(完結)閃の軌跡0   作:アルカンシェル

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 タイトルの《銀の意思》は誤字ではありません。

 この話は基本的にアルティナ視点で進みます。
 ほとんどの話で部屋のソファに膝を抱えて座ってじとーとした目を向けてリィン達のやり取りをアルティナは聞いています。




30話 銀の意思

 クーデター事件が終わった翌日。

 遊撃士たちがそれぞれ街の修繕などに駆り出されている中、リィン・シュバルツァーは王宮のベッドに寝かされていた。

 当初は重体患者として担ぎ込まれたのだが、一番の深手だった腹の傷は治癒術で塞がっており、本人の驚異的な回復力もあり、遊撃士と共に街の修復を手伝おうとしていた。

 しかし、満場一致でリィンはベッドに括り付けられ、アルティナはその監視を命じられた。

 

「えっと……本当に身体はもう大丈夫なんだけど」

 

 そう説得してくるリィンにアルティナは無言でじとーとした目を返す。

 

 ――この人は医者から最低一週間は絶対安静だと言われたのを忘れたのだろうか?

 

 いや、確かに医者の診察は気を失っていて聞いていなかったかもしれないが、それほどの診断を受けているのだからまともに動けるはずはない。

 見た目こそ腹部の傷が一番目立ったが、両腕の骨には皹が入っており、右腕は特にひどかった。

 なのだが、翌日つまりは今日の早朝にリィンはベッドを抜け出して素振りをしていた。

 寝過ごしてリィンを見失ったアルティナは、彼を見つけて思わず《気絶》効果のあるアーツを叩き込んでしまった。

 

 ――悪いのはまた心配をかけたリーンだから、私は悪くないです……

 

 改めて自己弁護を完了し、当然アルティナの行動はアネラス達にも褒められた。

 そしてリィンが勝手に出歩かないように監視の役割を与えられた。だが、それは元々の与えられた任務なのでアルティナとしては言われるまでもないことだった。

 

 

 

 

「この度はリベールのために戦っていただき、ありがとうございます」

 

「えっと……その、恐縮です。クローディア姫殿下」

 

 最初に見舞いに現れたのは学生服を着た女性だった。

 クローゼ・リンツという偽名を名乗り、ジェニス王立学園に在籍しているリベールの姫殿下。

 アルティナがリィンの監視任務を受ける前に出会ったと、写真だけでリィンに紹介された記憶がある。

 

「ふふふ……そんなに畏まらなくてもいいんですよ。私のことはクローゼと呼んで下さい」

 

「そんな恐れ多い」

 

 気安く話しかけるクローゼに対してリィンは困った顔をする。

 彼の出身である帝国では身分制度が残っているからだろうか、リィンにとってはそれこそ皇族の姫君と同等の存在に萎縮するなというのも無理な話だろう。

 

「元々クローゼというのは本名の前と後ろを合わせた愛称なんです……

 それともリィン君は嘘をついていた私なんかと仲良くするのは嫌ですか?」

 

「う…………分かりました……クローゼさん」

 

 しかし、笑顔で押し切られてリィンは渋々と言った様子で頷かされる。

 

「改めてありがとうございました。リィン君……ロランス少尉と戦われたんですよね?」

 

「ええ、でも俺の前にみなさんが戦っていたんですよね?」

 

「はい。私とエステルさん、シェラザードさんとサラさんの四人でお婆様の救出に向かって……

 私が真っ先にやられてみなさんの足を引っ張ったんです」

 

「クローゼさん……」

 

「私、これでもフェンシングの大会で優勝していて剣の腕には少し自信はあったんですよ……

 だから、みなさんに同行させてもらったのに……」

 

「クローゼさん……その申し訳ないですが、学生レベルの大会での優勝なんて比較対象が悪過ぎますよ……

 その様子だと実戦経験も多くはないみたいですし」

 

「はい……とにかく自分の未熟さを痛感させられました……

 みなさんはロランス少尉に一蹴されたことは決して恥ではないと言ってくれましたが……」

 

「足を引っ張ってしまったことが、とにかく悔しいんですね?」

 

「…………はい」

 

 肩を落とすクローゼにリィンは何を思ったのか、手を伸ばし彼女の項垂れた頭を撫でた。

 

「だったら落ち込んでないで、次をどうしようかを考えましょう」

 

「え……?」

 

「彼と戦うには、それこそ剣に一生を捧げるくらいの気持ちで鍛錬しなければ、おそらくは辿り着けない領域だと思います……

 俺が彼と戦えたのは《鬼の力》があったからです……

 それが無ければ、それこそ見向きもされなかったでしょうし、それでもこんな体たらくですから、あまり胸を張れないですよ」

 

「そんなことないですよ。ユリアさんもリィン君の戦いはすごかったって言ってました」

 

「ありがとうございます……

 でも、俺だって次に戦うことになったらもっとうまく戦うつもりですよ……

 だから、クローゼさんもいつまでも落ち込んでないで前を向きましょう」

 

「リィン君…………あの時と比べてすっかり逞しくなりましたね」

 

「そうですか? ……って、あの時もそうでしたけど。流石に姫殿下の頭を撫でるなんて不敬でしたね」

 

「ふふふ、良いですよ。お見舞いに来たのに愚痴なんか聞かせてしまいましたし」

 

「エステルさん達には話しにくそうな内容ですし、俺なんかでよければいくらでも付き合いますよ」

 

「ありがとうございます、リィン君……

 あとでお婆様も来ると思いますが、今はとにかくゆっくり休んで身体を治してくださいね」

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 クローディア・フォン・アウスレーゼ。愛称クローゼ。

 細剣の使い手にして高いアーツ適性を持つ。しかし、その実力は執行者レベルには程遠い。

 一国の姫君なのに気安く、リィンも躊躇わずに頭を撫でるほど。

 戦闘力から考えると警戒レベルは《D》なのだが、なんだかもやもやするので《B》と位置付けておく。

 

 

 

 

 

「何じゃ、思っていたよりも元気そうじゃの」

 

「リィンさん、それにアルティナちゃん、こんにちは」

 

 次に現れたのはラッセル博士とティータの二人。

 

「すみません。頂いた戦術オーブメントを壊してしまって」

 

 テーブルに置かれた戦術オーブメントの残骸に目をやってリィンは謝る。

 

「これはまた派手に壊したの……むむむ……これはもしかして……」

 

 それを手に取ってラッセル博士は唸る。

 

「おじいちゃん、わたしにも見せて」

 

 流石というべきなのか、壊れたオーブメントから何か読み取れるものがあるのか、二人は見舞い相手をそっちのけで壊れたオーブメントに夢中になる。

 

「えっと……直せますか?」

 

「ここまで壊れていると新しいものを組み直した方が早いの……

 むう、通常のクォーツから色素が抜けておるがこれはいったい……記録用のクォーツは無事のようじゃな……

 ククク、地下の古代遺跡といい、面白くなってきたわい」

 

 まるで《博士》のように笑みを浮かべるラッセルに、アルティナは近付き難いものを感じて距離を取る。

 

「地下の古代遺跡といえば、そちらも大変だったみたいですね」

 

「うん。こーんなに大きな機械人形が出てきたんですよっ!」

 

 ティータが両手を挙げて嬉しそうに話し始める。

 

「それでそれで……今、マードック工房長に機材を取りに行ってもらっているんです」

 

「そ、そうなんだ……って、お二人とも逃亡生活で疲れているんですから、少し休んだ方がいいんじゃないですか」

 

「何を言っておる。むしろ調子は絶好調じゃわい。な、ティータ」

 

「うん」

 

 確かに疲れた様子を感じさせず、むしろ生き生きとした様子のラッセルとティータにリィンはため息を吐くと、ラッセル博士の手から記録用クォーツを取り上げた。

 

「リィン君?」

 

「今日一日は博士達もきちんと休んでください……どうせその様子だと徹夜もしているんでしょ?」

 

「う、うむ……いやしかしだなリィン君」

 

「休んでください」

 

「でもでも、女王様からもお願いされているんですよ」

 

「別に不眠不休で調べろなんて言われているわけではないでしょ?

 なら、機材が届くまでしっかりと休んでおくべきです。もしこの提案が受け入れられないと言うのなら」

 

「言うのなら?」

 

「この記録用クォーツを壊します」

 

「な、何じゃと!?」

 

「ふええっ!?」

 

「それが嫌なら二人ともしっかり休んでください」

 

「待つんじゃリィン君。それは君の力を調べるためにも大切なもの。早まってはいかん」

 

「だからって、俺のせいで二人に倒れられたら本末転倒でしょう?

 心配しなくても、ちゃんと休んでくれたらお渡ししますよ」

 

「ぐぬぬぬ…………はぁ……分かった」

 

「おじいちゃん?」

 

「今から何処かの部屋を貸してもらって一眠りさせてもらう。それでいいんじゃろ?」

 

「はい」

 

「ティータはここで少し待っておれ、わしはちょっと女王陛下の所へ行って来る」

 

「あ……うん」

 

 呆然とするティータを残してラッセル博士は部屋を出て行った。

 そして、ティータは尊敬の眼差しをリィンに向けた。

 

「リィンさん、すごいっ! ああなったおじいちゃんに言うことを聞かせるなんてっ!」

 

「それは君もだろ」

 

 と、リィンは軽くティータの頭を小突く。

 

「えへへ……」

 

 誤魔化すような笑みを浮かべるティータだが、ソファに座ると途端に眠そうに目をこすり始め、ものの数秒でそのままコテンっと横になって眠ってしまった。

 気持ち良さそうな寝息を立てるティータにリィンは頭を抱えながらも苦笑した。

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 ティータ・ラッセル。

 小型の導力砲を武器にするが、戦闘能力は護身程度のもの。

 アーツ適性も低く、こと戦闘面ではまったく脅威にならない。

 それでも彼女からももやもやが少し感じられるので警戒レベルは《C》とする。

 

 

 

 

 

「あら、リィン君また出歩いていたの?」

 

「シェラザードさん。ええ、ちょっとラッセル博士たちを無理矢理休ませて来ました」

 

 眠ってしまったティータを背負って運び、宛がわれた部屋へと戻ろうとしたところで今度はシェラザードと、彼女に首根っこを掴まれたアガットと出くわした。

 

「いい加減、放しやがれっ!」

 

「何よ。バツが悪いってうじうじしていたのはあんたでしょ?

 ほら、リィン君に言いたいことがあったんでしょ?」

 

 と、シェラザードはアガットを蹴って無理矢理リィンの前に出す。

 

「あ……アガットさん……

 えっと……その橋の上では生意気なこと言って、すいませんでした」

 

「あー……」

 

 頭を下げるリィンにアガットは困った顔をして頭をかく。

 

「シュバルツァー……空賊事件の時に戦った相手があの赤い奴だったのは確かか?」

 

「はい。あんな啖呵を切っておいてこの体たらくですから、アガットさんのお怒りはごもっともかと」

 

 殊勝に謝るリィンにアガットはことさら顔をしかめる。

 

「あのな……」

 

 その彼が何かを言おうとしたところでアルティナは二人の間に割って入る。

 

「あん……何だチビ?」

 

 目付きの悪い視線に睨まれるものの、アルティナは怯まず真っ直ぐにアガットを見つめる。

 その目に怯んだアガットはさらにバツが悪そうにして。

 

「いいかシュバルツァー! 俺はお前なんか認めないからなっ!」

 

 と、捨て台詞を残してアガットは去って行った。

 

「えっと……何だったんですか? てっきりボースの時みたいに怒られるのかと思ったんですが」

 

「気にしないで、ただの負けず嫌いなだけよ」

 

「はぁ……?」

 

「ところでリィン君、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

「はい、何ですかシェラザードさん?」

 

「エステルのことどう思う?」

 

「どうって……尊敬できる人だと思いますよ……

 あそこまで前向きでいられる人は今まで会ったことがないですし……

 猪突猛進なところがありますが決して周りが見えないわけではなくて、むしろ周りの不安や悩みに気付いてくれますし……

 何と言うか、この人が一緒なら何処までも歩いて行ける。そんな安心感があります」

 

「あーそう……ちなみにアネラスは?」

 

「アネラスさんも同じですよ……

 少し抜けているところがあって、大丈夫かなって呆れるところがありますけど、何だかんだでしっかりしていますし頼りになる姉弟子ですよ……

 自分には妹しかいないですけど、姉さんがいるって言うのはあんな感じなのかなって思いましたね」

 

「そう……よく分かったわ」

 

 そうシェラザードは一人で何かを納得して頷くと、おもむろにリィンの肩を叩いて告げた。

 

「リィン君、強く生きなさい」

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 シェラザード・ハーヴェイ並びにアガット・クロスナー。

 リベールの遊撃士であり、戦闘経験も豊富なため、警戒レベルは《C》

 彼らからはとくにもやもやは感じなかった。

 しかし、リィンにはお酒を飲んだシェラザードには絶対に近付くなと言い含められているのでその点は警戒レベル《A》とする。

 

 

 

 

「全く……あの隊長相手に一人で戦うなんて随分と無茶をしたものね」

 

「すいません。サラさん……」

 

「別に責めているわけじゃないわ……

 私たちも一応その前に戦っていたんだけど、本気だったか怪しいのに。そもそも私だって再戦だったのよ」

 

「やっぱりまた手を抜かれていたんですか?」

 

「いや……剣は左手で持っていたから、真面目にやってたと思うけど、あっさり負けちゃったわよ……

 私とシェラザード、エステルとお姫様の四人で。戦力的には武術大会の時と遜色はなかったはずなんだけどね」

 

「さっきクローゼさんがそのことで足を引っ張ったって悩んでましたよ」

 

「別に引っ張られたとは思ってないんだけどね、飛行艇の操縦をしてくれたのはあの子だし、むしろアーツ使いのあの子を真っ先に落とされたあたしたちの落ち度なんだけど……

 真面目そうな子だったから、そう言っても逆効果でしょうね」

 

「確かにそんな感じでした。少し俺の方からもアドバイスみたいなことは言っておきましたけど」

 

「なら大丈夫でしょ……

 はぁ……最年少A級遊撃士なんて持て囃されてきたけど自信なくすわ。帰ったら《星座》か《西風》にでもカチコミして鍛え直そうかしら」

 

「それはやめておいた方がいいんじゃないですか? そもそも猟兵ですよね?」

 

「猟兵だからって、別に遊撃士をいたずらに邪見にしているわけでもないのよ……

 その二つ、特に《星座》の方だったら道場破り歓迎って感じだし」

 

「道場って……そんなものなんですか?」

 

「あそこは狂戦士の巣窟だからね……

 ところでリィン君はこれからどうするつもりなの?」

 

「え……?」

 

「念願のカシウスおじ様に会えたんでしょ? ユミルに帰るなら送っていくわよ」

 

「…………それはまだ決めかねてます。実はまだみなさんには話してなかったんですが、《鬼の力》が使えなくなっているんです」

 

「……え?」

 

「具体的に言うと、俺の声が届かなくなって、それでいて大きく成長しようとしているみたいな――」

 

「ちょっと待ちなさい。そんな状態であのロランス少尉と戦ったの?」

 

「あ……はい。でも《鬼の力》は使えなかったんですけど身体の調子そのものは――」

 

「そういう問題じゃないわよ!」

 

「っ……」

 

「あんたは……肝心の奥の手がない状態で勝算はどれくらいあったのかしら?」

 

「勝算は…………いや、でもあの人の目的は俺だったみたいですし。あの人が情報部に加勢したらおそらく全滅していたかと思って」

 

「確かにそうだけど、あんたが一人で無茶して捨て身で戦った言い訳になるかっ!」

 

「うっ……」

 

「これだから流派上がりの奴は嫌なのよね……

 戦いの中で死ねれば本望とでも思っているのかしら?」

 

「いえ、そんなことは決してないんですが……」

 

「…………よし、決めた」

 

「え……?」

 

「しばらくあたしが貴方に戦い方の何たるかを教えて上げるわ」

 

「はい?」

 

「遊撃士だろうが、猟兵だろうが、まずは自分が生き残ることを第一に考えるものよ……

 玉砕覚悟の全力疾走なんて今時流行らないのよ」

 

「いや、それはあの時が特別で――」

 

「何もあの男の戦いだけを言っているわけじゃないわ……

 《西風の旅団》の時も含めて、元々の性格なのかしらね。自己犠牲精神がちょっと強いんじゃないかしら」

 

「…………でも死ぬつもりはなかったんですよ」

 

「でしょうね……

 でも、今のあんたはあの男への対抗意識や《鬼の力》への依存から《修羅》に片足を突っ込んでいるように私には見えるわ」

 

「《修羅》……」

 

「いい、リィン君。あんたには帰りを待っている家族がいるのよ……

 だから何が何でも敵を倒す戦い方じゃなくて、どんなことがあっても生き残る戦い方を覚えなさい」

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 サラ・バレスタイン。

 帝国のA級遊撃士というだけあって、その戦闘能力は執行者に勝るとも劣らない。

 警戒レベルは《B》なのだが、要注意が必要になるかもしれない。

 

 

 

 

「やあリィン君……御加減はどうかな?」

 

「もう全然大丈夫そうだな」

 

 夕方頃にやってきたのはアンゼリカとジンだった。

 それまで手合わせをしていたのか、アンゼリカの方には手足や顔に治療の痕があった。

 

「御心配をお掛けしました。お二人は手合わせをしたんですか?」

 

「まあ、そんなところさ。見ての通り、これでもかと言うくらいに惨敗さ」

 

「すいません、一緒に戦うと約束したのに」

 

「いや、それは気にしなくていいよ」

 

「はは、個人的には俺もリィン君とは是非とも手合わせしてみたいものだな。だが、先に身体を治すことに集中するんだな」

 

 挨拶もそこそこにしてアンゼリカは別れの言葉を切り出した。

 

「実はお見舞いにきたついでに、お別れを言いに来たんだよ」

 

「お別れ? もう帝国へ帰るんですか? もしかしてジンさんも?」

 

「いや、俺はまだリベールにいるつもりだ……帰るのはアンゼリカだけだ」

 

「本当は来週の女王生誕祭までいたかったんだが、実家から追手が来てしまってね……

 流石にこれ以上はいられなくなってしまったんだよ」

 

「そうですか……」

 

「やれやれ、私としてはせめてティータ君とアルティナ君ともっと仲良くなりたかったんだがね……

 それにあと数ヶ月もすれば二人に勝るとも劣らない美少女に出会えると、私の勘が言っているんだがな」

 

「何ですか、その勘は?」

 

「ははは、もちろん冗談だよ。来年の受験に備えて、流石にそろそろ真面目に勉強をしないといけないからね……

 あわよくば、武術大会を優勝した実績を手に入れて、内申点でも稼いでおこうかと思ってもいたんだがうまくいかないものだね」

 

「そんなことを考えていたんですか?」

 

「だが、優勝はできなかったがなかなかに楽しい一時だったよ……

 帝国へ帰ったら是非知らせてほしい。家の格など気にせずにこうしたやり取りができる友人は貴重だからね」

 

「四大名門の御息女にそう言ってもらえるのは恐れ多いと言うか……」

 

「リィン君の場合、私どころではないんだがね……」

 

「え……?」

 

「おっと、とにかくリィン君。アルティナ君とエリゼ君と一緒にルーレに遊びに来てくれたまえ……

 その時はリン君の姿でいてくれたら、個人的には嬉しいんだけどね」

 

「ありえませんから」

 

 最後に別れの挨拶と称して抱きつこうとしてきたアンゼリカの腕をアルティナは避けた。

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 アンゼリカ・ログナー並びにジン・ヴァセック。

 前者は帝国出身の貴族、後者はカルバード共和国のA級遊撃士。

 アンゼリカ・ログナーは今後《福音計画》に関わることはないと思われる。

 ただし邪な気配で触って来ようとするので、同じ様なことをするアネラスと同じく警戒レベルは《A》とする。

 ジン・ヴァセックは会話から察するに、リィンとは深い関係を築いているわけではないため、前述のサラ・バレスタインと同等の戦闘能力のみで《B》と判断する。

 

 

 

 

「遅くなってすまないね。リィン君……私がカシウス・ブライトだ。いろいろ世話になったようだ」

 

「ああリィン君。聞いてくれたまえリィン君……

 愛しの君に朝一番でお見舞いに行こうと思ったらミュラーに捕まってしまってね。クーデター事件に関わったことを知られて今までお説教を受けていたわけさ」

 

「リィン・シュバルツァーです。むしろ俺の方がみなさんに世話になりっぱなしで……あとオリビエさん五月蝿いです」

 

 オリビエの存在を適当にあしらってリィンはカシウスと話し始める。

 

「君の事情はエステル達から聞かせてもらった……

 わざわざ訪ねてきてもらったのにすまないね。しかも自力で悩みを解決してしまったそうじゃないか」

 

「いえ、元々突然押しかけたのは自分の方ですから、カシウスさんに落ち度は何もありません」

 

「そう言ってくれると助かるが、むしろそちらの方が良かったのかもしれないな」

 

「え……?」

 

「俺なんかに会うよりも得難いものを手に入れることができたのだろ?」

 

「…………それは……」

 

「遠慮することはない。英雄だ、剣聖だ、と祭り上げられているが。結局のところ、大切な人を守れなかった情けない大人でしかない……

 とてもではないが、君を今の境地まで導くことはできなかっただろう」

 

「そんなことは――」

 

「そもそも今回のクーデターの一件も元はと言えば、俺がリシャールに過分な期待をかけてしまったのがそもそもの原因だ……

 俺がただの情けない男でしかないように、才覚はあったとはいえリシャールもまた一人の人間であることを忘れていた……

 そうして将来有望だったリシャールを潰してしまったのは俺だと言っても過言ではない」

 

「カシウスさん……」

 

「おっとすまない……こんな愚痴を子供に聞かせるものではないのにな……

 だが、君も将来、剣聖となるなら気を付けた方がいい……

 《理》に至り、本質を捉える目を持つことができたとしても、私達は万能な超人になれたわけではないということをな」

 

「俺が《剣聖》だなんて、そんなの無理ですよ」

 

「おや、そうかな? ボクはリィン君なら至れると思っているけどね」

 

「はは、謙遜も良いが少しは自分に自信をつけるのも大事だぞ、弟弟子よ」

 

「お二人とも、あまりからかわないで下さい」

 

 二人から褒められて居心地が悪くなったのか、リィンは強引に話題を変える。

 

「そういえばオリビエさん、《ハーメル》って何の名前か知っていますか?」

 

「ハーメル……もしかしてそれはハーメル村のことかい?」

 

「いや、よく分からないんですけど。ロランス少尉、いやレオンハルトが言っていたんです」

 

「ハーメル村は十年前に山崩れで壊滅したリベールとエレボニアの国境付近にあった小さな村の名前だが……

 すまないが、ボクが今の段階で知っているのはこれくらいだ」

 

「そうですか……何だか聞き覚えのあるようで……ずっと引っかかっているんです」

 

「レオンハルト……それが彼の本名か。しかしハーメルとは」

 

「おや、カシウスさんも御存知で?」

 

「ああ、だが私の口からは語ることができない話でね……

 リベールとエレボニア、二つの国の問題に絡む話だ」

 

「え……山崩れで壊滅した村がどうして――」

 

「リィン君、語れないと言っているのだから聞いてはいけないよ」

 

「申し訳ない。だがもしも俺の想像が正しければ、そのレオンハルトという男はよほどの地獄を見てきたに違いない」

 

 重苦しい沈黙が流れ、オリビエが真剣な顔のままリィンに向き直った。

 その表情はどこか覚悟を決めたような決意を感じさせるものだと、アルティナは思った。

 

「…………リィン君、君にはとても重要な話があるんだ」

 

「オリビエさん?」

 

「この事についてはカシウスさんと協議して、最重要な上にトップシークレットの案件と判断した……

 リィン君もそのつもりで聞いて欲しい」

 

「っ…………分かりました」

 

「リィン君…………写真を見せてくれないかい?」

 

「…………はい? 写真ですか?」

 

「そうっ! ジェニス王立学院の文化祭で演じられた《白き花のマドリガル》……

 聞けば紅騎士ユリウスをエステル君が、蒼騎士オスカーをクローゼ君が、そして何よりもあのヨシュア君がセシリア姫を演じたそうじゃないか!

 二人の美少女が凛々しく着飾った姿も是非見てみたい! しかし、やはり一番気になるのはセシリア姫……

 ああ、その麗しの姿を想像するだけでボクは! ボクはっ!!」

 

「…………カシウスさん」

 

「う……うむ。コホン……

 まあ俺も老師の言う『理』に至って《剣聖》などと呼ばれてはいるが一人の父親でな……

 娘と息子の晴れ姿を見たくないわけはない」

 

「……真面目な話をしていたと思っていたんですけど……

 まあ……いいですけど。元々エステルさん達に渡すつもりでしたから……写真は鞄の――ありがとう、アルティナ」

 

「ん……」

 

 先じて、アルティナはリィンの鞄を抱えて彼に渡す。

 頭を一撫でされて感謝され、アルティナは元の位置に戻ってリィンの監視を続ける。

 

「ほほう……エステルもなかなか様になっているじゃないか。それに学生服の写真もあるのか」

 

「ううむ……流石クローゼ君。お姫様だけあって騎士姿も堂に入っているね」

 

「そうですね。この時のエステルさん達の演技は格好良かったですよ」

 

「……さて、リィン君……

 エステル君たちやクローゼ君、そしてその学友達の姿はとくと堪能させてもらったが、肝心のあの写真はどこだね?」

 

「その写真はまずヨシュアさんに渡しますから、彼に許可をもらってください」

 

「はっ! まさかリィン君、君はヨシュア君の艶姿を一人占めする気なのかい!?」

 

「人の話を聞けっ!」

 

「ああ、なるほど……安心してくれたまえリィン君……

 例えヨシュア君がどんな姿をしていても、僕のリン君への思いが変わることはないっ!」

 

「さりげなくおぞましいことを言わな――あっ……」

 

「さあ、だから何の心配も遠慮もすることはない、ボクにお姫様なヨシュア君を――」

 

「へえ……興味深い話をしていますね」

 

 大興奮なオリビエの背後に音も無く現れたヨシュアが彼の肩を掴んで笑顔で話しかけた。

 すでに《剣聖》はその場から逃げ出していた。

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 オリビエ・レンハイム。

 拳銃とアーツを使う、自称天才演奏家。

 ふざけた行動パターンが多いが、実力は遊撃士たちと同等の戦闘力を有している。

 戦闘レベルはそこまで高くないが、いつもリィンを困らせているので警戒レベルは《B》とする。

 

 カシウス・ブライト。

 リベールの遊撃士。非公開情報だが大陸で数人しかいないS級遊撃士。

 その名に相応しく、場の流れを読む力と危機回避能力は一級品。

 その眼差しは全てを見透かしているようで居心地が悪い。

 警戒レベルは当初から変わらずに最高の《A》のまま。

 

 

 

 

「どうぞ、お納めください」

 

 リィンは別に仕分けておいた写真を恭しくヨシュアへと差し出した。

 

「うん。ありがとうリィン君」

 

「別に恥ずかしがることないのに、リィン君もそう思うよね?」

 

「ノーコメントで」

 

 同意を求めるエステルにリィンは何とも言えない表情をする。

 ヨシュアのセシリア姫は分からないが、女装という点ではリィンも負けないくらいにきれいだったとアルティナは思うのだがそれを指摘することはしなかった。

 

「それにしても私達が最後みたいね。他の人たちはもうお見舞いにきたんでしょ?」

 

「ええ、クローゼさん達やアネラスさん達、他の遊撃士の人やユリアさんに女王陛下まで……

 もう全然身体は大丈夫なんですけどね」

 

「でも、聞いた話だとすごい戦いだったんでしょ?

 私も城の中で戦ったけど、武術大会でやり合った時とは比べものにならないくらいに強かったし」

 

「正直な話、一矢報いることができたことが今でも信じられませんよ」

 

「その話、本当だったんだね……

 ねえ、リィン君。もしかしてロランス少尉の顔を見たりしたかな?」

 

「ええ……そもそも橋に出てきた時にはあの赤いヘルメットは外してましたから」

 

「あれ言ってなかったけ? 女王宮のテラスで戦う時に外してたから私も見たわよ」

 

「エステルも?」

 

「うん。二十代後半くらいのアッシュブロンドの髪で、女王様が言っていたけどやたらと荒んだ目をしていたような、それでいて燃え盛っているような……

 『あなたに哀れむ資格などない』とか女王様に言っていたし……何だったのかな?」

 

「言われて見れば、確かにそんな目をしていましたね……

 ただ、ロランス・ベルガーというのは偽名のようでレオンハルトというのが本名みたいでしたけど……

 ヨシュアさん、どうかしましたか? 顔が真っ青ですよ?」

 

「な、何でもない……大丈夫だよ」

 

「全然そんな風に見えないけど…………まあいいわ……

 それはそうとリィン君。実は私達、正遊撃士になれることが決まったんだ」

 

「本当ですか?」

 

「うん。今はクーデター事件の後始末で忙しいし、グランセルでの仕事の達成が少ないから内定の段階だけどね」

 

「このまま順調に数をこなせば、女王生誕祭の当日には推薦状をもらえることになっているよ」

 

「そうですよね。あれだけの大きな事件を解決したんですから当然ですね……

 エステルさん、ヨシュアさん、おめでとうございます」

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 ヨシュア・ブライト。

 結社《身食らう蛇》の執行者。特に追記することは無い。

 

 エステル・ブライト。

 戦闘能力は正遊撃士に匹敵するものがあるが、現時点ではパートナーのヨシュアがそれに合わせている。

 戦闘力は天性によるものか、A級遊撃士と並んで戦えるほど。

 しかし、彼女を見ていると一番胸がもやもやする。

 警戒レベルの最高値は《A》だが、カシウス・ブライト以上に警戒が必要だと追記しておく。

 

 

 

 それにしても、とアルティナは思う。

 今日一日で様々な人がリィンのお見舞いにきた。

 男女比は同じくらいなのだが、男性は比較的に短いやり取りですみ、女性はある程度長い会話をしていた気がした。

 特に女の人には頭を撫でたり、撫でられたりと肉体的な接触も多かった。

 何だかその時の光景を思い出すと胸がもやもやする。

 今の状態を表す言葉を記憶の中から検索する。

 

 ――女好き、節操なし、これはオリビエさんなどにも当てはまる言葉ですね……

 

 それに微妙にリィンとは違う気もする。

 

「どうかしたのかアルティナ?」

 

 悶々と考え込んでいるとリィンが話しかけてきた。

 

「んん」

 

 何でもないと首を振ってアルティナは答えると、リィンは少しだけ寂しそうな顔をした。

 そんな顔をされても任務なので『余計なことを喋る』わけにはいかない。

 しかし、《剣帝》と戦っている時に思わず彼の名前を叫んでしまった。

 どうして命令に背いてあんなことをしたのか、それはいくら考えても分からない。

 

「またそんな顔をしている」

 

 リィンはおもむろに手を伸ばして頭を撫でてくる。

 

「大丈夫だよ……ちゃんと待ってるから」

 

 いつからだろうか。

 その手に不思議な気持ちを感じるようになったのは。

 エステル達に感じたもやもやとは違う、それこそ胸を温かくして安心させてくれる。

 しかし、同時にそれを受け入れる資格が自分にあるのか不安になる。

 

 ――わたしの任務は主に監視と護衛。そして《使徒》や《執行者》の行動の補佐……

 

 彼らの命令に従い、猟兵との戦闘は高みの見物をしていたし、《教授》の企みのために彼を誘き寄せ、果てには彼を背後から不意打ちまでした。

 しかし、リィンはアルティナが言えないことに気付いていながらも、それを責めることはせず今と同じ様に頭を撫でてくれた。

 

 ――でもこの手は安心させてくれる……

 

 対してアネラスさんの手はいつまでも終わらないし、邪な気配を感じるから苦手だ。

 この二人の違いはいったい何なのだろうか。

 ただ一つ言える事はリィンの手はアルティナの思考をかき乱す。

 故に……

 

 ――リーンの手は不埒です……

 

 

 

 

 夜中、リィンが眠っていることを確認してアルティナは音を立てずに部屋を出た。

 王城の廊下は広く寒々しい。

 警備の人間の目をやり過ごし、アルティナは人気の無い空中庭園にやってきた。

 その一角に迷わず歩を向け、そこで《白面》のワイスマンが待っていた。

 

「御苦労《Oz70》……早速報告を聞かせてくれるかな?」

 

 促されてアルティナはいつものように報告をする。

 とは言っても、話すことは多くない。

 アルティナに与えられた任務はあくまでもリィン・シュバルツァーの監視。

 先程、心の中でつけていた周りの評価は報告の対象外でしかない。

 

「ふむ……なるほど、あの時の一瞬の変化は戦術オーブメントに予め移していた《鬼の力》だったというわけか。なかなか面白いことをする」

 

 嬉しそうに独り言を呟くワイスマンにアルティナは黙って次の言葉を待つ。

 彼にとってそれは会話ではなく、独り言。

 アルティナの存在など彼にとっては路傍の石に過ぎない。

 

「さて、今後の任務だが――おや?」

 

 その言葉に身体を震わせたアルティナに彼は不思議そうに首を傾げる。

 どうしたのだろうか、続く言葉は唐突に止まり、ワイスマンは改めてアルティナの顔を見てくる。

 そんな反応をされてむしろアルティナの方が困惑する。

 所詮、自分は《結社》の備品でしかない。

 次の任務を言い渡られたら、有無を言わずにその命令に従わなければならない。

 なのにリィンの言葉をアルティナは思い出す。

 

『アルティナが幸せに笑っていられること』

 

 ただそれだけを望んでくれた。

 幸せが何なのかまではアルティナには分からない。

 それでもここで別の任務を与えられて、彼らと別れるのは嫌だった。

 

「…………君にはこのまま引き続き、リィン・シュバルツァーの傍にいてもらう」

 

 《教授》が告げた任務の内容に俯いていたアルティナは顔を上げる。

 そんなアルティナに《教授》は顔を寄せて、その目を覗き込む。

 

「この二ヶ月で面白い成長をしたようだな……何があった?」

 

 その命令にアルティナはすぐに応じることができなかった。

 リィンがくれた言葉を渡したくない。

 そんな拒絶が自分の中にあることにアルティナは驚き、困惑する。

 しかし、答えないアルティナに《教授》は気を悪くした素振りを見せなかった。

 

「まあ、いい……だが、《Oz70》……君は自分が何者か忘れていないかな?」

 

 その呼び名にアルティナは身体を凍りつかせる。

 

「彼は怪しい君を受け入れてくれたようだが、果たして君の真実を知ってなお、君を受け入れてくれると思うかな?

 女神の祝福の下で生まれたのではない。人造物でしかなく、ボタン一つでいくつでも造り直せる君にいったいどれだけの価値があるのだろうね?」

 

 耳元で囁かれた言葉にアルティナの身体は震える。

 リィンは自分の背景が何だったとしても受け入れると言ってくれたが、それは彼の常識の中での話。

 彼はきっと自分の生い立ちは想像できても、出生までは想像できるはずがない。

 ワイスマンの言うとおり、ボタン一つで同じ顔、同じ性能の人間として造り直せる自分を、果たして彼は人間として受け入れてくれるのか、アルティナには分からない。

 

「不安なら試してみれば良いのではないかな?」

 

 試す。その言葉にアルティナは首を傾げる。

 

「これから君達に私が試練を与えようじゃないか。それを彼がクリアして行くごとに君は自分の秘密を一つ一つ明かしていけば良い……

 全ての試練を乗り越えたその時、彼がまだ君を受け入れるというなら、私は君を祝福と共に結社から解放することを約束しようじゃないか」

 

 その言葉は不安に揺れていたアルティナの心の奥に染み込んで行く。

 

「それに加えて君の望む戦術殻も上げようじゃないか……どうだね、やる気が出てきたかね?」

 

 《教授》の言葉にアルティナは頷く。

 試練を乗り越えればアルティナが望むもの、全てが手に入る。

 リィンやアネラスたちとの温かな日々も、自分が生まれてきた理由も捨てなくて済む。

 

「行動の制限も解除しよう。今後は執行者や使徒の補佐をする必要はない……

 《結社》のことも、自分のことも君の采配で好きなように話せばいい」

 

 さらに《教授》は好きなようにしろと告げる。

 

「報告はこれが最後だ。以後、試練が終わるまで君を呼び出すことはない……それでは行きたまえ」

 

 その言葉にアルティナは《教授》に背を向けて駆け出した。

 そして、《教授》は離れていく小さな背中に蛇のような笑みを深めた。

 

「ふふ、リィン・シュバルツァーといい、《Oz70》といい、実に私を楽しませてくれる……」

 

 ただある人物への義理立てのつもりで配置しただけの意味の無い駒だったのに、この二ヶ月あまりで随分と人間らしくなった。

 そしてだからこそ、リィン・シュバルツァーへの大きな干渉装置として成り得る。

 

「さて、まずは何をぶつけるか……ブルブランが様子見で《西風の旅団》をぶつけたそうだが……

 そうだな……最初はミラで簡単に動く彼らを使ってみるか。だが一対多になってしまってはフェアではないか。さて、どうしたものか」

 

 自分と同郷の猟兵たちの姿を思い出し、蛇はもう一度嗤った。

 

 

 

 

 

 





 いつかのトールズ士官学院IF

 リィン
「そういえばアンゼリカさんの勘が当たっていたんですよね」

 アンゼリカ
「うん? 何の話だい?」

 リィン
「リベールで別れ際に言っていたじゃないですか。あと数ヵ月後に美少女に会える予感がするって……
 実際にこんな子と知り合うことになったんですよ」

 リィンはレン、ティータ、アルティナの三人が仲睦まじげに並んでいる写真を見せた。

 アンゼリカ
「………………リィン君、やっぱり君はリベールに年下の美少女達ときゃきゃうふふするために旅に出ていたんじゃないかっ!」






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