クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン   作:オービタル

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第三十四話:黒きラグナメイル・前編

ディメントを撃退して翌日後、滝の近くでグレイスとタスクはエグナント達の元で話し合いを行い、そこでサラから聞いた事を話していた。

 

「サラさん達がミスルギ皇国に侵攻…?」

 

「えぇ、姫さんからの話では、彼女達のアウラがミスルギ皇国の機密区画の地下で発見したと言う報告を聞いて…」

 

それにグレイスは驚きの表情を隠せない。

アンジュの故郷であるミスルギの地下にアウラがいる事を聞いて、驚かない者はいない。

 

「それでアウラの民たちは明朝、ミスルギ皇国に向けて進攻し。我々もリュミエールを引き連れて向かいます」

 

「リュミエール?そう言えば、リュミエールの姿がないんだけど、何処にあるんだ。」

 

っとグレイスがエグナントの言葉を聞いて問い、それにエグナントは頷いて言う。

 

「ある場所に隠していましたからね。彼処に」

 

エグナントの指差す方向にグレイスは思わず唖然とする。

 

 

そして同時に風呂に入っているアンジュはサラにミスルギ皇国に侵攻の話を聞いて、アンジュはそれに問う。

 

「それを聞かせてどうするの? 私に戦線に加われっとでも言うつもり?」

 

「…まさか、貴女は自由ですよ?アンジュ。この世界に暮らす事もあちらの地球に戻る事も…。勿論我々と共に戦っても貰えるとなればそれ程心強い物はありませんが。明日の出撃の前に貴女の考えを聞いて置きたくて…」

 

「私の…?」

 

アンジュはそれに頭を傾げ、それにサラは頷く。

 

「グレイスやあなた達は、民を救っていただいた恩があります。出来る事なら何でもお手伝いしますわ」

 

アンジュはそれを聞いて少しばかり考えいた。

これから自分はどうすべきなのか、どうするのかを…。

 

 

そして外でグレイスは外で止めてあるタスクのアシッドの整備をしていて、タスクはアンジュの話しを聞いていた。

 

「そっか…、アンジュさんもその話しをしていたんだね」

 

「『も』って事はそっちも?」

 

「ああ、僕達も先生からアウラの事を聞いてな…」

 

グレイスがその事をアンジュに言い、それにアンジュは黙って聞いていた。

 

「でもエグナントの言う通りかもね、アウラを取り戻せばエンブリヲの世界に大打撃を与えられるのは間違いないからね──」

 

「それでいいのかしら…」

 

っとアンジュのその言葉にグレイス達は振り向く。

 

「信じられないのよ…」

 

「え? サラさんの言葉がですか?」

 

「何もかもが…」

 

アンジュは空を見上げながら言い、それにグレイスはアンジュの方を見る。

 

「ドラゴンが人類世界に侵攻してくる敵だって言うのも嘘、ノーマの戦いが世界の平和を守るってのも嘘…あれもこれも嘘ばっかり。もうウンザリなの」

 

 

「.....確かに、言われてみればそうですね。けど、ドラゴンも人間。僕はもうドラゴンも狩らない。自分の意思で決めてます.....」

 

「貴方はそれでいいわよ....、でもドラゴン達と戦って、それが間違いだったとしたら、それにだいたい元皇女がドラゴン達と一緒にミスルギ皇国に攻め入るなんて、悪い冗談みたい」

 

その事にグレイスは顔を合わせて黙り込み、そしてアンジュは自分の腕を掴みながら言う。

 

「…分からないわ、何が正しいのか。」

 

「誰も分からないよ。何が正しいかなんて…」

 

っとタスクが突如その事を言い出し、それにアンジュとグレイスは振り向く。

 

「大切なのは、何が正しいかじゃなくて....君がどうしたいか...じゃないかな?」

 

そう笑顔で言うタスクにアンジュは心をゆさぶられ、聞いていたグレイスは納得する。

そしてタスクはアンジュに今の気持ちを伝える。

 

「君は自分を信じて進めば良い、前にも言ったけど…俺が全力で支えるから!」

 

「…タスクさん、告白っぽく聞こえましたよ?それ」

 

「えっ!?」

 

グレイスの言葉にタスクは思わず振り向きながら驚いて、そのやり取りの中でアンジュは少し頬を赤くして髪をいじくる。

 

「バカね…そんな自分勝手な理屈が通じる訳ないでしょう?」

 

「えっ?そう?」

 

タスクはそれに振り向き、そしてアンジュは安心するかの様な雰囲気を見せる。

 

「でも救われるわ、そう言う能天気な所」

 

「フッ、お褒めに預かり。光栄で、すっ!!?」

 

すると足下に転がっていたドライバーをタスクは踏んでしまって、その一部始終を見ていたグレイス。

 

「あ、ドライバー…」

 

「えっ?ぐあああ!!!」

 

「え!うあああ!!」

 

タスクはアンジュを巻き込んで倒れ込んで、そこに運悪くヴィヴィアンがやって来た。

 

「皆!皆! お母さんがお礼したいって!」

 

煙が晴れると、そこにはアンジュがタスクに上になって、頭に自分の股を当ててる風な感じだった。

 

「タスクさん、また君という人は…」

 

グレイスは呆れながら呟き、ヴィヴィアンは頬を少し赤くして「いやん♡」と可愛らしいポーズをとった。

 

タスクはそのままもがいてしまう。

 

「っ~~!?」

 

それによりアンジュは真っ赤な顔になっていく。

 

「くっ~~~~!!! この!!!永久発情期が~!!!」

 

バコン!!!

 

アンジュの鉄拳がタスクを吹き飛ばしてしまう。

 

「あ~~~~~れ~~~~~!!!」

 

そしてそのまま場外へ飛んで行き、崖の下の川に落ちてしまった。それを見ていたグレイスが慌てる。

 

「え!?…ちょっ!!?…うわあぁぁぁっ!!タスクさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!」

 

グレイスは川へ落ちたタスクの元へ駆けつけるのであった。

 

 

そして夜となり、町の人々がグレイスにお礼のバーベキューをしてくれて、ラミアがグレイスにお礼を言った。

 

「本当にありがとうございました、街と私達を護って頂いて」

 

「いえ、俺達はサラマンディーネを手伝いたかっただけですから。ただ…」

 

グレイスは崩壊している街の一部を見て、辛い表情をしてしまう。

 

「俺達は守れなかった者がたくさんあります…」

 

「それでも、私達を護ってくれた事には変わりありません。さっ、どうぞ冷めない内にどうぞ」

 

ラミアはお肉をグレイスに渡し、それにグレイスは受け取る。

 

「ありがとうございます」

 

一方、川から無事救助されたタスクはあちこち包帯を巻いていた。

手が使いないタスクにアウラの民の女たちがタスクにお肉を食べさえていた。

 

「はい、あ~ん♪」

 

「あ~ん、はむはむ…」

 

タスクが食べてくれた事にその女たちは喜んでいた。

 

「うわ~!食べてくれた~♪」

 

「男の人って可愛い~!」

 

「えっ? そ…そう」

 

っと思わずタスクは笑みを浮かばせながら照れてしまう。っとそこに……。

 

「楽しそうね」

 

『あっ』

 

タスク達は運悪くアンジュがその場にやって来た事に固まり、そしてアンジュの右手に何やら見覚えのある形をしているバーベキューのお肉串を持っていて、アンジュはその先端のキノコをかぶりつく。

 

ガブッ!!

 

「痛い!!??」

 

タスクは思わず自分の股をおさえ、女たちは悲鳴をあげてその場から逃げて行く。

それにアンジュは鼻で笑い飛ばし、タスクのそばまで行って隣に座る。お肉を差し出す。

 

「はい、あ~ん」

 

「えっ?」

 

「何?いらないの?」

 

アンジュの行動にタスク達は少々戸惑いを隠せない。

 

「えっ?…な、何で?」

 

「手、使えないんでしょう? 少しやり過ぎたわ」

 

っとアンジュは頬を赤くして、申し訳ない表情をしながら謝る。

 

「こ、このくらいどうってことないさ。アンジュの騎士は不死身だからね」

 

タスクはそれに苦笑いしながらもアンジュが差し出したお肉を食べる。

 

「うん!美味い! アンジュが食べさせてくれると格別だね!、それに一気に直る気がするよ!」

 

「バカ…」

 

その事にアンジュは呆れ返り、笑みを浮かばせる。

そしてアンジュは街を見渡して、タスクがアンジュに言う。

 

「良い所だね」

 

「モテモテだもんねあんた、周りから見て一番…」

 

「えっ!?いや!そう言う意味じゃ…?!」

 

タスクは慌てて言うも、彼が言う言葉には説得力がない。

しかしアンジュはそう言いながらも、タスクの言葉に同意する。

 

「でも本当に良い所、皆助け合ってる生きている…あっ、そっか」

 

「ん?どうしたのアンジュ」

 

タスクがアンジュが何かに気付いて問い、アンジュはそれに答える。

 

「アルゼナルみたい…なんだ」

 

その事にタスクは理解した表情を示し、そしてアンジュは立ち上がる。

 

「私…帰るわ。モモカが待ってるわ!」

 

「それが....貴女の選択なのですね。また...戦う事になるのですね? 貴女と」

 

「サラ子...」

 

「やはり危険です!この者達は我々の事を知り過ぎました!」

 

ナーガは後ろにある刀を手を伸ばしてアンジュ達を警戒する、それをカナメは止める。

 

「でも!グレイスさん達は都の皆を救ってくれたわ!」

 

「それでもこの間まで殺し合っていたんだぞ? 拘束するべきだ!」

 

ナーガとカナメの言い合いを聞いていたアンジュ達、アンジュは決意を決めた表情で言う。

 

「...私は、もうあなた達とは戦わないわ」

 

「ほら!私達は…えっ?!」

 

その言葉にナーガは思わず驚き、マティス達もそれに頷いて言う。

 

「そうだ、アンジュの言う通り、俺達もあんた達とは戦わない」

 

アンジュの言葉を聞いたサラは微笑みを浮かばせて言う。

 

「では明日開く特異点により、あちらにお戻りください。必要ならばカナメとナーガを護衛に付けましょう」

 

「さ!サラマンディーネ様!?」

 

ナーガはそれに問うも、タスクが言う。

 

「大丈夫、俺達はエグナントさん達と一緒に行くから…」

 

「そうですか....お達者でアンジュ。戦いが終わりましたら、何時かまた決着を付けましょう...」

 

「ええ、今度はカラオケ対決でね」

 

っとアンジュとサラは握手をして、それにタスク達は苦笑いをしながら見届けていた。

 

「そう言えば、アンジュ…エグナント殿達が貴女方を呼んでいらしていました。」

 

「「?」」

 

 

エグナント達に呼び集められたアンジュとタスクとグレイス、勿論ヴィヴィアンも。集まった場所は大きな空間もある部屋であり、そこに大きなポータルがあった。

 

「そこの上に立て……」

 

グレイス達は普通に立つ。

 

「何するつもりなの?」

 

アンジュはエグナントに問うと、本人が説明する。

 

「良い所だ。絶景にもなるし、慣れれば楽しい所だ。グレイスは……知っているだろ?」

 

「えぇ♪リュミエールもそこにあるですね」

 

「リュミエールって………あの船の事?」

 

「あ!そう言えば全然見ていない!?」

 

「それが……凄い場所にだよ」

 

「「え!?」」

 

グレイスの言葉にアンジュやタスク、ヴィヴィアンは首を傾げると、ポータルが光り出し、グレイス達が消えた。

そしてグレイス達は何処かの空間へワープした。

 

「何!?」

 

「着いたぞ…」

 

エグナント言うと、セシルがある物をグレイスに渡す。

 

「これ着てね♪」

 

渡されたのは白くて分厚いスーツとヘルメットであった。グレイス達はそのスーツを着る。

 

「これ動かしにくいわ」

 

アンジュがスーツの事で嫌な表情をしているが、ヴィヴィアンは飛び跳ねようとジャンプするが、

 

「重い!」

 

「まぁ待ってヴィヴィちゃん♪今から面白い事になるから♪」

 

セシルがコンソールのスイッチを押す。すると飛び跳ねていたヴィヴィアンが空高く飛ぶ。

 

「オホッ!!?」

 

「何!?え!?うわあぁぁっ!!?」

 

突然の重力によってグレイス達が宙に浮かぶ。

 

「これが…重力の感覚。」

 

すると通路が現れ、エグナントが蔓を伸ばし、アンジュ達を下に降ろす。通路の端にあるレバーを伝って移動する。

 

「ここは何処なの?」

 

「すぐ分かる……」

 

エグナントがそう言っていると、通路の最終地点に到着し、扉が開く。

 

「ようこそ!モーント・ウィガーへ!」

 

突然の声にグレイス達は前を向く。そこには艦長帽と白と黒の色に塗り分けられた軍服を着たアカリがいた。

 

「アカリさん!?」

 

「どうじゃ?妾の隠れ家は♪」

 

「ちょっとあなた、ここは何処なの?それとさっきの重力とこの暑苦しいスーツは何?」

 

「うむ♪良い質問だ!このモーント・ウィガーは500年前……嫌、正確な年数は約800前じゃな♪」

 

「「えぇっ!!?」」

 

するとアカリが立っている後ろのハッチが開き、目の前にある物が写る。

 

「え!?」

 

「嘘!?」

 

「ほえ?」

 

二人は驚く。何故なら二人の目の前に、青く輝く地球があったのだから。

 

「あれって!?」

 

「そう♪お主達がさっきまでいた真実の地球じゃ♪そしてこのモーント・ウィガーは……800年前からずっとこの月面にあった基地……【ルナ・ベース】じゃ!」

 

アカリの言葉にアンジュ達は驚く。ここはいつも夜の地球を照らしていたあの…月である事に。

 

「まさか、ここが月!?」

 

「そうじゃ♪ここから青く輝く地球を眺めるのが素晴らしいじゃろ?あの姫さんはここに来るのが苦手でね〜〜♪」

 

「サラ子が?」

 

「彼女もここを見てびっくり仰天していたよ♪」

 

「でもこんな施設が800年前もずっとあるなんて…」

 

「実はこの施設には理由があったね……“未知との遭遇”がまだなのじゃよ」

 

「「「「“未知との遭遇”?」」」」

 

「タスク、姫さんと会ってこの星についての事を話していたじゃろ?」

 

「あぁ…」

 

「そん時に、妾が『並行宇宙に存在したもう一つの地球、一部の人間がこの星を捨てて移り住んだのが、別宇宙にあるもう一つの星』って言った事を覚えているじゃろ?」

 

「そう言えばそんな事を…」

 

「実はこの月で、ある物が発掘されたのじゃ」

 

アカリがデバイスのスイッチを押すと、立っていた場所が開き、中きらガラスプレートで守られた石碑が出てきた。

 

「石碑?」

 

「うむ、この石碑はうちらが生まれる数億年もある物じゃ」

 

「数億年も!?」

 

「この石碑は普通の石碑ではない、うちらの技術やこの星の物でもない……別世界の物だ」

 

「「別世界の物?」」

 

「この石碑の内容はこう書かれていたのじゃ……“大厄災ズァーク率いる大帝国を滅ぼした荒ぶる神【荒神】と星護し神【護星神】は勝利を収めた。”」

 

「荒神と……護星神?」

 

「別世界に存在する“神”の事だ。」

 

アカリの言葉にアンジュが呆れる。

 

「神って…そんなの信じるの?」

 

「信じるも何も………荒神と護星神は、実在する……絶対に……。っで、うちは彼らとのコンタクトを録ろうとこうやってこの基地から信号を発しているんだが……何も応答がないのじゃ」

 

アカリはそう言いつつ、石碑を見るのであった。

 

 

その頃、アンジュのいる世界では……崩壊したアルゼナルのあちこちを見て回る勇人とシンディ。二人はアルゼナルに転がっている死体を燃やしていた。

 

「彼女達に、神の道標があらん事を…………」

 

勇人とシンディは天へ昇る炎を見て、祈る。すると岩陰から物音がし、勇人とシンディはスサノオと細剣を抜き取る。岩陰から現れたのはジル達で、ヒルダ達がライフルを構える。

 

「(師匠に言われてたのに……最悪だ)」

 

勇人は彼からの教えに深く祓いしていると、ジルが言う。

 

「貴様ら、何処から来た?」

 

「「…………」」

 

しかし、ジルの問いに二人は応えなかった。

 

「武器を捨て、おとなしくっ!!?」

 

その直後、勇人がスサノオをジルの首に近付ける。

 

「……遅い」

 

勇人はそう呟き、シンディと共に姿を消した。

 

「っ!?」

 

「アイツらは!?」

 

「何処行きやがったんだ!?」

 

「……何者だ、アイツらは………(あの力、明らかにエンブリヲに近い……)」

 

ジルはそう呟き、右腕の義手を握りしめるのであった。

 

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