俺たちの世界は間違っている。   作:ゆきわぎ

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めちゃくちゃ間があいてすいません!

これからは時間あります!

細々やっていきます。


バーと獣

「ハチ公、さっきゴールデンライアンの部下を見つけて締め上げたんだが。どうもゴールデンライアンの野郎は千葉に行ったらしい。影喰らいが千葉にいることを嗅ぎつけたのかも知らん。」

 

「ゴールデンライアン、本名はレオン・マルチネス。彼奴はもともとネイビーシールズの隊員だった。成績優秀、射撃も格闘も上手くて将来有望だったらしい。」

 

「だが人格に難ありでな、誰彼かまわずすぐに殴るし、喧嘩っ早くて街でもしょっちゅう一般人と揉めやがる。もちろん彼奴は現役のスペシャルフォースなんだから相手をいつも殺しかけてたんだ。」

 

「特に女関係が酷かった。気に入った女にゃすぐに手を出すし、ほぼ力づくの時もあって相手に怪我させることもしばしばだ。」

 

「んである時だ、中東での任務中。まあスペシャルフォースとかは民家に乗り込んで交渉で泊めてもらうこともあるんだが、彼奴は何をトチ狂ったか、その泊めてもらった家の娘を夜中にレイプして、首絞めて殺しやがった。異変に気付いて部屋に入ってきたその子の両親もな。イかれてんだろ?」

 

「もともとの素行も悪かったが任務の実績で残されてた彼奴は、その一件で除隊処分。その後は傭兵になった。」

 

「傭兵になってからは更にエスカレートしてな、制圧した村の女とか、交戦したチャイルドソルジャーとかに手を出すこともあったらしい。」

 

「街とかでは、顔だけは良いからナンパしてきたやつをレイプして、その残りをそこらへんで見つけた不良どもに”食わせて”部下を増やす。」

 

「いいか、ハチ公。彼奴は正真正銘のクソ野郎だが、戦闘能力は本物だ。あいつ1人で小隊規模の武レジスタンスを皆殺しにした事もある。俺もすぐそっちに向かうが、一応気をつけろ。やつは強え。」

 

 

土曜 千葉市某所

 

「待ち合わせは、ここだよなあ。」

 

待ち合わせ時刻の10分前、おれは、集合場所に指定された公園に来て居た。

 

目的のバーはドレスコードもあるそれなりに高級な場所だ、一応ちゃんとした服装で来たし髪型も整えた。

 

まあ、ほぼ小町がやってくれたんだけどね。

 

いや、俺もできるよ?仕事でやることも良くあるし。できなくはないけどね。

 

まあ、女子のセンスには敵わんということで。

 

「あ、ヒッキー?」

 

と、後ろから知った声が聞こえて振り返った。

 

「…よお。」

「…ん」

 

と、由比ヶ浜は俺を見た後、恥ずかしげに目をそらした。

 

「…その、似合ってるね。」

「…おう、まあ、小町が選んでくれたからな。」

「そ、そうなんだ!小町ちゃんセンスもいいんだね!」

 

そしてまた沈黙。

 

なんだこれ、なんかめっちゃはずいぞ。

 

由比ヶ浜もまたそこそこ高価そうなピンク色のドレスに、髪を整え、メイクも場に合わせて大人っぽくしている。

 

あまりそういうことに詳しいわけではないが、それでも今日の由比ヶ浜がいつもよりも、こう、なんかいい感じなのはわかる。

 

「…」

「…」

 

だがまあ面と向かって褒めてやれるほどギザなハートは持ってない。

気まずい沈黙が流れる。

 

すると俺の右横からにゅっと顔が出てきた。

 

「だめだなぁー、ヒキタニくん。思ってることはちゃんと口に出さないとー。結衣ってば今日の為にすごーく準備してたんだぜ?」

 

と、軽い感じで声を掛けてきたのは、海老名さんである。

 

「ちょ、ちょっと姫名!」

「まあまあ、結衣だってせっかく頑張って用意して来たのに、ヒキタニくんにはちょっとは乙女心を分かってもらわないと。」

 

え、なに、なにを言えばいいんだよ。

 

由比ヶ浜は、うぅーと唸ったあと、意を決したように、しかし躊躇いがちにちらっと俺を見て、口を開いた。

 

「その、ヒッキー、どう、かな。」

どうって言われても…。

 

「…まあ、いいんじゃねえの。」

「…えへへ、そ、そっか。」

 

いや、はずい。は?はずいんだけど。

 

「もうちょっとなんかなー。まいっか!それで?わたしは?わたしはどう?」

 

と、海老名さんは俺の横を離れ、由比ヶ浜の隣に立った。

 

ライムグリーンのドレスに、淡いピンクのカーディガン。髪は左肩の近くでまとめて、右側も緩く広げられている。かなり、大人っぽく見える。

 

「まあいいんじゃねの」

「…なんか同じ台詞なのにぜんぜん心こもってないなー。」

 

まあ、殺し屋だしな、この人。なにもかも技術だと思えば冷静にいられる。

 

「何やら浮ついているようだけど、依頼で来ていることを忘れないで頂戴。」

 

と、後ろから声が聞こえ、振り返る。

 

「…」

「…」

「…」

「な、なにかしら。なぜ誰もなにも言わないの?」

 

立っていたのは、やはり雪ノ下だった。やはり彼女も綺麗な服に身を包み、そしてやはり美しかった。

 

「…ゆきのん、綺麗…。」

 

シンプルなデザインの深い青色のドレスは、装飾で誤魔化すことなく彼女の完璧なスタイルをありのままに浮かべさせている。髪はトップでまとめられ、綺麗な耳には、銀色の大きめのイヤリングが下げられ、雪ノ下が動くたびに揺れ動いて光を反射する。

 

「…ヒキタニくん、感想は?」

「…いいんじゃないすかね…」

「…どうも。」

 

そして場には、本日何度目かの沈黙が流れた。

 

 

「目的地はここよ。」

 

ついたのは、見上げるほどの高層ホテル。川崎がバイトに出てるのはここの最上階にあるバーらしい。

 

「ほえー、すごいなぁー。」

由比ヶ浜は隣でホテルを見上げながらぽけっと口を開けている。

 

中身はやはり由比ヶ浜である。

 

「…ヒキタニくん、あれ。」

 

海老名さんが俺のは袖をちょいちょい引いてホテルの看板を指差す。看板と言うより碑みたいたが。

 

「…」

「川崎さんは関係ないとは思うけど、ここダイナーだね。」

 

俺と海老名さんが見つけたのはホテルのロゴに隠されたとあるマークである。

 

ここが、アウターの休憩所?

 

「ほら、早く行くわよ。」

「わわ、まってー。」

 

雪ノ下は先行してホテルの中に入って行く。あわてて由比ヶ浜も小走りでついていった。

 

「…入るか。」

「ん、そうだね。」

 

俺たちも、それにつづきなかに入って行った。

 

 

ロビーをスルーしてバーとかレストラン用のエレベーターに乗る。そのまま途中で止まることもなく最上階へ。

 

「結衣と雪ノ下さん、入る前にちょっとお花摘みに行かない?身だしなみの確認も含めてさ。」

 

エレベーターから降りたとき、海老名さんがそう二人に声をかけた。

 

「…そうね。比企ヶ谷君、少し待っててもらってもいいかしら。」

「ん、その辺にいるわ。」

 

三人は化粧室の方へ向かって行った。多少の時間は海老名さんが稼いでくれるだろう。

 

俺は目的のバーに向かって行く。

 

するとかなりきっちりした服装のボーイに止められる。年齢は40を超えているだろうか、そして同業者の匂いがする。

 

「失礼ですがお客様、年齢を確認できるものをご提示いただけますか。」

 

俺は無言で、用意していた百円玉三枚を取り出し、上から裏裏表の順で重ねて手渡す。

 

ボーイは手元を見ずに背筋を伸ばしたまま受け取り、親指で百円玉をずらして一瞬だけ目を下に向けて確認する。

 

「失礼致しました。右奥の扉をお使い下さい。」

「いや、今日は普通の席を使いたい。あと、この後もう三人来る。内二人は一般人だ。」

「かしこまりました。」

 

だいぶ前に師匠から教わった"アウターのルール"が役に立った。

 

俺は横目で店の中を見る。

 

奥の方のカウンターに川崎の姿を確認した。

 

「あのカウンターのバーテンダーは?」

「一般人でございます。」

 

…嘘ではなさそうだ。川崎は白か。

「ヒキタニくーん」

 

そこで、三人が戻ってきた。

「それでは、こちらです。」

 

ボーイが迎え入れてくれる。

由比ヶ浜と雪ノ下は俺がエスコートするが、余ってしまった海老名さんはボーイがそのままエスコートしてくれた。

 

俺達はカウンターに座る。女性の席を引くのは久しぶりだった。相手が雪ノ下達なのもあって変な汗が出そうだった。

 

ボーイは一礼して帰って行く。

 

「なんか、きょうしゅくしちゃうね。」

 

あれ?今誰が言った?由比ヶ浜?まじで?恐縮って言った?

 

「ご注文はいかがいたします…」

 

青みの混じった髪のバーテンダーは、俺の顔を見て硬直する。

 

「あははー…。どうもー…。」

「こんちには、川崎さん。年齢を詐称してのバイトは、あまり関心しないわね。」

 

二人が川崎に声をかける。

 

川崎はいつかのような 冷めた目で俺達を見る。

 

「…あんたらこそ。未成年が入れるお店じゃないけど?」

「今回は依頼で来たのよ。他でもない貴女の弟さんにね。」

 

その言葉を聞いて川崎は顔を歪める。家族の名前を出されるのは気に触るらしい。

 

「何しに来たの。」

「弟さんから川崎さんの帰りが遅くて心配だって相談を受けたんだよね。結構心配してるみたいだったよ?」

 

川崎は今度は少しだけ顔を俯かせる。

 

本人も仕方なくでやっているバイトなんだろう。兄弟も多いと言っていたのでおそらくはお金の問題だろう。

 

「…うちはあんまり裕福じゃないからさ、学費とかまで出せる余裕がないんだよ。でも進学はしたい。なら自分で稼ぐしかないじゃん。」

「でもこのバイトで勉強時間が削るられているのでは本末転倒でしょう。予備校に通っているだけでは志望校には受からないわ。」

「あんまり無理ちゃうと体も壊しちゃうし、こういうのはやめておいた方がいいんじゃないかなー、と…。」

 

雪ノ下はやはりすっぱりと、由比ヶ浜はおずおずと川崎にバイトを辞めるように促す。

 

だが、それでは一番の問題が解決しない。

 

「じゃあどうしろっての?あんたらがわたしが進学するまでの予備校代とか、大学の学費とか払ってくれるの?できるわけないじゃん。どっちにしたってお金が必要。自分でやるしかない。私は志望校を変えるつもりは無いし、多少無理したってやってみせる。」

 

川崎は強く言い放つ。曲げる気は無いだろう。当然だとは思う、たった一度の人生で、高校生時代の数年間でその後の人生が決まってしまうのだ。すこしぐらいの苦労なら喜んでやるだろう。

 

誰だってそうだ、お金に困るなんて事はよくある、川崎はまだマシな方とすら言える。

 

俺ならば一人ぐらいの学費ぐらいは賄える金を出す事はできる。だが、それではやはり意味がないのだ。

 

あくまで川崎の力で、川崎が出来る事で打開するしかない。

 

俺達はその手伝いをするだけ。背中を支えてやるだけなのだ。

 

「川崎」

「…何?」

 

川崎が俺を見る。話は終わった早く帰れと言わんばかりである。

 

「…うちはな、両親が居ねえんだ。」

まさかこんな話をする事になるとは。まあ、学校にも言ってあるし特別隠す事でもない。変に気を使われるのが嫌だったから言わなかっただけで。まあ言う相手もいなかったんだけどね!

 

由比ヶ浜と雪ノ下は目を見開く。まあ、ちょっとはびっくりするだろう。

 

川崎もは?って顔で見てる。嘘だと思われてるらしい。

 

「俺が中3の時に事故でな、だから俺は結構家族の大切さってやつを知ってるつもりだ。お前の弟がお前をどう思ってるかも。」

 

そしてそれは、俺が小町に思われてることともきっと似てて。

 

「そしてお前がお前自身の為じゃなく。下の兄弟の為に学費を残そうとしていることも。」

 

川崎はバツが悪そうに目をそらす、

 

「大志からお前の分の学費はあるはずって聞いてたからな、一番下の兄弟とかはお前が働いて賄うとしても、大志の分は追いつかない。おそらくお前が妥協して低めの大学狙えば予備校代も浮いて二人共行けるのかもしれんが、あいにくお前には妥協って選択肢は無いんだろうな。」

「…そうだよ。私は志望校を諦めたくないし、かと言って大志にその分を押し付けたくない。ならもう、自分でやるしかないじゃん。」

 

俺はケータイを出してブックマークから川崎の通っている予備校のサイトを出す。

 

「お前スカラシップ って知ってるか?」

 

川崎は俺の携帯を覗きこむ。

 

「一応そう言うのがあるのはね。でも、私じゃそんなの狙えないよ。」

「そりゃバイトのせいだ。お前の一年の頃の成績とか、中学の頃とかを大志に聞いたけど、そこまで悪くなかったぞ。むしろ学年でもトップクラスだった。でもそれは自主勉強の時間が十分に取れてたからだろ?志望校に受かりたいが為に無理して予備校に通い始めたらしいが、ありゃレベルの高いのを習って、それを予習復習で定着させなきゃ意味がねえ。授業のペースも早いし、理解出来ないまま進まれたってもっとわかんなくなるだけだろ。」

 

そこでとなりにいた雪ノ下も口を挟む。

 

「なるほど、奨学金ね。予備校で使う教科書も自習には向かないらしいものね。やはり基準も高いようだし、バイトを続けていても学力は下がる一方かも知れないわ。」

 

それを聞いて川崎は顔を青ざめさせて目を見開く。

 

「でも、そんなのどうすれば…。」

 

そう、そこで、だ。

 

予備校はしっかり活用できればもちろん合格の確率も上がる。しかしその学費を賄うと言う問題を解決するにはもうスカラシップを取るしかないのだ。

 

その為に。

 

「そこで、だ。川崎、お前奉仕部で勉強しねえか?」

「…は?」

「え?」

「うん?」

「ほー」

 

全員が何言ってんのこの人と俺の顔を見る。海老名さんだけは関心したように俺を見ている。

 

「バイトを辞めて、奉仕部で集中勉強。雪ノ下は学年トップの成績だし、俺も文系科目なら学年3番だ。川崎の志望校も文系らしいしそこそこ役に立てると思う。」

「ちょ、何言ってんの?あんたらだって受験だし他人に構ってる余裕なんてないでしょ。それにそれで学力が上がる保証も…。」

 

川崎は焦ったように反論するが、雪ノ下と由比ヶ浜が俺の案を肯定した。

 

「いえ、私は良い考えだと思うわ。貴女の成績がいいことも聞いているし、私も志望は文系だから都合がいいもの。貴女から予備校の資料も見せて貰えれば私にも得はあるから遠慮はいらないわ。」

「…うん!私も良いと思う!ゆきのんすっごく教えるの上手だし、みんなで勉強したらとっても良いと思うよ!川崎さんもきっと1人だと理解しにくいところもいっぱいあると思うし。」

 

2人の言葉に川崎は目に見えて狼狽える。

 

「で、でもそんなの。」

「川崎、どっちにしろ今のまんまじゃ勉強時間が削られて悪循環だ、学校での評価にも影響する。」

 

川崎は悩むように顔を俯かせて眉を寄せる。

 

数分ほどそうしたかと思うと、躊躇いがちに俺達を見て口を開く。

 

「…じゃあ、ごめん。お願いする。」

「ん、了解。」

「任せて頂戴。」

「頑張ろうね!」

 

そうして、俺達の依頼は終了となった。

 

 

何も注文しないのも申し訳ないのでジンジャーエールとか頼んで、それを飲みながら奉仕部の場所や、特に勉強したい範囲などを話しあった。

 

そういえば川崎の仕事をかなり止めてしまったと思ったが。どうやら最初のボーイが気を利かせて他の客の対応をしてくれてたらしい。ダイナーのスタッフはかなり良い人達と聞いていたが本当だったようだ。

 

と、そこでかなりほったらかしてしまっていた海老名さんが目に入る。

 

「…?姫名何見てるの?」

「ん?あ、いや別に?あ、その勉強会私も行っていい?私も結構行き詰まっててさ。」

「へ?もちろん!いいよね、ゆきのん、川崎さん。」

「構わないわ。」

「うん、私も別に。」

「ありがとー!あ、川崎さんサキサキって呼んでもいい?なんか語呂いいよね。」

「あ!いいねサキサキ!」

「え、ふつうに嫌なんだけと…。」

「サキサキこれからよろしくねー。」

「ちょ。」

 

そんな会話を聞きながら、ふと海老名さんが見ていた方を横目で見る。

 

そこは金髪のガタイのいい男が出て行くところだった。

 

「…?」

何となく気になる背中だった。あれはまさか。

 

「ヒッキー、帰るよ?」

「あ?ああ…。」

 

海老名さんは何を見てたんだ?

 

 

「いやー、一件落着だね!私何もしてないけど。」

「うん!私はこれからも何もできないけど!勉強会的な意味で!」

 

バーから出た俺達は暗くなり始めた道を駅に向かって歩いていた。

 

「次の電車は、えと、これかしら。」

「こっちだよゆきのん…、それ東京行っちゃう。」

「え、ええ。もちろんわかってるわ。言ってみただけよ。」

 

雪ノ下と由比ヶ浜は時刻表を見ながら次の電車を探していた。

 

「わり、俺買うもんあるからそこ寄ってから帰るわ。」

「そう?わかった!また学校でね!」

 

そう言って俺は別れる事にした、千川さんからの事もあるしさっきの男のことも気になる。

 

「結衣。私もこれから家族と用事があるからタクシーで帰るね、丁度こっちの方なんだ。」

「え?そ、そう?わかった。姫名も気をつけて帰ってね。」

「うん。雪ノ下さんもまた学校でね!」

「え、ええ。また…。」

 

雪ノ下はなんだかぎこちなく手を振る。

 

2人はその後改札に入っていった。

 

残ったのは、俺と海老名さんである。

 

「海老名さんはなんで残ったんだ?」

「んー?本当に用事があるんだよ。」

「そりゃバーで見てたやつに関係してんのか?」

「まっさかー。私がそんな惚れっぽく見える?」

「そんな話をしてんじゃねえ。」

 

海老名さんは、口角を上げて目を細める。

 

「ふふ、まあ、ちょっと知ってる顔が居ただけだよ。別にそう言うんじゃないから安心して?君を殺せっていうようなのも来てないし。」

 

さっきまでとは雰囲気が違う。

 

「んじゃあ用事ってのは?悪巧みか?」

「いつもなんか企んでると思わないで欲しいなー。まあ次の仕事の打ち合わせだよ。丁度先方がこっちにいるらしいから会ってくるの。服装もしっかりして来たしね。」

 

そう言って彼女は身体を確かめるように腰を回してスカートを揺らす。

 

「まあそんなに心配しないでよ。私はゴールデンライアンとは関わりないし。話した事もないしね。」

 

その名前が出て来て俺は警戒度を高める。

 

「やっぱり居たのか、そいつは。」

「さて、どうかな。さすがに仲間売ったりはできないよ。」

 

挑発するように彼女は笑う。

 

「喋らせるって言ったら?」

「本気かな?色んな目があるこんなとこで私を押さえられる?」

 

ただでさえ目立つ格好をしてる俺達は特に何もして無いが周りから見られている。

 

「ふふ、まあまたね。勉強会楽しみにしてるから。」

「…ふん。」

 

海老名さんはそう言ってタクシーの方へ歩いて行く。

俺はタクシーが出たのだけ確認すると、とりあえずゴールデンライアンの手掛かりを捜すために歩く事にした。

 

さっきのバーにもどって話を聞いてみるか?いや、彼らは喋らないだろう。今日あたり千川さんもこっちに着くはずなので、落ち合ってみようか。

ラインで知らせとこう。

とりあえず座れる所をと思ってマ○ドナルドに入った。結構並んでる。

 

そしてあと1人というところで俺の携帯がポケットの中でプルプル震えだす。

 

もう千川さんから連絡が来たのかと携帯に出すと意外な名前が出てきた。

 

「はろはろー。さっきぶりー。」

「…なんだよ。」

「いやさー、ゴールデンライアンの事なんだけどさあ。まあちょこっとなら教えてあげようかと思って。あれ?今マッ○いる?」

「どういう風の吹き回しだよ。とっとと教えろ。」

「えー、もうちょっと態度とかさー。」

 

教えろこらさっさとしろよ。

 

「まあまあ、えーとね、彼はーーわっ」

 

そこで、車のブレーキの音とタクシードライバーの怒鳴り声が聞こえた。

 

「おい、どうした。」

「わかんない。なんかいきなり車が突っ込んで来て。」

 

ガシャア!と窓が割れる音がした。

 

「なんー」

 

ゴッっと言う鈍い、そして俺の聞き慣れた人を殴る音が聞こえた。

 

「よっすー、あれ?誰かと電話してた?彼氏?」

 

携帯から耳を離す。どうやらテレビ電話にされたらしい。

 

そこにはタクシーの車内に、鼻から血を流し、右目の下あたりが赤くなって髪を掴まれた海老名さんと、ニヤニヤ笑った外国人が写っていた。

 

「よお。悪いけど彼女借りるわ。」




一生の不覚!
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