クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン 作:オービタル
明けて翌日、グレイス達はヴィルキスの修理をしていて
、二人の心模様を表すかのように静かな雨も降りしきっている。この日もタスクはヴィルキスの修理に勤しんでいたそんな中、アンジュはただ一人でどこか謝るタイミングを計っていたが、どうにも見つけられずにいた。
「(どうしよう…、タスクにどう言えば)」
っとアンジュは地下の店にある物を見つけ、それは何処にでもありそうな、色々なアクセサリーを吊るしてある業務用のアクセサリースタンドだった。
「わあっ…」
嬉しそうな声を上げ、思わずアンジュはそこに近寄った。
「これ、可愛い…」
その中の一つを手に取るとしみじみと呟いた。可愛いものが好きなのはやはり女性だからか。そして又、アンジュの脳裏に一つの記憶が蘇ってきた。
それは、ヴィヴィアンがぺロリーナのマスコットを自分に渡そうとしてくれたときのことだった。
「……」
それを思い出したアンジュはアクセサリースタンドの一つを手に取ると歩き出す。その表情は、今までのものとは違って晴れやかなものであり、美しい自然な笑みが浮かんでいたのだった。
アンジュがそうしている頃、いつの間にか雲は過ぎ去り、顔を現した太陽は随分傾いてもうすぐ日の入りになろうかとしていた。そんな中、タスクとグレイスが額に汗しながらヴィルキスの修理を懸命に続けている。と、不意にその耳に微かだが金属音が聞こえてきた。
「?」
空耳かと思って顔を上げてみると、修理用に組んだ足場のパイプに、日の光を反射させて輝くネックレスが引っ掛けてあった。
「アンジュ?」
タスクが、見つからないように音を立てないようにその場から立ち去ろうとしていたアンジュに声をかける。タスクから顔は見えないが、思わず立ち止まってしまったアンジュは何ともバツの悪い表情をしていたのだった。
「…に、似合うかなって。それだけ…」
思うところがあって態度を改めたものの、それでもやはりどんな顔をすればいいのかわからないのだろう、アンジュはタスクに背を向けたままぶっきらぼうにそう答えることしか出来なかった。
そんなアンジュにタスクは少し戸惑っていたが、すぐに笑顔になるとそれを手にしてアンジュに近づく。
「どう?」
そして、ネックレスをかけながらアンジュに尋ねる。アンジュが振り返ると、そこにはネックレスを首から提げたタスクの姿があった。
「いいん…じゃない?」
言葉こそ素っ気ないものの、日の光でわかりにくかったが確かにアンジュは頬を染めていた。そして視線を逸らす。
「ありがとう」
タスクは柔らかく微笑むとアンジュに礼を言った。
「疲れただろう? ご飯にしよう」
そして食事に誘う。が、
「あのっ!」
アンジュがそのタスクの足を止めた。
「ん?」
「あの…ごめん…なさい…」
「「「!?ええっ!?」」」
小さな声だが確かに謝ったアンジュに、タスクとグレイスとティアは驚きを隠せなかった。
「君って…謝れたんだ!?」
「これは……驚いた。」
「驚きですわ…」
「なっ、何よそれ!」
思わずアンジュが不満げな口調になる。もっとも、こっちのほうが彼女らしいといえば彼女らしいのだが。
そんなアンジュへとタスクは歩み寄る。そして、ゆっくりと右手を差し出した。
「あ…」
「俺こそ、きつく当たってごめん」
「う、うん…」
顔を上げてタスクの顔に視線を合わせると、ぎこちないながらもしっかりとその手を握り返すアンジュ。そこにヴィヴィアンが帰ってきた。
「ヴィヴィアン!」
アンジュにふぉえ? っという感じで咽喉を鳴らして答えるヴィヴィアン。
「昨夜はゴメン。私、言い過ぎたわ」
そのまま、ヴィヴィアンの首を包むように優しくアンジュは腕を回した。
「ありがとう、ヴィヴィアン」
ヴィヴィアンはただ不思議そうに咽喉を鳴らすだけだった。
翌日、また雲が空を覆う中、タスクとグレイスとティアが昨日と同じようにヴィルキスの修理に勤しんでいる。と、
「ヘックシュッ!」
不意にくしゃみが出た。思わず顔を上げると、今度は雨ではなく雪が空から舞い降り始めていた。
「雪が降り始めましたね…」
「道理で寒いわけだ…」
身を震わせながら思わず呟く。そんなタスクの耳に、
「タスクーっ!」
聞きなれた声が届いた。
「凄いもの見つけたわ!」
ヴィヴィアンに乗って戻ってきたアンジュが興奮気味に話しかけたのだ。どうしたのだろうと呆気に取られたタスク達だったが、誘導された先にあるものを見て成る程これはと納得した。
タスクのマシンのバッテリーからケーブルを繋げて電源として、エンジンを入れる。するとそれは生き返った。
ケバケバしいピンク色のネオンが屋上に設置された建物…いわゆるラブホテルがアンジュの見つけた凄いものだったのだ。
「屋根もある! ベッドもある! お風呂もある!」
「奇跡的な保存状態ですね」
内部の一室に足を踏み入れたアンジュはその状況に興奮している。タスクやグレイス、アンジュとティアほどではないが、それでも喜んでいるのが窺えた。
「きっと名のある貴族のお城だったの違いないわ!」
…まあ、確かに城っぽい外観のそれもあるのだが、それでもここが本来何のための施設か知らないというのは幸せである。無邪気に喜ぶアンジュに横から水が注される可能性がないのは喜ぶべきことだろう、うん。
「見つけたヴィヴィアンに感謝しなきゃね」
アンジュが嬉しそうにそう言うと、ヴィヴィアンもまた嬉しそうに咽喉を鳴らしたのであった。
「お風呂入ってくる! タスク、グレイス、掃除お願いね!」
「…はいはい、お姫様」
「やりましょうか♪」
ウキウキしながらアンジュはヴィヴィアンを伴って浴場へ向かい、タスクとグレイスは少々呆れながらもにこやかに答えた。
こうして、四人と一匹は久々にゆっくりと休める場所を確保したのであった。
それぞれの部屋を掃除しているタスクとグレイス。っとグレイスが掃除しながらタスクに問う。
「タスクさん、聞きたいことがあります」
「何?」
「タスクさんの一族……古の民達を殺したのは…その、エンブリヲですか?」
「……あぁ、」
「あの時、エンブリヲは……僕の事を息子って言ったのですが…」
「……知っている。君は確かに、エンブリヲの息子……でも、君は10年前と変わらない」
「え?」
「10年前の君は……エグナントさん達や僕を助けてくれたんだ……」
「10年前に…僕はタスクさんを?」
「うん……俺の両親や仲間達が死んで、ヘリオスに殺されるところを、グレイスに助けられたんだ。」
タスクはそのまま話を続ける。リベルタスを起こそうとアレクトラ、後のジルは仲間達共にエンブリヲを倒そうと奴の所へ向かうと、街は既に火の海へとなっていた。そこには血の涙を流すグレイスがエンブリヲやヘリオス達を圧倒していた。彼は戦いながら「何故あの子達を実験道具にした!?」…「あの子達の病気は治るんじゃなかったのか!?」…「嘘つき共め!……俺はお前らを家族とは思わない!絶対に許さない!!」っとそう吼え、力限り暴れまわったと……。
グレイスの本来の性格に、グレイスは落ち込む。
「そんなに落ち込まなくても良いよ♪君のお陰で俺はこうやって生きているんだ…」
「……そうですね」
グレイスはそう呟き、掃除や片付けを済ませる。
その頃、アンジュとティアは浴場で湯船に浸かっていた。
「はぁ〜♡極楽、極楽♪」
アンジュは温かい湯に癒やされ、ヴィヴィアンは大きい為、大浴場の湯に浸かっている。ティアは人魚の姿のまま入っていた。アンジュはティアの綺麗な鱗に見惚れていた。
「綺麗な鱗ね…」
「これですか?"セレスお姉様"や"ヒョウマお兄様"見たいに綺麗な鱗程ではありませんから…」
「……お姉様とお兄様がいるの?」
「お兄様は生きています…お姉様は10年前に……」
するとティアが悲しい表情をする。
「どうしたの?」
「タスク様が言っていたリベルタス……あの場所にお兄様が要らしたのです。」
「え?」
ティアは10年前のリベルタスを話す。ティアには同じ人魚である姉と兄がおり、エンブリヲに付き従う狂った科学者『Dr.ディメント』によって実験道具にされていた。そして10年前のあの日……Dr.ディメントはティアや彼女の姉と兄を禁断兵器『ラプソディー』の生体ユニットキーとして改造された。ティアの姉と兄は『ラプソディーの脳』、ティアは『ラプソディーの心臓』として役立たれてきたが、不完全体であり、その当時のグレイスとリベリオンのゼムリアン・フォルムによって大破したが、ティアはエンブリヲ達に捕まり、姉と兄はグレイスやエグナント達、そして少年時のタスクによって助けられたが、姉の方は重傷と症状が酷く。彼女は助けたグレイスに自らの血肉を与え、永遠の不老不死となった。セレスを救えなかったグレイスは嘆き、姉を救えなかったティアの兄はグレイスを酷く恨むようになり、何処かへと姿を消したと…。
真実を聞いたアンジュはグレイスの事を考え込む。
「アイツが死ねない体って……あなたのお姉さんを食べたから?」
「はい……お姉様が死ぬ寸前に、自らの血肉を飲み移したのです。そしてあの当時のグレイス様に言ったのです…」
ティアは10年前になくなったセシルの遺言を兄に聞かれ、その事をアンジュに話すと、アンジュはグレイスを心配するのであった。
「ありがとう、タスク」
久しぶりの風呂をたっぷりと満喫し、ガウンに着替えてゆっくりと寛いでいたアンジュが窓の外を眺めながらそう言った。降り出した雪はいつの間にか積もりだし、見えている光景を白く染め上げ始めている。ヴィヴィアンはその身体の大きさゆえ、アンジュたちとは別の部屋で、今はもうぐっすりと夢の中だった。
「ん?」
壊れてしまったのか、それとも元から使えないものを使えるようにしているのかはわからないが、床に座ってドライバーを片手にドライヤーを見ているタスクが顔を上げる。タスクも風呂を満喫したのだろう、アンジュと同じガウンに身を包んでいた。
「色々と」
背を向けたまま、アンジュが続ける。向かい合わないのは照れ臭さの裏返しだろうか。
「沢山のこと知ってるし、いつも冷静だし、優しいし、頼りにしてる」
だがすぐにアンジュが振り返って、タスクに穏やかな視線を向けた。
「ははは…」
突然そう言われて戸惑っているのだろうか、はにかむように微笑むとドライヤーのスイッチを入れた。使えるようになったのか、排気音を上げながらドライヤーが動作する。
「私はダメね。すぐに感情的になって、意地になって、パニックになって…」
「仕方ないよ。こんな状況なら、誰だってそうなるさ…」
タスクがそう返す。二人の間に流れる穏やかな空気が、少し前までのわだかまりやぎこちなさを払拭しているのを感じさせた。
「皇女様がノーマになって、ドラゴンと戦う兵士になって、とんでもない兵器に乗せられて、気付いたら500年後…」
「そうよね…。ちょっと、色々ありすぎよね」
アンジュは窓際から移動して、ダブルベッドにゆっくりと腰を下ろす。
「でも、悪いことばかりじゃなかったわ。貴方や、ヴィヴィアンにも逢えたし。色んなこともわかった。…最期まで、わかりあえなかった人もいたけど」
そこで、少し表情が曇った。思い出していたのだ、自身の兄であるジュリオのことを。
「お兄さんかい…?」
タスクもそれを察したからだろう、アンジュと同じように表情が曇り、悲しそうな口調になっていた。
「ねえ?」
少し時間を置いた後、雰囲気を変えるためだろうかアンジュが問いかけた。
「ん?」
「あの、エンブリヲって何者?」
するとタスクは、床に座ったまま身体をアンジュの方へと向けた。
「…文明の全てを陰から掌握し、世界を束ねる最高指導者。俺たちが打倒すべき最強最大の敵…だった」
「?…だった?」
タスクの言葉が過去形になっていることに、アンジュが首を捻った。
「500年も前の話さ」
頭の後ろで手を組むと、タスクはおどけたようにそう言った。
「そうね」
アンジュも静かに微笑む。
二人は顔を合わせると、クスクスと笑い合った。
「随分遠くまで来ちゃったな…」
笑い終わった後、振り返るかのように横を向いておもむろにタスクが口を開いた。
「でも、生きてる」
タスクの呟きを受けてそう言ったアンジュに、タスクは又視線を戻した。
「生きてさえいれば、何とかなるでしょ?」
そして、柔らかく微笑んだ。
「強いね、アンジュは」
タスクが素直な気持ちを口に出した。
「バカにしてる?」
「褒めてるんだよ」
そう言われ、アンジュが嬉しそうに微笑んだ。
「さて、と」
話はここまでというつもりだろうか、タスクが立ち上がった。
「久しぶりのベッドだ。ゆっくりお休み」
「タスクは?」
そのまま部屋を去ろうとするタスクの背中に、アンジュが声をかけた。
「廊下で寝るよ」
振り返ってそう答える。まあ、至極当然といえば当然の答えではある。
「ここで良いじゃない」
が、アンジュはそう答えて同室で寝るように促した。意識しての発言かどうかはわからないが、何とも大胆である。
「い、いや、でも…」
案の定、タスクが戸惑っている。男として嬉しいシチュエーションには違いないが、かと言って素直に頷けるほどタスクは豪の者ではなかった。
「いいでしょ?」
そんなタスクにアンジュが追い打ちをかける。上目遣いになり、寂しげな表情をしたのだ。どれだけ男勝りでも、やはり心細いのだろうか。
「う…」
そんな表情を見せられ、タスクは言葉に詰まってしまう。結果、
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて…」
こうなるのも当然のことだった。タスクはそのまま反転すると、ソファーに腰を下ろす。が、その瞬間、ソファーは音を立てて壊れてしまった。やはり経年劣化は否めなかったのだろう。その姿にアンジュは楽しそうに笑い、タスクの悲鳴とソファーが壊れた音で近くの部屋で休んでいたヴィヴィアンや隣の部屋で休んでいたグレイスやティアが思わず目を覚ましてしまっていた。
「もう!何してるのよ♪」
「ははは…」
アンジュの突っ込みにタスクも苦笑するしかなかった。そしてひとしきり笑った後、アンジュは頬を染める。そして、
「こっち…来たら…?」
と、自分が座っているダブルベッドにタスクを誘ったのだった。
「いっ!?流石に、そこまでは…」
アンジュの大胆な誘いにタスクも当然のように頬を赤らめる。さて、それでは結果どうなったかというと…。
(何の音~?)
寝惚けた感じの口調でヴィヴィアンが音源であるアンジュの部屋を覗き込む。そしてその瞬間、ヴィヴィアンは固まってしまった。何故かと言うと、
『(わ、わ!)』
驚きでパニックになりながらそのまま更に顔を近づけて覗き込む。そこには、枕を並べてダブルベッドに入っているアンジュとタスクの姿があったからだ。
「ホント、静かね…」
「う、うん」
「世界には、私たちしか居ないんだ…」
「う、ぅん」
なんともぎこちない会話である。いや、この場合は初々しいと言ったほうが正しいかもしれない。身を硬くしたまま、タスクがロボットのようにアンジュに顔を向けた。
「こんな穏やかな気持ち、何時ぶりだろう…」
そして寝返りをうつと、アンジュはタスクに背を向けた。
「…私たちを逃がしてくれたのかも」
そしてそのまま、独り言のように口を開く。
「えっ?」
「ヴィルキスやグレイスのリベリオンが。戦いのない、世界に…」
そして、アンジュは目を閉じると寝息を立て始める。
「あ…」
タスクは上半身を起こすとアンジュの顔を覗き込んだ。気持ち良さそうに眠りに就いている。その顔を見たタスクはゆっくりゆっくりと、アンジュを起こさないように慎重にベッドから出て立ち上がる。が、
「…しないの?」
いきなりアンジュが呟いた。どうやら狸寝入りだったようだ。
「ええっ!?」
その言葉にタスクが顔を真っ赤にして驚いた。狸寝入りもそうだが、何より発言の内容に度肝を抜かれたのだ。
「いやいやいや!」
パニクりながら何とかタスクが言葉を続ける。
「俺は、ヴィルキスの騎士だ! 君に手を出すなんて、そんな!」
「もしかして私のこと、嫌いなの?」
「そんなことあるわけないだろう!」
「じゃあ…」
「だから、えーと…」
一瞬口籠ったタスクだったが、顔を真っ赤にしたままアンジュから背けると、
「お、畏れ、多くて…」
蚊の鳴くような声でそう答えたのだった。
「はぁ?」
思わずアンジュが布団から跳ね起きた。
「10年前…」
そんなアンジュに、タスクが己の心境を吐露し始める。
「えっと…正確には548年前か、リベルタスが失敗した。右腕を失ったアレクトラは二度とヴィルキスに乗れなくなり、俺の両親も仲間も死んだ」
アンジュはタスクの言葉を邪魔することなく黙って聞いている。
「俺にはヴィルキスの騎士としての使命だけが残された。でも、俺は怖かった。見たことも会ったこともない誰かのために戦って死ぬ…その使命が……。俺は逃げた。あの深い森に。戦う理由、生きる理由も見当たらず、ただ逃げた……そんなときに、君と出会った!」
アンジュがハッと息を呑んだ。
「君は、戦っていた。抗っていた! 小さな身体で……目が覚めたんだ。俺は何をやってるんだろうって…あの時、やっと騎士である意味を見つけたんだ。俺は歩き出せたんだ。押し付けられた使命じゃない、自分の意志で!…だから俺は、君を護れればそれで良いっていうか、その…」
「ヘタレ」
タスクの独白を、アンジュは容赦なく斬って捨てた。
「えっ!?」
振り向いたアンジュは不満そうな表情をしている。
「でも、純粋」
だがすぐにその表情は微笑みに変わった。そしてそのままベッドの上に立ち上がるとガウンを緩め、胸こそ手を交差させて隠していたものの、肩からすべり下ろす。
「あっ…あっ…」
あまりの展開に、思わずタスクは何も言えなくなってしまう。
「私は、血塗れ…」
今度はアンジュが独白する番だった。その表情は曇っているが。
「人間を殺し、ドラゴンを殺し、兄ですら死に追いやった。私は血と、罪と、死に塗れている。貴方に護ってもらう資格なんて…」
「そんなことない!」
自然とタスクはアンジュの側に駆け寄っていた。
「アンジュ、君は綺麗だ!」
その言葉にアンジュの瞳が揺れる。勢いそのままに、タスクはアンジュの両肩に手を置いた。素肌に触れられ、アンジュの身体が一瞬だけ震える。
「君がどれだけ血に塗れても、俺だけは君の側に居る!」
「暴力的で、気まぐれで、好き嫌いが激しいけど…それでも?」
「ああ、それでも」
不安げに揺れていたアンジュの瞳だったが、タスクのハッキリとした返事を聞いて救われたのか、諭された後は優しく微笑んでいた。そしてそのまま目を閉じる。
「……」
タスクも同じように目を閉じると、二人はそのまま唇を重ね合わせたのだった。
『(きゃあ~~~!!!)』
「(おおーっ!!)」
「(素敵!!)」
外からデバガメしていたヴィヴィアンや別の部屋の窓から見ていたグレイスとティアがその展開に思わず目を大きく開きながら叫ぶ。それが合図というわけでもないだろうが、予想だにしない来訪者が三人(二人と一匹?)の元に舞い降りてきた。突如、空をつんざくような咆哮が響き渡ったのだ。その直後、地面が振動してアンジュたちが泊まっているラブホも激しく揺れた。
「きゃあーっ!」
「アンジュ!」
足場が柔らかいベッドの上だったということもあり、アンジュはバランスを崩して床に投げ出されてしまう。そんなアンジュともつれるかのようにタスクも床に投げ出された。そしてその直後、窓が粉々に砕け散ったのだ。
「ちょっとタスク! あんたまた!」
「ごめん」
二人には何が起こったかというと、最早お約束のようにタスクがアンジュの股間に頭を突っ込んでいたのである。タスク本人は不意の衝撃からアンジュを護ろうとしたのだが、結果としてこうなってしまっては弁明の余地はない。そんな二人だったが、一体何がと思って先程の衝撃で亀裂が入って外を覗けるようになった外壁に視線を外に向ける。そこには
「救難信号を出していたのはお前たちか?」
ガレオン級の頭に乗っている人物に驚く、その上に乗っているのはアカリと二人組の女性だったからだ。
「やっとお前たちを見つけてたわ♪」
「アカリさん!!?それに……」
「「「「ど!ドラゴン!!?」」」」
グレイス達が驚く中で青い服装を着た女性がレオン達に言う。
「ようこそ、偽りの民達よ。我らの世界…『本当の地球』へ」
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