俺たちの世界は間違っている。   作:ゆきわぎ

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派手好き

「千川さん!今どこですか!?」

 

車内で戦闘準備を進める俺の耳に恵理ちゃんの声が響く。

 

「おう、今車で準備してるとこだ。状況は?」

「何のんびりしてるんですか!今影喰らいさんがラバーズと交戦してます。このままA&Aとの挟み撃ちになったらいくら影喰らいさんでも…。」

「ラバーズは何人だ?」

「1人です。でもマフィアも十何人か中に。」

「んー、まあハチ公は大丈夫だな、俺は外のを受け持つ。」

「1人でですか!?」

「それしかねえだろ。なあにハチ公が終わったら支援してもらうさ。」

 

言いながら俺は車のエンジンを始動させる。

 

「あーあ、この車高かったんだがなあ。」

 

この作戦で、俺の新車はスクラップだろう。まあ仕方ねえ、最初からこう使うつもりだったし。

 

車は今角に遮蔽させている。ここを曲がればパーティー会場だ。

 

「派手に行こうか」

ぶっ壊しにいこう。

 

 

俺はリ・セイモン(偽名)、マフィアの下っ端さ。18歳で清龍会の門を叩き、それから三年。来る日も来る日も鉄砲玉として無茶な仕事を気合で乗り切ってきた。

 

今日は俺たちの晴れ舞台、最近名前が売れ出した影喰らいっつーガキを殺したらかなりの報酬が支払われるらしい。出世だって夢じゃない。そうさ、俺はここで影喰らいを殺して名前を売ってみせる。

 

奴は日本に進出した俺たちを事あるごとに邪魔してきてるらしい。当然上はキレて何度も殺そうとしたが全て返り討ちになった。そこで、ラバーズとか言うイカれたテロ集団と手を組んでこんな大規模な戦闘で殺し切ろうとしてるようだ。

 

ラバーズがなんで影喰らいを殺したいのかはよく知らねぇが、PMCまで斡旋してくるガチさだ。正直過剰過ぎんだろとも思ったが、想定外の伏兵もいて手こずってる(まあ普通に考えりゃ1人でくるわけもねえが)。

 

だがまあさっきそいつがいたらしいところにロケットランチャーが打ち込まれて、それから向こうからの射撃がねえから怪我ぐれえは負わせただろう。そこは確認に行った奴らの報告待ちだな。

 

上が雇ったらしい民間軍事会社の奴らが観光用に偽装されたヘリから降りて来ようとしている。すげえ、ロープ降下生で見んの初めてだ。こんなおおっぴらにやって大丈夫かねえとも思ったが、警察やマスコミも流石に港でマフィアや民間軍事会社が関わる撃ち合いがありましたとは言えねえだろう。市民が大混乱だ。お得意の、ガス爆発とか燃料に引火でお茶を濁すんだろうよ。

そのかわり警察からの規制は厳しくなるだろうがな、圧力が強まんのは確かだ。

 

さて、俺たちも中に突っ込んで虱潰しだ。既に十数人中に入ったが、伏兵の戦闘力を見るに、そう簡単には終わらないだろう。

と、俺と周りを取り囲んでいた仲間たちが中に行こうと歩き始めた時、後ろから爆音のエンジン音が聞こえた。

 

がっしゃあああんとフェンスを突き破ってきたのは、高価そうだが軍用には見えない、いわゆる乗用車だった。

そいつは凄まじい速度で此方に突っ込んできている。慌てて俺たちは車に向かって射撃する。しかし速すぎて一瞬で距離を詰められる。そして俺よりその車側にいた奴らの横をその乗用車が通過する時、ガガガガガッと銃声が聞こえた。助手席側の窓からマズルフラッシュが見えた、3人目がいるのか!?

 

車はそのままこっちに来る。やばい俺んとこ来た!

 

なんとか俺が乗ってきた車を盾にして凌ぐ、しかし避け損ねた何人かが銃弾を受けたところを抑えてうずくまる。死んだ奴もいる。

 

俺の横を通過する時にチラッと助手席が見えた。やはり車に乗っていたのは1人。助手席にはMGがガチガチに固定されており、左手で引き金を引きながら運転している。

 

運転席に居た男は。どうしようもなく。笑って居た。

 

車はそのまま丁度地面に降りた民間軍事会社の奴らの方に突っ込んでいく。奴らも車に向かって撃ちまくっているが止まらない。

 

あ、先頭にいた奴轢かれた。

 

そのまま車は民間軍事会社の奴らを中心に急旋回、丁度左側に降りてきていたのもあって、反時計回りの車は助手席から弾をばら撒いている。因みに今のやつの流れ弾で俺の近くに居たスティーブン(偽名・中国人)が死んだ。安らかに眠れ。

 

車はジョン・ウィックか、と言う勢いで縦横無尽に走り回り、時に運転席からも拳銃で射撃していた。

 

俺たち数の少なくなったマフィア勢はそれをただ見ているしかなかった。

 

民間軍事会社の奴らも半分以下になった時、とうとう乗用車は炎上し始めた。

車は最後の抵抗とばかりに今度は俺たちの方へ進路を変え、一直線に突っ込んできた。運転席の男は途中で離脱。運転席側の扉を捥いで(どうやったかは知らないが)それをソリのようにして無傷で地面を滑る。

 

車は俺からふたつ隣の車に激突して爆発する。

 

車から飛び出た男は直ぐに立ち上がり銃を構え、何事か叫んでいる。

 

「おらおらあ!こっからが本番だこらあ!」

 

日本語だったので内容は分からなかったが。その男を見た時、この仕事から生きて帰れたら足を洗って真っ当に生きようと決めた。

 

 

暗い倉庫の一角で2人の男が向かい合っていた。

 

片方は膝をつき胸を抑え、もう片方は息こそあがっているがまだ余裕がありげに立っている。

 

「おやぁ?外もなんだか派手にやってますねえ。まさか”悪逆”まで居るとは。誰か来るだろうとは思ってましたが意外なビッグネームが来たものです。」

 

ぱっと見典型的サラリーマンな男が口を開く。

 

「にしても今回の件は色々予想外なことが多いですねえ。ここに来るまでに影喰らいは無傷だし、マフィアは話で聴いてたより少ないし。

なんか”あの女”も来るとか言っといて来ないし。」

 

外から漏れて来る炎の光で中が少し照らされる。

 

「いやいや、言い訳とかじゃないんですよ?まあ、侮っていたところも少しはありますが。ただ…。」

 

”膝をつき荒い息を吐く七三分けの男”は、立って居る男に顔を向ける。

 

「あなたちょっと強すぎません?」

 

そう問われた少年は、ただ真っ暗な目で男を見下ろしていた。

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