「せんぱいってー、どこで武道習われたんですかー?」
「なんか最近のスポーツ武道って言うより、軍用格闘みたいでしたよねー。」
「親が自衛官とかですか?」
「最初の踏み込みとかめちゃくちゃ速かったですし、しかもそこから足刀蹴りとか結構むずくないですかー?」
「なんか返事して下さいよー。」
なんなのこいつ、めっちゃついてくるしめっちゃ喋ってる。
いやほんと勘弁してくれませんかね、年下の女子とすらすら会話できるほどコミュ力ないんですけど。
「…お前何者なんだよ。」
とりあえずこいつの立場が分からん。こいつもラバーズだったりしたらマジでうちの学校やばいとこなんだけど。
「いや、わたしは普通の女子高生ですよ?ちょっとだけ小さい頃から格闘技やってたんです!」
いやいや、あれはかじってたくらいの動きじゃなかっただろ。なんか、生まれた時から戦い方を知ってたみたいな動きだったぞ。
なんなのまじ、そろそろどっかいってくれませんかねぇ。
「いやー、さっきは助かりましたー。あの人達の一人がこの前声掛けてきてー。適当にあしらったらなんか増えて戻ってきてたんですよねー。あんまり噂とかされたくないんでしばいたりとかしたくなかったんですけどー、強い先輩に守られてるってなったらさすがに諦めますよねー?」
「いや、知らんし。つーかお前一人でなんとかするつもりだったんだろ。最後の二人も自分でやってたし。」
「まあ、そうですね。でも助かったのはほんとですよ?さすがに不意打ちでも五人相手はめんどいですもん。」
はあ、と俺はため息をつく。
うちの学校にまだこんなのがいたとは。
まだこいつが敵なのかわからん。今はとりあえず別れて砂上さんにでも聞いてみるか。
「あ、私こっちなんで。それじゃあまた学校で!明日はちゃんとどこで学んだとか教えて下さいよー?」
そう言って一色は帰って行った。
あぶねー、背中に変な汗かきまくってた。あいつ俺が苦手なリア充系の奴だわ。男食い物にするタイプだわ。
ラバーズじゃなかったら以後関わらないようにしとこ。
そしてすぐさま俺はスマホを出す。
「あ、えへ。ハチくん。どうしたの?私の、声、聞きたかったの?…え?…ふぅん。また別の女の子の話なんだ。友達が多いね。…うん?別に、何かしたりしないよ?えへ。ほんとに?今度来てくれる?…うん、わかった。えと、一色いろはちゃんだね?」
「て言っても、ネットで調べても割と出てくると思うよ?一色いろはは元総合格闘技世界王者の一色健治と、生きた宝刀って言われてた坂上香織の娘で、霊長類最強の少女って呼ばれてた。」
「小学生の頃から色んな格闘技の色んな大会で優勝して、将来はオリンピックに出るって誰もが思ってた。」
「でも中学生の時、空手の世界大会で優勝してから格闘技界から姿を消したの。」
「理由は知られてないけど。ただ単に、彼女が思春期に入って、格闘技に人生をかけたくないって言ったから。」
「ピアスを開けて父親の前に立った時、父親は激怒して、やめさせようとした。」
「そして二人は決闘したの。一色ちゃんは中学三年生だった。闘いは数時間に及んで、最後は一色ちゃんが勝った。」
「それから彼女はファッションに気を使って、流行りの財布を買って、高校は中学から遠かった総武高校に、って感じかな。」
「…毎度のことながら、ほんと見て来たようですね。」
「調べ屋だからね。」
じゃあ、約束忘れないでね。と、砂上さんは電話を切った。そこそこ忙しかったらしい。
一色いろははラバーズでは無いらしいが、ある意味ラバーズより癖が強い。
波乱万丈すぎんだろ。グラップラーか。
携帯で一色いろはを検索する。
すると、道着を着て、トロフィーをかかえる髪の短い一色の画像が出てきた。
目が笑ってねぇ。めっちゃ怖い。
ここから頑張ってあんな今時女子高生になったのかと思うとなんとなくあったかい気持ちになったが、取り敢えず関わらないことにする。
女子高生も大変なんだな。
〜
「あ!こんなところにいた!」
「げ。」
「げってなんですかー、可愛い後輩が来たんだから喜ぶべきだと思うんでけどー?」
ベストプレイスで遭遇してしまった。
くそ、よりによってここで見つかるとは。場所を変えなければならないか?
「いっつもここで食べてるんですか?一人で?」
「…悪いかよ」
「いや、別にいいんですけどー。寂しくありません?」
「別に。お前こそ一人みてえだけど。」
「もう食べ終わりましたー。放課後は部活あるんで昼しか探せませんし。」
「部活?」
「サッカー部のマネージャーです!」
ふふん、となぜか一色は胸を張る。
マネージャーとか。自分でやった方が強えんじゃねえの?
「それで。どこの格闘技なんですか?先輩の?」
「…お前格闘技嫌いなんじゃねえのか。」
「…もしかして、調べました?はぁー、女の子の過去調べるとかだめですよー?ネットからは消えないよなー。」
と、一色は、ぐでっとうなだれる。
「まあ、格闘技自体は嫌いじゃないですよ。強制されてたのが嫌だっただけで。」
「…あ、そ。」
格闘技は嫌いじゃない、か。だが、正直に殺し屋が人を殺すために作った戦闘術とは言えない。
「別に、ちょっと近所のおっさんに習っただけだ。」
嘘ではない。おっさんだし。住所不定だからある意味そこらへんに住んでるとも言えるし。
「えー、元傭兵とかですかね?すごいなー。」
なんなのこいつ。なんで聞いたんだそういえば。
「私もやりたいです!それ!」
あ?
〜
放課後、奉仕部。
「ヒッキーなんか疲れてるね。」
「海老名さんは今日も休みなのね。」
「私のせいかな…。」
あいついくら断ってもそこをなんとかの繰り返しだった。可愛い後輩と合法的に触れ合えますよとか言ってたけど一切靡いてなどいない。ないったらない。
海老名さんは腫れはひいても痣が落ち着くまではもう少しかかるだろう。まあ、敵なのでどっちでもいいが。
「あ、ねえ聞いた?東京で起きたテロ。」
と、由比ヶ浜が勉強していた手を止めてぱっと顔をあげる。
「確か自爆テロだったかしら。馬鹿なことをする人もいるわね。」
「こっちでおきなきゃいいんだけど…。」
…テロ、ねぇ。
ちょうどその時、右胸に入れていた携帯がほんの少し震える
「…悪い、今日もちょっと用事あるから先帰るわ。」
「比企ヶ谷君、またなの?勉強会を言い出したのは貴方なんだから、しっかり参加して欲しいわね。」
「ちょっと私も用事が…。」
「由比ヶ浜さんは一番焦るべきよ。」
「雪ノ下さん思ったよりスパルタなんだけど…。」
「川崎さんは出来るだけ早くスカラシップを取らなくてはならないわ。これ、貴女の苦手な分野の問題集よ。それが終わったらこれに取り組みましょう。」
「…みんな、お姉ちゃん頑張るから…。」
そんな会話を背に、軽く挨拶をして教室を出る。
右胸の内ポケットから携帯を出し、アプリを開く。
恵理さんからのメッセージを確認する。
「ラバーズ傘下のテロ集団、"爆弾魔"から犯行声明が政府に送られました。政府は"我が社"に調査と対処を依頼。上部はA-88、"影喰らい"に第三十四種指令下達。目標、及び爆弾を捜索及び確保して下さい。犯行声明の内容は"新しい時代を我々の火で祝福する。"です。装備、及び協力部隊の情報は音声通信で別示します。」
かくして、日常は回る。
色々あって謎の超強化を施されて誕生したグラップラーいろは
頑張れ八幡!