(完結)閃の軌跡0   作:アルカンシェル

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119話 遊撃士協会・クロスベル支部

「ごめんください」

 

 翌日、リィンは一人で東通りの遊撃士協会を訪ねていた。

 

「いらっしゃい。ご依頼かしら?」

 

 リィンを迎えたの肩幅の広い大男。

 しかし、口調はどちらかと言えば女のもの。そのことに一瞬、面食らうがリィンは何事もなかったかのように話しかける。

 

「すいません。依頼ではなく、アリオスさんはいらっしゃいますか?」

 

「ごめんなさい。アリオスは今、オフなの……その太刀、もしかして貴方は」

 

「申し遅れました、俺はリィン・シュバルツァー。アリオスさんの弟弟子になります」

 

「ええ、話は聞いているわ……入学試験お疲れ様……

 アタシの名前はミシェル。見ての通り、遊撃士協会・クロスベル支部の受付をさせてもらっているわ……

 フフ……この間来た支援課の坊やたちよりも何倍も頼りになりそうだわ」

 

「恐縮です」

 

 ミシェルの社交辞令にリィンは苦笑を返す。

 

「でも、ごめんなさいね。さっき言った通りアリオスは今日はオフなのよ。今頃病院にシズクちゃん――アリオスの娘さんのお見舞いに行っているはずよ」

 

「そうでしたか」

 

「ええ、少し前まではそれこそ休む暇もないくらいに仕事を詰め込んでいたんだけど、年明けの帝国への出張から帰ってきてから完全にオフな日を作るようになったのよ……

 何か心境の変化でもあったあのかしら?」

 

「残念ですが、特別に変わったことはなかったと思います……

 もしかしたら、兄弟子のカシウス師兄に何か言われたかもしれませんが」

 

「確かに、その人の言葉ならアリオスも流石に無視できないか……」

 

 リィンの答えにミシェルは納得する。

 

「ところでリィン君……突然で悪いけど、貴方遊撃士になるつもりはないかしら?」

 

「遊撃士ですか……すいませんが俺は――」

 

「まあ、ちょっと聞いてもらえるかしら。ってここで話すのもなんだから上で話しましょう」

 

 ミシェルに促され、リィンは二階のテーブルへと案内されて紅茶を差し出される。

 

「さて、何から話そうかしら」

 

 腰を落ち着けたミシェルは頬に手を当てて、考える。

 

「まず、リィン君の話はアタシもいろいろな方面から聞いているわ……

 リベールのクーデター事件に異変の解決の立役者。帝国の御前試合での大立ち回り、それに結社との因縁も浅くないようね」

 

「ええ……」

 

 探るような眼差しにリィンは自然体で頷く。

 

「知っていると思うけど、帝国の遊撃士支部は猟兵の襲撃事件を境に帝国政府から圧力がかかって活動を縮小せざるを得なくなって、一部を除く全ての支部が閉鎖されてしまったわ」

 

「はい。俺もそう聞いています」

 

「だから今アタシたちは帝国内での情報をやり取りできる人が少しでも欲しいの、それに加えて貴方はオリヴァルト皇子とのコネもある……

 彼はその立場上、何かあっても他国の遊撃士を頼ることはできない。でも貴方ならそれができる」

 

「ユミルには大規模な軍がありませんから、有事の際に外部から協力者を呼び込むのは自然ということですか」

 

「あら、話が早くて嬉しいわ……

 加えて言うならば、オリヴァルト皇子の御威光で貴方は有事の際に遊撃士としての活動を許してもらうことも可能かもしれない……

 まあ、結局は何かが起きた時のための口実作りの一つよ……

 ただ申し訳ないのが、貴方にとってメリットがあまりないことくらいかしら」

 

「いえ、仰りたいことは分かります」

 

 要するに、オリビエが《導力停止現象》の前に自分を親衛隊の立場にしたことと同じ。

 何が起きるか分からない未来のために、無駄になるかもしれない手札を用意しておくだけの話。

 

「まあ、そういう事だからあまり深く考えなくて良いわよ。試験が受かったら士官学院に入学するわけだし、資格を取ったら休業してくれて構わないわ……ただ――」

 

「ただ?」

 

「待機要員だけでも良いの、クロスベルにいる間だけでも――ううん、エステルとヨシュアが戻ってくるまでの間だけでも手伝ってくれないかしら、お願い」

 

 両手を合わせて拝んでくるミシェルにリィンは顔を引きつらせる。

 

「えっと……クロスベルは他の支部と比較して忙しいって聞きますが、それ程なんですか?」

 

「ええ……うちの子たちはアリオス以外も粒揃い、エース級の実力だけど依頼の数に対してどうしても人員は不足しているの……

 昨日まではリベールからの援軍の二人がいてくれたんだけど、ちょっと用事で他国へ出張に行っちゃったの」

 

「う……」

 

 その二人が誰なのかすぐに気付き、事情を把握しているだけに原因の一端であるリィンは居たたまれなくなる。

 

「何だったら、クロスベル滞在中の宿にここを使ってくれても構わないから、どうかしら?」

 

「あ、それなら大丈夫です。ローゼンベルグ工房という所に泊めてもらうことになりましたから」

 

「あら? あの頑固なお爺さんのところに……ふーん」

 

 意味深な眼差しでリィンを見つめるミシェルが続けて口を開こうとした、その時――

 

「すいません」

 

 階下から扉を開く音が響き、同時に声が上がる。

 

「はい、ただいま」

 

 ミシェルはすぐにその声に応え、リィンを促して席を立つ。

 一階で待っていたのは事務員姿の青年。

 

「僕はクロスベル市、交通課の自治州で運行しているバスを管理している者なんですが……

 実は《聖ウルスラ医科病院行》のバスにトラブルがあったみたいなんです」

 

「あら、それは大変ね。通信は繋がったのかしら?」

 

「はい……一度、バスの運転手から通信があったんですけど、途中でプツリと切れて応答が無くなってしまったんです」

 

「穏やかじゃないわね。すぐに遊撃士を手配するわ。そっちの方面だと今は――」

 

「ミシェルさん、もしよければ俺が行きましょうか?」

 

「あら? でも貴方クロスベルに来たばかりでしょ? 場所は分かるの?」

 

「午前中、一緒に来た女の子にだいたい案内されました。聖ウルスラ医科病院は確か、駅の向こうの南口の街道の先でしたよね?」

 

「あら流石ね、頼もしい限りだわ」

 

「えっと……こちらの子供は?」

 

 嬉しそうに安堵するミシェルに対して青年は困惑した様子で首を捻る。

 

「ごめんなさい。この子は今朝、うちに来てくれたお手伝いなの……まあ見た目通りの16歳の子供だから不安かもしれないけど、アリオスの弟弟子だから安心してちょうだい」

 

「アリオスさんの弟弟子っ!? そんな人がいたんですか、でもそれなら安心です」

 

 それまでどこか焦りがあった青年はアリオスの弟弟子と聞いただけで安堵する。

 

「それじゃあリィン君、早速で悪いけどお願いね」

 

 そう言ってミシェルはリィンに臨時遊撃士のバッジを差し出した。が、すぐにリィンはそれを受け取ることはできなかった。

 

「どうかした?」

 

「いえ、何でもありません」

 

 まさかまたこのバッジを付けることになると思っていなかったリィンは苦笑してそれを受け取り、以前のように胸に付ける。

 

「それじゃあ行ってきます」

 

 リィンは頷き、踵を返すと青年がそこに言葉を掛ける。

 

「そういえば警察の人が様子を見てくると言っていました……でも、あまり頼りになるような人達には見えなかったんですけど……」

 

「分かりました。とにかく急行します」

 

 そうしてリィンは遊撃士協会を後にしてクロスベルの街を駆け出した。

 

 

 

 

 

 ウルスラ街道に出たリィンは体にわずかな《鬼の力》を漲らせて一気に速度を上げる。

 規則正しく並ぶ導力灯が正常に機能しているかを確認しつつ走り、湖を一望できる街道を抜けた先で争う戦闘音が聞こえて来た。

 

「あれか……」

 

 大型の魔獣が二体、停車している導力バスから引き離すように戦っている四人。

 前衛はトンファーとスタンハルバートを持つ男が二人、後衛には銃と杖を構えた女性と少女。

 彼らが事務員の青年の言っていた警察官なのかもしれないが、統一感のない彼らの装いにリィンは首を傾げる。

 

「それはそれとして、今はまだ手を出さない方がいいか」

 

 少なくても善戦している彼らに今から手を出すのは逆に危険だと判断し、リィンは足を止め、他の魔物がいないか警戒する。

 苦戦しながらも確実に一体目の大型魔獣を倒し、二体目の魔獣に四人は攻撃を集中して一気に仕留める。

 

「ふう……かなり手強かったな」

 

「そうね……ずいぶん大きかったけれどどこから現れたのかしら?」

 

「どうやら森林地帯に棲息する種のようですが、何かのきっかけで街道に出てしまったのでしょう」

 

「ふぅん……珍しいこともあるもんだ」

 

 すっかり気を抜いて話し込む四人のその先にリィンは新たに三体の大型魔獣が森から出てくるのを気配で察する。

 

「まだだっ!」

 

 リィンは警告の言葉を上げる。

 

「え……?」

 

 その声に反応して四人の内、三人がリィンの方を向き、一人は魔獣に気付いてスタンハルバードを構え直す。

 

「二の型《疾風》」

 

 四人の間を一瞬で駆け抜け、魔獣に肉薄してそれぞれに一太刀を浴びせて斬り抜ける。

 

「なっ!? アリオスさん――じゃない?」

 

 ようやく魔獣の存在に気が付いた青年が振り返って太刀を持つリィンをアリオスと間違える。

 

「…………もしかして……」

 

「え……?」

 

「おいおい……」

 

 銀色の髪の女性が訝しみ、水色の髪の少女は目を丸くする。

 そして赤毛の青年はあり得ないものを見たかのように慄く。

 

「リィンさん……どうして……?」

 

「リィン……てめえ生きていたのか?」

 

「え……?」

 

「お……?」

 

 それぞれ口から出て来た名前に水色の少女と赤毛は顔を見合わせる。

 その二人に見覚えがあると感じながら、リィンは周囲の気配を探り、魔獣がいないことを確認して残心を解く。

 

「クロスベル警察の方たちですね? 初めまして、俺は遊撃士協会・クロスベル支部の臨時遊撃士、リィン・シュバルツァーです……

 って……あれ? もしかしてティオちゃんにランドルフさん?」

 

 思いがけない再会にリィンは彼らと同じように目を丸くする。

 

「もしかして交通課の人が言っていた警察の人達はランドルフさん達のことだったんですか?」

 

 それなら先程の助太刀も必要なかったかもしれない。

 シグムントからは団を抜けたと聞いていたとはいえ、その戦闘力はリィンも良く知っている。

 見たところベルゼルガーはないようだが、それを差し引いても彼なら一人で捻り潰すことができただろう。

 

「ランドルフ?」

 

「あー……それなんだがな……」

 

 彼の仲間はその名前に首を傾げ、当のランドルフはバツが悪そうに頭を掻く。

 そんな彼の仕草から複雑な心境があると察して、再会の挨拶をリィンは切り上げる。

 

「まあ、再会の挨拶は後にしましょう。それよりもエンジントラブルですか?」

 

「ああ、そうみたいだ……結晶回路の接続不良が原因らしくて通信機も使えなくなっていたみたいだ」

 

 リィンの提案に乗り、名乗るよりも先にリーダー役らしき青年が頷く。

 

「結晶回路の接続不良か……程度によりますが、それなら直せるかもしれません」

 

 一時期ツァイスで世話になった時に簡単なオーブメントの扱いは教わっている。

 その時の知識と《識》がはまれば修理は可能だろう。

 しかし、不安そうにバスの中からこちらを見ている乗客たちを見てリィンは考える。

 子供や年寄り、それに明らかに顔色が悪い人もいる。

 魔獣の襲撃を受けた動揺も大きいはず。

 この場に留まるのはあまり良い状況とは思えない。

 

「ところでみなさんはこのまま聖ウルスラ医科大学に行かれるんですか?」

 

「え……ええ、警察の任務で病院に向かうところだったの……そこで丁度、この騒ぎに出くわしてしまって」

 

「それじゃあ目的地は同じなんですね。なら少し手伝ってもらっても良いですか?」

 

「手伝う? 悪いけど、俺達はエンジンの修理なんてとても」

 

「いえ、そうではなくて周辺の警戒をお願いします」

 

「え……?」

 

 青年が首を傾げているが、リィンは運転手に声をかけてからバスの後ろに回る。

 

「それじゃあいきますっ!」

 

 声を上げて合図を送り、リィンはバスを両手で押した。

 

「えっ!?」

 

「ちょっと何人乗っていると思っているの? いくら何でも――うそっ!?」

 

 青年と女性が目を見開き、動き出した導力バスに驚く。

 

「このまま俺が押して行きますから、ランドルフさん達は魔獣が寄ってこないように警戒をお願いします」

 

「あ……はい……」

 

 余裕なリィンの言葉に青年は呆然と頷いた。

 その後、導力バスは歩くような速度ではあったが、何事もなく進み、《聖ウルスラ医科病院》に到着した。

 目的地が見えた時点で先行したランドルフにより、体調を崩した病人はスムーズに引き渡される。

 そしてリィンに礼を言って病院へと入っていく乗客の最後の一人を見送り、リィンは改めて四人に名乗る。

 

「俺はリィン・シュバルツァー……本日付で遊撃士協会・クロスベル支部の臨時遊撃士になったばかりです……

 改めて久しぶりですね。ランドルフさん、ティオちゃん」

 

「お、おう……そうだなリベール以来だが……今は俺の事はランディって呼んでくれ」

 

「お久しぶりです、リィンさん。その節は大変お世話になりました」

 

 若干、顔を引きつらせながらもランディとティオはリィンが生きていたことを喜び、再会を喜ぶ。

 

「俺はロイド・バニングスだ。ありがとう、いろいろ助かったよ」

 

「初めまして、エリィ・マグダエルです」

 

 残った二人の青年と女性もそれぞれ名乗り、リィンの苦労を労う。

 もっとも、十数分の間、休まず導力バスを押し続けたというのに疲労した様子が見えないことに困惑する。

 

「えっと……随分と力持ちなんですね」

 

 ランディとティオの知り合いだと言うことよりも、気付けばエリィはそちらの方を先に尋ねていた。

 

「ええ、ちょっとしたズルがあって、人より少し力が強いんです」

 

「少し……?」

 

 ロイドはリィンの答えに顔を引きつらせる。

 

「甘いですよロイドさん、リィンさんの力はこんなものではありません」

 

「そうだぜ、何といってもあと二回は変身できるからな。この意味が分かるな」

 

「へ、変身?」

 

「何を言っているのランディ? 変身なんてあり得ないでしょう」

 

「エリィさん、リィンさんを普通の帝国人だと思ってはいけません。この人はそう――《超帝国人》なんです!」

 

「超帝国人っ!? それはいったい……?」

 

 ティオの言葉に驚いたロイドに、ランディが引き継ぐように答える。

 

「そうだ。こいつはエレボニア帝国に伝わる伝説の戦闘民族――んがっ!」

 

「あいたっ!」

 

「いい加減にしてください」

 

 悪ノリして好き勝手のたまう二人の頭にリィンは拳骨を落とす。

 

「普通の帝国人のリィン・シュバルツァーです。よろしくお願いしますロイドさん、エリィさん」

 

「あ、ああ……」

 

「ええ、よろしく」

 

「けっ……お前みたいな奴が普通なわけないだろ」

 

「何か言いましたか? ランディさん」

 

「いや、何でもない」

 

 拳を握って凄むとランディは慌てて距離を取る。

 そんなランディにリィンは肩を竦める。

 

「とりあえず、俺はこれから導力バスを少し診てみますが、みなさんは仕事でここに来たんですよね?」

 

「ああ、それじゃあ悪いけど失礼するよ。改めてありがとうリィン君」

 

 最後にロイドと握手を交わして、リィンはロイド達――《特務支援課》と別れた。

 

 

 

 

「御苦労だったな」

 

 エンジンの応急処置を終えたところで、リィンの背後から聞き覚えのある声が掛けられた。

 

「アリオスさん。一ヶ月ぶりです」

 

「ああ、ロイド達から話は聞いたが、随分な活躍だったようだな……病院はお前の話で持ちきりだったぞ」

 

「はは、《鬼の力》があるからこそできたことです……確かアリオスさんは娘さんのお見舞いに来ていたんですよね?」

 

「ああ……面会時間が過ぎてなければお前にも会わせたかったがな」

 

「それじゃあ次の機会を楽しみにしておきます」

 

「そうしてくれ……その様子だと仕事を手伝ってくれるようだな」

 

 アリオスはリィンの胸に光る遊撃士のバッジを見て尋ねる。

 

「とりあえず今日の評価次第ですかね……

 エステルさんとヨシュアさんが抜けたのはある意味俺が原因みたいなものですから、その穴埋めくらいはします」

 

「律儀な奴だ……別にお前が責任を感じることではないだろうに」

 

「まあ……性分みたいなものです」

 

「そうか……」

 

 リィンの答えにアリオスは苦笑する。

 

「リィンよ。一つ勝負をしないか?」

 

「勝負ですか?」

 

 アリオスから出て来た意外な言葉にリィンは首を傾げる。

 

「ああ……内容は至って簡単な、いわゆる鬼ごっこだ。ここからクロスベルに着くまでの間に一度でも俺に触れることができたのならお前の勝ち……

 もっとも、賞品を得られるかはお前次第だが、そしてお前が負けたなら素直にギルドの仕事を手伝ってもらおうか」

 

「それは……」

 

 アリオスの申し出の意味をリィンは察する。

 《風の剣聖》と呼ばれる彼が修めた八葉一刀流は速さの《二の型》。

 言外にその速さで勝ってみろとの言葉にリィンは意識を戦闘のものへと切り替える。

 

「願ってもない申し出です。その勝負受けさせてもらいます」

 

「そうか……ならば、いざ尋常に勝負っ!」

 

 アリオスの言葉を合図にその場から二人の剣士の姿が掻き消える。

 まだ夕暮れには早いウルスラ街道を二人の八葉剣士が物凄い速度で駆け抜けるのだった。

 

 

 




 この後のIF

ロイド
「リィン・シュバルツァーか……
 俺はカルバートにいたからあまり帝国の出来事は知る機会はなかったけど、いろんな噂がある人間みたいだな」

エリィ
「そうね……
 猟兵の百人斬り、浮遊都市から生還した不死身の少年、オリヴァルト皇子の懐刀、リベール王太女やエレボニア皇女との秘密の関係、最年少の《剣聖》に他にもたくさん……
 なんか現実味がないけど、どれが本当なのかしら?」

ティオ
「そんなの決まっています……」

ランディ
「だな……どれが真実かっていうなら――ぜんぶだ」



いつかのクロスベルIF

ユウナ
「良いですか。クロスベルの遊撃士は本当にすごかったんだからね……
 私の弟と妹から聞いた話なんですけど、エンジントラブルで止まっちゃった導力バスを乗客が乗ったまま後ろから一人で押して病院まで送り届けたんですから……
 帝国人には真似できないでしょう?」

アルティナ
「ユウナさん、それについては大きな語弊があります……
 当時のクロスベルにはカルバートやリベールから来ていた遊撃士たちや帝国ギルドが閉鎖されたことでそちらに流れた帝国人の遊撃士もいました……
 なのでクロスベル人がすごいということにはならないと思います……
 それに正直、信憑性がない話だと思います」

クルト
「だけど、導力バスを一人でこの距離を押し切るなんてすごいのは確かだな」

リィン
「はは、押したって言っても最後の少しだけだよ」

ユウナ
「………………え?」


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