(完結)閃の軌跡0   作:アルカンシェル

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127話 亡霊

 

 クロスベル大聖堂の裏にある共同墓地。

 異様な雰囲気の漂うその場所にリィンは踏み入ることに躊躇する。

 

「墓地ってこんなものだったか?」

 

「クロスベルは帝国の霊脈と共和国の霊脈が重なる特別な場ということもあるけど、生半可に知識がついてしまったことの弊害ね……

 あとは時間帯の問題ね。今は逢魔が時、昼と夜の移り変わりのこの時刻は特にそういうものが現れ易い時間帯だから」

 

「なるほど……」

 

 傍らに浮かぶ小さな人形のルフィナにリィンは頷く。

 

「ここを調べるなら日中の方が良いわね。今のリィン君だと下手な霊視ができるせいで亡霊を呼び寄せちゃうだけだから……

 それはともかく少し歩いてみましょうか?」

 

「ルフィナさん……言っていることがおかしくないですか?」

 

「何事も経験は大切よ。この上位三属性が働く幽世に近い特異点を肌で感じるチャンスなんて滅多にないんだから」

 

「スパルタだなぁ……」

 

 先日の守護騎士のことを思い出しながら、先導するように飛ぶ人形の後を追って、リィンは共同墓地に踏み込んだ。

 

「ところでその身体の調子はどうですか?」

 

「ええ、全く問題ないわ……まるで本当の体みたいよ。ヨルグマイスターには感謝しないとね」

 

 見方によっては小さな妖精にも見えるルフィナは手を伸ばして、改めてその身体を褒める。

 それは先日のみっしぃ事件の切っ掛けになってしまった詫びとしてヨルグがリィンに作ってくれた人形。

 技術交換の名目で昔《パテル=マテル》を取られて押し付けられた、倉庫で埃を被っていた《戦術殻》。

 使われている金属や陶器のような質感でありながら柔軟性を持つ不思議な材質を使って、ヨルグは人形を作ってくれた。

 もっともこれは試作段階のもので、《鋼の意志》用の特別製も作ってくれることになっている。

 

「すいません。できればもっと大きな体にして上げたかったんですが、今の《聖痕》の出力だと戦闘力を確保するとそれが限界で」

 

「気にしなくていいわよ。中々に楽しいものよ。空を飛べるというのも……

 それにこのサイズの法剣まで作って貰えたんだから、我儘を言ったら罰が当たるわ」

 

 本当に楽しそうにルフィナはリィンの周りを飛ぶ。

 さらには遊ぶようにステルスモードを起動して、消えたり現れたりを繰り返す。

 

「それにしても本当に空気が悪いですね……

 ユミルの共同墓地はここまでよどんでいなかったはずなのに」

 

「さっきも言ったけど、土地柄の問題ね……

 帝国と共和国の霊脈が絡み合う土地だから特別に淀み易いというのもあるけど、社会問題の方もそれに拍車を掛けているわ」

 

「社会問題ですか?」

 

「クロスベルの問題は知っているでしょ?

 帝国と共和国がこのクロスベルで行っている《暗闘》や宗主国であることを理由にクロスベルの人への理不尽な扱い……

 それらで亡くなった人たちの無念が折り重なって、こんな場所になってしまったのよ……

 クロスベルに限らず、霊脈が集中するような場所では特に起こりやすい現象だからちゃんとこの空気は覚えておきなさい」

 

「分かりました」

 

 視界の隅で徘徊する黒い影を横目にしながらリィンはルフィナの言葉に頷く。

 

「ここは大司教が優秀な方だからまだ良い方よ。むしろクロスベルだということを考えるとよく頑張ってるわ……

 酷い所だと手入れを忘れて夜な夜な霊障を起こして、果てには異界化した例だってあるんだから」

 

「そ、そうなんですか……」

 

 《影の国》で亡者と戦った経験もあって動揺は少ないが、周囲の景色は精神衛生上あまりよろしくない。

 

「こういう人達はどうなるんですか?」

 

「煉獄の亡者と同じね。彼らは無念を抱えてこの地に留まっているけど、時間が経てば生前の記憶を失って現世への執着を無くして女神の下に旅立つと言われているわ」

 

「それはよかった」

 

 永遠にこの墓地の中を彷徨うのではないと分かってリィンは安堵する。

 

「やっぱりこういう幽霊と戦うのは星杯騎士の役割なんですか?」

 

「ええ……でも本当はそうなる前に対処するのが一番なんだけどね」

 

「何事も起きないことが一番ですからね――ん?」

 

「どうかした? もしかしてもう見つかったの?」

 

「いえ、違います」

 

 流石にここまで周りに気配が充満している場で、墓石に刻まれた名前を意識し切れない。

 リィンが感じたのは《聖痕》が疼くという奇妙な感覚。

 

「呼ばれている?」

 

 何かが引き合うような力を感じる方向にリィンは足を向ける。

 誘われるようにリィンとルフィナは亡者になっていない霊魂を掻き分け、墓地の奥まった場所に位置している墓石の前に男の幽霊がぼんやりとした顔で座り込んでいた。

 

 

 

 

「ガイ・バニングス……三年前に殉職したクロスベル警察の捜査一課の剛腕な捜査官か」

 

 翌日、彼の墓標に刻まれた没年から図書館にある過去の記事をリィンは見つけた。

 

「犯人は不明。クロスベル警察の必死の捜査にも関わらず、迷宮入りとなったか……」

 

「……ルフィナさん」

 

 ステルスモードを解除して、肩に座って記事を読み上げるルフィナにリィンは注意する。

 

「分かっているわよ……でも、今は周りに誰もいないんだから構わないでしょ?」

 

「まあ、そうですけど」

 

 リィンも一応は周囲の気配には気を配っている。

 奥まった場所の、一人用のテーブルは周りの目から死角になっているが、それでも絶対ではない。

 

「ルフィナさんはどう思いますか?」

 

「どうも何も、こんな記事だけじゃなんとも言えないわね……

 警察の身内が殺害された事件にも関わらず犯人不明のまま終わってしまって、警察の不甲斐なさを責める内容ばかりで全く実のない内容ばかり……

 報道陣のレベルもこれじゃあ高が知れるわね」

 

「辛口な評価ですね……」

 

「警察が不甲斐ないなんて書いてあるけどそれは違うわ……

 帝国と共和国に挟まれて《暗闘》の舞台となっているこの地で一定の秩序を保つことがどれだけ凄いことなのか、市民の大半は分かっていないでしょうね」

 

 それをこの短い滞在の期間と、過去の事件から読み取れるルフィナにリィンは改めて彼女の凄さを実感する。

 

「遊撃士がいるから大丈夫なんて言っているのが何よりの証拠よ。彼らは規約で『国家権力に対する不干渉』が義務付けられている……

 できることは警察よりも少ないでしょうけど、フットワークの軽さからその働きが目立っているだけに過ぎないのよ」

 

「結局は軍と遊撃士のメリット、デメリットというのはここでも変わらないということですね」

 

「そういうものよ……

 それで話を戻すけど、リィン君は彼のことをどうするつもりなのかしら?」

 

「それは……」

 

 虚ろな亡者たちの中でまだ形を残している亡霊の男。

 しかし生前の記憶は薄れ、自分の名前さえも忘却し、このクロスベルに降り積もる負の怨念の欠片になるのを待つだけになっている。

 

「助けることは――」

 

「できないわ」

 

 最後まで言わせずにルフィナは否定する。

 

「そもそも助ける意味がないわ。私の時とは状況が違い過ぎる……

 死んで忘我の果てに新たな命となるのは自然のサイクルの一つ、亡者として現世に悪影響を及ぼす可能性もない。だからリィン君にできることはないの」

 

「それでも――」

 

「諦めなさい。それとも誰彼かまわず背負い込んで一番気に掛けているあの子の手を掴めなくなっても良いの?」

 

「っ……」

 

 ルフィナの指摘にリィンは押し黙る。

 

「…………ルフィナさん。もしかしてあの時間に墓地に行かせたのはわざとですか?」

 

「否定はしないわ」

 

 その言葉にリィンはため息を吐く。

 言われなくても分かっている。

 《人工聖痕》の可能性はまだ測り切れていない。

 その高い汎用性を利用すれば多くのことができるが決して万能ではない。

 今回のことで言えば、例えガイ・バニングスを箱庭に招いたとしても彼の忘我の進行を止められるわけではない。

 例え力があってもできることとできないことがある。

 それを忘れて何もかもに手を伸ばして、本当に掴むべきものを取りこぼすことになれば目も当てられない。

 仮にガイ・バニングスに手を差し伸べたら、次は次はと際限なく手を伸ばしてしまうのではないかと指摘されれば否定できない。

 

「リィン君が気に病むことではないのよ。世界は貴方がいなくても回るものなんだから」

 

「それを貴女に言われると説得力がありますね」

 

「ふふ、これでも一度は死んだ身だもの」

 

 ルフィナは不敵な笑みを浮かべて、締めくくる。

 

「それにあれは亡霊と言うよりも、本体から零れ落ちた残留思念だからそもそも救えるものではないのよ」

 

「亡霊と残留思念って違いはあるんですか?」

 

「その辺の説明はまた今度にしましょう。とにかくリィン君にできることはせいぜい安らかに眠ってくださいって花を供えるくらいで十分なのよ」

 

「そうですか……そうですよね」

 

 元々面識があったわけじゃない。

 疼いた《聖痕》ももう落ち着いている。リィンにはこれ以上、彼のことを気に掛ける理由はないはずだった。

 しかし――

 

「っ――」

 

 人の気配にルフィナは素早くステルスモードを起動してその身を隠す。

 

「あれ? もしかしてリィン君か?」

 

「ロイドさん……どうして図書館に? それに御一人のようですが?」

 

「ああ、実は延滞本の回収の依頼を受けてな。市内にそれぞれ分担して回っていたんだ……そっちも一人だったのかい?」

 

「ええ。そうですけど、どうかしましたか?」

 

「いや……何か不思議な気配を感じた気がしてね」

 

 異様に鋭いロイドの嗅覚にリィンはポーカーフェイスのまま舌を巻く。

 

「そう言うリィン君は図書館で何を――えっ……?」

 

 不躾に覗き込んだわけではないのだが、チラリと見えた記事の大きな見出しにロイドは目を疑った。

 

「どうしてリィン君が兄貴の記事を調べているんだ……君はあの事件のことを何か知っているのかっ!」

 

「ちょ!? ロイドさん、ここは図書館ですよ」

 

 普段の控えめで大人しい雰囲気のロイドはリィンの肩を掴んで声を荒げる。

 そんなロイドを宥め、リィンはもしかしてと思っていたことを尋ねる。

 

「やっぱりガイ・バニングスはロイドさんのお兄さんだったんですね」

 

「ああ、そうだ。取り乱してすまない。それでリィン君は兄貴のことをどこで知ったんだ?」

 

 ロイドの質問にリィンは考え込み、恐る恐る尋ねる。

 

「実はガイ・バニングスの幽霊に会ったって言ったらどうしますか?」

 

「本当なのか? いったい何処で?」

 

「え……信じてくれるんですか?」

 

 言っておいて何だが、まさか迷いもせずに受け入れたロイドにリィンは面を食らう。

 

「ああ、リィン君はそんな嘘を吐くような人じゃないって分かっているからな」

 

 全幅の信頼を寄せる眼差しはどこかエステルを思い出させる。

 

「ロイドさん……人を信じ過ぎるのは警察官としてどうかと思いますが」

 

「はは、これでもちゃんと人を見て判断しているつもりだよ。それで――」

 

「はい、お話します。でも取り合えずここから出ましょう」

 

 睨んでくる周囲の図書館利用者たちに頭を下げて、リィンはテーブルの上を片付け始めた。

 

 

 

 

「それでリィン君、さっきの話なんだけど」

 

 その後、リィンとロイドは特務支援課の三人と合流し、彼らの本拠に戻らずに東通りの《龍老飯店》で遅めの昼食を摂った。

 リィンはその間にクルトとクリスの近況を尋ねたりと一通りの情報交換をした後にロイドは落ち着いた様子でその話題を尋ねた。

 

「ロイド、さっきの話って?」

 

「俺がガイ・バニングスさんの幽霊を見たって話です」

 

「………………え……?」

 

 聞き返したエリィは事も無げに答えた言葉に固まった。

 

「場所はクロスベル大聖堂の裏の共同墓地、彼の墓石のところです……

 他にも気配はありましたが、何故か彼とだけ波長があったみたいで見ることができたんです」

 

「他にも気配……」

 

「エリィさん、どうかしましたか?」

 

「何だお嬢、もしかして幽霊が怖いのか?」

 

 身震いするエリィとそれを気遣うティオとからかうランディ達を横目に会話は続く。

 

「そうか……それで兄貴と何か話したのか?」

 

「いえ、期待させてしまって申し訳ありませんが、すでにガイさんは自我のほとんどを忘却していたので会話をすることはできませんでした」

 

「そうなのか?」

 

「専門家によると死者としては普通のことみたいです……

 このまま現世に縛られたとしても、教会の大司教が適切に対処してくれるはずです」

 

「それを聞いて一安心かな」

 

「ところでガイさんの心残りか想念が残る依り代について心当たりはありませんか?」

 

「それは……あるに決まっている」

 

 ロイドはそれまで溜め込んでいたものを吐き出すように顔を歪めた。

 

「兄貴が追っていた事件、殺された無念、それにセシル姉との結婚だって控えていたんだ」

 

 絞り出すように紡がれるやるせない憤りに満ちた言葉にリィンは申し訳なくなる。

 

「すみません、不躾でしたね」

 

「いや……気にしないでくれ」

 

 深呼吸をして心を落ち着けたロイドはリィンに尋ねる。

 

「なあリィン君。兄貴とどうにかして会うことはできないかな?」

 

「それは難しいと思います。さっきも言った通り、何故かガイさんと波長が合っただけで、俺も他の霊魂までちゃんと見れるわけじゃないですから」

 

「いや……でも、俺かセシル姉がその場に行けば何か反応があるかもしれない。通訳でもいい、俺に兄貴と話をさせてくれ、この通りだ!」

 

「ロイドさん……」

 

 真摯に頭を下げるロイドにリィンは何とかして上げたくなる。

 

『ルフィナさん?』

 

『あまり推奨はできないわね……

 縁がある人の言葉は確かに刺激になるけど、あそこまで忘我が進んでしまっていると暴走に傾く可能性もあるわ。でもそうね……』

 

 含みのある言葉にリィンは首を傾げる。

 

『ロイド君をガイ・バニングスと会わせることは可能かもしれないわ』

 

「本当ですか?」

 

「えっ……リィン君?」

 

 思わず口で聞き返してしまった言葉にロイドは面を食らう。

 

「あ、いや……もしかするとロイドさんとガイさんを会わせる方法があるかもしれないって」

 

「何だ、その歯切れの悪い言い方は?」

 

「すいません。ここで説明するのはちょっと……ただその気があるのなら、今夜の丑三つ時に共同墓地に来てください」

 

「う、丑三つ時に墓地っ!?」

 

 リィンの提案にエリィは顔を蒼くして悲鳴を上げる。

 

「エリィさん……やっぱり……」

 

「いや、これは俺個人の問題だ……エリィ達が付き合う必要はない」

 

「おいおいロイド、水臭いこと言ってんじゃねえよ」

 

「そうですね。わたしも協力するのは吝かではありません」

 

 しかし腰が退けているエリィに対してランディとティオの二人は乗り気な様子だった。

 

「ちょ、二人とも!?」

 

「幽霊っていうのもそうだが、何よりもロイドの兄貴っていうのが気になるからな」

 

「ランディさんと同じです。それにそう言った感応力に関してならわたしも何かできるかもしれません。それに――」

 

「それに?」

 

「……いえ、何でもありません」

 

 ティオは首を振って言いかけた言葉を呑み込む。

 

「わ……私は……その……」

 

「だから別に無理に付き合わなくても良いんだけど」

 

「そうだぞお嬢、気が乗らないならやめておけって完全に時間外労働なんだからな」

 

「まあ、夜の墓地は独特な雰囲気がありますから忌避感を持つのは当然かと思います」

 

「べ、別に幽霊が怖いとかそういうことじゃなくて、私だけ仲間外れみたいで――あ……」

 

「ほほう」

 

 エリィの漏らした言葉にランディは面白そうに笑みを浮かべる。

 

「そうだよな。仲間外れは良くないよな。それじゃあ今夜は親睦を深めるために肝試しと洒落込むとしようじゃないか」

 

「うーー分かった、分かりました! 私も行きます、行きますとも!」

 

「エリィさん、ヤケクソですね」

 

「やれやれ、無茶しやがって」

 

「煽った貴方が何を言っているんですか?」

 

 肩を竦めるランディをリィンは半眼で睨み、言ってから大きなため息を吐くエリィに同情するのだった。

 

「そういえばリィン君はどうして墓地に?」

 

 そんな仲間たちにロイドは苦笑を浮かべて疑問を口にする。

 

「知り合いのお墓がないか探しに行ったんです。でも昨日の夕方はそれを探すどころじゃなくて」

 

「知り合いの? そんなの教会に問い合わせるか、墓守の人に尋ねればすぐにいいんじゃないか?」

 

「個人的な理由ですし、それを説明できませんから尋ねるのは無理ですよ」

 

「だけどあの墓地を一人で見て回るのは時間が掛かるだろ……もしかして、これからそのお墓を探しに墓地へ行くのかい?」

 

「いえ、今日はこの後遊撃士協会の方に顔を出すつもりです」

 

「それじゃあなおの事、探す時間なんてないじゃないか……もしよかったら俺も協力しようか?」

 

「お気持ちだけ有難く受け取っておきます……その子と誰にも名前は教えないって約束しているんです」

 

「その子って……ロイドの兄貴といい、お前ってそんなに霊媒体質だったのか?」

 

「あはは……」

 

 その子のことも幽霊と勘違いしたランディの呆れた指摘をリィンは笑って誤魔化す。

 

「俺のことはともかく、どうしますかロイドさん?

 例え会うことができたとしてもロイドさんが望むようなやり取りができる保証はできませんが……

 それにすぐにガイさんが消滅することもないでしょうから、気持ちが落ち着いてから日を改めた方がいいかもしれません」

 

 改めて聞き返すリィンにロイドは首を横に振った。

 

「いや……今夜行かせてもらう……リィン君、よろしく頼む」

 

 そう言ってロイドは頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 夜。

 レンが寝ていることを確認し、ヨルグには一言断ってからリィンは工房を出た。

 

「お待たせしました」

 

 クロスベル大聖堂に続く階段の下にはすでに特務支援課の四人がリィンの到着を待っていた。

 

「いや、俺達もちょうど今来たところだ……ってリィン君、それは?」

 

 応えたロイドはリィンが手に持った三色の花の花束に首を傾げる。

 

「こんな夜遅くに尋ねるんです。お墓参りというわけじゃないですけど、これくらいは礼儀かと思って」

 

「そうか……考えてみればそうだよな」

 

 気が逸って何も用意していなかったことをロイドは恥じる。

 

「無理もないですよ……取り合えず行きますけど、大丈夫ですかエリィさん?」

 

「だ……だい……大丈夫……よ」

 

 明らかによくない顔色でエリィは寒そうに身体を小さくして震えている。

 

「エリィ……やっぱり今からでも戻った方が良いんじゃないか?」

 

「大丈夫だから早く行きましょうっ!」

 

 ヤケになって叫ぶエリィに睨まれてリィンは肩を竦める。

 

「はははっ! 気合入っているじゃねえかお嬢」

 

「それ程までに楽しみだったんですかエリィさん」

 

 明らかにやせ我慢だと見て分かるエリィをランディとティオは息を合わせて囃し立てる。

 そんな二人にリィンは苦笑した。

 

「二人とも、リベールで会った時と比べて随分と変わりましたね」

 

「あー……それは……まあな……」

 

「そうでしょうか? わたしはあまり変わってないと思いますが」

 

「少なくても体力はついたんじゃないか? もう背負って上げる必要はなさそうじゃないか」

 

「ほほう、その話詳しく――」

 

「説明しなくていいです。それよりランディさんの恥ずかしい話はないんですか?」

 

「そうだな……アイナさんっていうリベールの遊撃士協会の女の人に――」

 

「良し! この話はやめよう。なっなっ」

 

 トラウマを刺激されたのか、ランディは体を震わせて話題を切る。

 

「そうね。今はやめておきましょう……後でゆっくりと聞かせてくれるかしら?」

 

 先程まで弄られていたエリィは綺麗な笑顔で後で二人のからかうネタを教えてもらうと決意する。

 

「三人共、ふざけるなら帰ってくれないか?」

 

 しかし、和やかな空気にロイドは彼らしくない言葉を発した。

 

「ロイド……気持ちは分かるがちょっとは落ち着け」

 

 そんなロイドの肩に腕を回してランディは宥める。

 

「俺は落ち着いているっ!」

 

「全然そう見えねえって……兄貴を殺した犯人が誰なのか知るチャンスなのかもしれないが、リィンが言ってただろう?

 兄貴の幽霊はまともに話をできる状態じゃないって、ロイドお前は奇蹟のようなこの再会にそんなしかめっ面で会うつもりかなのか?」

 

「俺は……」

 

「やはり日を改めてもらった方が良いんじゃないですかロイドさん?」

 

「いや……」

 

 ティオの言葉にロイドは深呼吸をしてから答える。

 

「大丈夫だ。むしろ時間を置いた方が決心が鈍りそうだから早く行こう」

 

 そう言うロイドの顔は先程よりも多少柔らかくなっていた。

 

「はは……仲が良いんですね」

 

 そんな彼らのやり取りにリィンは何処かリベールで出会った仲間たちのことを思い出すのだった。

 

 

 

 

 

 墓地に踏み込んだ瞬間に変わったと分かる気配にエリィが声を殺しながら小さな悲鳴を上げる。

 そして道中はずっとロイドの背中に張り付いていた。

 背中に感じる柔らかな感触に先程までの焦燥に満ちていた彼の表情は何処に行ったのか、別の意味で緊張した顔になっている。

 そんなロイドを血涙を流しそうな表情でランディが羨ましがり、ティオは冷めた視線を二人に送る。

 

「ロイドさん、ここがガイさんのお墓ですか?」

 

「ああ、そうだ」

 

 ティオの絶対零度の言葉にロイドは頷き、目を凝らす。

 しかし、どれだけ凝視してもロイドにはガイの姿は見えなかった。

 

「ティオは分かるか?」

 

「いえ……周りの気配もあってわたしには判別できません」

 

「そうか……」

 

 残念そうに首を横に振るティオにロイドは短く言葉を返して、リィンを見る。

 

「はい……そこにいます」

 

 その目にリィンは首肯する。

 ガイ・バニングスの亡霊は昨日の夕方と同じように墓石に背中を預けるようにして虚空を空ろな目で見上げていた。

 

「それでどうするつもりなんだ?」

 

「まずそのガイさんの亡霊を俺が取り込みます」

 

「え……?」

 

「その後、想念が強い影響を与える場に移動して残留思念とも言えるガイさんの想念を増幅します」

 

「それは大丈夫なのか?」

 

「理論上はできるはずです」

 

「いや……そうじゃなくて幽霊に憑りつかれる君は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫ですよ。他人に体を乗っ取られるのもこれが初めてというわけではないですから……

 それにある程度は自由にさせますが、主導権の大本は自分が握ったままにしておきますから安心してください」

 

「そ、そうか……」

 

 幽霊に憑かれる機会がそんなにあるんだなあ、とロイドは自分の常識を少しだけ疑ってしまう。

 

「一応、こっちでも制御するつもりですが、もしかしたら暴れる可能性もありますから気を付けてくださいね」

 

「もしそうなったらどうしたらいいんだ?」

 

「弱らせて時間を稼いでもらえば何とかできると思います。後は彼女から聞いてください。ルフィナさん」

 

 リィンが虚空に向かって呼びかけると、何処からともなく小さな人形が現れる。

 

「で、でたっ!?」

 

「落ち着けお嬢。どうやら幽霊とは別物みたいだぞ」

 

「う~何でみんなそんなに落ち着いているのよ」

 

 涙目になってエリィは愚図る。

 

「フフ……初めまして、私はローゼンベルグ工房製人型戦術殻のルフィナ・アルジェント……

 今はこんな姿をしているけど、生前は七耀教会のシスターをしていた者よ」

 

「やっぱり幽霊じゃないっ!」

 

「エリィ、落ち着いてくれ! む――体を押し付けないでくれっ!」

 

「……………………」

 

「けっ」

 

 強く抱き付くエリィと顔を赤くして騒ぐロイドにティオとランディはそれぞれ軽蔑の眼差しを送る。

 

「仲が良いことは分かったけど、最後に確認をしたいことがあるんだけどいいかしら、ロイド君?」

 

「は、はい」

 

 ルフィナに言葉を投げかけられてロイドは思わず背筋を伸ばす。

 

「降霊術は決して、貴方に感動の再会を与えるものではありません……

 今回は亡者ではなく残留思念なのでそこまで大事にはならないと思いますが、場合によってはただ貴方とお兄さんを苦しめるだけの結果に終わるかもしれません……

 おそらく十中八九貴方が欲している答えを得ることはないでしょう……それでもやりますか?」

 

 真っ直ぐに見つめてくるルフィナと名乗った人形の目にロイドは息を呑む。

 

「俺は……」

 

 降って湧いたチャンスに落ち着きを無くしていた心が急激に冷める。

 死者と言葉を交わすことができるなど、それこそあり得ない奇蹟。

 その奇蹟に兄の婚約者だったセシルを呼ばなかったのは、何故なのかロイドにもよく分からなかった。

 

「貴方達も興味本位で関わるのはお勧めしないわよ」

 

 そしてルフィナの矛先はランディ達にも向けられる。

 それまで何処か遊び半分、好奇心で来ていたランディ達は黙り込む。

 

「そうね……ここまで付いてきておいて今更だけど、墓荒らしみたいなものだし……」

 

「確かに少し不謹慎だったな」

 

 ルフィナの指摘にエリィとランディはバツが悪そうに口ごもる。

 

「わたしは……興味本位ではありません……」

 

「ティオ?」

 

「理由はまだ詳しく話せませんがガイさんに一目でも会いたいと思っています」

 

 普段は主張の薄いティオの意志の篭った言葉に一同は目を丸くする。

 

「ですが、御家族のロイドさんを差し置いてまで会おうとは思っていません」

 

「だそうだぞ、ロイド」

 

 三人はロイドに向き直って彼の答えを待つ。

 改めて自分の中の思いに向き直る。

 

「確かに……そこには何の答えも意味もないかもしれない……だけど……それでも俺は……」

 

 ロイドは顔を上げて真っ直ぐにルフィナを見返した。

 

「ただ兄貴に会えるなら会いたい……それだけじゃダメですか?」

 

 恐る恐る尋ねられた言葉にルフィナは目を伏せる。

 

「覚悟というにはあまりにも脆弱……ですが、これ以上部外者がとやかく言うのは無粋でしょう」

 

「ありがとうございます、ルフィナさん」

 

 了承の言葉にロイドは頭を下げ、そしてリィンにも同じように頭を下げる。

 

「リィン君もありがとう」

 

「御礼なら全部が終わってからにしてください。それに貴方達にはクルトを預かってもらっている恩がありますから」

 

 そう言って、リィンはルフィナを促す。

 

「それじゃあリィン君、手順を指示するからその通りにやってもらえるかしら」

 

「はい」

 

 ルフィナに指示をされリィンは墓の前に膝を着くと花束を置き、ロイド達の視点からは墓に一言断ってから墓石に触れる。

 

「あ……」

 

 ティオが最初に反応する。

 そして遅れてロイド達も気が付く、墓地に漂っていた異様な気配が黒い風となってリィンの中に吸い込まれていく。

 

「貴方達はこれを持ってくれるかしら?」

 

 そう言って宙に浮かべて差し出された方石をロイド達は手を合わせて持つ。

 

「それじゃあ、移動するわよ」

 

 次の瞬間、ロイド達は白い光に視界を覆われ、気付けば何処とも分からない工事現場にいた。

 

「ここは……?」

 

「クロスベルの何処かみたいだけど……」

 

「しかもいつの間にか雨が降ってやがる……」

 

「…………信じられないですが、ここはクロスベルであって、クロスベルではないようです」

 

「ティオすけそれはどういう意味だ?」

 

「うまく説明できませんが、そうとしか言えないんです」

 

 困惑した様子のティオに三人は首を捻る。

 

「ルフィナさん……」

 

「説明は後にしましょう。それよりも――」

 

 厳しい口調で前を見据えるルフィナの視線を追ってロイド達が見たのは、黒い靄に憑りつかれて苦しそうに蹲るリィンの姿だった。

 

「まさか……リィン君程の人間が本当に憑りつかれるのか?」

 

「その言い方は間違っているわよ……

 さっきも言った通り、リィン君の霊的な抵抗力をあえて落としているから憑りつかれているだけで、本当ならあれくらいは簡単に跳ね除けれるわよ」

 

 リィンへの信頼が読み取れるルフィナは黒い靄がリィンを覆い隠したにも関わらず、動じた気配はない。

 

「どうやら構えた方が良いみたいね」

 

「え……?」

 

 黒い靄の塊でしかなかったそれはリィンを触媒にする形で別の姿に変容する。

 

「あ……」

 

 その変容した姿にロイドは思わず涙をこぼす。

 

「兄貴……」

 

 唐突にいなくなってしまった家族がそこにいた。

 

「あに……兄ちゃ――」

 

「待てロイドッ!」

 

 無防備に近付こうとするロイドの首根っこをランディが掴んで止める。

 

「どうやら奴さんはやる気みたいだぞ」

 

 黒い靄はガイとなり、そしてロイドと同じ武器のトンファーをその手に顕現する。

 

「オオオオオオオオオオオオオッ!」

 

 まるで人間性を忘れ、獣のようにガイは叫ぶ。

 

「っ……」

 

 トンファーを構えるガイにロイドは思わず尻込みする。

 

「しゃんとしろロイドッ!」

 

 そんなロイドの背中をランディが叩いた。

 

「そうよお兄さんの《壁》を乗り越えるチャンスよロイド」

 

 エリィが導力銃を構えて激励する。

 

「見せて上げましょうロイドさん。わたしたちがどれだけ成長したか」

 

 涙ぐみながらティオに促される。

 

「…………ああ」

 

 そんな彼らの言葉にロイドは万感の思いを込めて頷き、トンファーを構えた。

 

「いくぞ兄貴っ!」

 

 その号令をもって、特務支援課と亡霊の戦いは開始された。

 

 

 

 

 ガイ・バニングスは強かった。

 彼が修めているのはロイドと同じ警察学校で習ったトンファーを使った制圧術。

 武術において、戦いにおいてはその道のプロに一歩も二歩も劣る。一流にはなれない二流。

 もっとも、発足して間もなく新米ばかりの特務支援課を圧倒するには十分な力だった。

 有利な点は数の利しかない。

 

「ちっ……なんつうパワーしてんだよ」

 

 あわやという一撃をランディが庇って受け止める。

 

「こっちよっ!」

 

 エリィの射撃がガイの気を逸らす。

 

「アブソリュート・ゼロッ!」

 

 ティオの強烈な一撃を受けたにも関わらず、ガイは怯まない。

 

「ああ……くそ……」

 

 思わずロイドは呻く。だがそれは悪態ではなかった。

 戦況は劣勢。

 いつ食い千切られてもおかしくない薄氷の上にいるかのような緊張感の中で、ロイドの胸にあるのは危機感よりもどうしようもない幸福感だった。

 一撃一撃が重い。

 空ろな魂だけの状態にも関わらず、トンファーから繰り出される一撃には魂が宿っているように重く響く。

 

「兄貴……」

 

 ロイドがこうしてガイと手合わせをするのは初めてだった。

 人伝にしか聞いたことのない兄の雄姿。

 それを少しでも多く、少しでも長くその目に焼き付けるのだとばかりにロイドは必死に食い下がる。

 

「ロイド……」

 

 時間が経つに連れて上がっていくギアの段階。

 目まぐるしく変わる攻守にエリィは援護を断念して、呆然とした様子で導力銃を下ろした。

 

「はは……まさかここで一皮剥けちまうとはな」

 

 同じく、ガイの攻撃を防ぎロイドに攻撃の機会を作ることに専念していたランディはガイに引き上げられる形で成長してく彼の姿に援護の手を止める。

 

「ガイさん……ロイドさん……」

 

 そしてティオもまた加速していく二人の戦いに魔導杖を下ろす。

 

 ――なあ兄貴、俺……警察官になったんだ……

 

 語り掛けるようにロイドは打ち込む。

 

 ――大変な部署に配属されたけど、頼れる仲間ができたんだ……

 

 吹き飛ばされそうな程の一撃を受け止めて歯を食いしばる。

 

「うおおおおおおっ!」

 

 ガイは全てにおいてロイドを上回っている。

 警察学校を出たばかりのロイドでは、狂暴化していることを差し引いても敵う相手ではない。

 

「それでも――っ!」

 

 ただ意志だけでロイドは張り合う。

 出来ることならこの時間がいつまでも続けばいいと思う。

 しかし、そんな願いは叶わない。

 不意に何の前触れもなくガイの動きが硬直した。

 

「だあああああああっ!」

 

 その無防備なガイにロイドは左右のトンファーを連続で叩き込み、たたらを踏んで後退るガイに青い虎のオーラを纏って突撃する。

 

「タイガーチャージッ!」

 

 ロイドの全身全霊を掛けたその一撃はガイを捉えた。

 

 

 

 

「誰だが知らないが、世話を掛けちまったみたいだな」

 

 ロイドの一撃を受けて膝を着いたガイはそれまでの狂気に満ちた目に理性を宿して言葉を紡いだ。

 

「あ……」

 

 数年ぶりに聞いた彼の声にロイドは思わず泣きそうになる。

 リィンが説明したようにガイはロイドが誰だったかも分かっていない。

 だから込み上げてくる涙をぐっと堪えてロイドはガイの言葉に応じた。

 

「いえ……むしろ責められるべきは俺の方です……

 貴方の眠りを妨げてしまってすいませんでした」

 

「別に構いやしないが、悪いな生きていた時の事はもうほとんど思い出せなくてね……何か聞きたかったことがあったんだろうが期待には応えられそうにない。悪いな」

 

「ぼ――俺は……貴方の心残りが何なのか確かめに来ただけです」

 

「心残りって言うと……これだろうな」

 

 ガイは掌の中にあるものを眺めて力無く笑う。

 

「なあ、あんたは俺が誰だか知っているんだよな。だったらこれをある人に渡すのを頼まれてくれないか?」

 

 そのまま差し出された白金の指輪を受け取ってロイドは息を呑む。

 

「指輪……ですか……?」

 

「俺には婚約者がいたんだ……名前は……ダメだ思い出せない……

 面倒な頼みだけどその人を探してそれを渡してくれないか? それから勝手に死んじまってすまなかったって伝えて欲しい」

 

「は……い……必ず……伝えます」

 

「ありがとうな」

 

 ガイは満足そうに笑うと、それで心残りが晴れたのかその姿が薄れていく。

 

「他にっ! 他にその人に言うことはないのか!」

 

 無駄と分かっていても事件のことを尋ねる。

 そんな余分は考えることもできず、ロイドは引き留めるように叫ぶ。

 

「まだ時間はあるだろっ! 何でもいい、他にも心残りがあるなら全部言ってくれっ! 俺が……俺が全部叶えてやるからっ!」

 

「そうだな…………」

 

 ロイドの必死な言葉にガイは虚空を見つめて懐かしむような顔をする。

 

「俺には弟がいたはずなんだ……甘えん坊で……生意気で……俺が死んじまって一人にさせちまった弟が……」

 

「それは……」

 

「俺が守ってやらなくちゃいけなかったのに……ああ……ダメだ……やっぱり弟の名前も思い出せないな……本当にダメな兄貴だ」

 

「そんなこと……そんなことない……」

 

 ロイドは絞り出すようにガイの言葉を否定する。

 

「兄貴は……兄ちゃんは……僕にとって最高の家族だったよ」

 

「…………お前は……そうか……」

 

 ロイドの言葉にガイは目を丸くして安心したと言わんばかりに笑う。

 そしておもむろに拳を差し出した。

 差し出した拳はロイドの胸を軽く叩く。それだけで何か熱いものがそこに宿る。

 

「じゃあな……ロイド」

 

「っ……さようなら……兄ちゃん」

 

 ロイドは差し出されたままの拳に自分の拳を当て、最後の別れを交わすのだった。

 

 

 

 

 

 





 その後の特務支援課IF

ランディ
「しかし、ロイドお前って一人称は俺じゃなくて僕だったんだな」

ロイド
「…………」

ティオ
「それに兄貴じゃなくて“兄ちゃん”だったんですね」

ロイド
「…………やめろ……」

エリィ
「それに甘えん坊だったみたいね……フフ、ちょっと見てみたいかも」

ロイド
「やめてくれええええええっ!」

ランディ
「それはそうとティオすけはリィンにおんぶされていたんだって?」

ティオ
「わたしのことよりもエリィさんがおばけが怖いということについて話し合いましょう」

エリィ
「あら、私はアイナさんという女性とランディの関係が気になるんだけど……」

特務支援課一同
「………………」

ロイド
「よし……今夜のことについては何も言わないようにしよう」

ランティ・ティオ・エリィ
「「「異議なし」」」




 いつかの第三学生寮IF お部屋拝見

アリサ
「それじゃあみんな、準備はいいわね?」

エリオット
「リィンは今日からクロスベルに行っているからチャンスは今しかないね」

エマ
「ええ……偶然、リィンさんは鍵を閉め忘れて行ってしまったみたいですから仕方ないですよね……
 それに偶然、セリーヌが入り込んでしまったんですから、仕方ないですよねっ!」

ラウラ
「ふむ……壁に飾られているのは太刀か……リィンが普段使っているものとは比べ物にならない程の業物だな」

ガイウス
「写真がたくさん飾ってあるが御家族とリベールの仲間たちか……この銀髪の女の子はフィーに似ているように見えるが?」

アリサ
「あ、それは人違いよ。確かその子はアルティナって名前だったわ」

フィー
「団長たちに繋がりそうなものはないか……」

エマ
「これは姉さんが作ったペンダント……やっぱりリィンさんは《蒼》の……」

エリオット
「これはドールハウス? 随分本格的な造りだけど、意外な趣味だね」

ユーシス
「それはローゼンベルグ工房製の人形だ。一つ500万もの値が付く程に高価な代物だ。不用意に触るな」

マキアス
「こんな物が一つ500万ミラ!? やはり貴族の考えていることは理解できない」

サラ
「えっと……没収されたビールは何処かしら?」











同士D
「ここで夜な夜なリィン君とクリス君が二人きりで秘密の何かをしている…………………ブハッ!」





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