こんな世界間違ってると、ずっと思ってきた
何が間違ってるとか、具体的にどう悪いとかはまだその頃は分からなかったけど。
ありのままを受け入れてくれない世界が、多数派にいることを強要する世界が。良すぎず悪すぎず、目につかない程度を強要する世界が嫌いだった。
俺はずっと弱者だった。一番早くから気づいていたさ、駆けっこも早くないし、テストの点もまあまあだし、何よりうまくみんなと仲良くできない。
致命的な欠点だ、まあそれはいい、一人でいることは悪いことじゃない。視界に映らなければ何かされることはない、せいぜいあいつ陰キャじゃねとか、できるやつをさらに引き立たせるモブにいつの間にかなっているぐらいで、大抵みんなにも迷惑かからないし、なんなら誰にも気づかれず落ちてるゴミを拾って捨てるを繰り返し、みんなの教室を少しずつ綺麗に保ちつづけ、最後にはゴミタニ君の称号をいただくまである。直球すぎんだろ捻れ、普通にバレてるし、一時期ヒキタニ君はゴミで育つという噂が立ったほどだ。小さな親切心の結末がこれである。陰キャのレッテルは善行をかき消すらしい。
そんなこともあってこの世の中は優しさ親切は必ずしも報われないと気づいてからは、もっとひとの目につかないように努めた、やることだけをする様に、やるべきことをできるように。
しかし、 俺にも怒ったりすることはできたようで、まあ自主的にごみ拾いとかする少年だ、人並みに正義感とかはあったんだろう、目の前で殴られ続ける同い年くらいの少年を放って置けなかった。べつに格闘技をやったりしていたわけではなかったけれど、とにかく殴ってたやつらにむかって突っ込んでいって殴りかかった。
そっからどうなったかはよく覚えてない。まあ、よくみたら相手は年上みたいだったし体も大きかった、しかもふたりだったから勝てるわけもない。気がついたら周りには誰も居なかった。殴ってたやつも、殴られてた奴も、夕方で人のいない公園に大の字に倒れていた俺は、よく覚えてないけど確か守りきったはず、と先ほどの戦い(一方的)を振り返り、ニヤァと痛む顔面を無理やり笑みの形に捻じ曲げる。
誰もいないのは仕方ない。感謝されたくてやった訳ではないし。ただただあの光景を見続けなくなかっただけだった。弱者だからと、みんなと違うからという理由で、いじめてる当人たちだってなんとなくでいじめはじめて。
そんな理由で誰かが苦しんでいい訳ないと、そう思ってしまっただけだ。
だから今流れてる涙は久しぶりに怪我して痛くて流れてるだけだ。
一人でいることをおもいだして、むなしくなったりしてる訳ではない。
よく分からない涙を止めようと砂まみれのまま手で顔を覆い隠そうとした時、頭の上から声がした。低く、唸るような声が。鋭く、脳を揺さぶるような声が。
「ようガキ、おまえ、なかなかやるじゃねぇか。」
これは、小学六年生から、その後の俺の人生のすべてを決めた運命の出会いだった