「親が心配するぜ。」と言う言葉を最後に、俺は男と別れて俺は家路についた、いつもからしたらかなり遅い時間だが、両親は妹の小町にかかりっきりだ。男はああ言っていたが、俺の事は大して気にはされまい。怪我だらけの顔も、男に貰った帽子で隠している(何故かかばんに入っていた。)。聞かれても転んだといえばそこまで深くは来ないだろう。
「ただいま。」
少し小さめの声で帰ってきたことを伝える。このまま静かに部屋に入る。夕食の時は、まあ仕方ない。階段落ちしたと言って…。
「八幡?遅かったじゃない。なにしてた…。」
リビングでエプロン姿の母さんに出会った。母さんは怪我を見てびっくりしたのか、固まっているが冷静に対処しよう。
「あー、ちょっと転んで、たまたま会った人に手当てして貰って…。」
「誰にやられたの?」
「…え?」
かなり食い気味で、今まで見た事ないような、真剣な顔で。しゃがんで俺に目線を合わせ。俺の肩を掴んでそう聞いてきた。
「いや、本当にそこら辺で転んだだけで…」
「そんなわけないでしょう。大丈夫だから正直に言いなさい。」
予想外に突っ込んでくる。
「母さん、これは…。」
「八幡、確かに私も、お父さんも、いつもはあなたをほったらかしてるかもしれないわ。でも、自分の子供をこんな目にあわされて、平気でいる親はいないのよ。」
母さんは、俺の目をじっと見ながらそう言った。諭すように。でもその奥にある怒りを隠そうとせずに。
「…母さん、確かにちょっと何かはあったけど。それは自分で何とかしたいんだ。」
母さんの、真剣さに押されつつも、しっかりとした意思をもって、俺はそう返した。すると母さんも、俺の目をじっとみて。静かに口を開いた。
「…おいで。」
母さんは、そういうと、俺を優しく抱きしめた。
「私達が小町ばっかり見てた間に、随分かっこよくなったね。」
母さんに抱きしめられるなんて、久しぶりだった気がした。何故か、いきなり鼻の先がつんとしだして、目から涙が溢れ出した。
俺は、この時。自分が親に愛されていた事を知った
〜
その後帰ってきた父さんとも、似たような会話があった。違ったことは、母さんより、怒りを露わにしていたことだろう。スーツのまま、相手の家に話しに行くと肩をいからせていたが、母さんの「八幡は、大人の階段をのぼったのよ。」という言葉に、少し固まり、次に俺をじっと見て、むう、と唸って食卓についた。すると、小町が二階から降りてきた。
「あ、おにーちゃん、おとーさん、おかえ…」
と、そこまで言って、俺の顔を見て固まっていた。
「小町、ただいま。」
「おにーちゃん、どうしたの?」
小町はトコトコと歩いてきて俺の前に来た。眉をハの字に曲げて心配そうな顔をしている。
「あー、おにーちゃんは、ちょっと頑張ったんだよ。」
と言うと。眉をもとにもどして。
「…、そっかあ。まあ、ほどほどにね?」
そう言って小町は俺の頭を撫でた。少し踵を浮かせて、背伸びしながら。
「「「天使か…」」」
小町は、家族は家族でも、妻の対応だった。
小町小学さんねんせい