俺たちの世界は間違っている。   作:ゆきわぎ

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テニスの逆襲者

「あれ?なんかテニスしてない?」

 

昼休み、筋トレは量を減らし、テニスに直結する練習を始め、その中でもひたすら俺がボールを投げて戸塚がそれを打ち返すと言う練習をしていた時。そいつらはやって来た。

 

「おー、テニスとか久しぶりじゃん。あーしもやりたいんですけど。」

 

そう。リア充筆頭。炎の女王、三浦優美子である。

 

「ゆ、優美子…。」

「あれ?結衣?テニスやってたっけ?」

 

由比ヶ浜が来ちゃったかーみたいな感じの、複雑そうな顔をしている。

まあ、練習を手伝ってくれるようには見えない。むしろややこしい事になるのが目に見えている。

なんとか由比ヶ浜がやんわり帰してくれないかと思ったが。

 

「い、いやー、今ちょとさいちゃんの練習を手伝ってるっていうか、遊んでるわけではないというかー…。」

「は?こここうきょうのばっしょ?別に関係なくない?」

 

まあ、無理だろう。由比ヶ浜と三浦は友達()だし、言って聞くような相手でもないだろう。かと言ってここで三浦達がテニスコートを使う事を許容すればたちまちこの場所はリア充達の巣窟となり、練習どころではなくなってしまうだろう。

既に三浦優美子の後ろにはイ☆ケ☆メ☆ンボーイ葉山隼人と愉快な仲間たちが控えている。その人数だけでもこの小さいテニスコートはウェイウェイコールで埋まってしまうだろう。なにそれめっちゃ怖い。

 

「あー、俺たちもテニス部の戸塚の練習に付き合うっつって職員に許可取ってんだわ、わりいけど練習滞りそうだから勘弁してくれ。」

 

三浦と葉山から、剛柔一体の構えで責められる戸塚と由比ヶ浜を見てられずそう言って声をかける。なんかえ、誰。みたいな感じで見られたが気にしない。

こんな時に限って切り札の雪ノ下は足をぐねった戸塚の為の救急セットを取りに行って不在している。

 

「は?今してなくない?」

 

戸塚怪我してんだろ見てわかんねえのか。と口から出そうになるがもっと面倒になりそうなので抑える。この場限りでとかでも認めたらなし崩しでテニスコートの主導権を奪われるだろう。リア充とはそういった謎の引力を持っているものだ。

そのままやいやいと話は踊る。どうしようめんどくさいな黙らせちゃうかと俺の思考があらぬ方向に行き始めた時。

 

「じゃあ、テニスで勝負するのはどうかな?」

 

と、爽やか野郎葉山君がなんか言い出した。

いやマジで何言ってんの?俺たちがそれやる意味よ。これあれだ、お菓子とか食べてる時通りすがりのやつにあ、俺も頂戴って言われてえ、絶対やだよって言うとじゃあ、じゃんけんで買ったら頂戴って言われるのと同じだ。つまり意味わからん。

しかし三浦はさすが隼人…みたいな顔してる。由比ヶ浜と戸塚ももうそれしか…な感じだし。これがリア充…!凄まじい話術だ…!いや、おい。

 

俺が困惑してる間に話は進む。え、どうしよう。ていうか俺がやんの?

 

「じゃあ男女混同のダブルスね、まあ組んでくれる人がいるか知らないけど?」

 

ルールまで決まってた。え、だから俺がやんの?材木座は?あ、いねえし。とゆうか実際組んでくれる人いないし。戸塚怪我してるし、詰んでね?三浦めっちゃ勝ち誇ってる。俺なんかした?

しかたがない。あまりやりたくはなかったが。伝家の宝刀、DO☆GE☆ZAを出すしかないか。

師匠も言っていた。話を聞かない女には有効だと。何があったんだ師匠。

「…私がやる。」

 

と、俺が膝を折ろうとしたとき。そんな声を上げたのは。由比ヶ浜だった。

小さいが、重く、強い声だった。

三浦も、え?みたいな顔をしている。俺は顔には出さなかったが普通に驚いていた。だって、お前は。

 

「ごめん優美子、でも。私はこっちにするね。」

 

と、彼女はそう言った。

 

「…ふん。勝手にすれば。」

 

三浦はつまらなさそうに、準備の為に引っ込んだ。

 

「…おい由比ヶ浜、やめとけ。」

「いいの、ヒッキー。悔しいもんね。」

 

由比ヶ浜はそう言い切った。短いが、決意のある言葉だった。

こいつにとって、周りに合わせてしまう彼女にとって、三浦に逆らうのは勇気のいる事だろう。三浦がこれで由比ヶ浜を嫌いになる様な小さい奴かどうかは知らないが、それでも、彼女にとって友達である三浦の敵になるのは大きい意味を持ってしまう。

 

こいつは、こう言っちゃなんだが、ただの依頼の為に自分の交友関係を掛けた。目標の為に頑張る戸塚を軽んじるあいつらを許せなかったのか。

 

由比ヶ浜は優しい女の子だ、この世界は優しさが必ずしも実を結ぶ訳ではない。訳ではないが。俺の前であった時は。

 

正直変に目立ちたくなかったので適当に流そうかと思っていたが。

予定変更。ちょっとぐらいは、やる気をだそうか。

 

 

各自テニス部に借りたテニスウェアに着替える。相手は三浦と葉山。3ゲームやって多く取った方の勝ち。

先攻は俺たち。

 

「ヒッキー、気をつけて。優美子、中学の時インターハイ行ってるから。」

 

…そう言うのは早く行ってくれませんかねぇ…。

えー、無理ゲーじゃん。流石に”戦闘術”もテニスはやってない。何故かサッカーはやったけど。

経験者に簡単に勝てるかと訊かれれば難しいと答えるしかない。加えて葉山はサッカー部のエースで運動神経抜群。対する由比ヶ浜はお世辞にも運動が得意そうとは言えない。

勝算は薄い。葉山は申し訳なさそうな苦笑を浮かべ、三浦は勝ちを確信している。野次馬達もどう見ても弱そうな俺を見て憐れそうな、せせら笑うようにしている。戸塚も審判席で不安そうにしていて、材木座は野次馬に混じって訳知り顔で腕を組んでいる。何やってんのあいつぶっ飛ばすぞ。

 

左手でボールを確かめるように握る。体育の時間のテニスと、テニプ○を思い出していた。

ふーっと息を吐いて脱力する。まずは小手調べ。軽くをイメージして力まないように意識する。

 

ふっとボールを上に放る。頭はクールだ、手先まで脱力が行き渡っている。

 

さて、話はそれるが、武術の極意は脱力と聞いた事がある人もいるのではないだろうか。0から100へ、瞬間的に全力を発揮するには、技を出す前に如何に脱力するかが肝となる。特に、振ったり切ったりする時は。

 

今回俺は、いつもの癖か。力を抜き過ぎたらしい。

 

スパァァアン、と何かが爆ぜるような轟音と共に、俺の打った球は豪速で相手のコートへと直進する。そこからだんっがしゃああん!といちいちでかい音を出しながらテニスボールは地面と金網を順番に叩いて行った。

 

てんってんっと、どこか気の抜けたように、跳ね返ってきた球が勢いを失ってコートに戻ってきた。

誰も声を出さなかった。全員が球を見て、次に俺を見る。

葉山も、三浦も、由比ヶ浜でさえも信じられないと言うように俺を見る。

やばい、いや、脱力から、いつものナイフを振るイメージで力み過ぎたのだ。ちょっと気も立っていたかも知れない。

誤魔化さなければ、と、俺はかなり挙動が変になりながらラケットを見て。

 

「い、いい感じに当たったなー。」

 

と、独り言を言う。いや、はたから見たらかなりきもかったと思う。

 

すると、野次馬側から、ま、まぐれかーみたいな声が出始める。

いや、気持ちはわかるけどさ。誤魔化せるのかよ。




ちょっと葉山君達を悪くしてしまいましたが、もちろん葉山君達も大好きです。三浦さん頑張れ。

もうちょいテニス回。八幡の日常編もちょいちょいやります。
今回ゆきのんの出番はない。次回に期待!

間隔空いてきてすいません。でも明日からはまたできるかも。
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