クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン   作:オービタル

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第八話:孤高の反逆者・前編

「3度の出撃でこれほどの撃墜数とは。上々だな」

 

夜更けのアルゼナル。ジルの私室にジル、サリア、メイ、マギー、ジャスミン、バルカンの5人と1匹が集まっていた。第一中隊の戦闘報告書を読んだジルは御機嫌だった。

 

「今まで誰も動かせなかった機体をこうも簡単に動かしてしまうとはね」

 

「たぶん、ヴィルキスがアンジュを認めたんだと思う」

 

「じゃあ、あの子が…」

 

「フッ、なら始めるとしようか。【リベルタス】を」

 

リベルタス。自由の名が付くそれはジル達、一部のノーマ達しか知らない世界と社会に対する反攻作戦だ。ヴィルキスはその作戦の要となる。殆どの者が頷く中、サリアは若干不満そうだ。

 

「不満か、サリア?」

 

「……すぐに死ぬわ、アンジュ。グレイスも命令は聞くけど時折、無茶な行動に出る事があるし」

 

「仲間を危険に晒した者と救った者。中々、面白い組み合わせよね」

 

マギーの言葉にサリアは今日の戦闘を思い出す。

 

 

ドラゴン迎撃に出た第一中隊はガレオン級4体の出現と無数のスクーナー級と戦っていた。

 

アンジュはヴィルキスを操り、次々とスクーナー級を落としていくが、彼女に恨みを持つロザリー、クリスの砲撃が何度か当たりそうになる。アンジュはそれを見事に回避するのだった。

 

一方、グレイスの方は2匹のスクーナー級に追いかけられていた。一見すれば、窮地に陥っている様に見えるがそうではなかった。目的のポイントに近づくと、

 

「ココちゃん、ミランダちゃん、今だよ!」

 

『『はいっ!!』』

 

2人に通信を入れたグレイスはリベリオンのスピードを上げて、スクーナー級を振り切る。スクーナー級は追いかけようとするが突然、ココとミランダが乗る2機のグレイブがアサルトライフルを構えて、立ちはだかった。と、同時にライフルを発砲。スクーナー級を撃ち落すのだった。

 

「良し!ココちゃんもミランダちゃんも腕が上がった♪」

 

「うん、グレイスさん。私、出来たよ!」

 

「グレイス、ナイスパス!」

 

3人はそれぞれ健闘を讃えるのだった。グレイスはこうして2人にパラメイルの操縦法やドラゴンの撃墜をサポートしている。2人を強くする為でもあるが、隊長になったばかりのサリアの負担を少しでも減らそうという思いもある。

 

 勿論、自分がドラゴンを狩るのも忘れない。グレイスは前線に戻ると、スクーナー級を次々と撃ち落していく。すると、爆発音がしたほうを向くとヒルダがガレオン級の1匹に攻撃を加えていた。そして、トドメを刺そうと凍結バレットを装填した、その時だった。

 

「うわああぁぁ!!」

 

アンジュのヴィルキスがヒルダの機体を突き飛ばすと凍結バレットを素早く装填。ガレオン級に撃ち込むのだった。ガレオン級は海に墜落し、氷原へと変わるのだった。

 

「はあ、はあ、はあ・・・」

 

アンジュは息を切らしながらソレを見届けるのだった。グレイスは呆れつつ、残った最後のガレオン級の方へと向かう。攻撃をかわしつつ、凍結バレットを装填するとガレオン級に撃ち込み、これを倒すのだった。

 

 

「…私ならもっと上手くやれる。ヴィルキスを使いこなす事ができる。なのにどうして?」

 

「適材適所、だ。アンジュにはヴィルキスを動かす役割がある様にサリア、お前にはお前の役割がある。そういう事だ」

 

訴えるサリアをジルが宥める。

 

「でも、もしヴィルキスに何かあったりしたら!」

 

「その時はメイが直す。命に代えてでも。それが姉さんから受け継いだ私達、“一族”の使命だから!!」

 

メイが誇り高く答える。これには、サリアも何も言えなくなってしまった。

 

「お前にもリベルタスでは頑張ってもらう。だから、その時が来るまで力を身に付けておけ。いいな?」

 

「は、はい…」

 

「いい子だ。さあ、これから忙しくなるぞ。くれぐれもエマ監察官には悟られない様にな」

 

それからサリア、メイ、マギーの3人は廊下を確認する様にして部屋から出て行った。後に残ったのはジル、ジャスミン、バルカンだけだった。

 

「良い子だ…か、狡い女だね?あんたは…」

 

「利用するものはなんだって利用するさ、感情だろうが命だろうが…地獄には、とっくに落ちている」

 

吸っている煙草を義手で握りつぶすジル。それにジャスミンは「やれやれ」と言い残しながら去って行った。

 

 

そして翌日後、昨日と今日の出撃を合わせた日のドラゴン討伐、弾薬、燃料消費、装甲修理など計算し、給与カウンターから報酬金を受け取っていた。

 

「撃破数スクーナー級3、ガレオン級へのアンカー撃ち込み。弾薬消費、燃料消費、装甲消費等を差し引きして今週分18万キャッシュ」

 

「チッ!これっぽっちか」

 

18万と言う少ない報酬金を受け取るロザリーは舌打ちをする。

 

「まだ良い方だよ。私なんて一桁だから…」

 

クリスはロザリーより低い報酬で彼女を励まそうとする。

 

「ヒルダは?」

 

ロザリーの問いに、ヒルダは分厚い札束を見て二人は感動している。

その間にアンジュが報酬金を受け取っていた。

 

「今週分550万キャッシュ」

 

とロザリーとクリスはそれに目を光らせ、ヴィヴィアンとエルシャはアンジュの活躍に褒めていた。

 

「アンジュやるー!」

 

「大活躍だったものね!」

 

しかし彼女は預金をしてその場を去って行く、次にグレイスが受け取る。

 

「今週分620万キャッシュ」

 

アンジュよりは多いものの、それでも他の者達よりも大分稼いでいた。

 

「ちっ、アイツもか…」

 

それを見たヒルダは忌々しそうに舌打ちをする。

 

「おお~!グレイスもやるじゃん!」

 

「流石ね、グレイス君」

 

「凄い凄い!」

 

「今までそんな大金初めてです!」

 

「そう?……(何でガレオン級やブリッグ級が一気に僕の方に……)」

 

グレイスは必要な分だけを受け取って、残りは預金したのだった。その様子をヒルダ達は苦虫を噛み潰す様な表情で見ていた。

 

 

そして更衣室にアンジュは自分のロッカーを開けると、中が落書きされており制服がボロボロとなっていた。

 

「どしたの~? ん?わお!」

 

「まあ!」

 

「また、貴方達ね」

 

「さぁ~ねぇ~」

 

サリアが注意するのだが、ロザリーはしらを切っていた。しかしアンジュはボロボロになった制服を身に纏い、ロザリーを睨む。瞬時に近づきナイフを抜き、空を切る。ナイフを納めると同時に、ロザリーのライダー服が切れ、胸が見てしまう。

 

「ひゃああああああああああ!?」

 

「うざっ」

 

そう言い残し、更衣室を出る。

 

「ん?うぇっ!!??」

 

っと丁度そこにグレイスと鉢合わせとなり。グレイスはアンジュの制服に真っ赤となって手で目を隠し、見ないようにする。それにアンジュは少々頬を赤くしながら言う。

 

「……あんまりジロジロ見ないで」

 

アンジュはグレイスをそう言い通り過ぎて行き、グレイスは目を隠したまま、そのままバッタリと倒れてしまった。

 

 

そして監察官のエマが父にアルゼナルの仕事報告をしていた。

 

「大丈夫ですよ、仕事も慣れてきましたし私がいる限り秩序を…」

 

そうエマはコーヒーを飲んでいる最中、アンジュの姿が目に入る。

ボロボロの制服を身に纏っており、思わず吹いた。

 

「と!と!止まりなさい!!」

 

アンジュは後ろからの声を聞き、立ち止まる。

 

「あなた、その恰好は何!?」

 

「制服ですが」

 

とぶっきら棒で答えるアンジュ。

 

「秩序を乱す服装は慎みなさい。まったく…そんな恰好をして恥ずかしくないのですか? ここには男のノーマもいるのよ?」

 

「…監察官殿は、虫に裸を見られて恥ずかしいと思いますか?」

 

「えっ?」

 

アンジュはそう言って敬礼して立ち去った。

 

 

そして二日後、グレイスはジャスミンモールで自分の下着を購入しようとしていたが…。

 

「う~ん、やっぱり男性用の下着は発注しないと駄目か〜……?」

 

っとそう呟くグレイス、そもそもジャスミンモールは日用品、食品、パラメイル用のカスタムパーツまでの商品が取り扱ってるが、流石に男性用の物は置いてはいなかった。

そしてその中でグレイスは武器に見た事がある武器があった事に、あえて無視をした。

そしてそこにヴィヴィアンが大きな袋をもって武器の方にやって来た。

 

「おお~!新しいのはいってる~! おばちゃん、コレいくら~?」

 

「お姉さんだろ!ったく…。『超高クロム製ブーメランブレード』か、1800万キャッシュだね」

 

「喜んで~!」

 

「毎度あり」

 

ヴィヴィアンはブーメランブレードを購入し、それには流石のグレイスも呆れながら言う。

 

「ヴィヴィアン…それ使いこなせるのですか?」

 

「使いこなせるから買ったんだよ」

 

「…それで死ぬようなことはしないでください……ん?」

 

っとそこに番犬がしっぽをふってグレイスに近づき、それにグレイスは見る。

 

「ん?なんだ?」

 

「おや珍しい、この子がアタシ以外の誰かになつくとはね?」

 

そう言っていると番犬が唸り声を上げる。

グレイスが地が視線の方を向くと、もうすでにボロボロ寸前の制服を身に纏ったアンジュがやって来て、それにはまたしてもグレイスが顔を真っ赤にして固まってしまう。

 

「なっ!!??」

 

「おおー、セクシー」

 

「随分、涼しそうだね?」

 

二人が感想を述べるが、アンジュは「制服あります?」と制服代のキャッシュをジャスミンに渡す。

 

「制服ありますかだ? ここはブラジャーから列車砲まであるジャスミンモールだよ。ほれ毎度あり、しっかしどうしたらそんな風になるんだろうね?」

 

「さあ? あれ?お〜いグレイス、大丈夫?」

 

ヴィヴィアンは真っ赤になって固まっているグレイスの顔をツンツンと突きながら聞いてきたが全く無意味だった。

 

 

「ガス抜きと思って見逃していたけどあまりにも目に余るわね」

 

「うう…」

 

アルゼナルの指導教室でアンジュに散々嫌がられせをして来たロザリーとクリスに対し、サリアは流石にこれ以上見過ごせなくなった為、二人を正座されている。

そしてエルシャに何をしたのか分からないが、エルシャに殴られた痕が残っている…。

 

そして三人の他にグレイスとヴィヴィアン、エルシャの三人もいた。

 

「あの子が気に入らないのは分かるけど…」

 

「アンタ等何も思わないの!?大切な仲間を危険な目に合わせて、その上…隊長をあんな風になっていると言うのに彼奴がのうのうと生きている事にさ!!?」

 

「でも、アンジュちゃんは戦場に戻って自分が行ったことも、償いをしてくれたわ、グレイスくんが助けてくれなかったら、ゾーラ隊長もココちゃん、ミランダちゃんも生き延びることもなかったかもしれないわよ?」

 

「そ!それだけで…!」

 

ロザリーは悔しながらも拳を握り締める。

 

「それだけで納得しろっての?」

 

っと扉からヒルダがやって来て言う。

 

「あんたみたいな優等生ならともかく、アタシ達凡人には無理だね」

 

「ヒルダさん……」

 

グレイスはヒルダの登場に目を細める。

 

「たくっ、司令も何考えてんだが、あの女にポンコツ機を与えた以外はお咎めなしとはね。ああ~?司令も気に行っちゃったんだ、あの女に」

 

それにサリアは一瞬反応する。

 

「ま、そう考えれば変に優遇されているのにも納得が出来るか、あの指令をたらしこむなんて大したもんだねえ…皇女殿下はベットの上でも優秀…」

 

そう舌を舐めがらサリアを見るヒルダ。

 

「っ! 上官侮辱罪よ!」

 

「だったら?」

 

サリアはアーミーナイフを抜き、ヒルダはハンドガンを取り出して向ける。

 

「これ以上アンジュに手出しするのは許さないわ!」

 

「ゴミムシに言われるほどでもないね」

 

「.......命令よ」

 

「チッ.......行くよ、二人とも」

 

ヒルダはハンドガンをしまい、ロザリーとクリスを呼ぶ。すると、ヒルダはサリアに言う。

 

「あの男はゾーラの事を助けてくれた事には感謝はするけど、所詮アイツは男のノーマ.........絶対に気を許しては駄目よ」

 

ヒルダはそう言うと、部屋から出ていくのであった。

 

 

「超高速鉄鋼弾に、加減ギアに、そしてポテチ♪……私なんて欲しいものばっかだなぁ、」

 

ヴィヴィアンはノートに書いている欲しいものを見ていていると、サリアは本を読んでいた。

 

「ここでクイズ、サリアは何を呼んでいるのでしょうか?」

 

ヴィヴィアンが突然クイズを出すと、サリアは返答する。

 

「…指導教本、難しいわ…部隊の安定させる行動をどう生かすかを…」

 

そしてサリアはヴィルキスの事を思い出す。

 

「(ジル、約束したじゃない……あの機体を私にって…)」

 

「サリアまた怖い顔してるほら!」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

ヴィヴィアンがサリアがかけていた眼鏡を外す。

 

「サリアはいつものアレを読んでいる時の方が良い顔してるぞ?」

 

「アレ?」

 

「ほれ引き出しの二段目にあるさ、男と女がチュッチュするる本♪」

 

「っ!」

 

「さあ!見せてごらん!僕が受け止めてあげるから、君の全てを~! あ~ん♪そんな事できないよ〜♡」

 

ヴィヴィアンがジェスチャーしながら本の内容を言っていると、サリアはナイフホルダーからナイフを取り出して、ヴィヴィアンに目掛けて投げた。

それにヴィヴィアンは慌てて避けて、サリアは狩人の目をしながら言う。

 

「今度勝手に漁ったら、刺し殺すわよ…」

 

「ご、ごめんちゃい!」

 

睨み付けるサリアにヴィヴィアンは謝ると、ヴィヴィアンのお腹から音が鳴る。

 

「お!飯タイ~ム♪サリアは?」

 

「もう少し勉強してからにするわ」

 

「そっか、」

 

ヴィヴィアンはそう言い、食堂へと向かった。

 

 

そして一方レオンは格納庫までやって来て自分の機体。リベリオンを見る。

 

「……(僕は今の力で誰も死なせずに戦えるか?)」

 

今のリベリオンは近接武器が無い状態、いつまでもこの状態が保てるか今の難しい所だった。

 

「おーいグレイス、もう格納庫の電気落とすよー?」

 

っとグレイスはやって来るメイの方を向いて、またグレイスの方を向く。

 

「心配しなくてもいいよ、近接武器はもうちょっと時間がかかるけど。あとちょっとで完成するから」

 

「助かります、それでもっと活躍して、仲間達の犠牲が減るのなら、それで良いんですけど」

 

そう言ってグレイスとメイはその場を離れ行って格納庫を後にする。

 

そしてそれと入れ違いにヒルダが入って来て。ヴィルキスに近寄り何かに細工を施すのだった。

 

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