(完結)閃の軌跡0   作:アルカンシェル

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37話 《怪盗紳士》

「ここがリベール王国を担う若人たちの汗と涙と青春の学び舎、ジェニス王立学園か……

 フフ……実に素晴らしいじゃないか」

 

 校門の前でしたり顔で笑うオリビエにリィンは白い目を向ける。

 

「良かったんですか、エステルさん。オリビエさんの同行を認めて?」

 

「うーん……手伝ってくれるのは正直ありがたいし、それに突き放しても勝手についてくるでしょ?

 だったら初めから目の届く所に置いておいた方がいいかな」

 

「本当に帝国人がすいません」

 

「リィン君が謝ることじゃないわよ……

 それよりリィン君の方こそ、ごめんね。調査を手伝ってもらうことになって」

 

「いえ、気にしないでください。これも仕事の範疇ですから」

 

 あくまでも臨時でしかないリィンは一人で調査をすることは許されていないが、正遊撃士の助手という形でならその限りではない。

 幽霊事件という不審な事件がもし結社と関りがあるとしたら、戦力は充実させておいた方がいいという考えでリィンはエステルに同行するように頼まれた。

 

「まあ、オリビエだって銃の腕とアーツがあるから十分に役に立つと思うけど」

 

「それはそうですけど、やっぱり不安です」

 

 そんなリィンの心情などお構いなしにオリビエは楽しげに振り返る。

 

「エステル君達が演劇をしたというのがこの学園だったね?」

 

「うん、学園祭の手伝いで一週間くらい授業も受けさせてもらったけど、すっごく楽しかったな」

 

「なるほど、つまり例のセシリア姫の衣装はこの学園にあると……リィン君、ものは相談なんだけど――」

 

「いやです」

 

 最後まで聞かずにリィンはオリビエの言葉を拒絶した。

 

「そんなこと言わずに、ね……ほんの少しで良いから」

 

「エステルさん、とりあえず中に入りましょうか?」

 

 腰にまとわりついてくるオリビエの頭にリィンは慣れた様子で肘を落とし、エステルに向き直る。

 

「うん、そうね。感傷に浸っているのが馬鹿馬鹿しくなってくるわね……

 そういえば試験期間だってテレサ先生が言っていたけど……まだ終わってないのかしら?」

 

「え……試験期間?」

 

 初めて聞いた情報にリィンは思わず顔を引きつらせる。

 クローゼからはそんな時期だなんて一言も説明されていない。

 そんな大切な時期の早朝に朝稽古を提案してしまったことにリィンはまずいことをしたかと悩む。

 

「どうしたのリィン君?」

 

「いえ、何でもありません」

 

 クローゼに会ったら謝らなければいけないなと思っていると、鳥の鳴き声が響き、エステルの棒にジークが舞い降りた。

 

「ジーク!?」

 

「ピュイピュイピュイ!」

 

「あはは、何言っているか分からないけど歓迎してくれてるみたいね。久しぶり、元気にしてた?」

 

「ピューイ」

 

 エステルの呼びかけにジークは頷くように大きく鳴く。

 

「エステルさん……」

 

 彼を追い駆けてきたのか、クローゼの声が彼女の名前を呼んだ。

 

「クローゼ……えへへ……生誕祭以来ね」

 

「はい……そうですね……リィン君からリベールに戻っているとは聞いてましたけど……私……私……」

 

 感極まりクローゼはエステルに抱き着いた。

 

「むむ、ほのかな百合の香りが」

 

「オリビエさん、自重してください」

 

「リーン、百合の香りとはどういう意味ですか?」

 

「アルティナにはまだ早いから知らなくていいんだよ」

 

 オリビエの言葉に興味を示すアルティナを誤魔化して、リィンはため息を吐いた。

 

 

 

 

 ルーアンの幽霊事件。

 多くの目撃情報を元に考察した結果、幽霊は決まってある方向へ帰っていくことが判明した。

 その場所こそがジェニス王立学園であり、リィンはエステルの予備戦力として幽霊の捜索に加わることになった。

 そしてエステルは生徒たちの聞き込みをしている間に、リィンはオリビエと一緒に学園内を捜索することになった。

 

「それにしてもてっきりアルティナ君も一緒に来ると思っていたけどね」

 

「どうやらアルティナは幽霊の類が苦手なみたいですね」

 

 学園までついてきたものの、幽霊の手掛かりを探しに行くとなるとアルティナは無表情ながら顔を蒼褪めさせてついてくることを拒んだ。

 今頃はクラブハウスの食堂でエステル達と一緒にいるはずだが、聞き込みの内容次第では怪談話になるのではないかと、今更ながら心配になってくる。

 

「ははは、すっかりリィン君もお父さんだね」

 

「からかわないでください」

 

 リィンは苦笑しながらオリビエの言葉に文句を返す。と、オリビエは嬉しそうな顔をしてリィンの顔をまじまじと見つめた。

 

「何ですか?」

 

「いや……パルムで君と出会った時を思い出してね……

 あの時の少年がこんなにも立派に成長したのかと思うと、感激の涙が溢れてしまいそうだよ」

 

「俺はあの時の男の人とこんなにも縁が続くとは微塵も思っていませんでしたよ」

 

 大げさに振る舞うオリビエにリィンは毒を吐く。

 思い返してみれば本当にひどい目にあった。

 無銭飲食に巻き込まれて牢屋に入れられたことが懐かしく思える。

 

「ははは、ところでリィン君は進学は考えているのかい?」

 

 学園にいるからなのか、オリビエはそんな話題を振ってくる。

 

「いえ……少し前までは家を出ることばかり考えていましたから」

 

「ふむ、それなら聖アストライアという学院などどうかな、ボクの妹も通う予定なのだがなかなかいい学院のようだよ」

 

「ええ、そうですね。エリゼも来年からそこに通う予定みたいですけど、女学院ですよね?」

 

「てへっ」

 

 しれっと女学院を勧めてくるオリビエの頭に拳骨を一つ落とす。

 

「冗談はともかくとして、リィン君の歳だと再来年くらいから高等教育を受けられるだろ?

 将来の展望や、やりたいことがあるなら今の内から考えておくべきじゃないかな?」

 

「やりたいことですか?」

 

「それに学生生活とは良いものだよ……

 同年代の友人と夕日に染まった河原で殴り合い友情を確かめ合ったり、伝説の木の下で愛の告白をなんていう嬉恥ずかしのイベントが満載さ」

 

「随分と極端な例を出しますね……

 そういうオリビエさんはどこの学院に通っていたんですか?」

 

「ボクはトールズ士官学院に通っていたね。元は軍学校だったが、今はその風潮は薄れて芸術などにも力を入れるようになった学院さ……

 だが名門であることには変わらないが、リィン君なら合格できると思うよ」

 

「それは買い被り過ぎですよ。実技ならともかく正直座学には全然自信はありませんから」

 

「それならボクが直々に家庭教師をしてあげようじゃないか……フフフ、これからはボクのことをオリビエ先生と呼んでくれたまえ」

 

「呼びませんから。それよりもしゃべるなとは言いませんから、ちゃんと幽霊の痕跡を探してくださいよ」

 

「それはもちろん手を抜いたりはしていないよ……ところでリィン君」

 

「今度は何ですか?」

 

「エステル君にはいつ告白するんだい?」

 

「なっ!?」

 

 幽霊を探して周囲を見回した首をぐるりと回してリィンはオリビエを見る。

 

「フ……照れることはない。人が人を好きになるのは至極当然の摂理。ましてや相手はあのエステル君だ……

 ボクもあと十年若かったらこの心を彼女に奪われていたかもしれないね」

 

「いや……勝手に決めつけないでください」

 

「ふむ、では本命は誰かね?

 姉弟子のアネラス君かい? それとも本物のお姫様のクローゼ君かい?

 は、まさかアルティナ君を自分好みの女の子に育てるという壮大な計画の真っ最中だったりする――ゴフッ!」

 

「とりあえず落ち着きましょう」

 

 鼻息を荒くして詰め寄ってくるオリビエの腹に一発拳を入れて、ため息を吐く。

 

「オリビエさんの目から見ると、俺はエステルさんのことが……その……す、好きだと見えるんですか?」

 

「フ……この愛の狩人の目は誤魔化せないよ」

 

「誤魔化すも何も、俺は自分でもその気持ちがよく分かってないんですけど」

 

「ふむ、もしかしてリィン君は初恋もまだなのかい?」

 

「ええ、そもそもそういうことに気を回す余裕なんてありませんでしたから」

 

「ならば断言しようじゃないか。リィン君がエステル君に向ける思いはまさしく《愛》だと!」

 

 有無を言わせない強い言葉はリィンの胸にストンと落ちた。

 

「さて、リィン君も納得したところで告白の計画を立てようじゃないか」

 

「いえ、告白なんてしませんよ」

 

 まるで自分のことのように意気揚々なオリビエにリィンはそれを否定した。

 

「どうしてだい? ヨシュア君がいない今こそ最大のチャンスだというのに」

 

「オリビエさん、さっきも言いましたけど不謹慎ですよ」

 

 エステルのことに好意を寄せていることを認めはしたものの、だからと言ってすぐに告白できるほどにリィンは図太くない。

 未だに彼女のどういったところに惹かれたのかを言葉にすることはできないし、それに前を向いて走り出したエステルの邪魔をしたくない気持ちもある。

 そしてリィンにもそれをしている余裕があるわけではない。

 アルティナを自由のために《結社》用意した刺客との対決。

 そんな浮付いた精神で戦いに臨むわけにはいかない。

 

「それじゃあ、いつ告白するんだい?」

 

「そんなの分かりませんよ。とにかく今告白するつもりはありません。もしするとしても――」

 

「しても?」

 

 少し考えて、リィンはそれを口にした。

 あやふやな《根拠》を確かな《目的》として。

 

「それはヨシュアさんを殴った後です」

 

 リィンの答えにオリビエは目を丸くすると、次の瞬間声を上げて笑った。

 

「何がおかしいんですか?」

 

「いやいや、失礼……うん、リィン君の考えはよく分かった……

 うらやましいね。ボクも一緒にその青春を過ごしたかったよ」

 

「何を言っているんですか?」

 

 一人で納得してしまったオリビエをリィンは半眼で睨む。

 

「本当にヨシュア君には早く戻ってきてもらわないとね……

 だが、安心したまえ。エステル君に振られたとしてもボクが優しく慰めてあげるよ」

 

「余計なお世話です」

 

 顔を寄せてくるオリビエをリィンは拳の手で押し返す。

 

「そんな遠慮しなくてもいいじゃないか、何だったらボクの妹を紹介するよ。今度は冗談は抜きで」

 

「オリビエさんの妹なんてどんな事故物件ですか。謹んで遠慮させていただきます」

 

「まあ、そう言わずに一目でも会ってくれたまえ……

 弟もそうだが、あの子たちは周りからは蝶よ花よと育てられて、リィン君のようにはっきりと物を言ってくれる人と接したことはほとんどないのだよ……

 それにボクとしては帝国に戻っても、リィン君とは良い関係を続けていたいと思っているんだよ」

 

「オリビエさん……」

 

 急に神妙な顔をするオリビエにリィンもまた考える。

 レンハイム家がどれほどの家なのかは分からないが、リィン個人としては父を誹謗中傷した貴族達と比べればオリビエの存在はずっと好ましい。

 本人に対しては口が裂けても言うつもりはないが、兄という存在がいたらこんなものなのかと思ったことさえある。

 

「…………分かりました。とにかく一度会うことはしますよ」

 

「おお我が義弟よ、それでこそボクが見込んだ男だ」

 

「変な呼び方をするのはやめてください……

 それよりもいい加減、調査に集中してください」

 

「ふ……それでは未来の義弟にいいところを見せるとするかね」

 

 夕暮れに染まる空の下、張り切り出すオリビエにリィンは嘆息してその後に続いた。

 

「あ、リィン君。もしかしてあれが女子寮かな?」

 

 振り返って尋ねてくるオリビエをリィンは全力で追い駆けた。

 

 

 

 

「それじゃあ旧校舎が怪しいんですか?」

 

「うん。どの目撃情報も共通して白い影は旧校舎の方へ去って行くから何かがあるのは間違いないと思うの」

 

「そうですか……でもこの数日は早朝にそこでクローゼさんと朝稽古をしていましたけど、特におかしなものはありませんでしたよ」

 

「でも、白い影の目撃情報は夜だから……気は進まないけど今から調査しに行くしかないのよね」

 

 そう言うエステルはどこか浮かない顔をしていた。

 

「もしかしてエステルさんも幽霊が苦手なんですか?」

 

「もって、もしかしてリィン君も!?」

 

「いえ、俺はそうじゃないですけど、アルティナが苦手のようで」

 

 リィンの否定にエステルは肩を落とす。

 

「だってしょうがないじゃない……いるのかいないのかよく分からないだもん。ねーアルティナちゃん」

 

「んっ……んっ」

 

 仲間に同意を求めるエステルとそれに強く何度も頷くアルティナにリィンは苦笑する。

 

「それだったら旧校舎の調査は俺が行ってきましょうか。エステルさんはこっち校舎の見回りをするということで」

 

「ううん、そこまでリィン君に任せるわけにはいかないわよ……

 大丈夫、ちゃんと覚悟は決めてきたんだから大丈夫よ」

 

「あ……」

 

 自分に言い聞かせるように大丈夫と繰り返すエステルはアルティナが上げた声にびくりと肩を震わせた。

 

「ど、どうしたのアルティナちゃん……脅かさないでよ」

 

 恐る恐る振り返ったエステルにアルティナは無言で窓の外を指差した。

 窓の外、そこでは白い影がくるくると踊っていた。

 それは視線に気づいたのか動きを止めると、窓に近付き優雅な一礼をして飛び去った。

 

「っ……今のは……」

 

「ええ、俺がルーアンで見た白い影で間違いありません」

 

 リィンが肯定するとエステルはその場にへたり込む。

 

「エステルさん!?」

 

 ガタガタと震えるエステルにクローゼが寄り添う。

 

「大丈夫かアルティナ?」

 

「問題ありません」

 

「本当か?」

 

「問題ありません」

 

「…………」

 

「問題ありません」

 

 同じ言葉を繰り返すアルティナにリィンが苦笑していると、エステルが突然大声を出した。

 

「い、今さら……怖がるもんですかっ!」

 

「フフ、エステル君も本領発揮と言ったところだね……

 それじゃあ早速、肝試しと行こうか……聞いたところによると魔獣もいるかもしれないから行く人間を選んだ方がいいだろうけど」

 

「アルティナはここでジルさん達と待っているといい」

 

「…………ん」

 

 リィンの提案にアルティナは少し悩んでから、小さく頷いた。

 そして、旧校舎に赴くことになったのはエステル、オリビエ、クローゼ、そしてリィンの四人となった。

 

 

 

 

 旧校舎の地下の奥にそれはいた。

 巨大な装置の前に佇む白いマント姿の男。

 朧気だった影ではなく、ちゃんとした実像として目に見えて足もあり、幽霊などではなかった。

 

「ようこそ我が仮初めの宿に歓迎させてもらおう」

 

 振り返った男の顔には白い仮面。

 その姿にリィンは見覚えがあった。

 

「オリビエさん……」

 

「うん、以前ボースでリィン君に猟兵をけしかけた《怪盗B》で間違いないね」

 

「リィン君達の知り合いなの?」

 

「知り合いというようなものじゃありません……

 前にボースで事件を起こした犯人です。元は帝国を中心に活動していた盗賊みたいですが」

 

「盗賊などという品のない呼び方はやめてもらいたいものだね……

 改めて自己紹介をしよう……

 執行者No.Ⅹ。《怪盗紳士》ブルブラン――《身喰らう蛇》に連なるものなり」

 

「み、身喰らう蛇!?」

 

 その名を聞いた瞬間、エステルとリィンはそれぞれ棒と太刀を構えて臨戦態勢を取る。

 

「結社の人間がこんなところで何をしているのっ!?」

 

「そう殺気立つことはない。今は争うつもりなど毛頭ないのだから……

 その証拠に君の問いに答えよう。私はここでささやかな実験を行っていたのだよ」

 

 そう言うと、ブルブランは背後の装置に手をかざす。

 すると、彼の前に朧げな影が彼の前に現れた。

 

「ゆ、幽霊……ってあれ?」

 

「いや、その装置を使って空間に投影された映像のようだね」

 

「その通り。これは我々の技術が造り出した空間投影装置だ。もっとも装置単体では目の前にしか投影できないのだが、《ゴスペル》の力を加えるとこのようなことも可能になる」

 

 漆黒のオーブメントを装置に置くと、ブルブランの影は軽やかに飛び回り始める。

 

「――とまあ、こんな感じだ。フフ、ルーアンの市民諸君にはさぞかし楽しんでもらえただろう」

 

「け……結社《身喰らう蛇》の人間が新しい《ゴスペル》を使って……

 自分の姿をルーアン各地で飛ばし回ってただけ……ってこと?」

 

「ルーアンの諸君にはさぞかし楽しんでもらえただろう?」

 

「《身喰らう蛇》って……いったい何を企んでいるわけ?」

 

「それは私が話すことではない……これはあくまで《白面》の企てた計画――

 私が今回の計画を手伝う理由は二つ……

 一つはクローディア姫――貴女と相見えたかったからだ」

 

「えっ……?」

 

 突然話を向けられたクローゼは困惑の声を上げる。

 

「市長逮捕の時に見せた貴女の気高き美しさ……それを我が物にするために私は今回の計画に協力したのだ。あれから数ヶ月――この機会を待ち焦がれたよ」

 

「市長逮捕って、ダルモア市長の事件よね? 何であんたがあの時の事を知っているのよ!?」

 

「フフ、私はあの事件の時、陰ながら君たちを観察していた。たとえば……このような方法でね」

 

 ブルブランはその場でくるりと回ると、見慣れない執事服の男に変わる。

 

「あ……」

 

「知り合いですかクローゼさん?」

 

「ダルモア市長の家にいた執事の人です」

 

「そうですか…………ん?」

 

 ブルブランの変装技術にリィンは感心するも、何かが引っ掛かった。

 

「怪盗とは、すなわち美の崇拝者。気高きもののに惹かれずにはいられない。

 姫、貴女はその気高さで私の心を盗んでしまったのだよ。

 他ならぬ怪盗である私の心をね……おお、何という甘やかなる屈辱! 如何にして貴女はその罪を贖うつもりなのか?」

 

「あ、あの……そんな事を言われても困ります」

 

 突然のブルブランの告白にクローゼは困惑する。

 そんな彼女を庇う様にエステルが前に一歩出る。

 

「《身喰らう蛇》……何か思っていたのと違うけど……目的は二つって言ってたわよね? もう一つは何なのよ?」

 

「フ……」

 

「え……?」

 

 意味深な笑みを浮かべてブルブランはリィンに顔を向ける。

 

「私のもう一つの目的は君だよ、リィン・シュバルツァー」

 

「俺……?」

 

「そうっ! 十年前、帝国ユミルの男爵が拾った子供……

 果たして平民なのか、貴族なのか、帝国人なのか、外国人なのか、一切分からない……

 そして謎めき、得体の知れない力に怯え、《剣仙》の指南を受けた少年」

 

 怪盗Bは虚空に両手を広げ、悦に入ったように続ける。

 

「おお、なんと魅惑的で謎めいた真実っ! だがそんな謎よりも私の心はクローディア姫とは別の意味で奪われてしまったのだよ」

 

「え……?」

 

 リィンは思わずたじろぐ。

 

「我が身を省みず強大な敵に立ち向かい……

 鬼に堕ちる寸前に姉弟子との一騎打ちに救い上げられ……

 そして二度の敗北の末に我らの《剣帝》に一矢報いるまでに至り、未だに成長を続ける青い果実……

 ああ、まるでおとぎ話のサーガではないか!」

 

 オリビエのように言い寄られるのかと思ったリィンは思わず安堵の息を吐く。が――

 

「私はそんな彼が紡ぐ物語をこの目で見届けたい。そう……

 超帝国人リィン・シュバルツァーのファン一号として!」

 

「…………え?」

 

 リィンはそこで凍り付いた。

 

「超帝国人……」

 

「そういえば、そんなこともありましたね」

 

 エステルとクローゼが苦笑を浮かべてリィンを振り返る。

 

「むむ、それは聞き捨てならないな。超帝国人ファン一号という栄誉はボクが先に頂戴したものだ新参者は顔を洗って出直してきたまえ」

 

「ほう……私を差し置いてそのような暴言……

 超帝国人誕生の瞬間に居合わせていなかった者にそれを名乗る資格があるとでも言うのか!?」

 

「ボクはリィン君とはリベールに入国した時からの付き合いでね。彼の弱さも目にしている、超帝国人の強さしか知らない君とでは年季が違うのだよ!」

 

「何を言うかと思えば馬鹿馬鹿しい……

 英雄に弱さなど不要、民衆は英雄の強さ、そしてその背中にこそ憧れを抱くもの。超帝国人という英雄に弱さなど罪でしかない」

 

「いいや、弱さがあるからこそ民衆は英雄に惹きつけられる。弱さのない超帝国人など画竜点睛を欠いたものでしかない」

 

「むむ……」

 

「おや、語るべきことはそこまでかい? ふふ、どうやら君はその程度のようだったみたいだね」

 

「旅の演奏家風情が勝ち誇るのはまだ早い――」

 

「いいや、ボクの勝ちだね。超帝国人のことしか知らない君ではリィン君のもう一つの顔のことを知らないのだろう?」

 

「もう一つの顔だと!?」

 

「リィン君のもう一つの顔……そう! リン・シュバルツァーの存在をっ!」

 

「なん……だと……」

 

「流れる黒髪、儚い眼差し、そして赤らめた頬……

 信じられるかい? 完成された一つの美がそこには確かにあったのだよ」

 

「リィン君……」

 

「リィン君……もしかして……」

 

 ――そんな目で見ないでください……

 

 固まるリィンはエステル達に言いたかったが言葉は出てこなかった。

 

「いやまだだ。私はファン一号としてすでに多くの人々に彼の伝説の一端を伝え広めて――」

 

「お…………」

 

 それまで引っ掛かっていた何かを彼の言葉で理解する。

 怪盗Bはダルモア市長の逮捕の場にいた。

 怪盗Bは《身喰らう蛇》に所属しており、そこはヨシュアが過去に所属していた組織でもある。

 そして、そのヨシュアと過去に関係があった様子のラインフォルトのメイド。

 さらには、通りすがりの《達人級》の格闘家さえも今考えれば、もしかしたら結社の一員だったのかもしれない。

 今まで点でしかなかったことが、線となって繋がり、リィンは吠えた。

 

「お前かぁあ!!」

 

 何かいろいろと溜まったものを一気に吐き出すようにリィンは太刀を抜いてブルブランに斬りかかる。

 突然のリィンの行動に誰もが反応できず、ブルブランはその怒りの一太刀をその身に受けて両断された――かに見えた。

 二つに分かれたブルブランは霞になって消える。

 幻のブルブランの背後に何事もなかったように佇む本物は不思議そうに首を傾げる。

 

「何を恥ずかしがる必要があるのだね超帝国人?

 君のあの姿は紛れもなく帝国人を超えた存在。胸を張って超帝国人と名乗ればいいではないか」

 

「そうだよリィン君。ボクも帝国貴族ならばリィン君のように変身の一つや二つは身に付けておくべきだと恥じてさえいるんだ……

 胸を張っていいんだよ超帝国人」

 

「ダマレ」

 

 赤黒い闘気を体から漏らしてリィンは感情が欠落した言葉で二人の息を飲ませる。

 

「ちょ……落ち着いてリィン君」

 

「大丈夫です。エステルさん。俺は十分に冷静です」

 

 陰の気を垂れ流しにしたままリィンはエステルの声に応える。

 一見すれば確かに答える余裕があるのだから大丈夫だと思えるが、今の状況では逆にそれが恐ろしく見えた。

 髪は黒いままだが、すでに鬼と化しているリィンはブルブランを見据え、太刀を構える。

 

「やれやれ……君は超帝国人なのだからそれらしい振る舞いをしてもらいたいものなのだがね……

 いいだろう。私が直々に優雅な戦いというものを教えて上げようじゃないか」

 

 ブルブランはどこからともなくステッキを取り出してリィンに向き直る。

 

「殺す……容赦なく殺す……一片の慈悲もなく殺す」

 

 それまで散々人を殺す刃を振るうことを悩んでいたが、リィンはそれを忘れ思考は《鬼》となっていた。

 

「待ちなさい!」

 

 が、そこにエステルが割って入った。

 

「あんたの相手は私がするわよ。リィン君は下がりなさい」

 

「どいてくださいエステルさん!」

 

「遊撃士は捕縛が原則よ。今のリィン君にそれを守れないでしょ、だから下がってなさいっ!」

 

 一喝されてリィンは口をつぐむ。

 確かにリィンはもうブルブランを斬り捨てる以外のことは考えられなくなっていた。

 臨時とはいえ遊撃士としてはあるまじき考えに業腹だが、正遊撃士の彼女に従う他ない。

 もっともそれを許す相手ではなかったが。

 

「やれやれ、せっかくの好機だというのになんと無粋な……

 相手をしてやってもいいが、せっかくだ《彼》に相手をしてもらおうか」

 

 ブルブランは気取った仕草で指を鳴らした。

 その音を合図に側面の壁だと思っていた扉が音を立てて開く。

 

「半ば壊れてガラクタ同然だったのでうまく動かせるかは分からないが、私と超帝国人と戦っている間の暇つぶしとして思う存分相手をしてやるといい」

 

 見上げる程の体躯の甲冑の人馬兵が両手に持った剣を一閃する。

 

「みんな散ってっ!」

 

 エステルの声にそれぞれがその場から飛びずさる。

 巨大な刃の一撃は床板を易々砕き、さらに振り回された刃が壁を壊す。

 

「まさか……崩れる!?」

 

 その衝撃に天井が崩落を始める。

 

「みんなとにかく外に!」

 

 エステルの指示にリィンも駆け出した。

 崩壊を始める地下遺跡だが、ブルブランは特に動じた様子もなく、彼らの背を見送った。

 

 

 

 

 旧校舎の門を出ると甲冑人馬兵はそれを追い駆けるように地面を突き破り、地上に現れた。

 エステル達がそれと対峙し、リィンもまた加勢に加わろうとするがその前にブルブランが立ちふさがる。

 

「邪魔者はこれでいなくなった。さあ、改めて超帝国人の力を私に見せてくれたまえ」

 

「まだ言うか」

 

「これは異なことを。超帝国人は君が名乗り出したことではないか?」

 

「あれはただのブラフだっ!」

 

 声を大にしてリィンは言い返して、太刀に手を掛ける。

 

「リィン君、そいつの足止めをお願いっ! あと殺しちゃダメだからね!」

 

 エステルの声を背中で聞いて、リィンは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「《怪盗紳士》ブルブラン……

 遊撃士協会規約に基づき、不法侵入などの容疑で拘束するっ!」

 

 自分に言い聞かせるように宣言してリィンはブルブランに刃を向けた。

 そして――悪夢が始まった。

 

「ははは! どこを見ている超帝国人、私はこっちだ!」

 

「フフフ、今のは惜しかったな超帝国人」

 

「おっと、どうした超帝国人よ。君の力はその程度ではないだろ? 《剣帝》に一矢報いた本当の姿を早く見せてくれたまえ」

 

 シャドウキャスト。

 ブルブランが使う幻影の戦技。

 かつてリィンが経験した分け身とは違い、実態のないただの幻影なのだが厄介さはそれに勝るとも劣らなかった。

 なぜならリィンは十数人の高笑いを上げるブルブランに囲まれているのだから。

 

「《二の型、疾風》」

 

 その包囲を斬り抜けるように駆け抜け、一撃ずつ斬り付けていくが、その全てに手応えはなかった。

 

「ははは! 残念またはずれだっ!」

 

 声とともに残った数人のブルブランたちが一斉にナイフを宙に浮かべてリィンに投げつける。

 

「くっ……」

 

 そのほとんどがまやかしだったが、本物の一本がリィンの足を掠めた。

 その気があれば、当てられた言わんばかりの攻撃がリィンの心をさらに苛立たせる。

 そして怯んだところで再びブルブランの幻影は増えていく。

 

「次はどうする超帝国人?」

 

「まさかこれで終わりではないだろ超帝国人?」

 

「さあ、早く君の真の姿を私に見せてくれたまえ超帝国人」

 

「あああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

 ブルブランの声を掻き消すようにリィンは叫び、なりふり構わず太刀を振る。

 

「ふふふ、そうだ。もっと頑張りたまえ超帝国人」

 

 一人斬る間に新たな幻影が増える。

 そしてそのたびにリィンにかすり傷は増えていく。

 

 ――もっと……

 

 全て幻影を斬り伏せるには速さが足りない。

 

 ――もっと……

 

 ブルブランの余裕を失わせるには殺意が足りない。

 

 ――もっと力を……

 

 封じられた《力》を求めずにはいられない。

 目の前の男を黙らせ、殺す力をリィンは切に願う。

 しかし、胸の焔はリィンがいくら望んでも燃え上がらない。

 ならばと、リィンは自分の中の焔を見限り、自身の殺意を燃え上がらせる。

 

「風花陣」

 

 それはかつてアネラスが使った闘気法。

 《鬼の力》を使う要領で自分の闘気で身体能力を高める。

 

「むっ……」

 

 ブルブランは勢いが増したリィンのプレッシャーに顔をしかめる。

 

「うおおおおおおおっ!」

 

 後のことなど知ったことではないと言わんばかりにリィンは幻影を倍の速度で斬り伏せていく。

 

「ははは、調子が出てきたじゃないか超帝国人。ではそろそろ本気で当てさせてもらおうか」

 

 そんなリィンにブルブランは笑い、新たなブルブランが現れると共にそれらは一斉にナイフを投じる。

 全方位からの刃にリィンは本物を見極められないと割り切って――

 

「神気合一」

 

 本来なら長い駆動が必要なアーツなのだが、研ぎ澄まされた集中力によりリィンは一瞬で七耀の力を組み上げて発動させていた。

 髪は白く、目は灼眼に染まる。

 

「おおっ! それが《鬼の力》か!」

 

 ブルブランの感動の声を無視してリィンは動く。

 湧き上がる力をそのまま剣に乗せ、リィンは脳裏にある男を思い浮かべて、その場で一回転して剣を薙ぎ払う。

 

「孤影斬っ!」

 

 その男とは違い、そして本来の孤影斬とも違う使い方。

 直線的に放つ斬撃を自分を中心に全方位に放ち、投擲されたナイフと共に包囲している十数のブルブランを一度に薙ぎ払う。

 

「ふー……ふー……ふー……」

 

 リィンは肩で息を整えながら油断なく周囲を回してブルブランの姿を探す。

 しかし、見晴らしの良くなったそこにはブルブランの姿はなかった。

 

「ククク、ハーハッハッハ!」

 

 笑い声は上から。

 月を背負い、いつの間にか半壊した旧校舎の上で高みの見物を決め込んでいたブルブランは抑え切れない言わんばかりに笑う。

 

「リィン・シュバルツァー!!

 君はいったいどれだけ私を楽しませれば気が済むのだね!?」

 

 リィンはその言葉に応えず、ただ彼を睨みつける。

 

「今の剣技、多少のアレンジは加わっているが間違いなく《剣帝》の一撃!

 まさか彼の動きを盗むとは、なんという大胆不敵で恐れ知らず……いや流石は超帝国人と言うべきなのだろう」

 

 感服したとブルブランは手を叩き、惜しみない賞賛を送る。

 

「どおりゃあああっ!」

 

 そこに気合いの入った声と共に大きな何かがブルブラン目掛けて飛来した。

 命中の寸前、ブルブランの姿はそこから掻き消え、目標を見失った甲冑人馬兵の首はそのまま旧校舎の屋上を砕いた。

 

「ああ、外れたっ!」

 

 遅れてエステルがリィンの横に並んでそれを悔しがる。

 

「やれやれ、なんと優雅さに欠ける戦い方だな。少しは彼を見習いたまえ」

 

 屋上から街灯に着地したブルブランはやれやれと肩をすくめる。

 

「うるさい。余計なお世話よ! このキテレツ仮面っ!」

 

「この仮面の美しさが分からないとは、君には美の何たるかが理解できていないようだ」

 

「笑止千万っ!」

 

 ブルブランの言葉に真っ先に異を唱えたのは、彼女に遅れてやってきたオリビエだった。

 

「そのような狭量で美の何を推し量れよう」

 

 オリビエはそのままブルブランを指差して問いかける。

 

「怪盗紳士に問おう、君の言う《美》とは何ぞや!」

 

「何かと思えば馬鹿馬鹿しい……」

 

 ブルブランはマントを翻し、手を月へとかざして答える。

 

「《美》とは気高さ! 遥か高みで輝くことっ!」

 

「否っ!」

 

 そんなブルブランの答えをオリビエはすかさず否定する。

 

「真の《美》……それは《愛》ッ!」

 

「なにッ!?」

 

「愛するが故に人は美を感じる! 愛なき美など空しい幻に過ぎない! 気高き者も、卑しき者も愛があればみな美しいのさ」

 

「くっ……小賢しいことを……だが私に言わせれば愛こそ虚ろにして幻想!

 人の感情など経ずとも美は美として成立し得るのだ! 

 そう! 高き峰のいただきに咲く花が人の目に触れずとも美しいように!」

 

 負けじと熱弁を振るうブルブラン。

 そして二人はどちらともなく笑い出す。

 

「まさかこんなところで《美》を巡り好敵手に出会うとは……演奏家――名前を何という?」

 

「オリビエ・レンハイム。愛を求めて彷徨する漂泊の詩人にして狩人さ」

 

「フフ、その名前、覚えておこう」

 

 ブルブランはそう言ってエステル達に向き直る。

 

「こんなに愉快な時間を過ごしたのは久しぶりだ。礼を言わせてもらうぞ諸君……今宵はこれで立ち去るとしよう」

 

「え!?」

 

「どのみちこの地での私の実験はすでに完了しているのでね……

 念願の姫君への拝謁がかない……超帝国人の可能性を確認できた。そして好敵手との邂逅までできた今、ここにとどまり続ける理由はない」

 

「それで、はい。そうですかって見逃すと思っているのかしら?」

 

「フ……」

 

 棒を構えるエステルにブルブランは笑みを浮かべて、一本のナイフを投げた。

 

「どこを狙っているの!? そんなもの――」

 

 ナイフの軌道を見切り難なく避けたエステルは地面を蹴ろうとして体を固まらせた。

 

「なにこれ? 体が動かない?」

 

「エステルさん!?」

 

「まさか《影縫い》!?」

 

「知っているのかいリィン君」

 

「東方の技で相手の影に針を刺して動きを止める技です。でも、俺も見るのは初めてです」

 

 リィンは続く攻撃を警戒してエステルとブルブランの間に割って入るが、ブルブランは不敵な笑みを浮かべてステッキをかざす。

 すると風が吹き、彼の周りに赤いバラの花びらが舞い踊る。

 

「待ちなさいブルブラン!」

 

 体を固めたままエステルは叫ぶ。

 

「あんたにはまだ聞きたいことが……

 待って……! 教えてっ! ヨシュアの……ヨシュアは今どこにいるの!?」

 

 それは犯罪者に問い詰めるような強い口調から、すがるような声でエステルは叫ぶ。

 

「漆黒の牙か……記憶を取り戻したと聞いているが、どこでどうしていることやら」

 

 答えになっていない言葉を返すと、ブルブランの体は花びらに覆い隠される。

 

「計画はまだ始まったばかり……せいぜい気を抜かぬがよかろう。バサッ!」

 

 ブルブランは大きくマントを翻し――

 

「さらばだ諸君」

 

 その言葉を最後にブルブランの姿は消えた。

 

「……わわっ!」

 

 同時に影縫いが解けたエステルはバランスを崩してその場に転ぶ。

 

「いたた……キテレツな格好はともかく、並みの相手じゃないみたいね」

 

 ブルブランを取り逃がしたことを嘆くようにエステルはため息を吐く。

 

「これはボクも好敵手と認めざる得ないね」

 

「でも、あんな相手と一人で戦えるなんて、流石ですねリィン君」

 

「ふ……それはそうさ、クローゼ君。何たってリィン君は我がエレボニア帝国が誇る超戦士、超帝国人なのだからね」

 

「いや……オリビエ、あんたどこでそれ知ったのよ?」

 

「フ……それを説明すると長くなるけど……

 それにしても二人ともうらやましい限りだよ。超帝国人の誕生にはボクも立ち会いたかったものだよ……ってあれ?」

 

 気持ち良く話していたオリビエは首を傾げ、リィンに振り返った。

 

「どうしたのかなリィン君? 君なら超帝国人って呼ぶなっ! という具合に激しく突っ込むところだよ?」

 

 などとオリビエは恐る恐る声を掛けるがリィンはその場から微動だにしない。

 これはおかしいとエステルとクローゼは顔を見合わせて声をかけようとしたところで、リィンの手から太刀が零れ落ち、リィンはその場に膝を着き崩れ落ちた。

 

「リィン君!?」

 

 自分たちが知らないところで傷を負っていたのかと、クローゼは慌てて戦術オーブメントを取り出してリィンに駆け寄る。

 

「大丈夫ですか? どこを怪我したんですか?」

 

「もう――」

 

 クローゼの呼びかけにリィンは虚ろな言葉をもらし――

 

「もうやだ……ぐす……」

 

 彼はまるで幼子のように泣いていた。

 

「り……リィン君。どうしたんだい? そんな顔をされたらボクは……ボクは――」

 

「やめいっ!」

 

 顔を赤らめるオリビエを何かする前にエステルは棒でぶん殴る。

 

「大丈夫ですよリィン君。もうリィン君をいじめる人がいなくなりましたから」

 

 そしてクローゼはぐずるリィンの頭を優しく撫でた。

 

 

 

 

 




いつかの帝都IF
アルフィン
「初めましてリィンさん。私はオリヴァルトお兄様の妹、事故物件のアルフィン・ライゼ・アルノールと申します。うふふふ……」

セドリック
「あわわわわ」

リィン
「すいませんでしたっ!(土下座クラフト)」


いつかのバリアハートIF
ブルブラン男爵
「君たちがこれから探そうという無垢な木霊の涙……それを先ほど、この目で見たと――」

リィン
「破甲拳っ!」

マキアス
「何をやっているんだ君は!?」

サラ
「はぁっ!?
 リィンが街中で暴行事件を起こして、マキアスもそのおまけで領邦軍に捕まったですって!? 何やってんのよあの子は!?」




ありえない煌魔城
鉄血宰相
「超帝国人ファン一号、この私が乗っ取らせてもらった」

放蕩皇子・怪盗紳士
「「なん……だと……!?」」


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