俺たちの世界は間違っている。   作:ゆきわぎ

17 / 42
まるで別人であるが如く

翌日明朝

家に帰る前に千葉にあるセーフハウスでシャワーを浴びる。

返り血なんて浴びてはいないがゆっくりと汗をながす。

30分程かけてさっぱりし、浴室から出て身体についた水滴を拭き取る。

ふと、鏡に映った自分と目があった。

 

相変わらず死んだ目は、鍛え上げられた身体と相まってまさに殺し屋だ。と、自嘲気味に笑う。

ここに他人がいたら鏡に向かってニヤついてる俺に悲鳴を上げただろう。

 

随分と筋肉もついた。不必要に盛り上がるでなく。完璧に引き締められた身体は、ある種の機能美を思わせる。

人を殺す事を目的とした一つの武器。

自画自賛をしているわけではない。

 

俺をここまで鍛えてくれた師匠を思い出していた。

 

あの人は俺が一人でも大丈夫だと思った日に中東に行ってくると言って、いなくなった。

 

不安もあったがまあ仕方ない。寧ろあんなに何年もついてくれてたのが幸運だったのだ。今までも何度か仕事に行く事はあったが、今度のはもういつ会えるか分からない。

 

しかし、まあ。必要になれば会えるだろう。お互いに。

なんとなく、そんな気がするのだ。

 

カトリアさんとはたまに連絡をとっている。

近況報告をしたり、直接は連絡が取れない師匠のことを教えてくれてたりする。

 

これが今の俺の日常だった。

 

反吐がでる様なクソ野郎どもを見て来たし、吐きそうなほど酷い場所も見て来た。

 

でもこうやって、少しでも何かの為に戦える日々がそんなに嫌いじゃなかった。

 

何処までいっても自己満足で、あいつらはいなくはならないとわかっていはいるけど。

 

それでも、嫌いじゃなかったんだ。

 

世界は変わらないけど、個人の周囲は簡単に変わる。

 

世界から見れば小さくて。四捨五入で修正される個人の世界。

 

変わらないものなんてないとわかっていた。

 

小さい出来ごとで、ほんの運命の悪戯で、ちょっとした不幸で。

人の人生は、大きく形を変える。

 

ずっと見て来た筈なのに。

 

分かっていた筈なのに。

 

 

「うーす」

「こんにちは、腐り谷君」

「え、なんで挨拶罵倒で返した?何処の国の文化?」

 

月曜、放課後

前のごとく平塚先生に捕まった俺は、またもやここに来ていた。

そこの最初の会話がこれである。世界には俺の知らない文化や風習がたくさんあるらしい。

 

「あなたの目、初めて会った時より酷いことになってるわよ?誰かに呪いでもかけられたの?」

 

まじで?いや、呪ってきそうなのには心当たりありすぎるけど。どうりで朝からいつも以上にみんな目をそらすわけだ。

仕事の次の日とかはよくある。最初の頃は小町にもよそよそしくされて、仕事辞めようかと思ったほどだ。

 

と俺が少しでも輝かせようと目に力を入れながら椅子に座ると、ゆらゆらと湯気の立つ紅茶が差し出された。礼をいってありがたくいただく。

 

のんびりと、二人とも無言で本を読む。

因みに今読んでいるのはテニ○の王子様だ。理由は特にない。マジでない。

 

ゆったりと、時間が流れる。ちょっと違うかも知れないが、これが普通の日常というやつだろうか。

雪ノ下はきつい奴だが、なんとなく、悪くないかも知れない。

 

そんな事を考えながら過ごしていると、ふと、廊下に誰かの気配を感じた。

 

「やっはろー!」

 

元気よく部室のドアを開けて頭悪そうな挨拶をしてきたのは、木炭工場の工場長こと、由比ヶ浜結衣である。ちなみにやっはろーというのはその工場の名物挨拶だ。なにそのアットホームな会社。

 

まさかまた木炭の直売りか?と俺がビクビクしていると。

 

「…こんにちは由比ヶ浜さん。何か用かしら?あとドアはノックして入ってきて頂戴。」

 

一瞬自失していた我らが部長がなんとか持ち直し、由比ヶ浜に用件を問う。いいぞ!頑張れ部長!そのままなんとかして帰らせろ!

 

俺が心の中でどう見ても面倒な奴と部長を戦わせていると。

 

「ふっふっふ。なんとぉ、私がぁ、依頼人を連れて来ました!」

 

…なんか聞いたことある宣言だな…。具体的に言うと先週。

 

その言葉と同時に由比ヶ浜の背中に隠れていた女子生徒が姿を現わす。

「こ、こんにちは。えと、戸塚彩加です。お願いを叶えてくれるって聞いたんですけど…。」

 

 

美少女がいた。

 

結論を言おう。

美少女ではなく、美少年だった。

 

世の中絶望しかない。いや、待てよ?女子じゃないって事は、もっと距離が近い。変に勘違いする事もない。むしろ、戸塚が正解?

 

俺が訳の分からん考えに囚われている間に話は進んでいたらしい。

どうやら戸塚の所属するテニス部を強くしたい的な話で、なら先ず戸塚を強くしようみたいな話になり、いつの間にか運動服でテニスコートにいた上に翌日。これがキングクリムゾン!時間を吹っ飛ばされた。さらに言うなら由比ヶ浜が部活に入った。俺の意識飛び過ぎじゃない?

 

「ふぐっ、うう、うぅ!」

「うぅーんっ、うあ!」

 

今悩ましげな声で唸っているのは戸塚と由比ヶ浜である。

二人は地面に伏せ、懸命に自らの身を持ち上げようとしていた。

汗が滴り、地面を濡らす。

「ふむ、八幡、努力する者とは、何故かくも美しいのだろうな。」

「…いや、誰だお前。」

 

ふと横に、見知らぬデブがいることに気づいた。

…いや、誰。割とマジで。

 

「ふっふっふ。どうした、八幡よ。この其方の盟友にして、剣豪将軍材木座義輝を忘れるとは、見損なったぞ!…いや、八幡?そんな引かないで?待って、遠い!もうかなり遠くに行ってる!」

 

一瞬でキャラが取れた。ほんとなんだこいつ。

警戒度をガン上げして、運歩で距離を取り、冷静に相手を観察する。

どう見てもただのデブである。

 

…あー、なんか思い出してきた。確か戸塚が来てすぐぐらいに来た材木座義輝だ。なんか小説がどーのって言って。戸塚の件が話ついた後に自作の小説出して滅茶苦茶酷評されたんだっけ、雪ノ下に。…なんでいんのこいつ。

 

はぁちぃまぁんー!と、滅茶苦茶きもい感じで寄ってくる材木座を撃退しようとファイティングポーズをとっていると。雪ノ下に呆れた声で呼ばれる。

 

「二人とも、馬鹿な事してないであなた達もやりなさい。」

「「え。」」

 

と言うわけで俺たちも腕立てである。

何故みんなで腕立てなんかしているかと言うと。戸塚のテニスを上達させる為、先ずは筋トレから、と言うことになり。「先ずは死ぬまで走って死ぬまで腕立て。それから死ぬまで腹筋して、死ぬまで素振りをするところから始めましょう。」と言う部長の何も始まらない、むしろ4回終わる提案を俺と由比ヶ浜で却下し、とりあえずランニング4キロ、腕立てを30回3セット、腹筋30回3セット。からの素振りで落ち着き、実践なうである。

雪ノ下、その訓練で育つのはランボーか特攻野郎だけだ。

 

俺は慣れてるのもあってすいすいこなす。体力ないふりしようかとも思ったけど、雪ノ下には格闘技やってんのバレてるし、変に演技しても逆に疑われてしまうだろう。かと言っていつものペースでやっても目立ってしまうので、普通にこなす。材木座は20回からしんどそうにしていた。

戸塚と由比ヶ浜はまあ、10回ちょいでやばそうだった。腕立て伏せは簡単そうに見えるが正しくやるとかなりきつい。健康な男子高校生でも全くやってなかった人にはきついだろう。

 

「…ヒッキー、意外。」

「比企谷君すごい…!」

「…こひゅーっ、こひゅーっ、さすっ、我が、盟っ…友!ごふっ、ごはっ!」

 

それでも軽々とこなすのは驚かれるらしい。ちょっと調子にのって腕だけ伏せとかしそうになる。ここは我慢だ。…ああでも戸塚にいいとこ見せたい…!あと材木座大丈夫か。

 

雪ノ下は中々やるわねみたいな顔で見てた。監督役でふんぞり返っている。部長もやれ。いや結果は目に見えてるけど。

 

適宜数を減らしながら筋トレ終了。素振りが終わりその日はお開きとなった。

 

そんな事を3日ほど続け。少しずつテニス自体の練習も織り込んで行き、昼休みにもやり始めたある日。またもや面倒な事件がおきる。




今週はちょい忙しく、更新がまちまちになります…!
すいません!


戸塚かわいい
けど早く先に進みたいので結構カット。材木座君もセットです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。