クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン   作:オービタル

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後半部からは……"凄くやばい"のが出ます!!


第十六話:秘密の優雅・後編

「かぜぇぇ?」

 

翌日、朝のミーティングルームにヴィヴィアンの声が響く。

 

「湯冷めしたらしいわ」

 

淡々と述べるサリアにグレイスも肩を竦める。考えてみれば、サリアはともかく、アンジュはお風呂場で――しかも外に長く居たせいで身体を壊しても無理はないだろう。というよりも、その原因の一端は間違いなくサリアにもあるのだが……その視線を感じ取ったのか、サリアは心外とばかりに憮然としている。

 

モモカが言うには、外の世界ではそういった病気に対しても『マナ』の力で事前に治癒する術があるらしいのだが、免疫ができにくい。長くアルゼナルで育った者達は体内に抗体などの免疫を持っているが、最近まで外の世界にいたアンジュは抵抗力が極端に弱かったのだろう。

 

「アンジュは復帰するまで待機――当面は私達だけで任務に当たるわ」

 

事態の説明を受けたヒルダ達はさも当然のごとくニヤニヤと笑う。

 

「休んだら罰金いくらだっけ?」

 

「…一日百万キャッシュよ」

 

厭らしい笑みで呟くロザリーにサリアが応える。別に声に出して聞くまでもないことなのだが、わざわざ口して笑い合う。

 

「かわいそうにねぇ」

 

「破産しちゃえばいいのに」

 

アンジュさんがいないところで随分好き勝手言い合うヒルダ達。その後、パラメイルを使用しての訓練を終えた第一中隊は帰還し、解散となった。アンジュがいないだけで、特に問題も起きず、訓練を終えた。

 

ヒルダ達がアンジュの容態にまるで祝杯でも上げるかのように喜々として引き上げる。他人の不幸は蜜の味というが、あまりの小ささに呆れしかでてこない。

 

サリアは訓練中も終始睨んでいたので鬱陶しかったが…セラも特にすることもないので、引き上げていく。

 

「アンジュさん、大丈夫かな?」

 

居住区に戻るなか、ココが不安そうに呟く。

 

「ただの風邪みたいだし、数日休めば大丈夫でしょ」

 

幼年部の保健科目で風邪は『マナ』の力でも根絶できなかった病気の一つとして載っていた。それはウイルスがあまりに多様に渡り、様々な症状を引き起こすからだが、こじらせなければ2-3日程度で完治する。事実、幼年部でも時期によっては流行するため、ココやミランダもそれ程緊迫感はなかった。

 

「お見舞いに行ったほうがいいかな?」

 

「それで移ったらどうすんのよ」

 

嗜めるミランダにココは億劫になるも、どこか納得しなさげであった。

整備班が作業を行う格納庫にサリアが訪れていた。昨日のアンジュが倒れてから、訓練も問題なくこなし、さして問題も起こっていないことから、気分はいつもよりマシだった。

 

とはいえ、アンジュもずっとこのままではないだろうし、復帰してきて元の状態に戻れば元の木阿弥だ。そのためにも、どうにかしてアンジュをコントロールしなければならない。

 

その方策を巡らせながら、慌ただしく動き回る整備班を横に、サリアはヴィルキスへと近づく。やはり、この機体への憧憬を捨てることができず、焦がれるように見つめる。

 

「あ、サリア。なんか用?」

 

唐突に掛かった声に顔を上げると、ヴィルキスの整備をしていたメイが顔を出し、見つめている。

 

「お疲れ。どう、ヴィルキスの調子は?」

 

「アンジュの扱いが乱暴だからすぐにボロボロになるし、メンテナンスも大変」

 

肩を竦め、ぼやくように漏らすメイに思わず指を噛んでいると、

 

「あれ?隊長さん?」

 

「ん?グレイス」

 

「疲れているようですから、僕特製のバナナカクテルを調理場で作ってきました♪」

 

「ありがとう…」

 

グレイス特製のバナナカクテルはカクテルだけど、お酒は入ってなく、疲労回復にもなると言う。グレイスとサリア、メイはバナナカクテルを飲んでいると、サリアがグレイスに問う。

 

「そう言えば、グレイスはここへ何しに?」

 

「僕は、サリア隊長に怯えているティアを、どうすれば互いを和解させるか、ラルスにアドバイスをと。」

 

「……ねぇ、グレイス、私も……ラルスと話をしてもいいかな?」

 

「良いですよ」

 

グレイスは整備されているリベリオンに話し掛ける。

 

「ラルス、話したい事がある」

 

『何でしょうか?質問シークエンスに入ります。』

 

「サリアとティアの仲を良くするには、どうしたら良いの?」

 

『…互いを認識したり、敵ではないと言う行動及び、判断、助力をすれば、認識できます。』

 

「なるほど…」

 

グレイスが理解すると、サリアも問う。

 

「じゃあ、次は私……隊長としてだけど、どうすれば、皆は言う事を聞いてくれるの……」

 

『……答えは簡単……危険を抱え、部下を守る事です。』

 

「え?」

 

『部下を守り、どんな状況化に置かれ、状況に応じて、危険を顧みず、隊長としての本望と立場を見せつける。それが……真の隊長の役割です。』

 

するとメイがラルスに言う。

 

「つまり、もう誰も傷つけさせない……死なせない……ドラゴンの攻撃は、自分ひとりで受け止める……そういう事だね♪」

 

『正解です。』

 

メイとラルスの言葉に、サリアは深く考え込む。そして、パソコンで今まで記録してきた日誌を読んでいく。そこには、今までの戦死者数が全くなかったのである。

 

「まさかね……(でも、これがメイとラルスの言葉が正しければ……それに、ティアにはちょっと怖がらせてしまったわ、後で彼女に謝らないと。)」

 

サリアがそう深く考えていたその時、突如警報が轟いた。

 

【第一種遭遇警報発令! パラメイル第一中隊出撃準備!】

 

ドラゴンの出現に緊迫した空気に包まれるアルゼナルの警報が鳴り響くなか、ヴィルキスを除いた第一中隊のパラメイルがフライトデッキにスタンバイする。

 

ライダースーツに着替えた面々が待機するなか、サリアが号令をかける。

 

「総員騎乗!」

 

一斉にバイザーを下ろし、各々の機体へと駆け出し、飛び乗っていく。

 

「隊長より各機へ!アンジュは休み…今回の作戦は10機で編隊を組むわ」

 

ヴィルキスのいない中、火力が落ちるのは仕方ない。その分をカバーするため、サリアは作戦を思い浮かべながら、第一中隊は大空へ舞い上がる。

編隊を組んで飛行する第一中隊は観測されたシンギュラーまで接近していた。

 

《シンギュラーまで距離2800!》

 

今回の観測地点はアルゼナル周辺に点在する無人島の一つだ。そして、周辺の空間が乱れ、空気が淀んでいる。

 

「全機、セーフティ解除! ドアが開くぞ! 戦闘隊形!」

 

『イエス・マム!』

 

戦闘地域に入った第一中隊、そこにゲートが開きスクーナー級が無数出て来て、そしてそこに角が生えた巨大なドラゴンが出現し。それを見たグレイス達は驚く。

 

「え?!」

 

「でか!?」

 

「あらあら大きいわ~」

 

グレイスとヴィヴィアンが思わず驚き、エルシャは苦笑いしながらのん気に言っていた。

 

「サリア、アイツのデータは?」

 

「あんなの、見た事無いわ…」

 

サリアはデータのないドラゴンに悩まされる中でロザリーとクリスが驚く。

 

「見なことないって事は!」

 

「まさか…まさか!」

 

「初物か!」

 

ヒルダは思わず喜びの笑みを上げる。

 

「初物?」

 

司令室でジル達と見ていたエマは聞き慣れない言葉を聞いて首を傾げる。

 

「監察官は初めてでしたか、過去に遭遇のないドラゴンの事ですよ」

 

ジルはエマにその事を説明し、納得させる。

一方戦場では未遭遇のドラゴンにヒルダ達は盛り上がっていた。

 

「コイツの情報持ち帰るだけでも大金持ちだぜ!」

 

「どうせなら初物喰いして札束風呂で祝杯といこうじゃないか!」

 

「(能天気な連中だぜ…ヒルダにロザリーの野郎)」

 

グレイスは盛り上がっているヒルダ達を見て呆れ返り、その時にヒルダ、ロザリー、クリスの三人が未遭遇のドラゴンに突撃して行った。

それにサリアは慌てる。

 

「ちょっと!待ちなさい!!」

 

こんな時に興奮するヴィヴィアンが妙に静か事にグレイスが気づき問いかける。

 

「ヴィヴィアンちゃん、どうしたのですか?」

 

「…なんか髪の毛がピリピリする」

 

その事にグレイスは異変を感じる。

そしてヒルダ達が大型ドラゴンに突撃しようとしたその時!

 

「っ!! ヒルダ戻れ!!」

 

ドラゴンが咆哮を上げたと同時にと角が光りその瞬間周囲が何かに包まれた。

ヴィヴィアンが警告を促したが時既に遅くヒルダ達の機体が囚われてしまった。

 

それにヒルダ達は苦しむ。

 

「なっ!?」

 

「う…動けねえ…」

 

「一体何なの…コレ!?」

 

三人が混乱している中、グレイス達が上空で見ていると。

 

『新型ドラゴン周囲に高重力反応!』

 

「「重力!?」」

 

オペレーターからの解析結果に驚く。

更にドラゴンが角を光らし、重力範囲を広げ始めた。

 

「あっ!? 全機急速回避!!!」

 

グレイスがいち早く気付き、皆にそう言うも時すでに遅く。サリア、エルシャ、ヴィヴィアンが重力に捕まってしまった。

 

「隊長!!」

 

「ヴィヴィアンちゃん!エルシャさん!!」

 

グレイスが叫び、ココとミランダが戸惑う。

 

「ど!どうしよう…!?」

 

「このままだと、皆さんが!!」

 

「仕方ない、ラルス!リベリオンをアドバンスド・フォルムに!」

 

『不可能です。解析した結果、アドバンスド・フォルムのミサイルが発射された直後、ミサイルは重力の影響により、落ちてしまう及び、味方機に被害が増大します。』

 

「そんな!?」

 

グレイスが何か対策が無いか考えてると…。

 

「み、皆を離せえー!」

 

「ヴぃ!ヴィヴィアン!?」

 

ヴィヴィアンは機体が一番軽いのが幸いしたのかなんとか動かし、ブーメランブレードををドラゴンに向かって投げ突けようとしたがそれの重力影響でほんの少ししか飛ばず地に落ちた。

 

「皆を…皆をはなせぇぇぇぇぇぇ!」

 

それでも諦めずに再度投げ突けようとしたが、大型ドラゴンが更に重力を増して遂にヴィヴィアンの機体の腕が捥がれてしまった。

 

「あっ!!」

 

「「あ!!」」

 

『重力場、さらに増大を確認!』

 

「どうすれば……」

 

《シンギュラー反応新たに確認!》

 

オペレーターのその言葉は、更なる絶望を齎す。新型ドラゴンの頭上に紫電が走り、ワームホールが開く。その中から巨大な影が姿を見せる。

 

《?!!》

 

それはまるで甲虫のような体格であり、体中が虫のような強靭な甲殻で覆われており、巨大な羽と思われる翼、六本足のようだが四本は巨大な鉤爪を持つ豪腕、巨大な尻尾、強靭な顎、そして頭部と胸角に2本、前胸背板にも2本の計四本の角が生えており、胸角だけは鋭く尖ったノコギリ状の刃で頭角はそれ自体が巨大な剣となっていた。

姿を見せ、甲高い咆哮を上げる虫型の未確認ドラゴンやスクーナー級を伴って現われた事に、グレイスやサリア達は絶望に染まる。

 

「嘘だろ……」

 

すると虫型の巨大なドラゴンの六つの両目がサリア達の方を向かず、リベリオンだけを見る。

 

「え!?」

 

虫型の巨大なドラゴンはグレイスのリベリオンを睨み、強靭な顎と鋭い歯をぶつけ、雄叫びを轟かせた。

 

空気を振動させるその声に離れていても機体をビリビリさせ、頭角の大剣をリベリオンに向ける。

 

「クッ!!」

 

グレイスやココ、ミランダはリベットガンと対ドラゴン用アサルトライフルを構えるのであった。

 




如何でしたかな?だが、このオリジナルドラゴンには、まだ見ぬ生態が二つも備わってありますので、次回をお楽しみにしてください
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