俺たちの世界は間違っている。   作:ゆきわぎ

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影喰らい

車の後部座席にもたれながら窓の外を見ていた。

相変わらず東京は眠らない。

夜ぐらい休めよ。そんなんだからKAROSHIとか言う英語が出来るんだよ。

今外を歩いてる人達は、同じ地平の上で人身売買があったなんて思いもしないだろう。

いや、知識としてはなんとなく知っていても実感出来ないんだろう。

 

今やあの学校の、あの不思議な部活の方をそんな風に実感できない自分は、やはり逸脱し過ぎてしまったんだろうか。

 

人が死ぬ事が日常で。

 

みんな不幸なのが当然で。

 

そんな世界を変えたくて始めた筈なのに。

 

いい加減わかるさ。きっと一生やったって何も変わらない。

 

殺した分だけ現れて。

増えた分だけ消えていく。

 

世界はそうやって出来ているらしい。

きっと緩やかに変わってはいるんだろうけど。

ちっぽけな人間ではそれを体感することなんてできない。

 

だから変わってないのと同じだ。

 

あいつは変えられるだろうか。

もしくは、

こっちを見てもまだ変えると言えるだろうか。

 

関わって来て欲しくない。

 

あいつには、普通に幸せになって欲しい。

 

これ以上増えないでほしい。

 

思考がナーバスになっている。

最近はあんまりなかったのに。

 

俺が自分の心の起伏に戸惑っていると。俺のポケットで携帯が震える。常に通知をオフにしている俺の携帯を震わせられるのは、限られている。即ち、会社からだろう。

 

うんざりしながら電話に出る。

 

「もしもしー?仕事の電話には3コール以内に出ろって習わなかったんですかー?」

「そんなんだからだらしがないとか、礼儀がなってないとか言われるんですよ!本当はいい子なのに!そんな風に誤解ばかり広がって!」

「でも大丈夫。オネーサンだけは味方だよ?だから婚姻届けに判を押して!」

 

「”影喰らい”さん!」

 

「…お疲れ様です。恵理さん。あと影喰らいって呼ばないで下さい。」

 

出た瞬間よく分からないことを喚いていたのは、基本的に俺のオペレーターをしてくれる恵理さんだ。おそらく偽名。本名は知らない。更に言うなら顔も知らん。

駆け出しの時こそカトリアさんが面倒を見てくれていたが、俺がそれなりになって、正式に”会社”と契約を結んでからはこの人と組んでいる。

何と言ってもうるさい。そして実年齢は24らしく。結婚に焦っているらしい。

 

「なんで?かっこいいじゃないですか!”影喰らい”!」

「いや、普通に恥ずいし。」

 

影喰らいというのは俺のあだ名だ。

傭兵、特に暗殺の多い人間はもちろん本名では呼ばれない。しかしある程度認められ、有名になってくると名前を呼ぶ必要性が出てくる。

そのへんで大体誰かしらが勝手につけるのだ。

 

それで俺についたのは影喰らい。

由来は知らない。たぶん黒い服着てるし影薄いからとかだと思う。知らんけど。

 

「それで、何の用ですか。」

「えー?普通に事後報告受けですよ。まあ、割と聞くまでも無いですが。どうなったとかは知ってますし。体制だけですよ。」

 

そーなのかー、と。とりあえずざっくりとした内容と異常の有無を告げる。

 

「ふい。了解。お疲れ様でした。今んとこは次の任務とかも入ってないですし。しばらくゆっくりできますよ。これはいつも頑張ってる超美人なオペレーターのお姉さんにサービスしろって上からのお達しですよ!」

「いや、美人とかは知らないですけど。普通に一人でゆっくりします。」

「えー!?なんでー!?いーじゃんちょっとくらい!私の素顔を見るチャンスだよ!?」

「いや、特に興味ないんで」

 

えー。と割とショックを受けてそうな声を聞き流す。こう言う手合いは無視が一番だ。疲れてるし寝たい。やがて諦めたように。

 

「はあー。ま、仕方ないかー。

あ、そう言えば精神科医の件ですけど。そいつをシノギに使ってたマフィアを近々潰そうってなってるみたいです。ええ、もちろん依頼ですが。今度は警察の上層部から内々に来た依頼みたいで、さっきゆっくりできますよって言ったのに申し訳ないですが招集かかるかもね。」

 

はあ、ですよねー。

関東に住んでいる俺は基本的に呼ばれる頻度が高い。なかなか一ヶ月以上何もないとかはないのだ。

 

「でも、あのマフィアもやりますよねー。精神科医は、借金に追われてずっとあんな事続けてましたけど。そもそもその借金をふっかけてたのは、そのマフィアの傘下の闇金会社らしいですし。」

「…そっすか。」

「うわ、興味なさそう。まあ、当然か。」

 

興味なんか出るはずもない。あーゆーやつのそんな事までいちいち気にしてられない。どうせまたすぐにあんな感じのやつを殺しに行くのだ。

 

「あ、あと。別に敬語いらないっすよ。自分の方が年下ですし。」

「はい?ああ、いやですね。カトリア姐さんに実働するひとたちへの敬意を忘れるなって言われてますから。オペレーターの鉄則です。」

 

そう言うもんなのか。と、恵理さんとの雑談は、そこで終わった。

 

 

影喰らいさんと組んでからもうすぐ二年が経つ。最初の時こそ何考えてるのか分からない人だと思っていたけど。たまに見せる感情らしきものに、確かな人の熱を感じた。

 

あの人は悪い人じゃない。

寧ろなんでこんな人がこの世界にいるのか分からない。

目の前で起きる凄惨な悪夢に、なんでもないように振舞いながら。その実いつも傷ついている。

その姿は、まるで強がる普通の子供のようだった。

たった一人。こんな世界に中学生から飛び込んで、未だに希望を捨てていない。

 

その身を擦り減らしながら。おそらく自分でもその傷に気がついていないのだろう。

 

いつも他人を優先し。そして時に標的にすら心を寄せてしまう。

 

それがきっと彼にとって当たり前なんだろう。

誰かを助けるためだけに自分を鍛えて来たんでしょう。

 

彼は世界にさす影を喰らう者。

今はまだその影響は小さくても、いつか暗い場所を晴らしてくれる。

 

大丈夫です。影喰らいさん、私だけは、最後まで味方でいますから。




オリキャラさんです。
まだまだ原作キャラは絡めません。
葉山君も早く出したい。みんな頑張る小説です。

温かなコメントありがとうございます。
結構読みづらいかと思いますが頑張ります。
感想評価アドバイス、お待ちしております。

しかし酷評されすぎると死にます。
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