クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン   作:オービタル

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大変ながら、パソコンが壊れてしまいました!!これからはスマホで投稿したいと思っております!


第十七話:ティアの決意

初物である新型のドラゴンの出現と共に、もう一体カブトムシ型の巨大なドラゴンが現れ、グレイス達は絶望の窮地へ叩き込まれていたのであった。虫型のドラゴンは頭角の大剣を突き付け、前羽と後ろ羽を展開する。すると前羽の裏面から爆発が噴射され、後ろ羽が羽音をたてながら、大剣を構え、猛スピードで突進してきた。

 

「来た!!ココちゃん!ミランダちゃん!上空へ舞い上がって退避して!!」

 

「はい!!」

 

「分かった!!」

 

ココとミランダのグレイブが上空へ舞い上がり、ドラゴンの突進を退けると、グレイスがリベットガンを乱射する。しかし、虫型のドラゴンの突進の勢いと強靭な頭角、分厚い甲殻によって重金属製のリベットが貫通できなく、リベット自体が潰れる。

 

「なんて分厚い甲殻だ!!」

 

するとドラゴンが頭角をリベリオンに向けて、横に振るう。グレイスは急いで退避すると、大剣が地を刳り、木々がスッパリと切断された。

 

「木々をあんなに!?どんな切れ味なんだ!!?あの頭角っ!!?」

 

その直後、ドラゴンの強靭な鉤爪がリベリオンに炸裂する。グレイスは急いでパドルデーゲンを展開し、高周波ソードで鉤爪を防御する。スラスターウィングの出力を上げ、吹き飛ばされないよう押していく。ドラゴンの鉤爪の高周波ブレードとパドルデーゲンの高周波ソードがぶつかり合う。

 

「クッ!」

 

《忌まわしきエンブリヲめ!!アウラを奪った事を後悔するが良い!!》

 

「え!?」

 

突然、グレイスの耳にいや、まるで脳に直接響くような声が聞こえると、ドラゴンがリベリオンを捕まえる。

 

「グッ!!何て力なんだ!」

 

グレイスは必死にドラゴンから離れようとするが、ドラゴンの強靭な筋力によって、機体の関節部から火花が吹く。

 

そしてサリア達の方ではドラゴンの重力が強くなる圧力に機体の装甲が歪み、潰れていく。亀裂が走るなか、コックピットに掛かる負担も増大していく。

 

「う、動けねぇ…ぐるじい……」

 

「た、助けて…ロザリー、ヒルダ!」

 

圧迫される苦しみに呻くロザリーとクリスは徐々に迫る死の恐怖に慄き、顔が引き攣っていく。ヒルダはなんとか脱出しようとしているが、機体は反応を返さない。

 

「くそっ、動けよ! いくら金かけたと思ってるんだ! さっさと助けろよ、サリア!」

 

ヒルダは先程のことも忘れてサリアに助けを求める。その身勝手さには呆れるが、こちらも囚われており、まともに動くこともままならないのだ。

 

だが、このままでは間違いなくやられる……方策を巡らせるサリアのもとに通信機から咳き込む声が聞こえた。思わず顔を上げると、戦闘空域に向かってくるヴィルキスと他の3機の機影が視界に入る。

 

一機はハウザーの改良機で全身に強力な武装を備えており、もう一機はレイザーの改良機で装甲の形状が違っており、先端にスナイパーライフルと頭部のバイザーに中央部に精密射撃用の伸縮式センサーが内蔵されているスナイパー・バイザー・ユニットに換装されていた。そして最後の一機は、普通のノーメイクであったが、アンジュの方のその飛行は酷くおぼつかなく、フラフラと危なげだ。

 

「ヴィルキス? アンジュなの……?」

 

ヴィルキスのコックピットではアンジュはまだ微かに赤い顔でライダースーツの上にどてらとマフラーを着込み、顔にはマスクがしてあった。

 

第一中隊の出撃を視認したアンジュはなんとか出撃しようと試みるも、モモカに制止された。多少マシになったとはいえ、まだ微熱と解熱剤の副作用で頭がフラフラする状態なのだ。それでも出撃をすると言い張るアンジュにモモカが逆らえるはずもなく、せめてもとライダースーツの上に防寒着を着せていた。

 

勇んで出撃したは良かったが、やはりまだまだ病床の身のため、操縦もおぼつかないが、そんな実感などなくただ頭がフラフラしているのだけが認識できていた。

 

「フラフラする~とっと終わらせよ~~」

 

呂律の回らない口調でぼやき、アンジュはヴィルキスを新型ドラゴンに向けていく。

 

「無理しちゃ駄目よ、アンジュちゃん」

 

ハウザーから、セシルの声がし。

 

「今のあなたの症状は落ち着いていますが、動けば巻き込まれる可能性が高いです。」

 

レイザーからメタリカの声がし。

 

「そうですよ!ここは私達に任せて!」

 

何と、ノーメイクに乗っているのは、戦闘経験も活かしていないはずのティアであった。

彼女が何故アルゼナル特装小隊と共にいるのか……それは、数十分前の事であった。

 

 

《シンギュラー反応新たに確認!》

 

管制室のパメラが新たに報告し、モニターに映っているカブトムシ型のドラゴンを見て驚く。

 

「何あれ!?」

 

「虫!?…なの…」

 

「(初物が一気に2体……やはり、リベリオンがあの男の機体に似ているからか……。仕方ない)」

 

ジルはそう考えながら、通信する。

 

「緊急事態だ。第一中隊は現在、初物ドラゴン2体と交戦している。一体は重力、もう一体は虫型だ……アルゼナル特装小隊は至急、第一中隊の援軍へ向かってくれ。」

 

ジルの放送を聞いていたセシルとメタリカはライダースーツに着替え、格納庫へ向かう。セシルのハウザー、メタリカのレイザーが置かれていた。

 

「良し♪張り切って行っちゃお〜う♪」

 

「またセシルは呑気に……」

 

「あの!」

 

「「?」」

 

突然の声に、二人は振り向く。そこには、白のライダースーツを着込んだティアがいた。

 

「私も一緒に!」

 

「え!?」

 

「ティアちゃん、どうしたの!?それにそのスーツ……パラメイルは?」

 

「大丈夫です!グレイスさんが臨時の為に用意していたグレイブがあります!それに、パラメイルの操縦法はグレイスさんから教わっていましたので!」

 

「………」

 

二人は考え込み、そして……。

 

「分かったわ……メイちゃん!ティアちゃんも出るって!」

 

「え!?」

 

メイは驚くも、急いでグレイブを出す。そしてセシル、メタリカ、ティアがそれぞれの機体に乗り込むと、奥の方のヴィルキスが移動させる。するとヴィルキスの近くに、赤い顔でライダースーツの上にどてらとマフラーを着込み、顔にはマスクをしているアンジュが乗り込む。

 

「アンジュさん!?」

 

ティアがアンジュを見て驚くと、アンジュは無視し、空へと舞う。そしてティア達アルゼナル特装小隊はサリア隊の救援として向かい、今こうやって戦闘区域にいるとのことであった。

 

「くるなっ、アンジュ! 重力に捕まるだけだ!」

 

「大丈夫よ~いつもどおり、私一人で充分だから」

 

フィルターのかかったような思考のなか、そう呟くアンジュにサリアは唇を噛み、肩がワナワナと震える。

 

「まったく、どいつもこいつも勝手なことばかり……いい加減にしろぉぉぉぉ、このバカオンナァァァァ!!」

 

シートを強く叩き、声を張り上げるサリアのあまりの怒声にアンジュは思考が無理矢理覚醒させられる。だが、その叫びはあまりに普段のサリアからは予想もできないほど鬼気迫るものだったので、他の面々も呆気に取られている。

 

「あんた一人でどうにかできるほど、このドラゴンはあまくない! いつもいつも勝手なことばかりして、死にたくなかったら隊長の命令をきけぇぇぇぇ!!」

 

通信越しに聞こえるあまりの怒声と気迫にアンジュは思わずたじろぐ。

 

「あ、はい……」

 

「よしっ! そのまま上昇!」

 

反射的に頷くと、サリアの指示に機体を上昇させる。

 

「修正! 右3度、前方20! そこで止まって!」

 

上昇するヴィルキスを見上げながらサリアは目標地点に向けて誘導していく。フラフラとなりながらもヴィルキスを誘導した先は、……新型ドラゴンの直上だった。

 

ヴィルキスに気づいたドラゴンは重力の範囲を上へと広げ、それに囚われたヴィルキスも引き寄せられるように落下していく。

 

「なんか、落ちてない……?」

 

急に掛かったGにうわ言のように呟き、機体が引き寄せられていることを自覚する。

 

「やっぱり落ちてる……?」

 

「熱でそう思ってるだけ! もう少し!」

 

サリアが必死に計算し、他のメンバーは現状に見入っている。やがて、ヴィルキスがドラゴンの頭上まで接近すると、サリアは声を張り上げた。

 

「今よアンジュ! 蹴れぇぇ!」

 

「はい?」

 

「蹴るのよ! 私を蹴ったみたいにね!」

 

先日の風呂場での一件を思い出し、やや腹立ち混じりに叫ぶサリアの言葉にアンジュは反応し、ヴィルキスが落下しながら体勢を変える。

 

右足を突き出し、キックの体勢で向かう先は……ドラゴンの角であった。

 

落下スピードと合わさったヴィルキスのキックはドラゴンの角を根元から突き破り、砕く。だが、その衝撃でヴィルキスの右脚が破壊され、振動が機体を揺さぶり、アンジュは呻き声を漏らす。

 

ヴィルキスが大地に墜落するも、角を折られたドラゴンは悲鳴のような声を張り上げ、大地に膝をつく。そして、角が折れたことで重力フィールドを展開していた魔法陣も消え失せる。

 

そして、重力から解放されたサリア達の機体が立ち上がる。既にドラゴンは死に体に近い。

 

「総員、速攻でしとめ、もう一体の初物も殺るよ!突撃!!」

 

《イエス・マム!》

 

サリア隊や特装小隊は一斉にライフルを初物へ乱射し、仕留めるのであった。

 

 

その頃、虫型のドラゴンに苦戦しているグレイスは必死に離れようとする。

 

「グレイスさんを離して!!」

 

ココとミランダがアサルトライフルを撃つも、強靭な甲殻で、ライフルの弾丸が潰れる。

 

「そんな!?効いていない!」

 

「あの甲殻、硬すぎる!」

 

「ココちゃん、ミランダちゃん!僕の事はいい!早く逃げろ!!」

 

「そんな!!ここで逃げたらグレイスさんが!」

 

「そうだよ!だから、私達も全力でグレイスを助ける!」

 

ココとミランダは必死にグレイスを助けようと、アサルトライフルを乱射する。すると目障りなのか、ドラゴンがココとミランダの方を向き、咆哮を上げる。

 

「ヒィッ!!」

 

「恐くない…恐くない!」

 

するとドラゴンの頭角と胸角、前胸背板の中央に魔法陣が浮かび上がる。

 

「え?」

 

「何!?」

 

魔法陣にエネルギーが集まり、ドラゴンが咆哮を上げた。魔法陣からピンクに光り輝く柱を放出し、大地を切り裂く。柱は徐々に、ココとミランダに迫る。

 

「「!!?」」

 

「やめろぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

グレイスは必死に抗い、ようやくドラゴンから離れ、加速する。

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

『覚醒プログラム率が30%まで上昇。"アドバンスド・フォルム"及び"ムートロム・フォルム"へ移行します。』

 

リベリオンの音声と共に、リベリオンの装甲と姿が変わっていく。そして柱がココ、ミランダに迫ると、二人の目の前に、リベリオンが立ち、二人を柱から守る。柱がリベリオンに直撃すると、柱が拡散し、後部の陸地に炸裂する。

 

その場所へ向かっていたサリア隊が驚き、サリアが叫ぶ。

 

「ココ!ミランダ!グレイス!」

 

サリアはは爆炎の中にいる三人の安否を確認すると、向こうにいるドラゴンが爆炎の中から影が現れた事に気付く。

爆炎の中から、獅子のタテガミを思わせる三本の螺旋状の角が伸びた頭部に六つのサークルが施されたプロテクター、X字型のフルフェイス、両手足にはプロテクター、随所に施されたバーニア部などが施されており、 色が銀と黒、赤のマーキングだった筈が、銀と赤、緑のマーキングをしているリベリオンであった。リベリオンの後ろには、ココとミランダのグレイブが健在であった。

 

「リベリオン ムートロム・フォルム!」

 

グレイスがリベリオンの新しい姿の名前を呼び、地上に降りる。胸部プロテクターが閉じられた後、周囲からの熱気と共に全身からのバーニア部から排熱作業が行われ、両腕部に巨大なナックルアームを構える。

 

奇妙な姿をしたリベリオンにヴィヴィアンは目をキラキラ輝かせながら興奮していた。

 

「うおぉーーー!!!カッチョイイィーーー!!!メッチャ強そおおぉーーー!!!」

 

「うそ…!?」

 

「マジかよ…!」

 

サリアとヒルダはグレイスの機体を見て驚愕してしまう。するとドラゴンが頭角を振り下ろそうとする。グレイスはそれを見てナックルアームを構えると、右腕部ナックルアームのプロテクターを展開させて、そこから噴流推進器が起動する。頭角が振り下ろされると同時に、ナックルアームを天高く拳を上げる。

 

「行け!!糞族!!」

 

噴流推進器からジェットブーストが噴射し、ナックルアームが分離し、頭角目掛けて発射された。

 

「腕が!?」

 

「飛んだ!?」

 

「うおおぉーーー!!!ロケットパンチだああぁーーー!!!」

 

ドラゴンの頭角とリベリオンのナックルアームが激しくぶつかり、ドラゴンの頭角がリベリオンのナックルアームの一撃で粉砕した。折れた頭角が地面に突き刺さり、ナックルアームがリベリオンの所に戻り、今度はナックルアームのマニュピレーターを展開する。

 

「ブレードフィールド展開!」

 

マニュピレーターのジェネレーターの始動と共に、拳部からマニュピレーターを伝って、光の剣"ビームバスターソード"が放出される。サリアはナックルアームから出た光の剣に驚く。

 

「あれって…光学兵器!?」

 

リベリオンは高出力のビームバスターソードを構え、ドラゴンへと振り下ろした。高熱と高出力のビームの刃がドラゴンの甲殻を溶断し、地面を裂いた。両断されたドラゴンは咆哮を上げることなく、グラリと倒れた。

 

「す、すげぇ……」

 

「ドラゴンを…一振りで切っちゃうなんて……」

 

皆が驚いていると、リベリオンの装甲が変形し、元のプリミティブへと戻るのであった。

 

戦闘を終え、基地へと帰還した第一中隊は、戦闘後の収支結果を受け取るべく事務へと駆け込み、報酬として支払われたキャッシュは、予想以上の額だった。

 

ある意味で『レア物』と称されるドラゴンの『初物』が二体であり、その存在を確認し、データを持ち帰っただけでもそれなりだが、さらに狩った、となればその結果は目を見張るものがあった。今回のデータで角のあるドラゴンは『フリゲート級』カブトムシ型の『ドレッドノート級』に認定された。

 

「うひょお! こんな大金夢みたいだ!」

 

「ううん、夢じゃないよ!」

 

基本的に収入の少ないクリスとロザリーは眼を輝かせて与えられた給料を凝視している。今まで持ったこともないような札束に感極まっている。エルシャはこれで幼年部の子供達にいろいろと用意してあげられると満足気な表情を浮かべ、ヴィヴィアンは言うまでもなく新しい装備を買おうとはしゃいでいる。

 

「本当、私見たことないよ…夢だったら覚めないでほしい――たたっ」

 

「夢じゃないでしょ?」

 

「なんで私の頬を引っ張るの!」

 

じゃれあいながらも、ココやミランダも両手に抱えるキャッシュの束に興奮を隠せずにいる。ヘタをしたら、一生かかっても稼げないほどの額に思えるのかもしれない。

 

サリアはそんな彼女達の様子を見ながら、自身も与えられた莫大なキャッシュにどこか満足気だった。

 

「……少ない」

 

周りがはしゃぐ中、アンジュは不機嫌気味に呟いた。アンジュに支払われた額は、サリア達に比べて極端に少なく、サリアが苦笑を浮かべる。

 

「仕方ないわね。角折っただけだもの……でも、助かったわ。アンタが来てくれたおかげで」

 

サリアは素直に礼を述べたのだが、そんな情緒もぶち壊すようにアンジュはジト眼で手を差し出し、憮然と言い放つ。

 

「迷惑料…貴女の命令に従ったせいで、取り分減った挙句ヴィルキスが壊れたんだから」

 

事実、アンジュのキャッシュがここまで減ったのは、ヴィルキスを破損させた分の修理代も差っ引かれてのものだっただけに、横で聞いていたナオミは表情を引き攣らせる。

 

「……さっきの感謝取り消しよ」

 

サリアは全力で後悔した。やはり反りが合わない

 

「変な趣味…皆にバラすわよ」

 

「!?一生寝込んでなさい!」

 

「何て酷いことを!」

 

そしてサリアは盛り上がるヒルダ達に声を掛けた。

 

「どう、満足したかしら?」

 

サリアの問いに、ロザリーやクリスはやや躊躇いながらも頷き、ヒルダは憮然と睨む。

 

「色々あったけれど私達はこのチームでやっていかなくちゃいけない。アンジュを後ろから狙うの…もうやめなさい。

そしてアンジュも報酬独り占めやめなさい。アンタは放っておいても稼げるんだから。これは隊長命令よ」

 

「へっ、誰もアンタの言う事なんか聞きやしないって『良いわよ別に』!?」

 

「私の足さえ引っ張らなければね」

 

っとアンジュは予想外に肯定する。

 

「私も良い…かな。今回はティアやアンジュ達が来てくれたお蔭で助かったし…」

 

いつも隠れがちなクリスがそう言う。

 

「ま、まぁ~…アタシはしばらく金がある内は…良いかな」

 

クリスに釣られるようにロザリーも続けて言う。

 

「アンタ達何言いくるめられてるのよ!?」

 

「そ、そういうワケじゃないけど…」

 

「チッ…! 裏切り者」

 

ヒルダは納得できないのか立ち去る。

 

「ヒルダさん…」

 

ヒルダの様子にグレイスは少しばかり考え込む。

 

「それじゃあ!行きましょうか!」

 

っとエルシャ達はアンジュを連れて何処かに行ってしまう。グレイスは置いてきぼりになってしまう。

 

女子全員でお風呂に入ろうと提案する。今までのことを全部お湯に流そうという魂胆らしいが、ヴィヴィアンも楽しげにのり、アンジュを捕まえて連行していく。

 

元々アンジュに対しての蟠りも少なかったこともあり、ようやく気兼ねなくできるということかもしれない。その後、アンジュを巻き込んで全員でのお風呂タイムとしゃれ込むことになる。

 

サリアはティアに趣味の事はバラさないよう訳を話し、ティアもサリアとの関係が親し良くなり、友達関係にもなった。

 

そして……誰にも言っていないことだが、まだサリアの内ではアンジュに対しての嫉妬が燻っている。ヴィルキスに乗ることに対しての蟠りはあるが、今はまだ胸の内にしまっておこうと思う。

 

今なすべきこと…『自分』らしく隊長としての役目を全うする………来るべき刻リベルタスまで……サリアは一人、その決意を秘めるのであった。

 

 

その頃、アンジュ達がお風呂にて過ごしている頃……グレイスはひとり、アルゼナルの丘で夜空を見上げていた。

 

「あの声……」

 

先の戦闘で聞こえた声……――《忌まわしきエンブリヲめ!!アウラを奪った事を後悔するが良い!!》――

 

アレは間違いなく……ドラゴンの声……言葉すら理解できない異形の怪物が、言葉を話したなどと、誰かにしても笑い話にしかならないようなもの。だが、グレイスは確かにあの瞬間聞いたのだ。

 

「あのドラゴン、エンブリヲって言ったけど、……アウラを奪った?どういう事なんだろう」

 

グレイスはそう考えながら、夜空を見上げるのであった。

 

 

まさにその頃、ある暗い空間の中でHLS-0248がTTS-254を鞭打ちしていた。

 

「しくじりやがったな!TTS-254!MMD-008が生きているではないか!!」

 

怒れ狂うHLS-0248は血だらけで暗い表情をしているTTS-254に怒鳴る。

 

「しかも、RBL-1272が格闘形態へと覚醒してしまった!もし、あの失敗作二人がそれぞれの記憶と使命を思い出してみろ!!10年前の大事件で暴走した奴に負けかけたんだぞ!!しかもあの失敗作は不死身だ!!父上でやっと取り押さえたんだ!!」

 

「まぁ、落ち着きたまえ……」

 

「父上!?……しかし、TTS-254は彼女の抹殺に失敗したのです!…ATS-0751は現在、ヴェルダ王朝で10体の生物兵器である"湧水"と"淡水"。PNM-0849はマーメリア共和国で紅蓮、深緑、岩壁と交戦しています。妹がこんな失態をして、混乱なさらないのです!?」

 

「HLS-0248♪」

 

エンブリヲはニッコリとした表情でHLS-0248を見る。

 

「!!………失礼しました。」

 

HLS-0248は疲れたかのように落ち込み、その場から消えるのであった。

 

「TTS-254……分かっているね?」

 

エンブリヲの言葉にTTS-254は反応し、立ち上がる。

 

「はい、パパ……」

 

「新たな命を下す……ジュリオ君があのアンジュリーゼと言う女を根絶やしにしようとしている。侍女を使いに出して、ミスルギ皇国へ誘き出すと……君はその輸送機と、Dr.ディメントが開発した新型レギオロイドと共にあの子も一緒にね♪」

 

エンブリヲはそう告げ、消えた。残されたTTS-254は鋭い眼差しで、思い浮かべる。

 

「あの魚娘が……網で捕まえて、氷漬けにして捌いてやるから…覚悟しなさい。私に恥をかかせた事を後悔させてやる……」

 

怒りを顕にするTTS-254はその場から消えるのであった。

 




次回は、『優雅』と『マーメイド・フェスタ』での間の話になります。一応、タスクの事や残りの八人との出会いである外の世界の話になります。
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