クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン   作:オービタル

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第七話:覚醒の兆し・後編

アルゼナルを飛び立った第一中隊はガレオン級が潜むポイントを目指していた。その中にアンジュがいる事にロザリーとクリスは不満を漏らしていた。

 

「あいつも一緒なのかよ。お姉様をあんな目に遭わせた奴と出撃だなんて…」

 

「死ね、くたばれ、地獄に落ちろ…」

 

「落ち着けよお前等。死ぬつもりらしいよ、アイツ」

 

ヒルダの言葉を聞いた2人は目を丸くする。

 

「見届けてやろうじゃないか、痛姫様の最期ってやつをさ」

 

ヒルダは面白そうに笑みを浮かべる。それでもアンジュは上の空のままだった。

 

一方、ヴィルキスを見たヴィヴィアンは興奮していた。

 

「ねえ、ねえ、サリア。アンジュの機体、ちょーかっこいいよ!」

 

「静かにして。もうすぐ戦闘区域よ」

 

サリアはヴィヴィアンを窘める。グレイスは修復されたリベリオンと言うより、ラルスに話しかける。

 

「代わりの腕はどう?」

 

『大丈夫です。全く通常のパーツと変わりませんが、武装換装により、射撃制度が減少致しました。』

 

「別に良いよ、使える武器があるなら今のうちに使っておかないと♪」

 

「敵影確認、来るわよ!」

 

サリアの言葉と同時にガレオン級が海の中から現れた。ガレオン級は胴体が少し凍り付いていたが致命傷には至っておらず、それどころか前よりも凶暴さが増していた。

 

「で、どうすんのさ、隊長?」

 

「奴は瀕死よ。このまま一気にトドメを刺すわ。全機、駆逐形態!凍結バレットを装填!」

 

『イエス!マム!!』

 

第一中隊の面々は機体をアサルトモードに変形させる。それと同時に凍結バレットも装填する。

 

「陣形、密集突撃!攻撃開始!!」

 

サリアの指示と同時に第1中隊はガレオン級にトドメを刺そうとした。その時である。

 

「グガアアアアァァァァ!!」

 

 ガレオン級の咆哮と共に魔法陣が展開される。すると海の上にも魔法陣が現れて、海の中から次々と光弾が出てきた。グレイスも新武装であるリベットガンで光弾目掛けて撃つ。圧縮ガスによって重金属製のリベットが乱射され、光弾が弾ける。しかし圧縮ガスの為、残量ガス制限が限られていた。ガスが切れると、次のガスタンクとマガジンを装填している時、上空の光弾に気付く。

 

「隊長!上!!」

 

「え、上って・・・」

 

 上を見てみるとそこには先程の様な魔法陣が展開され、同じ様に光弾が今度は雨あられの様に降り注いだ。さらに海中から待機していたのか、光弾が出てくる。

 

 (そんな!?下からだけじゃなくて、上からも来るなんて!しかも待機状態で!?)

 

二重に仕掛けられた罠に他の機体は次々と被弾し、撤退を余儀なくされる。

 

「こんな攻撃してくるなんて…過去のデータには無い…!」

 

予測外のドラゴンの攻撃にサリアは混乱していた。

 

「どうするの!サリアちゃん! このままじゃ危険よ!」

 

「ど、どうするって…どうすれば」

 

「サリアちゃん!あなたが隊長なのよ!しっかり!」

 

必死に指示を仰ごうとするエルシャだが、混乱しているサリアは中々上手く指示を与える事が出来ない。

ドラゴンが迫ってきている。

 

「か!回避!!」

 

だが、サリアは遅れておりドラゴンが迫って捕まってしまう。

 

「「サリア!!(ちゃん)」」

 

「くっ!」

 

サリアはコクピットを開けてマシンガンで撃つも、効果全くなく、ガレオン級がサリアを喰おうとして。それにサリアは絶体絶命状態であった。っとそこにリベット弾がガレオン級に直撃して。それにサリアは飛んできた方を見ると、グレイスのリベリオンがまっすぐガレオン級に向かって来た。

 

「これなら!!」

 

リベットガンの銃下部に装備されている高速振動短剣。通称『バイブレーションブレイド』が展開され、ドラゴンの強靭な鱗めがけて刺そうとしたが、ドラゴンの尻尾がリベリオンに目掛けて振り下ろされた。

 

「グアッ!!」

 

振り落とされたリベリオンが体制を立て直そうとした瞬間、ドラゴンの尻尾がリベリオンに巻き付く。

 

やがてエルシャの機体も被弾し、ダメージを受ける。

 

「きゃあ!サリアちゃん、次はどうするの!?危険よ、このままじゃ」

 

エルシャはサリアに指示を仰ぐが、

 

「そ、そんな事言われても、一体どうしたらいいの?ゾーラ隊長…」

 

サリアがゾーラの判断ならどうすれば良いか考えていると。

 

機がこっちに近づいてくる。

 

「ちゃんと死ななきゃ…」

 

ドラゴンの狙いは近づいてくるアンジュに変わり、攻撃を仕掛けようとする。

 

「あいつ、本気で死ぬ気…?」

 

ヒルダだけではなく他の皆にはそのような行動を取っているようにしか見えなかった。

だが、ドラゴンの強烈な尾に弾かれたが、アンジュは体勢を立て直す。

 

「いけない…もう一度ちゃんと…これで、さよならできる…」

 

死ぬ覚悟ができていないのか単に怖いのか回避行動を取っている。

 

「まずい!!頼む!…リベリオン!皆を助けたいんだ!」

 

『アラート!覚醒プログラム率が15%まで上昇。"アドバンスド・フォルム"へ移行します。』

 

「何を言っているんだ、ラルス!?…こんな時に!」

 

っと叫ぶグレイスの叫びに、リベリオンの装甲とスラスターウィングが変形していくと同時に、髪の色が徐々に変色していく。

 

死の恐怖に体が震えるアンジュは自分を守ってくれた母ソフィア・斑鳩・ミスルギを思い出す。

 

 

『生きるのです、アンジュリーゼ。どんな困難が待っていようとも…』

 

 

母の最期の言葉を思い出し、形見の指輪を見る。ドラゴンは痺れを切らしアンジュを食いにかかろうとする。

 

「い!いやあああああああああああああああああああっ!!!!」

 

アンジュの悲鳴に応えたのか、ヴィルキスが白銀の輝きを放つ。ドラゴンも突然の輝きに目が眩んだ隙にサリアの機体を離してしまう。

 

そして同時に二人の機体は変化を現していく。リベリオンの装甲の形状が変形していく。分厚い装甲に複数のバーニア、スラスターウィングが前進翼へ、そして頭部のバイザーが割れ、後部へとスライドされた。そしてグレイスの髪がアンジュの様に美しい黄金の髪へと変色、長髪へとなる。一方アンジュの方では、ヴィルキスを覆っていた錆や汚れは剥がれる様に落ちて四散していく。そして、アンジュがヴィルキスをアサルトモードにすると、白と青のボディと間接部が金色でコーティングされ、頭部に天使のオブジェが銀色に輝くヴィルキスの真の姿があった。

 

「"アドバンスド・フォルム"?」

 

すると、ガレオン級が再びヴィルキスとリベリオンに襲い掛かる。グレイスは直ぐに操縦桿を握り、リベリオンを動かし、リベットガンを乱射する。するとモニター画面からドラゴンに向けて複数のターゲットサイトが表示され、ドラゴンの各部位をマルチロックオンする。グレイスがトリガーを引くと、リベリオンの側頭部が展開され、六連小型ミサイルが発射される。ミサイルにもバーニアが装備されており、ドラゴンの光弾を回避しつつ、各部位に炸裂する。ドラゴンは悲鳴を上げると、ヴィルキスの方へ突進して行く。

 

「死にたくない…死にたくない!!」

 

アンジュは叫ぶと突進してくるドラゴンに向かってアサルトライフルを撃つ。ある程度ダメージを与えるとアンジュはヴィルキスをフライトモードに戻し、距離をとる。その機動性は先程とは打って変わって大きく向上していた。ドラゴンは今度は光弾を放つ。アンジュとグレイスはそれを回避とアサルトモードに変形して、ヴィルキスの専用武装である剣、ラツィーエルを使って打ち消していく。そしてガレオン級に近づくと、

 

「お前が!!……お前が死ねえええぇぇぇ!!!」

 

叫びと共にアンジュはラツィーエルをガレオン級の頭部へ深く突き刺す。素早く手放し、離れるとヴィルキスを追尾していた光弾がガレオン級の胴体に直撃する。それに見計らってアンジュは凍結バレットをガレオン級に撃ち込み、同時に頭部に刺さったままのラツィーエルを回収する。ガレオン級は断末魔の悲鳴を上げ、海へ墜落するとたちまち氷原へと変わるのだった。ドラゴンを撃破すると、リベリオンとグレイスが元の形状と髪型へと戻っていく。

そしてリベリオンとヴィルキスは空中に停止し、アンジュは息を整えながらも涙をためながら今の自分を否定しようとしていた。

 

「こんなの…私じゃない…殺しても生きたいなんて…」

 

そしてアンジュは泣き始めて、グレイスはそんなアンジュを見つめながら黙って見続けていた。

 

アルゼナルの司令室でジルはアンジュとヴィルキスの覚醒を見てフッと笑っていた。

 

 

夕暮れ時、戦闘を終えたアンジュは墓地にいた。彼女の顔は決意に満ちていた。

 

 「さようなら、お父様、お母様、お兄様、シルヴィア、モモカ……。(私には何もない、何もいらない。私は生きていく、この地獄ともいえる場所で。ドラゴンを駆逐して。私は生きる。殺して、生きる……。)」

 

 アンジュはそう言うと持っていたナイフを使い、自分の髪をバッサリと切り落とす。背中まであったアンジュの髪は肩の上ぐらいまで短いショートカットになった。アンジュはその場を去ろうすると、そこにグレイスがやって来て、アンジュはグレイスの通りすり過ぎた後に止まり言う。

 

「私は生きる。この残酷な世界で…生き続ける、例え孤独の日々でも…」

 

そう言い残し、アンジュは去って行って。グレイスはアンジュの方を向いて、彼女の後ろ姿を見続けていった。

 

「アンジュさん…」

 

見続けたグレイスは夕日を見て、自分の拳を見る。

 

「(アドバンスド・フォルム……そして僕の髪が金髪に……どうなるんだろう?)」

 

 

様子を空から見下ろす2人の男性の姿があった。一人はでありもう一人の男性の方は金色の長髪に背広を着た紳士的な印象の青年であった。

 

「ようやく、覚醒プログラム率が15%へと覚醒したか…どうするのです?父上……」

 

コードネーム"HLS-0248"が青年に問う。

 

「慌てなくても良い♪……彼はまだ気付いていない、本来有るべきの記憶と宿命は私が管理している」

 

「しかし、万が一…ラルスが"あれ"を起動したら!?」

 

「……その時は、始末するまでだ」

 

コードネーム"HLS-0248"が激昂して警告するも青年は余裕の態度を崩さない。

 

「それに、彼は私が造った『真神類』の一体でもある……覚醒プログラムが100%まで経とうが、あの機体には、制御システムが組み込まれているから……君の"弟"は抗う事はできない♪それに三人の"弟妹"が次の段階まで進んでいる……君達に忠誠を誓う彼等が出来上がったと…Dr.ディメントが報告してきた」

 

「彼等…とすると、俺に従う騎士の事か?」

 

金髪の青年はコードネーム"HLS-0248"に笑みを浮かばせる。

 

「有り難き幸せ、父上……父上の為に、新たな計画と奴等の進行を阻止してみせます!」

 

「期待しておるよ…我が子よ♪」

 

「"グロリアス エンブリヲ"(エンブリヲ様に、栄光を…)…」

 

コードネーム"HLS-0248"がエンブリヲと言う青年にそう言うとそのまま消えていった。後に残ったエンブリヲは再びアルゼナルを見る。

 

「やれやれ……あのまま進行すれば、素晴らしい再会になる。調律者である私と……"降臨の子"である"グレイス"……良い親子対決になろう♪」

 

エンブリヲは静かに微笑むとその場から消えるのだった。

 

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