇ……ボクはぁ……」

 

「あらオリビエさん、もう起きちゃったの? ふふ、寝覚めに一杯どうぞ」

 

「え……?」

 

 思わずリィンは目を疑った。

 明らかに完全に戦闘不能状態に陥っているはずのオリビエにアイナは天使のようなにこやかな笑顔で彼のグラスに新しい酒を注いで追い討ちをかける。

 つい先程まで優しくリィンの話を聞いてくれた女性だとは思えない悪魔の所業だった。

 

「や、ヤメテ……ヤメテ……」

 

「あんた、なに鬼なことしてんのよ。フォークナー、オリビエにもう一本付けてやってー!」

 

「あ、あぅあぅ……」

 

「ええっ!?」

 

 言っていることがまるで違うシェラザードにリィンは戸惑う。

 が、シェラザードが呼んだ誰かの返事はない。

 

「あー、アイツまたトンズラしたのね。チッ……仕方ない。アタシが取ってくるかぁ」

 

 シェラザードはカウンターの後ろに回って棚を漁る。

 

「いいんですか、止めなくて?」

 

「大丈夫よ。いつものことだから」

 

「いや……そうじゃなくて……」

 

 勝手知ったると言わんばかりに棚を漁るシェラザードもそうだが、止めなければオリビエの息の根が本当に止まりかねない。

 

「何かキッツイやつはないかなぁ~っと……お、ブランデー発見!」

 

「だめよ、シェラザード。寝覚めなんだから、軽い果実酒くらいにしておかないと」

 

「じゃ、両方ね」

 

「ヤメテ……しんじゃう……」

 

 うわ言のように呟くオリビエだが、彼の言葉を二人が聞いた様子はない。

 

「あ、あのっ!」

 

「ん~……な~に~もしかしてリィン君も飲みたいの?」

 

「いえなんでもないです」

 

 標的が自分になりそうだったので、すぐさまリィンは逃げの一手を打つ。

 

「で、何の話だっけ?」

 

 そんなリィンに残念そうにしながらシェラザードは席に戻る。

 

「リィン君が真面目だって話よ」

 

「あーそーだったわね」

 

 シェラザードは持ってきたばかりの酒瓶の栓を抜きながら、感慨深げに呟く。

 

「あたしがリィン君くらいの歳の時なんて、リィン君よりずっと馬鹿なことしてたわよ」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ、それはもう……勝手な思い込みで怯えて、一人で突っ張って……

 ほんと、どうしようもない大馬鹿者だったわ……」

 

 言いながらシェラザードは開けたばかり酒瓶を傾ける。

 

「シェラザードったら、注ぐ場所を間違っているわよ?」

 

「ありゃりゃ? あー、ホントだー……」

 

 シェラザードはオリビエの頭に酒を注いでいたが、特に悪びれた様子もない。 

 

「きゅ……きゅう…………」

 

 頭からお酒をかけられたオリビエはそのまま動かなくなる。

 しかし、その様にシェラザードとアイナは動じた様子はなく、むしろ微笑みすら浮かべている。

 

「こ、怖い……」

 

 酔っ払いという者がどれほどの恐怖を振り撒くのかリィンは初めて知った恐怖に身を震わせる。

 

 ――早く。この場から逃げないと……

 

 未成年だからなんていう理由が何の安心材料にもならない。

 彼女達の矛先が気まぐれに自分に向けられたら、待っているのは目の前の男と同じ末路なのは言うまでもない。

 

「で、聞いているのリィン君?」

 

「はいっ! 何ですかシェラザードさんっ! あっ、おつぎしますね」

 

 機嫌を損ねないようにリィンはシェラザードのグラスに酌をする。

 

「ありがと……で、結局あんたは真面目過ぎるのがいけないのよ! そんなんで人生楽しいの?」

 

「いや、そんな人生がどうのって」

 

「ハーケン門で会った時からそうだったけどリィン君ってば根暗でしょ?」

 

「根暗、ですか?」

 

「ほんとあの時のリィン君ときたら、目を離すことが危ないんじゃないかと思えるくらいに情けない顔していたわよ」

 

 グサリグサリとシェラザードの言葉は容赦なくリィンの心に突き刺さる。

 

「でも、まあアネラスたちとうまくやっているみたいね……あの時よりも少しはいい顔するようになったじゃない」

 

「シェラザードさん……」

 

 ちゃんと変われているのだと言葉にされてリィンは安堵する。

 と、不意にシェラザードが顔を寄せてきた。

 

「シェ、シェラザードさん?」

 

 ただでさえ大人の色香が強い女性が、お酒の影響もあり上気したその表情はなんとも言えない妖艶さをかもし出している。

 女性に慣れてないリィンはそんな彼女の姿に、緊張で胸を高鳴らせて――

 

「リィン君も飲みなさい」

 

 心臓を凍らせる悪寒を走らせた。

 

「シェラザードさん、それは……」

 

「ダメよ、シェラザード。リィン君はまだ未成年なんだから」

 

「でもアイナ……あたしはリィン君くらいの歳の時にはゲテモノとか色々飲んでいたのよ……

 今の内に鍛えておけば、将来有望だと思わない?」

 

「そうね……」

 

 シェラザードの言い分にアイナは考え込む。

 

 ――いやいや、ダメでしょ!

 

 それを口にする勇気はリィンにはなかった。

 せめて常識人なアイナに一縷の希望を託し――

 

「それもありかもしれないわね」

 

 希望は儚く散った。

 

「さあ、リィン君。飲みなさい」

 

 そう言ってシェラザードはブランデーの瓶を向けてくる。

 

「あら、ダメよシェラザード。まずは果実酒あたりからよ」

 

 そう言ってアイナは果実酒の瓶を向けてくる。

 

「それじゃあ両方ね」

 

 シェラザードとアイナは躊躇うことなく、リィンの前に置いたグラスに両方の酒を波々と注いだ。

 

「えっと……あの……その……」

 

 ブランデーと果実酒の混ざった飲み物を前にリィンは緊張に唾を飲む。

 これを飲んだが最後、オリビエのように潰れるまで飲ませ続けられるだろう。

 

 ――どうする? 今から席を立っても二人を刺激するだけだ……

 

 と、考えているリィンは酒を頭から注がれたオリビエを見る。

 ぐでんぐでんに酔って目を回しているが、意外なことに席にはまだちゃんと座っている。

 

 ――いや、でも……

 

 一瞬頭に過ぎった方法をリィンは却下する。

 それは悪魔の所業。

 いくら絶望が目の前にあったとしても超えてはいけない一線、なのだが……

 

「どうしたのよ? あたしの酒が飲めないって言うの?」

 

「シェラザード、そんな脅したらダメよ。リィン君、自分のペースで飲めばいいのよ」

 

 無理矢理飲ませようとするシェラザードを宥めるも、アイナはすでにリィンが飲むことを前提にしていた。

 

「オ……オリビエさんがまだ飲めそうですよ」

 

 リィンは悪魔に魂を売った。

 それほどまでに二人のプレッシャーは怖かった。

 リィンの言葉にシェラザードとアイナはオリビエをじーと見つめる。

 

「な~んだ! まだイケるわね」

 

「はい。オリビエさん、お代わりどうぞ」

 

 穏やかに微笑みながらアイナはオリビエの前にグラスを増やす。

 

「い、いや……もう……」

 

「お、俺は明日が早いですからこの辺で失礼します」

 

 勢いよく立ち上がり止める間も与えず、背中からかけられる言葉、オリビエの目が訴える助けてという意思を無視して店から飛び出した。

 とにかく少しでも遠くに逃げる。

 今のリィンの頭にはそれだけしかなかった。

 

「すいません、オリビエさん。生きてたらこの埋め合わせは必ずしますから」

 

 謝罪を口にするもその言葉は彼に届くことはなく、夜のロレントの街に消えていく。

 まだ……夜明けにはほど遠い夜。

 少年は一つ、大人の階段を登った。

 

 

 

 

 

「ありがとうか……」

 

 ボースに向かう定期船の中でリィンは余韻が残る右手を見ながら呟いた。

 あの煉獄のような酒盛りの翌朝。

 ホテルに泊まったリィンがギルドを訪れると、昨日の酒盛りがなかったかのようなアイナに出迎えられた。

 正直、彼女の笑顔に足が震えた。

 それは余談として、そこにいたのはアイナだけではなくロレントの市長もそこにいた。

 いくつかの言葉を交し、ただ感謝の言葉を受けて握手をしただけ。

 それだけなのに、不思議とリィンの胸には今まで燻っていた不安が嘘のように消えていた。

 

 ――こんな自分でも誰かの役に立つことができたんだ……

 

 ようやくその実感が胸に湧いてくる。

 握手をした右手と、仕事の完了証明書。

 報告するまでが仕事だと言い含められているのだが、初めての達成感にリィンは浮かれていた。

 定期船は何事もなくボースに着き、リィンはそのまま寄り道せずに真っ直ぐにギルドに向かう。

 

「ただいま戻りました」

 

「うむ、お帰りリィン君。どうじゃったロレントは?」

 

 心なしか明るい声のリィンにルグランは目を丸くしながらリィンを迎える。

 

「良い所でしたよ。どこか故郷のユミルを思い出させる感じで……シェラザードさんとオリビエさんも相変わらずでした」

 

 苦笑しながらリィンはロレントのギルドでもらった完了証明書を提出して、改めて仕事の手続きを終わらせる。

 とそこに――

 

「ごめんください」

 

 一人の女性がギルドに入って来た。

 その声に聞き覚えがあったリィンは振り返る。

 

「メイベル市長? 仕事の話ですか?」

 

 彼女がギルドに直接来るのは珍しい。

 街の仕事の依頼をまとめた書類を彼女のメイドのリラが持ってくるのがいつものことだった。

 そのリラも今回はメイベルの後に静かに付き添っている。

 余程の事件なのかもしれない。

 そう思ってリィンはルグランに目配せをしてからメイベルたちを迎える。

 

「どうぞ二階へ。話はそこでお聞きします」

 

「ああ、いいのそんな大層な依頼じゃないから」

 

 声には確かに深刻な様子は感じられなかった。

 

「実は個人的にリィン君。あなたにお仕事を頼みたいの」

 

「え……俺にですか? 遊撃士ギルドにじゃなくて?」

 

 遊撃士にではなくメイベルが自分を名指ししたことにリィンは首を傾げる。

 

「もちろんギルドの都合もありますから、断ってくれてもいいんだけど」

 

「ふむ、それならなおのこと二階で落ち着いて話をされてはどうかの?

 それにもう少ししたらアネラスも戻ってくる。リィン君を雇いたいのなら、彼女も交えて話し合った方がいいじゃろ」

 

 そう促されて、リィンは困惑しながらもメイベルたちを二階のテーブルまで案内する。

 世間話をしながらアネラスを待ち、彼女を交えてメイベルからの仕事の依頼を聞き――

 

 その数日後。

 リィンは海港都市ルーアンの地に立っていた。

 

 

 

 

 


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