クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン   作:オービタル

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第六話:覚醒の兆し・前編

ココを救出して、それを落とそうとしたドラゴンの群を見るグレイス。

 

『敵確認を確認!スクーナー級が20匹、ガレオン級が2匹!!』

 

「ガレオン級が2匹!?」

 

「聞いてないよ…!」

 

オペレーターが索敵したドラゴンの数と大型ドラゴン2匹に驚くロザリーと困惑するクリス。

 

「1匹でも厄介なのに、ガレオン級が2匹もくるものか…」

 

そうヒルダは呟きながらドラゴンを睨む。

 

『総員聞け!新兵教育は中止だ!。まずはカトンボを殲滅し、退路を確保する!全機、駆逐形態!陣形空間方陣!』

 

「「「イェス!マム!」」」

 

パラメイルの基本形態であるフライトモードから人型のデストロイヤーモードへと変形し応戦を開始する。

 

「ゾーラ隊長、命令違反の処分は?」

 

『後にしろ』

 

「…イェス、マム」

 

ゾーラに後回しにしろと命令されたサリアは銃を仕舞い、部隊へと合流する。

グレイスはゾーラに通信を入れ、命令を聞く。

 

「隊長!僕達はどうするのですか?」

 

『何とかして生き残りな!! ドラゴンはアタシ達が引きつける!!!』

 

「了解」

 

ゾーラにそう言われて承知するグレイス、グレイスはすぐさまアンジュ達に通信を入れる。

 

「アンジュさん!ミランダちゃん! 奴らから逃げるぞ!」

 

「は!はい!!」

 

「いやです!! 私はミスルギ皇国に帰ります!!」

 

アンジュは今だに自分の国に帰ろうと言い張る。

 

「正気ですか!?パラメイルは出撃1回分の燃料しかない! それに皇国が何処にあるのかも分からないんです!そんな身勝手な行動で仲間が死ぬ所だったんですよ!!」

 

「構いません! 行けるところまで行って…あそこに戻らずに済むのであれば!」

 

流石のグレイスもアンジュのワガママに怒鳴る、しかしそれでもアンジュはまだ懲りてはいない。

っとそこに小型のドラゴン一匹がアンジュに狙いを定めて襲って来た。

 

「ひぃっ!! い!いやああああああああああああ!!!」

 

恐怖に踊らされたか混乱してその場から離れて行く。無茶苦茶な軌道だったがそれでもドラゴンからは逃げて行った。

 

「おいおい…」

 

『ガレオン級一体! グレイス機に迫っています!!』

 

「!!?」

 

グレイスはすぐさま後ろを見ると、雄叫びをあげながらガレオン級が迫って来た。

すぐさまグレイスは回避行動を取り、ドラゴンの腹をすれすれで避ける。しかし今のグレイスはココを乗せている為激しい戦闘は無理である。

 

「仕方ない!……ラルス!安全機能をもう一つ起動させて!」

 

『了解!』

 

するとココの後部座席の後ろから、安全機能の差込口が現れる。ココは腰部に付けられているリードを差し込む。

 

「しっかり掴まってて!」

 

「はい!」

 

ココはグレイスにしっかりと掴まる。グレイスがリベリオンを飛翔形態から駆逐形態へと変形させ、パドルデーゲンを展開し、パルスガンを構える。

 

「ミランダちゃん!来い!」

 

グレイスはすぐさまミランダを呼び、横に並んだ所でグレイスはココをミランダに渡す。

 

「グレイスさん…何を?」

 

「僕と一緒にドラゴンを倒す!後ろにココがいるから離れないように!」

 

「は、はい!」

 

ミランダを強引に言い聞かせ、アサルトライフルとパルスガンを構え、向かってくるガレオン級目掛けて撃つ。

 

一方、別のガレオン級を相手にしていた中隊は連携して攻撃し、ガレオン級の結界を破壊していた。

その中でサリアがグレイス達の方を向くと、グレイスとミランダのパラメイル2機がガレオン級と戦っている様子に驚く。リベリオンが高速でガレオン級の腹をパドルデーゲンで切り裂いたり、パルスガンで応戦する。

 

「スッゲェ〜〜!!」

 

「は、速い!?」

 

それにはヴィヴィアンも驚き振り向く。しかもグレイスはキレのある動きでガレオン級の光線を紙一重でかわしていき、パルスガンのホーミングレーザーでガレオン級の結界を破壊していた。

するとガレオン級がミランダに突進して噛みつこうとした直後、リベリオンが立ち塞がり、掌部が緑へと発光する。

 

「フンッ!!」

 

グレイスは渾身を込めて、掌部を前に出し、ドラゴンの突進を受け止めた。

 

《!!?》

 

さすがのドラゴンも突進があっさりと受け止められた事に驚いた直後、リベリオンの拳が直撃し、ドラゴンの顔面から血や牙が抜け飛ぶ。ドラゴンは咆哮を上げ、最後の足掻きを出そうと、噛み付こうとしたが、リベリオンがあっさりと回避し、ドラゴンの首を掴かみ、そのままパドルデーゲンに追加装備されていた『凍結バレット』を装填させてガレオン級に向かって一気にフルスロットルで向かって行き、ガレオン級の心臓に向かって行き、凍結バレットを撃ちこむ。撃ちこまれたガレオン級の身体から氷の結晶が出現し、そのまま海に落ちて行き、海面から水柱が上がって一気に氷の固りへとなる。その様子に、サリア達は言葉も返すどころか、驚いていた。

 

「ウソ!?…ドラゴンを一撃で!?……」

 

「スゲェ!!」

 

ガレオン級を倒したグレイスは荒い息を吐きながら、倒したガレオン級を見続けていた。

そしてそこにミランダのパラメイルがやって来る。

 

「グレイスさん!!大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫…ちょっと本気出しただけだから……」

 

一方、ゾーラは小型のドラゴンの群を片付けて、最後に残ったガレオン級ドラゴンを仕留めに入る。

 

「後はお前だけだよデカブツ、コイツでトドメだ!」

 

最後のガレオン級ドラゴン一体となった所でゾーラは油断していた。

 

「いやああああー!」

 

「んなっ!?…」

 

錯乱したアンジュがゾーラの機体に取り憑き身動きを封じてしまってたのだ。

 

「アンジュ何をやってるのよ!?」

 

「何しやがる!?アンジュ離れろ!」

 

この隙にガレオン級ドラゴンは翼でゾーラとアンジュを両方を叩き落す。

叩き落された二機は今にも地上に墜落しそうになった。

 

「ゾーラァァァァァァッ!!」

 

ヒルダが悲痛な叫びをあげる。ガレオン級ドラゴンの翼に隊長さん達の機体が叩き付けられ今にも地上に墜落しそうになったその時、リベリオンが高速で墜落しそうになったゾーラとアンジュの機体を掴み防ぎ、スラスターウィングの推進力の出力を上げる。

 

「グググ!!重い!!」

 

2機を抱えている為、リベリオンの両腕の関節部が火花が出始める。

 

『アラート!!機体重量及び、スラスターウィングの推進剤がEmpty(空欠)まで急激に消耗しております!』

 

「それでも!!」

 

何とか振り絞ろうとしたが、とうとうリベリオンの腕が粉々になり、リベリオンの推進剤も底を尽きかけ、墜ちていく直後、サリアのアーキバスやヒルダ、ヴィヴィアンがグレイス達を支える。結局もう一匹のガレオン級ドラゴンはいなくなっている

 

『…残念だけど逃げられてしまったわ。追跡は無理ね。隊長とアンジュの機体も大破してるし、ひとまずアルゼナルへ帰投するわよ』

 

サリアが命令し、基地へと帰還する。

 

 

アルゼナルに戻って来て、医務室では傷だらけのアンジュが寝ていて、グレイスは安定薬を飲み。興奮状態を抑える。

 

「アンジュさん…」

 

椅子にグレイスはやや辛そうな目線でアンジュを見る。

 

ゾーラは全身、包帯だらけで口には酸素マスクが付けられていた。アンジュも包帯だらけだったが、ゾーラに比べれば怪我はそれほど酷くはなかった。只、逃げられない様に手足に拘束具が付けられていた。ジルはアンジュに近づくと既に目覚めていた彼女に冷淡に告げる。

 

「パラメイル3機大破。メイルライダー1名、意識不明の重傷。ドラゴンも撃ち漏らした。これがお前の敵前逃亡がもたらした戦果だ、アンジュ」

 

その様子をグレイスは黙って見ており、彼女の手にも包帯が巻かれていた。

 

「何とか言えよ、おい!」

 

「手を出すなよ、これでも負傷者には違いないんだからさ」

 

激昂するロザリーをマギーが窘める。

 

「私はミスルギ皇国へ帰ろうとしただけです。何も悪い事はしてません」

 

この言葉にロザリーはますます憤慨する。

 

「何言ってやがる!お前のせいでお姉様がこんな事になったんだぞ!!」

 

「この人でなし!お姉様を、私達の隊長を返して!!」

 

クリスも目に涙を溜めながら叫ぶ。

 

「人でなし?……ノーマは、人間ではありません」

 

アンジュの暴言に周囲は絶句し、グレイスも目を細める。

 

「このっ!!」

 

激怒したヒルダがアンジュに踵落としをお見舞いしようとした。

 

「なっ!?」

 

しかし、その足がアンジュに届く事はなかった。グレイスが腕でヒルダの足を受け止めていたからである。これにはジル以外の全員が驚く。

 

「なんのつもりだ、てめぇ…」

 

「アンジュさんに怒りを覚えるのは分かるよ。でも、アンジュさんの怪我も決して軽いわけじゃないんだよ。傷に障る様な事はしないでくれるかな……」

 

「この期に及んで、まだコイツの肩を持つ気かよ!」

 

「……殺られたいのか?」

 

グレイスの眼差しが殺意に満ちた目になり、異様なオーラを漂わせ、ヒルダに威圧する。

 

「…チッ!」

 

グレイスの迫力に気圧されて、ヒルダは足を引っ込める。そしてグレイスはアンジュの方に向く。

 

―――パシンッ!!

 

グレイスはアンジュの頬を叩いたのだ。

 

「……まだ解らないんですか?あなたの身勝手な理由で、ココちゃん、ミランダちゃんは死ぬところだったんですよ。ゾーラ隊長だって、目を覚まさない状態です。それなのに、あなたはまだ否定するというのですか…」

 

「私は、ただ……皇国に帰りたいだけです…」

 

「身勝手過ぎる…!!」

 

「落ち着け馬鹿者、その怒りはドラゴンにぶつけておけ」

 

「…了解」

 

「サリア、ゾーラが動けない以上、お前が隊長だ。ヒルダは副長だ。いいな?」

 

「「はい!」」

 

「撃ち漏らしたドラゴンが発見され次第、行動に移れ」

 

「イェス、マム!」

 

皆が部屋を出ていくが。

 

「グレイス、お前は残れ大事な話がある。」

 

ジルに呼び止められ、グレイスは医務室に残る。

 

話の内容はアンジュさんの故郷であるミスルギ皇国が滅んだと言う話であった。宮廷クーデターによる皇室への信頼失墜、暴露した皇太子のジュリオだって人望があるとは思えない。結果的に、ジュリオは権力が欲しいがあまりその結果、ミスルギ皇国は破滅した。

 

それ以上にショックを受けていたのはアンジュだ。

 

「そんな・・・私の国が無くなるなんて。・・・お母様は?お父様は?お兄様は?シルヴィアは?」

 

「……お前たちに見せいたものがある」

 

 

 

 

 

雨が降っており、其処には傘をしたジャスミンとゴーグルをつけている犬である『バルカン』と一緒にいた。

ジルに案内されると其処には墓が並んでいたのだった。

 

「まさか、この墓は…」

 

「ドラゴンと戦い散っていたノーマたちだよ」

 

予想はしていたが、やはり戦いで亡くなった者たちの墓か…。

 

「墓石の掃除さね。何もしないと墓石も汚れてしまうからね。月に1度はこうして掃除しているのさ。パラメイルがノーマの棺桶なら、この墓地は死んだノーマ達の家だからね。ところで墓石に刻まれた名前を見たかい?いい名前だろ。アルゼナルの子達はね、死んだ時に初めて親がくれた本当の名前を取り戻せるのさ」

 

「本当の……名前…」

 

「そう言えば、あんた…ゾーラと新兵二人を助けたって?…ありがとうよ、おかげで墓石が増えずに済んだよ」

 

「いえ、僕は全力を尽くしたので…それに仲間が消えちゃったら…生きていけないですから」

 

「ほんの少しマナが使えないだけではないですか!それだけでこんな地獄に!」

 

「お前達の作ったルールで此処にいる…」

 

その言葉を聞いて、アンジュはミスルギ皇国で自分が行ったことを思い出す。

 

人類の進化の果てに手にしたマナの光それを否定するノーマは本能のままに生きる。

 

反社会的な化物・・今すぐにでも世界から隔離しなけれなりません。

 

「わ、私は決してノーマなどでは…」

 

「ノーマではない、と?なら、お前はなんだ!?皇女でもなく、マナも無い。義務も果たさず敵前逃亡、仲間を危険に晒し、挙句にそれを他の仲間に尻拭いさせたお前は一体、なんなんだ!!」

 

ジルはアンジュの胸倉を掴み上げ、吠える。しかし、アンジュには最早言い返す気力も残ってはいなかった。ただ、ただ、悲しみに暮れるだけだった。と、向こうから誰かがやってくる。

 

「司令、取り逃したドラゴンが発見されたとの報告が来ました」

 

果たしてそれは、サリアだった。どうやらドラゴンが見つかった様である。

 

「そうか。アンジュ、グレイス、出撃だ。行けるな?」

 

「イエス、マム!」

 

グレイスは応えたがアンジュは俯いたままだった。

 

「アンジュ、いつまで呆けているつもりだ。この世界は不平等で理不尽だ。だから殺すか死ぬか、この2つしかない。死んでいった仲間達の分もドラゴンを殺せ!それが出来ないというなら死ね!!」

 

 「なら、殺してください。こんなの辛過ぎ「ダメですよ」…え?」

 

 アンジュの言葉が途中で遮られる。声の主はグレイスだった。グレイスはアンジュの肩を掴むと自分の方に顔を向けさせる。

 

それは言っちゃダメですよ。確かにこの世界は僕達ノーマにとっては地獄です。でも生きるのを諦めちゃダメ。この墓で眠っている子達だって、本当はもっとずっと生きていたかった筈…。だからアンジュさんは生きなきゃダメです。この子達の為にも…。」

 

グレイスは再びアンジュに諭すように言う。

 

「そうだ。それでも死にたいというなら戦って死ね。それがお前の義務だ。お前には自殺する事さえも許されないんだ」

 

ジルもグレイスに付随する様に言う。

 

「あの、司令。グレイスはともかく、アンジュのパラメイルはありませんがどうするのですか?」

 

サリアがそう訊ねるとジルは不敵な笑みを浮かべる。

 

「あるだろう。あの機体が、さ」

 

それを聞いたジャスミンも笑みを浮かべるがサリアは驚く。

 

「まさか、あれをアンジュに!?」

 

「そうだ、行くぞアンジュ。グレイスもついて来い」

 

そう言うとジルはグレイス達をある場所へと連れて行った。そこはパラメイルの格納庫だった。そして、そこには布で覆い被された1機のパラメイルがあった。

 

「メイ、起動させる事は可能か?」

 

「もちろん!20分もあれば余裕だよ」

 

メイはそう言うと機体の方へ向かって行った。やがて機体がライトアップされる。

 

「!?…これって!?」

 

機体を見たグレイスは目を見開く。

 

「驚いただろう?お前のリベリオンにそっくりだからな。かなり旧式の機体でな。エンジンが古い上に操作や制御がかなり難しいと来た。だが、今のアンジュにはおあつらえ向きの機体だろう。名は“ヴィルキス”。アンジュ、これに乗って戦うんだ」

 

ジルはアンジュに告げると彼女はふらふらとした足取りでヴィルキスの元へ向かう。

 

「これで死ねるのですね。この地獄から解放されるのですね・・・」

 

うわ言の様に呟くアンジュをグレイスは心配そうに見ていた。と、

 

「ジル、どうして?この機体は・・・」

 

声がした方を向くとサリアがジルに問い詰めていた。

 

「司令官の命令に従えないのなら処分を受けてもらうまでだ。アンジュ達、新兵みたいになりたいか?」

 

「そ、それは・・・」

 

「さあ、出撃だ。隊長としての初陣、期待しているぞ。死ぬなよ、サリア」

 

「イエス、マム・・・」

 

ジルはサリアに諭すように言うと去っていった。サリアは従ったものの、どこか不満そうだ。

 

 

出撃時間になり、ゾーラ隊からサリア隊と名称を変えた第1中隊が出撃する。ちなみに今回はココとミランダは謹慎の為、8人で出撃となる。

 

「サリア隊、発進します!!」

 

サリアのアーキバスが発進したのを皮切りに第一中隊の機体が次々と発進していく。グレイスのリベリオンは両腕がかなりの劣化状態だった上前回の戦闘で大破していた為、パドルデーゲンとケンプファーを装備することは出来なかったが、パラメイルのスペアパーツを取り付け、パドルデーゲンの代わりに圧縮ガスで重金属リベット弾を連射出来る短機関銃。通称『リベットガン』と前腕部のシミター・ブレードが装備されていた。

 

「サリア隊、発進します!!」

 

サリアのアーキバスが発進したのを皮切りに第一中隊の機体が次々と発進していく。

 

「サリア隊、グレイス機、行きます!!」

 

グレイスも『リベリオン リペア』を発進させる。そして最後にアンジュが乗ったヴィルキスが発進するのだった。

 

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