「今回のターゲットは川崎沙希。高校に上がってからバイトを始めたらしく、明け方に帰ることも増えて、今回の依頼人の大志君は姉が危ないバイトをしているのではと心配してる。目標はバイト先を特定することと何故自分の睡眠時間を削ってまでお金を稼ごうとするかの理由も探ること。可能であればバイトを辞めさせる事だね。」
「…なんかノリノリだね、姫名。」
「川崎さんとはお近づきになりたいと思ってたんだよねー。裁縫とか得意みたいだし、衣装つくる依頼とかしたいなーと。」
サイゼリヤで小町と川崎大志の話を聞いて、海老名さんがそんな風にまとめた。
家族の心配をする気持ちはわかる。協力したいとも思う。
しかも川崎が勤めているバイト先は名前にエンジェルとつくらしい。もう怪しさしかない。エロい想像しかできない。
いかがわしいものなら、店ごとヤろう。
「姉ちゃんは、貧乏な上に兄弟が多いうちで、ずっと俺達下の兄弟の面倒見てくれてました。最近は特に余裕なさそうで、いっつも疲れた顔してます。」
「素直じゃなくて、他所の人には無愛想に見られるけど、本当に優しくてすごい姉ちゃんなんです。」
「すいません、どうか、姉ちゃんの事お願いします。」
〜
翌日
学校
「と言うわけで、彼女が何故バイトをするのか、と言うところから探ってみましょうか。」
「まあ学校だとそれくらいしかできねえからな。」
「変な男の人とかに捕まってるのかな…。」
「結衣は想像力豊かだねー。ありえなくはないだろうけど。」
そんな感じで、川崎沙希の本心を探る戦いが始まった。
「アニマルセラピー。即ち猫よ。」
「アレルギーだって。」
「…そう。」
始まったが。
「葉山召喚しよう。」
「ああ。確かにBL嫌いな女の子いないもんね。」
「ちげぇよバカ。」
「だめだったわね。」
「だろうな。」
「ちょっ、二人とも!ごめんね!?ありがと隼人君!」
「あはは…。いいよいいよ。」
「やっぱりヒキタニ君とセットで出すべきだったんだよ。」
「姫名静かに。」
なかなか
「ひ、平塚先生に頼んでみようよ!」
「なるほど。」
「…泣かないで先生。」
「…ごめんなさい…。」
「うぅ…。帰る…。」
「もう俺が結婚しそうなんだけど。」
「それはダメ!」
「え?お、おう。」
「おー、言っちゃうねー結衣。」
成果は出なかった。
「手強いわね…。」
「こりゃだめそうだな…。」
「しょうがないかー。」
「まあ作戦がアホすぎたのもあるけどね?」
結局学校ではなんの手がかりも手に入らず、放課後川崎のバイト先を探すことになった。
〜
「川崎さんは閉鎖的だね。いちいち干渉されたくなさそう、と言うか。他の人に相談に乗ってもらってもどうにもならないとか思ってそうな感じ。」
「かと言って誰かに依存していたり、追い込まれてるようにも見えなかったわね。」
「どちらかと言えば真っ当な理由で金が必要な感じだ。」
「家が裕福じゃないってことらしいし…。でも借金とかなら弟君が心当たりありそうだもんね。」
放課後、俺達はサイゼリヤで川崎についての所感を話し合っていた。
「食費も十分とは言えなくても、少なくとも弟君がファミレスに来たりはできるくらいに一般家庭並みのお小遣い。妥当なところは…。」
「学費…、か。」
「夜から朝にかけてバイトなのも勉強時間を確保するためなのかな。」
「結局疲れて寝てるんじゃ本末転倒だけどねー。」
「私達の内誰も行ってないからわからなかったけど、彼女は予備校に通っているようね。恐らく、それを続ける為のバイトでしょう。」
彼女は、川崎沙希は、下の兄弟達の学費を少しでも多く確保する為に自分の分は自分で賄おうとしているのかも知れない。
「…とりあえずこの近辺でエンジェルがつくお店は二つだけだった。夜のお店を入れるともうちょっとあるけど、流石にそこまでやるとは思えないから真っ当なところから探してみよっか。」
〜
「…それで、此処はなんのお店なの?」
「ふふん!此処こそは!メイド喫茶であらあああああ!!?」
なんかいたので殴った。
え、なに?まじでいつの間に?
「おいおいヒキタニ君、いくら材木君があれだからっていきなり殴ることはないでしょう?彼は私が呼んだ有識者だぜ?」
え?あ、そうなの?なんだ早く言ってよ殴っちゃったよ。
あと座が抜けてるぜ海老名さん。
すると、すっ転んでいた材木座に駆け寄る影がみえた。
「だ、大丈夫材木座君!?」
え?この声は?
「なんかたまたま近くに居た彼も連れて来ちゃった。」
え?まじで?もしかして?
「もう!比企谷君!いきなり人を殴ったりしたらだめだよ!」
戸塚だあああああああ!!!
「いやもう、メイド喫茶って時点で呼ぶしかないよね。女装系は邪道だけど二人の関係がマンネリ化しないようにスパイスとして入れていくのはアリだよね。」
言ってる事はクソだがグッジョブだ。もうマジ明るい未来しか見えない。
「うわ、ヒッキーキモい感じになってる…。」
「お久しぶりね、戸塚さん。でも時間もないのに付き合わせていいのかしら。」
「あ、二人ともお久しぶり!僕も皆にお礼が言いたかったから丁度良かったんだ!気にしないで?」
メイド喫茶なんて最初は気持ちが上がらなかったが、もうやる気しかない。
さっさと突入しようぜおい。
〜
「川崎さん居ないね。あ、ヒキタニ君私のメイド服どう?」
「…良いんじゃないすかね。」
「ありがとー☆」
中に入ってみると、お帰りなさいませみたいな感じで出迎えられ席に着いたが、なんか女性限定でメイド体験があるとかで、女子3人は偵察行こうとか言い出した海老名さんに連れていかれた。
海老名さんはクラシックなメイド服、長いスカートと、知的な印象を与える眼鏡は、何処か征服欲を刺激されるような美しさと儚さがあった。
「いやー、良いねメイド服。今度仕事に使おうかな。」
だがその正体は、餌だと思ってのこのこと寄って来た男を惨殺する殺し屋、蜘蛛である。
「…たまに自分達が何なのか分かんなくなる。」
「お?いきなりだね。でもわかるよ?その気持ち。こうゆう日常が楽しいかは置いといても。私達みたいなのがへらへらこんな事してるのって笑えるよね。」
俺達がやってるのは、薄っぺらな日常の真似事なのだろうか。
「わ、海老名さん綺麗。」
「ほむん、なかなかであるな…。」
すると店内を見て回っていた二人が戻って来た。
「ありがとー。他の二人も可愛いよ?戸塚君も着れば良かったのに。」
「い、いや。まだちょっとそういうのは無理かな…。」
「そっかー、残念。…まだ?」
なんか戸塚がちらっと俺を見た。なんだなんだ。まだって何が?
「ひ、姫名ー。」
と、その時、後ろからか細い声が聞こえた。
「お、二人も来たな。」
海老名さんが俺の肩を越して後ろを見る。
俺が声のした方を振り返ると、そこには、なんかエロいメイドがいた。
「わ、ヒッキー!ど、どうしよう。えと、どう、かな?」
めっちゃテンパりながら由比ヶ浜が少し手を広げてメイド服を見せる。
海老名さんのスタンダードなメイド服とは違い。ある意味現代のスタンダードと言えるミニスカメイド服である。ベストのような部分は胸の下の部分でとめられており、大迫力の胸部が思いっきり強調されていて、直視出来ないレベルである。
「いや、まあ、別に良いんじゃねーの。」
「ちょっ!もっとなんかないの!?こう、ここがいいとか!」
いや、何処がって言われても胸とかしか言えないし、あと太ももか。捕まるだろ俺。
可愛いとは思うよ、うん。
「…目つきがあれだよ、比企谷君。」
いつの間にか隣に来ていた戸塚が何処か責めるような視線を俺に向けている。
意外と女子への視線とかに厳しい系の男子だったか。いや戸塚(性別)か。
「 …あれ?これってもしかしてもしかするのかな?」
なんか海老名さんがなんか言ってる。なんだ?
「何を遊んでるのかしら。」
「あ、ゆきのん」
え?雪ノ下?
「どうやら川崎さんは此処では働いていないようね。シフト表に名前が無かったわ。」
「え、あ、そ、そうか。」
「比企谷君?何をドギマギしているの?気持ち悪いわよ?」
「…うるせえ。」
雪ノ下は、息をのむような美しさがあった。とても、静かな、透き通るような美しさだった。
決して高いものでは無いだろうメイド服は、それでも彼女の元の品を損なわず、彼女に新鮮な、非日常的な雰囲気をプラスしている。
「…なんか私達の時より反応いいね。」
「う〜。でもゆきのんすごい可愛い。」
後ろの女子勢のそんな声が聞こえた。
「此処にはもう手がかりはないわ。もう時間も遅いから、今週の土曜にもう一つの候補に行ってみましょう。」
「そうだねー。あ、みんなは結構いい服着て来てね、ドレスコードあるお店だから。」
そしてその日は解散となった。
「あれ?材木座は?」
「あ、材木座君ならあっちで燃え尽きてるよ。」
席を見ると材木座が真っ白になって座っているのがみえた。
満足したんだな。材木座。
材木座は置いて帰った。
間が空いてすいません。
忙しいかも。