クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン   作:オービタル

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第二十六話:親子の再会・前編

突然委員会の艦隊が海域からやってきて、その放送を聞いていたグレイス達、その放送を聞いていたモモカは嬉しながらアンジュに言う。

 

「アンジュリーゼ様!助けです! 助けが来ましたよ!」

 

その中でエグナントは不吉な表情をする。

 

「いやな予感がする……」

 

アンジュとタスクはエグナントの言葉に振り向き、エグナントは二人の方を向く。

 

「忘れたのか?……彼らがお前にした事を…。」

 

エグナントはそう言い、映像を見る。

 

そして臨時司令部でパメラ達がその放送を見ていた。

 

「耳を貸すなよ、たわ言だ」

 

っとパメラ達が振り返るとそこにジルがやって来て命令を言う。

 

「対空防御態勢!今すぐだ!」

 

「「「イエス・マム!」」」

 

ジルの命令と同時にアルゼナルは対空防御態勢へと入る。

アルゼナルの動きを知ったミスルギ艦隊、その事を兵士はジュリオに報告する。

 

「アルゼナル、対空兵器を起動!」

 

「やれやれ、平和的に事を進めたかったが…」

 

ジュリオは呆れると言わんばかりにマイクを取り、全艦艇に流す。

 

「旗艦エンペラージュリオ一世より全艦艇へ、たった今ノーマはこちらの救援を拒絶した。

これは我々…いや全人類に対する明白は反逆である、断じて見過ごすわけには行かない、全艦攻撃開始!」

 

命令と同時に全艦隊からミサイルが発射されて、それにいち早く察知したバルカンが吠える。

ジャスミンが皆に言う。

 

「坊主共!小娘共!来るよ!」

 

「え?」

 

モモカは何が来るか分からず、それにグレイスは舌打ちをする。

 

「チッ!やっぱりな!!」

 

アルゼナルにミサイルが降り注ぎ、それに対空兵器が撃ち落とすも、一部は防ぎきれずにアルゼナルに直撃する。グレイス達は何とか爆風に巻き込まれずにアルゼナル内部へと退避した。

 

 

そして全艦隊の甲板に三機のパラメイルが立っていた。ヘリオスのラグナメイルである『アイオロス』、アトラスの『プロメテウス』、ファントムの『ハーミット』であった。

 

「あのバカ…何攻撃してやがるんだ」

 

「これだから堕落したホムンクルスが……」

 

「口を慎め…アイツは父上の言葉を聞いていなかった。よってメイルライダー、ヴィルキス及び、"RBL−1272"と"MMD−008"の捕獲を最優先にし、管理委員会の全兵を駆逐する。良いな?」

 

「「了解!」」

 

アイオロス、プロメテウス、ハーミットはスラスターを稼働させて飛び、アルゼナルへと向かった。

 

 

同時にアルゼナルに向かっているダストとガリィは艦隊の攻撃を見て驚く。

 

「始まっちゃってるよ!!」

 

「クッ!人間共め、彼処には非戦闘員もいるんだぞ!…急いでリュミエールに戻らないと……」

 

ダストとガリィは急いでアルゼナルへと向かう。

 

 

基地内に避難したグレイス達はアルゼナルを攻撃してくる艦隊に、ロザリーはその事に驚く。

 

「本当に攻撃して来やがった!」

 

「救助なんて嘘だったんだ…」

 

クリスの思わず言葉を漏らす。っとそこにジルの放送が流れる。

 

『諸君、これが人間だ……人間の恐ろしさを理解しただろう。人間は我々を助ける気などさらさらない、よって我らは人間の監視下を離れ、反攻作戦を実行する。作戦名『リベルタス』』

 

っと聞いたサリア、メイ、マギー、ジャスミンの四人はそれに表情を硬め、タスクはその事に少々表情を歪む。

 

『共に来るものは、アルゼナルの最下層に集結せよ』

 

放送を終え、ジルは最下層へと続くエレベーターでパメラ達に向いて問う。

 

「お前たちはどうする」

 

「私達も参加します!」

 

それに二人は頷き、着いた先に何やらブリッジらしき場所に着く。

 

「いつの間にこんな…?」

 

「パメラは操縦席だ、ヒカリはレーダー席、オリビエは通信席へと座れ」

 

ジルはそう三人に命令し、ジルはすぐにサリアに通信を入れる。

 

「サリア、何がなんでもアンジュを連れて来いそれと…ティアもだ」

 

『え!?…ティアもですか?』

 

「そうだ……ソイツは我々にとって最も重要な人物である」

 

『分かったわ…』

 

そう耳にインカムで小さな声で話すサリアはアンジュと一緒にいるティアを見てジルに言った。

 

ジルの放送を聞いていたレオンはリベルタスの事に眉を顰め、ロザリーはそれに問う。

 

「おいグレイス、リベルタスって何だよ?」

 

「簡単に言えば、ノーマの逆襲ですよ…僕はココちゃんの夢をぶち壊したアイツ等を、許せない。だから、目に物をくれてやりますよ♪」

 

グレイスは微笑みながら、ガトリングガンを背負い持つ。

その事にロザリー達は驚きの様子を隠せず、グレイスはこの時に思う。

今さらリベルタスを発動して意味があるのか?、アンジュが拒絶していると言う事を理解しているのかっと。

 

しかしジルの事、アンジュの意思など無視して強引にするに違いないと感じたグレイスはすぐにタスクを呼ぶ。

 

「タスクさん! アンジュさんとモモカちゃんを連れてここから離れてください!」

 

「え!正気?!グレイス!」

 

「当たり前です! あの人の事だ…アンジュさんをぼろ雑巾に様に使う!、だから」

 

その事を聞いたタスクはすぐに頷く。

 

「分かった、アンジュ!…!?」

 

タスクが振り向くと、既にアンジュとモモカの姿が無く、それを見たグレイスが辺りを見渡すとサリアの姿が居ない事に気付く。

 

「チッ! 先を越されてしまった! タスクさん!アンジュさんを探してくれ!」

 

「分かった!『ピピピ!』?!」

 

タスクの通信機に通信が入り、それにタスクは耳にインカムを付けて出るとジルが話しかけて来る。

 

『タスク、お前はヴィルキスを護れ、アンジュの事はサリアに任せろ』

 

「ちょっと待て!今アンジュは何処だ!?」

 

すぐに問いただすがジルはすぐに通信を切り、無線も切った。

それにタスクは舌打ちする。

 

「くそっ!やられた!」

 

「タスクさん!僕達は今から格納庫ヘ行きます!」

 

「ちょっと!グレイス!?」

 

グレイスはエグナント達を連れて、格納庫ヘ向かう。

 

「おい!何処に行くんだよ!?」

 

ヒルダが問うもグレイス達はもうすでに行ってしまった。

 

「たく!こんな時に! アタシ等は格納庫でパラメイルで人間共を蹴散らして行くよ!」

 

そう言ってヒルダ達は別ルートで格納庫へと向かった。

 

 

レオン達が格納庫に向かう中でマナの特殊部隊と遭遇する。

 

「敵だ!」

 

「ノーマの加担する人間は殺せ!!」

 

っと言わんばかりにグレイス達に向けてマシンガンを撃って来る、それにグレイス達は物陰に隠れる。

銃弾が飛び交う中でアツマは特殊部隊を見る。

 

「マナの特殊部隊か…」

 

「どうするグレイス? 殺る?」

 

「うん、この場で殺す!」

 

そう言ってグレイスはガトリングガンを向けて乱射する。エグナント達も、怪物体へと変身し、特殊部隊に襲い掛かる。

 

「未確認生物だっ!!」

 

「何でアルゼナルに!?」

 

特殊部隊が叫ぶ中、エグナントは樹木を伸ばし、特殊部隊を払い飛ばす。アツマも燃え上がる溶岩を垂らしながら、持っている炎の剣を振り回す。ナナリーは蛇の尾で特殊部隊を巻き付き、絞め殺す。オボロとミカも銃弾を弾きながら突進し、セシルとトーマ、メタリカは連携しながら特殊部隊を倒し、喰い殺していく。

 

「RBL−1272!!」

 

「!!?」

 

するとそこにある者達が立ちふさがった、それはヘリオスとアトラスにファントムの三人だった。

それにグレイスは驚く。

 

「君たちは!?」

 

「我が名は『コードネーム"HLS-0248"』と申す!」

 

「同じく『コードネーム"ATS-751"』…」

 

「『コードネーム"PNM-0849"』……」

 

三人はそれぞれの名を言うと、エグナント達が物凄い威嚇をし出す。

 

「どうしたの!?」

 

「グレイス!気をつけろ!」

 

「アイツはヘリオスとアトラス、ファントムだ!!」

 

「っ!!」

 

グレイスは驚き、ガトリングガンを構える。

 

「まぁ、そう警戒するな……予定が狂ったのだ。」

 

「予定だと?」

 

「本来なら皇女アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギとヴィルキスの捕獲。そしてメイルライダーの数名及び、コードネーム"RBL−1272"と"MMD−008"、アルゴルモアの捕獲であった。」

 

「ふざけるな!!結局アンジュさんやティア、そして僕を狙ってるじゃないか!!」

 

「落ち着け……今回は共闘だ…」

 

「共闘?何で?」

 

「捕獲なのに、あの馬鹿が余計な事を実行した。父上の命令を良く聞いていなかった奴にはこの世から処分する。」

 

ヘリオスの言葉に、エグナントが返答する。

 

「バカとは……ジュリオか?」

 

「そうだ……本来ならここでお前達生物兵器を殺すつもりだったが……」

 

ヘリオスはそう言い、背中に装備しているビームウィングを展開し、その場から去る。そしてアトラスがナックルバスターをグレイスに向け、呟く。

 

「今回だけだからな」

 

そう言うとアトラスはファントムと共に、その場から去る。

 

「今回だけは、奴らと共闘か…」

 

アツマが呟くと、ナナリーがある物に気付く。

 

「何あれ!?」

 

《!?》

 

攻撃で大穴が空いた甲板の上空に、円盤らしき浮遊物体が無数に飛来していた。

 

 

そして格納庫ではマナの特殊部隊とメイ達が交戦状態に陥っていた。

その中で人間達がノーマを虐殺しているのを見て、ヒルダは怒りを顕にする。

 

「糞がっ!!」

 

ヒルダはライフルを乱射する中、まだ生きていた一人の隊員がヒルダにSMGを構えているのを見たメイが叫ぶ!

 

「ヒルダ!!!」

 

すぐさまヒルダが構えた瞬間、触手が隊員に巻き付き、振り投げた。現れたのは急いでアルゼナルに到着したダストとガリィであった。

 

「未確認生物だ!!」

 

「逃げろ!!」

 

ダストとガリィは特殊部隊隊員に襲い掛かる。その光景にロザリーとクリス、ヒルダやメイ達も驚く。隊員はダストに任せ、ガリィは人間体に戻る。

 

「皆、無事?」

 

ガリィが心配するとダストが吼える。

 

「テメェら!覚悟しておけよ!!彼女達を差別した分を倍にして殺してやるからよ!!」

 

ダストは触手を振り回したり、巻貝に付いているハイドロ砲やサイコハイドロ砲を乱射する。

 

「相変わらずダストは……ここはアタシ等がやるから、アンタ達は先に出撃して♪」

 

「わ、分かった!メイ、発進準備は!?」

 

「ああ、いつでもいけるよ!」

 

「ヒルダ隊長、ターニャ以下5名、出撃準備完了です!」

 

既にデッキに来ていた第三中隊の元メンバー5人が一斉に敬礼し、ヒルダも頷く。

 

「よし、第一中隊出撃!」

 

『イエス・マム!』

 

号令に応じ、ターニャ達がパラメイルに搭乗していく。先行し、5機のパラメイルが発進すると、ヒルダはすぐに追うべく搭乗を指示する。

 

「マジで人間とやり合うことになるなんて……」

 

ロザリーは未だ現実感のない事態に困惑していたが、横にいたクリスが何かに気づいたように顔を上げた。

 

「何、あれ?」

 

空を指差すクリスにヒルダ達も思わず顔を上げると、空けた鉄骨の隙間から見える空一面に黒い物体が無数に浮いているのが見える。

 

怪訝そうに見やる一同の前で、黒い球体状の物体が側面に鋭利な刃物を展開し、高速回転しながら急降下してきた。それらはアルゼナルの壁面を抉り、カタパルトレールに刺さると高速回転しながら爆発した。

 

「伏せろ!!」

 

ヒルダが咄嗟に声を張り上げ、デッキにいた面々は反射的に身を屈め、巻き起こる爆風に身を縮める。濛々と立ち込める噴煙に咳込みながら顔を上げると、発進カタパルトが瓦礫によって塞がれ、完全に閉じ込められた。

 

その状況にヒルダは舌打ちするも、そこへ悲鳴のような通信が飛び込んできた。

 

『た、隊長――!』

 

「ターニャ、どうした!?」

 

先程の勇んだ声とは打って変わったような切羽詰った声色に眉を顰める。

 

『空一面に、未確認の――何なの、こいつら……!?』

 

悲鳴に近い声にますます混乱する。

 

「おい、どうした!? もっと正確に伝えろ!?」

 

再度呼び掛けた瞬間、別の周波数が割り込み、そこから別の悲鳴が飛び込んできた。

 

《隊長!イルマが!イルマが連れて行かれた!》

 

「連れて行かれた? おい、どういうことだ!?」

 

刹那、回線も雑音混じりに途切れ、デッキの照明が一斉に落ち、ヒルダ達はより混乱に陥った。

 

っと電力が突如落ちて、それに驚く皆。

 

「何だ?!」

 

そして船に居るジルはすぐさま聞く。

 

「砲撃による損傷か?」

 

「侵入者による攻撃です!」

 

マナの特殊部隊にアルゼナルの電力を落とされた事に、放送が流れる。

 

『アルゼナル全要員へ! 敵部隊がアルゼナルに侵入!目的は、人員の抹殺!ダメ、退避!みんな!にげてぇぇぇぇ!!』

 

それを聞いたエルシャはその場から離れる。

ヒルダはエルシャの行動を見て問う。

 

「おいエルシャ!」

 

「ゴメン!!すぐ戻るから!!」

 

そう言ってその場を離れて行く。その時にジルから放送が来る。

 

『デッキ上の各員に告ぐ、敵の狙いはヴィルキスだ、デッキ上の下層へと運搬を最優先事項とする!』

 

聞いたメイはすぐさま整備班達に言う。

 

「整備班集合!ヴィルキスは手動で下ろす!」

 

「「「イエス・マム!!」」」

 

整備班の一人が手動で動かそうとした時に頭を撃たれてしまい、それを見たダストとガリィが振り向くと、再び集まって来た特殊部隊に攻撃されていた。

 

「も〜…この連中しつこいなぁ…」

 

ガリィはそう言いながら、人間体から怪物体へと変身し、隊員に襲い掛かる。

 

 

アルゼナルの各所で銃撃が轟くなか、アンジュとティアはサリアに連れられて最下層へと向かわされていた。

 

その前方にモモカを抱えて歩くジャスミンもおり、アンジュは背後で銃を突きつけながら促すサリアを厳しげに見ている。

 

緊張感が漂うなか、サリアの許に通信が入り、受信する。

 

「はい……ええ? ヴィルキスとリベリオンがまだ整備デッキに? 分かった、アンジュを届けたら私もデッキに合流するわ」

 

肝心要のヴィルキスとリベリオンの二機は未だ整備デッキから移送できずにいる。移送用のシャフトを破壊された上、デッキに侵入した特殊部隊と銃撃戦となり、作業もままならない状況のようだ。

 

ジルの命令に頷くと、通信を切る。そのやり取りを察したのか、アンジュが睨むように呟く。

 

「ここ、危ないんでしょ? 逃げる準備なんてしてる場合?」

 

「言ったでしょ、アンタには大事な使命があるって……アンタは無事にジルの許まで届けるわ。それが私の仕事なのよ」

 

憮然と告げるサリアの表情は傍目から見ても気を張っており、痛々しい。そんな様子が滑稽に見える。

 

「結局、あの女の言いなりってわけ?」

 

鼻で笑うアンジュにキッと奥歯を噛み締めるも、それを抑え込む。

 

「なんとでも言いなさい」

 

口調を荒げて黙らされるサリアに鼻を鳴らしながらも、アンジュ自身も不安を隠せずにいた。

 

「サリア様!どうしてなの!?どうして私も!?」

 

「惚けないで!」

 

「え!?」

 

「知ってるのよ……あなたがDr.ディメントによって作られ、『ラプソディー』を動かすための人魚姫って事を!」

 

「どうしてそれを?」

 

「あなたがここへ来て、血液検査で分かったの……ティアは人間でもノーマでもない…ホムンクルスって言う事…」

 

話の内容が分からないアンジュはサリアに問う。

 

「さっきから何なの?そのラプソディーって?」

 

「あなたには関係ない事よ…アンタをジルの許に連れて行く。アンタがジルに、リベルタスに加われば、セラも必ず加わるわ!」

 

その瞬間、アンジュは怒りに顔を赤く染める。

 

「なに? 私は人質ってわけ? グレイスを――彼を利用するために………ふざけんじゃないわよ!」

 

ようやくサリアの……いや、ジルの思惑を理解したアンジュは憤怒に声を荒らげる。

 

「従わないから無理矢理従わせる…とことんクサった女ね!リベルタスだとかなんだとか、そんなもののために仲間の命を犠牲にしてまで!」

 

ドラゴンの真実を隠してきたこと、そしてこちらの意思も無視してリベルタスという戦いに駆り立てさせる。セラの言った通り…選択肢など、最初から無いのだ。

 

そして、今回の人間の襲撃に対しても後手に回っており、しかも合流できなければ見捨てる。積極的に助けに行こうともせず、それを必要な犠牲とでも言いたげなサリアの、そしてジルのやり方。

 

なにより、自分を利用して『グレイス』や『ティア』を巻き込もうというやり方に腹立たしい思いだった。

 

「アンタもあの女と同じね、訳の分かんない絵空事や、無意味な使命感に酔いしれているだけの偏執狂!大げさな理想を掲げて、実際は自分だけじゃどうにもできないくせに!」

 

その指摘に忸怩するようにサリアは歯噛みする。

 

「巻き込まれて死んでいく方はたまったものじゃないわね! っ」

 

間髪入れず、アンジュはサリアに平手打ちされ、睨みつけるもサリアは怯むことなく声を荒げる。

 

「アンタ何も分かってないのね! 自分がどれだけ重要で、恵まれていて、特別な存在なのか!」

 

「分かりたくもないわ、そんなもの!」

 

アンジュが望んだわけではない。なのに、勝手に周りが『できる』からと巻き込んでいく。そこにアンジュの意思はない。

 

あくまでリベルタスには協力する気はないアンジュと、従わせようとするサリアの間に緊張感が走るも、その時ジャスミンに抱えられていたモモカが顔を上げた。

 

「では、息を止めて下さい! アンジュリーゼ様!」

 

今まで黙っていたモモカが唐突にジャスミンの拘束から逃れ、跳び上がると持っていた調味料ポッドをその場にばら撒いた。

 

一瞬にして粉塵まみれになる通路に、眼を見開く。

 

「なんだい、こりゃ…くしゅっ」

 

眼を剥くジャスミンだったが、急に鼻が疼き、クシャミする。舞う粉が呼吸を咽させ、サリアは涙眼で叫ぶ。

 

「アンジュ!ティア!何処なの!?くしゅん!待ちなさい!」

 

鼻声で探すも、その隙にアンジュとティアとモモカは逃げ出していた。

 

「いつでもお料理できるように、塩とコショウを持ち歩いていて正解でした、くしゅん!」

 

通路を駆け上がりながら、どこかサムアップするようにはにかむモモカの咄嗟の行動に、アンジュは感心した。

 

「随分大胆な事をするようになったわね、くしゅ!」

 

「アンジュリーゼ様の影響で、くしゅ!」

 

互いに鼻をかみながらも、その場から何とか逃げるアンジュととティアとモモカ。

 

「アンジュリーゼ様、これからどうします?」

 

「とにかく、グレイスとタスクを探すわ!見つけたら、そのままデッキに行くわよ!」

 

「ごめんなさい、サリア様……」

 

ティアはそう思いながら、アンジュとモモカと一緒に逃げるのであった。

 

 

アルゼナル最深部―――そこは、巨大なドックとなっており、その中心には巨大な艦艇が横たわっていた。

 

可潜空母『アウローラ』―――それが、この巨大な艦艇の名だった。かつて、幾度となく古の民の母艦として戦い、ジル達が密かに用意していた『リベルタス』のための切り札であった。

 

ドックに固定され、ブリッジに入ったジルは同行させていたパメラ達を所定の位置につかせ、発進準備を行っていた。

 

「全シーケンス、60%完了」

 

「各部最終チェック」

 

「電子系統、オールグリーン」

 

パメラ達は初めて触れる機器ながら、オペレーターとしての杵柄ゆえか、問題なく作業をこなしていた。

 

別の通信が割り込み、通信を開くと咳が聞こえ、怪訝そうになる。

 

「サリア、何があった?」

 

『アンジュに、逃げられた、くしゅん』

 

通信からは未だ呼吸が戻っていないサリアの鼻声が聞こえるも、その内容に苛立ち混じりに唇を噛む。

 

「連れ戻せ、奴はなんとしても乗せろ!」

 

サリアの報告を聞いたジルは歯を噛みしめ、アンジュの捕獲の命令を与える。乱暴に通信を切るのであった。

 

 

 

サリア達から逃れ、食堂へと入ったアンジュとティアとモモカだったが、食堂は完全に照明が落ちて暗闇に包まれていた。だが、何故だろう……この食堂全体に漂う異様な悪臭は。

 

モモカはマナの光で灯りを照らした。

 

「こちらですアンジュリーゼ様、ここから行けそうです」

 

進もうと、灯りを前に向けた瞬間、四人は息を呑んだ。暗闇のなかに倒れ伏す幾人もの死体、そのどれもが焼け爛れ炭化し、もはや判別すらつかない状態だった。

 

「酷い……」

 

ティアは顔を青くして声を震わせ、モモカも思わず手を口に当てる。アンジュはその光景に先程のドラゴンの炎に包まれる光景が重なり、あの時の不快感が再来する。

 

「うっ」

 

「アンジュ!」

 

思わず咽るアンジュにセラが身体を支え、モモカが慌てる。

 

「アンジュリーゼ様! み、水を!!」

 

すぐさま食堂のキッチンに向かったモモカに、ティアがアンジュを支えながら背中をさする。

 

「しっかり…」

 

「ゴメン……」

 

まだ顔が青いアンジュを気遣いながら、ティアは周囲を見渡す。黒ずんだ死体はどれも無抵抗で殺されており、ノーマに対して何の罪悪感も持っていないことを感じさせる。

 

「大切な物は失ってから気づく……何時の時代も変わらない心理だ。こんな事を許した覚えはないんだがな…」

 

突然聞こえた声に息を呑み、反射的に振り返る二人。銃その先には、一人の青年が佇んでいる。

 

「誰?」

 

「っ!!」

 

「ティア?」

 

突然ティアが思わず手を口に当て、怯えながら下がる。

 

「どうしたの!?」

 

「あ…あ……あなたは!」

 

「久しぶりだね、MMD−008……♪」

 

青年は微笑ましい表情でティアを見る。

 

それにしても…酷いものだな。大切な物は失ってから気づく…何時の時代も変わらない心理だ。こんな事を許した覚えはないんだがな」

 

そんなセラ達を横に青年は周囲を見渡し、嘆かわしいとばかりに顔を曇らせる。

 

「君の――いや、君達のお兄さんだよ、この虐殺を命じたのは。アンジュ」

 

「なっ!?」

 

その言葉にアンジュは驚愕に眼を見開き、セラも表情を強張らせる。

 

「北北東14キロの場所に彼は来ている――アンジュ、君を八つ裂きにするためにね。この子達はその巻き添えを喰ったようなものだ」

 

淡々と告げられた内容にアンジュの内に沸々と怒りが沸き、アンジュに小さく眼を伏せる。その時、キッチンから乾いた銃声が響いた。

 

「きゃああああ!!」

 

「モモカ!?」

 

次いで聞こえるモモカの悲鳴に、アンジュは反射的にモモカの名を呼んで駆け出し、ナオミも後を追う。ティアは一瞬だけ視線をアンジュ達に向け、再び戻すとそこには誰の姿もなく、まるで幻でも見ていたような感覚を覚える。

 

アンジュがキッチンに向かうと、二人の特殊部隊の兵士がモモカを狙っており、モモカは左肩を撃たれていたが、動ける右手でマナの光を出して防御をしていた。

 

そんなモモカを追い詰める二人にアンジュは頭が真っ白になり、反射的に銃を取り出し、躊躇いなく一人を撃ち殺して、もう一人は両肩を撃ち抜く。

 

呻き声を上げて座り込む兵士に銃口を向けたまま近づき、睨みつける。

 

「あなた達がやったの? お兄様の命令で?」

 

「貴様、アンジュリーゼ!!ぎゃぁぁつ!」

 

すぐに銃を構えるも、アンジュに手を撃たれてしまう。

 

「う、撃たないでくれ。我々は、隊長と…ジュリオ陛下の命令で……」

 

これ以上聞く耳は持たないとアンジュは銃を撃ち、兵士を撃ち殺す。相手が絶命しても構わずトリガーを引き続け、弾倉が空になってもトリガーを鬼気迫る表情で引き続けていた。

 

「ア、アンジュリーゼ……」

 

そんなアンジュを止めようとモモカは思わずアンジュに抱き付く。

 

「大丈夫です! モモカはここに居ます!」

 

モモカの声に少しは落ち着いたのか、呼吸を落ち着けるも、アンジュの眼はここではない……『敵』を視ていた。

 

「行かなきゃ…」

 

低い声で呟くアンジュの眼に宿る怒りと憎しみを瞳に宿らせる。

 

「え?」

 

一瞬、何を言われたのか分からずに思考が止まる。

 

「この状況を招いたのは、私の責任よ―――あの時、あの男を殺さなかったね」

 

やや忸怩たる面持ちで顔を曇らせる。あの時に……ミスルギ皇国で殺しておくべきだった。ジュリオ・飛鳥・ミスルギを―――そんな仮定に何の意味もない。だが、それでもこの事態を招き寄せた一端は自分にもある。

 

「だから、このケジメは私がつける!」

 

アンジュは決意すると、

 

「アンジュ!」

 

別の方からタスクがライフルを持って現れた。

 

「タスク!」

 

タスクと合流したアンジュ達は急いで格納庫へと向かったのであった。

 

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