俺たちの世界は間違っている。   作:ゆきわぎ

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爆ぜる。

「詩織ちゃん、爆弾魔について説明お願いします。」

「私、ステアの社員じゃないんだけど…」

「報酬はでますから。」

「はぁ、わかった。」

 

学校から出た俺は砂上さんの部屋に来ていた。恵理さんは例のごとくスピーカーである。

最初は喜んでくれた砂上さんも、仕事とわかると目に見えて不機嫌になっていたが、ご飯を作ると言ったら少し機嫌を直してくれた。

 

と言うわけで今俺は長らく使われていなかったキッチンを掃除している。料理以前の問題である。

 

「爆弾魔は、名前は単独に聴こえるけど、実際は不特定多数の集団だよ、ラバーズの中ではかなり活動が活発な部類だね。その信条はラバーズ共通の"面白いことをしたい"でもあるし、もう一つ、"幸せに死にたい"って言うのがある。ラバーズはどちらかと言うと宗教団体に体型が似てる。彼らは特にラバーズの"教え"に忠実なんだよ。あ、ねえ、何を作ってくれるの?」

「ちょっ!尻触んないで下さい。」

「は!?どさくさに紛れて何やってんですかこの色ボケ!そんなうらやま…じゃなくてけしからんこと許しませんよ!私にも触らせろ下さい!」

「本音出てる恵理ちゃん。悔しかったら出てくれば?」

「私はここぞと言う時に出ることにしてるんですぅー!」

 

爆破テロがあったのに緊張感なさすぎなプロ達。まあもちろん危機感はあるが、こう言うときこそいつもどうりでいた方がいいというのもある。

 

この二人の場合割と本気で他人事にしているのもあるが。

 

赤の他人のことなどどうでも良いが、仕事なのでやるというレベルだ。

 

「いいですか?先日起きたテロは、最近改装が終わり、ようやく再オープンした横浜駅の改札前で起きました。身体中に10キロのプラスチック爆弾と、パチンコ玉を大量にくっつけて吹っ飛んだのは昨年2月にリストラされたらしい普通のサラリーマンです。報道では鬱になった男の単独犯だとしていますが、リストラの理由も有耶無耶にされています。そしてもちろん"爆弾魔"からの犯行声明も公表されていません。」

 

「使われた爆弾は完全に手作り、作ったのは恐らく本人だね。でもそれを作る方法を教えた人がいる。」

 

「今回の依頼は爆弾魔の捕獲が含まれていますが…。」

 

「それはとってもむずかしいよ。彼らに明確な指導者はいないから。」

 

「けれど、少なくとも今回犯行声明が出されたと言う事は、爆弾魔全体で何かしようという意思があると言うこと。」

 

「それは"禁断の愛"からの指示によるものだとしても、何を目標とするか、どんな方法を取るかっていうのを決める個人ないし上位のメンバーがいるはず。」

 

「もちろん爆弾魔それぞれが好き勝手に至る所で爆ぜまくるんでしたらお手上げですけど。」

 

「でも恐らくは今回はそうではない。」

 

「ええ、大きめの目標を狙うためにある程度団結して来るはず。」

 

「爆弾がどれだけの規模になるか分からないけど、とにかく何かしら大きな動きがあるはずだよ。」

 

「となると、何が狙われるかが問題っすね。」

 

ここで、キッチンを片付け終わった俺が会話に入る。

 

「はい、犯行声明にある新しい時代、と言う部分。」

 

「とってもアバウトだけど、その元サラリーマンがテロを起こした場所からすると。」

 

「新しくオープンしたり、改装が終わった所…。」

 

「…丁度今週末、オリンピックに向けて改修してた品川駅の改修された部分が開く事になってるね。」

 

「成る程、東京自体大開発中ですからね。しかも品川駅は羽田からの電車も通ります。」

 

「玄関口を吹き飛ばすってことかな。」

 

「しかし爆弾魔は人数が多いので他にも目標はあるかも知れませんが、」

 

「…まじすか。」

 

「そもそも何回かに分けてと言うこともあり得ますし…。」

 

「どうかな。他にも調べてみるね。」

 

「お願いします。」

 

「影喰らいさん、今回は爆弾があるということで、ステアの爆弾処理部隊、"緑の心臓"が派遣されます。まあふつうに警察からも派遣されるでしょうし、品川駅も今週末は封鎖されるでしょう。ですので影喰らいさんの任務は実行犯ではなく、その上位者を探すことですね。少なくとも品川駅近辺にいるはずです。」

 

「普通なら違うところにいるはずだけど、彼らは爆破を見たがるからね。」

 

「影喰らいさんは週末に向けて準備を進めて下さい。」

 

「了解。」

 

「それで、ごはんまだー?」

 

「いまからっす。」

 

 

そして、翌日である。

 

昨日はあの後普通にご飯作って二人で食った。終始スピーカーから恨めしげな声が聞こえていたが、出てこない方が悪い。他には砂上さんが俺の分の飯に睡眠薬を入れようとしたところをガチギレしたぐらいである。食べ物は粗末にしてはいけない。

 

「せんぱい!さあ!私を弟子にして下さい!」

「…また来たのかお前…。」

「はいです!私は諦めませんよ!なんだか先輩が使っていた格闘術が目に焼き付いて離れないんです。責任とって下さい!」

「やだよ…、帰れよ…。」

「なんでですかー。ほら、このとうりですからー。」

 

と、俺がベストプレイスで飯を食おうとしたらこいつがいた。

 

すっかり忘れてた。そしてこのとうりと言った一色は首を軽く傾げ、手を口元に添えてうるうるとした目で俺を見ている。なんかキラキラしたビームとか出て来そうだ

 

どのへんがどのとうりなの?わざとらしいっつーかあざとい。

 

はっ、俺がそんな色仕掛けにかかるとでもおもってんのか?甘ぇよ、マッカンより甘々だ。

 

そういう手に、俺が何度遭遇して来たと思う?それも全員プロだぜ?服パッツンパッツンの金髪美女達だぜ?

 

「……………………………ダメに決まってんだろいい加減にしろ」

「かなり迷ってませんでした?今。」

くっ、そういえばこんな小動物みたいなのはいなかったな。でもこれで耐性出来たし、もう大丈夫だし。まじで。

 

「…ぐぬぬ、仕方ありません。ちまちま好感度稼いでこいつになら教えてもいいかなと思わせる作戦に切り替えます。」

「それ口に出していいやつなの?」

 

なんというか、図太い奴だ。

 

だが、戦闘術は人を殺す、もしくは"生かす殺すを自分で選べるようにするための技術"だ。それに師匠曰く済崎以外には教えてはいけないものらしい。

 

「あ、そういえば先輩って部活とか何やってるんですか?」

 

む、これは答えていいのだろうか。これで正直に答えてあ!じゃあ格闘教えて下さいって依頼しますとか言われたらめんどくさい事になる。

 

「…帰宅部だ。」

「あ、そうなんですかー。じゃあ放課後は暇なんですね?」

 

ん?なんだ?何を狙って聞いてるんだ?

 

「今日の放課後私と一緒にー」「あれ?ヒッキーじゃん。まだここでご飯食べてたの?」

 

と、一色が何か言おうとした時。どこから現れたのか由比ヶ浜の声が被った。

 

「ってあれ?結衣先輩?」

「あれ?いろはちゃん?どしたの?って、ヒッキーと知り合い?」

「え、えぇまあ。ちなみに結衣先輩は比企ヶ谷先輩とどういうつながりで…?」

「え?ああ、奉仕部って言う部活で一緒なんだよね。」

 

と言う言葉を聞いたとき、は?と言う顔で一色が俺を見る。

 

バレたあー!一瞬でバレた!

 

ふっと俺は目をそらす。

 

「へ、へー。奉仕部ですかー。聞いたことなかったですけどどんな部活なんですか?」

「んーとね。困っている人を助ける部活かな?」

「なんですかそれ。」

「私もよくわかんないけどね!」

 

うぐぐ、しまった。奉仕部を通されて頼まれるととてもめんどくさい。

 

と言うか今の俺にそんな時間ねえ。

 

「そうなんですかー。あ!そろそろ時間なのでこれで失礼します!」

「へ?ああうん。じゃあねー。」

 

そのまま一色はぱたたたたと走っていった。

 

あれ?頼まないのん?

 

いや、そうか。本人からしてもあまり武道やってると言うことを知られたくないんだったか。あくまで内々にと言うことか。

 

「ヒッキー?いろはちゃんとどう言う関係なの?」

「別に、たまたま前に繋がりができただけだ。」

「…ふーん。」

 

その後由比ヶ浜とは適当な雑談をして、飯を食って教室に戻った。

 

 

「んんんはちまあああああああん!!!原稿を持ってきたぞぅ!」

「うるせぇ、ぶっ殺すぞ。」

「材木座君うるさいわ。」

「誰こいつ?」

「中二」

「おー、材木君久しぶりー。」

 

けぷるしゃあああああとダメージを受けながら材木座が吹っ飛ぶ。

 

はい、と言うわけで奉仕部である。

 

着いた途端時間差で入ってきた材木座と、何時もの勉強会メンバー。

 

今日から復帰した海老名さんの痣は、驚く程目立たず振る舞いもいつも通りである。

 

「ふ、ふむん。これが、新しい原稿である。いつも通り感想を頼むぞ八幡。」

「ちっ、わかったよ。」

 

俺は渋々受け取る。面倒だが依頼だ、時間があれば読んでおこう。

 

「はあ、貴方も懲りないわね。」

「ふふん、我は諦めが悪い男なのでな。」

「そう…。それより、貴方右肩だけで荷物を持っているでしょう。右肩が落ちているわ。毎日そんな重いものを持っているからよ。次からはデータで持ってきたらどうかしら。ここにパソコンもあることだし。」

「な、なるほど。では次回からはそうしよう。」

 

…雪ノ下も雪ノ下でそれなりに援助しようと思っているのだろうか。まさか材木座を労わるようなアドバイスをするとは。

 

しかし、一つ引っかかるものがあった。

 

…右肩が下がっている?

 

いや、まさか。でもあるいは。

 

「それでは!我はこれで失礼する!この後用事があるのでな!」

「ええ、さようなら。」

俺が何かを聞く前に彼奴は帰って行った。

 

いや、流石に考えすぎだろう。そんなことあってたまるか。

 

「さて、比企ヶ谷君。貴方も教科書を出しなさい。確か数学が苦手だったわね。46ページと82ページの章末問題を解いて解答を見せなさい。」

「…うす。」

 

まずは小手調べと言う訳か。いいだろう!俺の解答を見て存分に頭を抱えるがいい!

 

と、俺が教科書を出そうとした時。またもやがらっと教室の扉が開く。

 

「邪魔するぞ、雪ノ下。お前に来客だ。」

「先生、ノックをして下さいとあれほど…」

 

と、入ってきたのは二人。平塚先生と、もう一人は誰だ?なんか、どっかで見たことあるような顔だけど。

 

「どうもー。あ!雪乃ちゃん久しぶり!」

「…なぜここにいるのかしら。姉さん。」

 

⁉︎と先生と来客と雪ノ下を除く部屋の全員が、雪ノ下の方をばっと見て、次に来客を見る。

 

…たしかに、にている。

「いやー、うちの大学のパンフレット持ってきたついでにね?元気にしてるかなーと。」

「そう。私は元気よ。要件は終わったわねさようなら。」

「あーん。もうちょっといさせてよー。」

「私には話すことはないわ。こちらも忙しいからさっさと帰って貰えるかしら。」

なんだか。雪ノ下の方は完全に壁を作ってる感じだ。

 

「いやー。それにしても雪乃ちゃん友達増えたね!しかもみんな可愛いし、男の子もいるー!」

 

と来客は俺の方に近寄ってくる。

 

「どもどもー。妹が世話になってますー。姉の陽乃です。」

 

言いながら、陽乃と名乗った女性は俺の前に立った。

 

「いやー、男の子の友達なんて隼人以来だねー。」

「姉さん、その男は私の友達などでは無いし、彼も友達ではないわ。」

「えー。じゃあそっちの女の子達は?」

「彼女達は、その…。」

「ゆ、ゆきのん…?」

「そんな、雪ノ下さん?」

「いや、私はどっちでもいいんだけど。」

「…友達と、呼ばなくは無いわね。」

「ゆきのーん!」

「いえーい。」

「いや、だから私はどっちでもいいんだけど、勉強会は?」

 

なんかゆりゆりしている。川崎はいつも通りである。

 

その人は、やんわりとした笑みを崩さない。

 

「そっかー。まあ、お姉ちゃんは安心したよ!ま、それじゃかえろかっなー。あ、雪乃ちゃんあれ忘れないでよ?」

「わかっているわ。さようなら。」

「あ、えと。お疲れ様でした?」

「目上の人にはそれでいいんじゃない?」

ふふふ、とそれをにこやかに見ていたその人は、ふと俺の方を見た。

 

「雪乃ちゃんのこと、おねがいね?」

 

そう言って雪ノ下さんは帰って行った。

 

…最後のあれは一体。

 

「なんか、すごそうな人だったね。」

ぽつりと、由比ヶ浜が言葉を漏らす。

 

「…ええ。姉は、そうね。誰からも期待されて、その期待に応える力のある人よ。おおよそ、なんでもできる完璧な人。」

 

と、雪ノ下が返す。

 

「…そりゃお前も変わんねーだろ。ありゃなんつーか、強化外骨格みてーな笑顔だったけどな。」

「…はい?」

「うん、なんか怖かった。」

「世渡り上手っぽいよねー。

 

俺達が、雪ノ下さんへの所感を述べる。

 

「…そう、貴方達にはそう見えるのね。」

 

そう言った彼女の横顔は、何を思っていただろうか。

 

少しだけ雪ノ下は目を閉じて、またふと開けた。

 

「さあ、続きをしましょう。比企ヶ谷君、答えをみては駄目よ。」

「…わかってるっつの。」

 

それから、俺達は勉強して、その日はもう誰も来なかった。

 

 

はい、わたしです。

 

あら、これはこれは。貴女様から直に電話があるとは。

 

ご安心くださいな。必ず成功させてみせますとも。

 

いよいよ今週末です。

 

ああ、ああ!今から想像だけでイってしまいそうです!

 

彼は一体どんな顔をするでしょうか。楽しみで仕方がありません!

 

こんな最期をくださった貴女様に感謝を。

幸福に爆ぜてみせますわ。禁断の愛様。

 

ああ、私の、私達の救世主様。




今回はお話進みません。

正気。

しょうき。
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