クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン 作:オービタル
無事アルゼナルの皆と合流したグレイス達。
アルゼナルの旗艦であるアウローラと共にリュミエールは海底へと進んでいた。
アウローラのブリッジに居るオリビエが提示報告をする。
「第一警戒ライン通過」
「まさか生きてたとは……」
ヒカルが別の部屋で話し合っているグレイス達の方を見ながら言い、それにはオリビエも同意しかねる。
「アンジュ達、てっきりロストしたかと思ってました」
「今まで何処に行ってたんだ…?」
「それがシンギュラーの向こう…だって」
パメラが言った言葉にヒカルとオリビエが思わず驚きを隠せない。
「「うっそ~!?」」
「平衡宇宙と、もう一つの地球。ドラゴン…いや、遺伝子改造した人間の世界か…」
「ドラゴンの目的は、アウラの奪還。マナを得るためにノーマがドラゴンを狩る。こんなバカげた戦いを終わらせることが出来るわ」
「だが……サラさん達の侵攻作戦は失敗した。お互いの目的のためにも協力するべきですよ」
アンジュとグレイスはこれまでの情報を出す。
「敵の敵は味方、か」
ジャスミンが両腕を組んで納得している。
「冗談じゃね!!あいつらドラゴンは今まで仲間を食い殺したんだぞ!!」
ロザリーは反対で、その発言にヴィヴィアンは頬を膨らませてムッとする。グレイスはヴィヴィアンの頭をポンポンと撫でる
「確かにそうだが、僕達の本当の敵はエンブリヲとディメントだ。その策で僕達は踊らされたんです」
「奴らは信じるに値しない、神気取りのエンブリヲとディメントを倒し、この世界を壊す。忘れた訳ではあるまい。兄妹、民衆に裏切られてきた過去。人間への怒りを。差別と偏見にまみれたこの世界を壊す、それがお前の意志ではなかったのか?」
アンジュは言葉を詰まらせそうになったが、グレイスが前に出る。
「あの人たちは良い奴らですよ。僕達とドラゴン達と手を組めばエンブリヲとディメントを倒せる。」
「ほぉ?よく言えるなぁ……それとも、アイツの洗脳に取り込まれたのか?」
「っ!それは!」
「アイツの因子を持つ子が!のうのうとしゃしゃり出るな!」
「…………」
「ジル言い過ぎだぞ、それにジル。グレイス達の言葉の一理あるぞ。現にわたし等の戦力が心持たないのも事実だ」
「サリア達が寝返っちまったからね」
「アンジュ、グレイス。お前さんたちはドラゴンとコンタクトとれるのかい?」
「できます。ヴィルキスとリベリオンの力を使えば」
「それは凄い。ジル、ドラゴン達との共闘。考えてみる価値はあるんじゃないのかい」
ジャスミンの提案に聞いたヴィヴィアンは思わず嬉しがる。
しかし、ジルは黙ったまま返答せず、それにリュガ達は厳しい表情で見ていた。
「………ジル」
ジャスミンが再び問いかけ、それにジルはようやく口を開く。
「………よかろう」
そう言ってジルは扉の方に向かう。
「情報の精査の後、こん後の作戦を通達する。以上だ」
そう言ってジルは出て行く。
「なんだか、冷たい感じだな」
「アンジュたちが戻って来た事に嬉しがっているのさ。そこはあたしが保障するよ」
ジャスミンがそういうが、グレイスはどうにもジルの事が気になる。
そしてリュミエールの食堂でグレイス達が少し水を飲んでいた、アカリ達はブリッジでジャスミンと少しばかり話をしていた。
ヒルダとロザリーの他にココやミランダにモモカ、そしてアウローラからある三人が付いて来ていて、リュミエールの艦内を見ていた。
「すげぇな」
「アタシ等のアウローラとは全く違うね」
そしてヴィヴィアンの方は出された食事をのん気に食べていた。
「はむ!もぐもぐ…美味~い! いや~!やっぱりリュミエールの食事は美味い!まずいノーマ飯を思い出す〜〜!」
「ヴィヴィちゃん相変わらず食べるね〜…」
ヴィヴィアンの様子を見てセシルは苦笑いしながら見ていて、その様子にココ達も呆れかえるしかなかった。
するとマギーがヴィヴィアンの身体をあちこち触りまくり、それに擽られて笑ってしまうヴィヴィアン。
「ぷははははっ!く!くすぐったい!」
「本当に…キャンディーなしでもドラゴン化しなくなったのかい?」
「そう…らしい!」
「大した科学力だね~」
マギーはサラ達の世界の科学力に感心する。
「あ!そうだ! 向こうの皆は羽と尻尾があったんだけど、アタシなんでないの?」
「バレるから切ったよ」
「うわっ!!ひでぇ~!!」
ヴィヴィアンの様子にエグナント達は呆れかえってしまい、聞いているグレイス達もそれに呆れてしまう。
それに……
「全く、あの時の二人がここまで強くなるとはね」
そう、元隊長のゾーラだ。
アルゼナルから脱出した後、マギーに治療続けて遂に意識が戻ったのだ。日常生活に支障はないがパラメイルに乗っての戦闘は無理のようだ。
「ま、色々と合ったんでな。ゾーラが寝ている間にな」
「ははは、生意気言うようになったか」
なんだかゾーラは嬉しそうな感じだ
「全く、心配させやがって。戦場からロストして、帰ってきたら、この男とはイチャイチャするわ」
「ごめんねヒルダ、悪かったわ」
アンジュが謝るとヒルダは少しばかり頬を赤くし明後日の方を向く。
「どうしたんだ、ヒルダ?」
「何でもないよロザリー。全く、お前等が居ない間大変だったからな」
「その事だが、俺達が居ない間何があった?」
リュガがその事を問い、ロザリーが少しばかり暗い表情で言う。
「お前たちが消えた後、アタシ等はとても苦戦した事ばかりなんだよ。
アルゼナルは壊滅するわ、仲間が大勢殺されるわ、クリス達が敵になるわ……」
「サリア、エルシャ、クリス……。あの三人がどうして」
「こっちが知りてぇよ!容赦なくドカドカ撃って来やがって!あんなのもう友達でも何でもねぇよ!」
ロザリーが机をたたく。
いつも、クリスと一緒にいたからそんな気分なんだろう。
「そういえば、この船を護っていたのって……貴方達なの?」
「こいつ等が頑張ってくれたからな」
ロザリーは指を指して、三人の若い少女たちの方を向かせる。
「ノンナ、マリカ、メアリー。戦力不足でライダーに格上げされた新米たちさ」
「私達の後輩です!」
「足手纏いにならないよう頑張ってます」
ココとミランダが強い意志を見せる。
グレイスはあの時と違って、強くなっているのを確信していた。
「ゾーラ姉さまが、まだ動けないから私がみっちり扱いたお蔭で何とか…?」
メアリー達が一斉にヴィヴィアンの方に向かって行き、それにはロザリーも流石に突然過ぎて戸惑った。
「あの!お会いできて光栄です!」
「んっ?えっ?アタシ???」
ヴィヴィアンは自分の事を言われて、何が何やら分からなかった。
「第一中隊のエース、ヴィヴィアンお姉様ですよね!」
「ずっと憧れていました!」
「大ファンです!」
「そっかそっか♪ よし喰え喰え~!」
ヴィヴィアンは自分の食器の具をメアリー達にも分け、その様子にロザリーはやや悔しがる。
「ちょ、ちょっとあんた等!!アタシにはそんな事一言も!?」
「………どんまい」
ダストがロザリーの肩をポンポンと叩く。
「慰めんなよ!!?私がみじめじゃないかーー!!」
アンジュが何やら考えているタスクの方を見る。
「どうしたの?」
「いや、アレクトラ…じゃなかった。ジルの様子が気になってね」
「アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ…だっけ」
「何故、知っているんだ?」
「皆知ってるよ、司令が全部ぶちまけたからね。自分の正体も……リベルタスの大義の事も」
ヒルダはジルが自ら正体を証し、リベルタスの全て。
自分達の最大の敵であるエンブリヲとディメントを倒す事を宣言した事を話した
「アレクトラが……そんな事を」
「意気込みは分かるけど。ガチ過ぎてちょっと引くわ…」
「貴方にあの人の何が分かるの~!」
別に人物の声が聞こえた事にグレイス達はその声がした方を見る。
厨房から完全に酔っ払いたエマが出て来る、ワインをラッパ飲みしながら。
「か、監察官!?」
「ぷはっ! えまさんで良いわよ~?エマさんで~♪」
「ぐっ!?酒の匂い!?」
「この艦に乗られてからずっとこうなのですよ」
「ずっと……!?」
モモカの言った事にグレイスは驚きを隠せない。
「しょうがないでしょう!殺されかけたのよ!!人間に…同じ人間に!!」
あの時、アルゼナルで保護を求めようとしたのに殺されかけたのをマギーが助けてくれて、それ以来エマは酒浸りになってしまっていたのだ。
それを司令であるジルが保護し、エマが信じられる人はジルただ一人だけらしい。
「あの人だけよ~!この世界で信じられるのは! そうよね~!ペロリーナ~!!」
エマはペロリーナのぬいぐるみを抱きながら泣き崩れ、それにマギーが止める。
「はいはい、もうその辺にしときな……」
「酒を取り上げんと、肝臓がやられちゃうね」
マギーとミカがやれやれと言う。
「でも、監察官の言う通りだ。アタシ等にとっちゃ、信じられるのは司令だけだからな、この世界で……」
ロザリーはそう言う。
だが、アンジュとグレイスはこのままジルを信用していいのか……決められなかった。
その頃、アウローラ = 司令室 =では…………。
一人となったジルはタバコを吸っていた
だが、あの忌々しい光景がよみがえる。
《……そうだよ、アレクトラ。可笑しくなっても良いんだよ…♪》
ジルは吸っていた煙草を握りしめて潰し、恐ろしい表情をする。
「エンブリヲ……!!」