クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン 作:オービタル
ラグナメイル達はアウローラへ襲撃し、攻撃を仕掛ける
水柱が幾度も上がり、船内が大きく揺れだす。
「皆、しっかりしな、敵襲だよ!!」
ジャスミンはアウローラの舵を取りつつ敵の攻撃を回避する
「やめなさい!!」
アンジュはヴィルキスを操縦して、ラグナメイルと交戦する。
「アンジュ機とグレイス機、敵パラメイルと交戦中!!」
「誰のせいでこんなことになったのか……わかってんのかねぇ。まったく」
ヘリオスはアイオロスのユニットに搭載されているミサイルが放たれ、タスクは急いで回避するが――――。
掠めて、バランスを崩しモモカが振り落とされる。
「きゃああああああああああ!!」
「しまった!!モモカさん!!」
「マナ!!マナの光!!マナの光よ!!」
慌ててマナの光をスカートに集中させて、パラシュート替わりにして落下を減速させる。
タスクは急いでモモカを無事、救出する。
ハーミットは巨大な手裏剣を振りかざし、投げつける。
「くそっ!!反撃ができない!!」
「飛んでけー!ブンブン丸!!」
ブーメランブレードはそのまま、ハーミットに直撃する。
その隙にリベリオンがパドルデーゲンを展開し、斬りにかかる。
アンジュに攻撃を仕掛けていたエルシャがヴィヴィアンの方を見る。
「駄目でしょ……ヴィヴィちゃん」
エルシャはヴィヴィアンに向けてビームライフルを放ち、それをまともに貰ってしまった。
「うわっ!!」
「ヴィヴィアン!!」
クレオパトラ、レイジア、テオドーラの三機がアンカーを発射し、ヴィルキスの両腕と首に巻き付いて動きを封じる。
それにアンジュは強引に動かそうとするもビクともしなかった。
「くっ……剥がれない!!」
サリアがヴィルキスのコックピットカバーを強引に剥がし、アンジュは前を見るとサリアが出て来て銃を構えた。
「さようなら、アンジュ」
――――パーン。
アンジュに胸に一発の銃弾が撃ち込まれ、アンジュは倒れてしまい海へと落ちて行く。
(な……なんて様なの……。よりにもよってサリアにやられるなんて……)
そう思いつつアンジュは意識を失う。
「アンジュさん!」
グレイスが急いでアンジュを助けようとしたその時、ヘリオスのアイオロスが立ち塞がる。グレイスはリベリオンをゼムリアン・フォルムへとなり、ハルマゲドンから巨大なビームランチャーとドリルバンカーを構える。
『……RBLー1272!!』
「?」
『お前が何故……失敗作と呼ばれるか、分かるか?……ミストラル!』
『了解』
するとアイオロスのコックピットからヘリオスが現れ、アイオロスと一緒に飛ぶ。
「俺達成功作である…“アドベント・オブ・チルドレン(降臨の子)”の真の力を!!」
ヘリオスの叫びと共に、彼の体が巨大化していく。
「そんな!?」
グレイスが驚くと、プロメテウスとハーミットからアトラスとファントムが現れ、ヘリオスと共に巨大化していく。
「ラルス!一体何が起こっているんだ!?」
『…………』
「ラルス!?」
そして巨大化し終えたヘリオス達はパラメイルの数倍の大きさになっており、それぞれの特有の生き物と思わせる装甲を身に付けていた。ヘリオスは甲虫と思わせる生命体へ、アトラスは鳥と思わせる生命体、ファントムは巨大なコウモリと思わせる生命体へと変身を遂げた。
「な!?何なんだ!?」
「……これぞ完璧な『アドベント・オブ・チルドレン』だ。」
「そうだ……なのに弟である貴様はそれが成さない。」
「だから失敗作なのだ。それに拙者らはただデカくなった訳ではない……」
するとファントムが手からエネルギー状のディスクブレードを展開し、投げつける。
「っ!!」
グレイスは急いでパドルデーゲンでディスクブレードを防御する。回転力がさらに増すディスクブレードにグレイスが圧され、パドルデーゲンの刀身が刃こぼれする。
「そんな!?」
「こんなことも出来るぞ!!」
次に、アトラスが各部が露出展開し、生体ミサイルを一斉に放つ。グレイスはリベリオンのリベットガンで生体ミサイルをドリルバンカーやビームランチャーで迎撃した直後、ミサイルからナノマシンが飛び散り、装甲に付着する。
「っ!!?」
付着したナノマシンがリベリオンの装甲を腐敗していく。
「腐敗していく!?一体どうしてーーーっ!!」
その直後、ヘリオスが両腕部に搭載されている高周波ソードが展開され、リベリオンの両脚を切断されていた。
「バカな!!?」
『損害状況81%!!』
高速で動くヘリオスは高周波ソードでリベリオンの各部位を破壊していく。そして、残ったのは、パドルデーゲンと連結している右腕と上半部だけであった。頭部を握り掴まれているリベリオンの関節部から火花が飛び散る。
「分かるか、兄弟?俺達とお前の違いの差が……お前はあの女や実験体である子達のような弱者しか守る事ない失敗作。俺達はそれを倒す事ができる。人間のような欲深き生き物を葬る為に造られた人造人間。俺達が味わった屈辱を…その身で知れ!!」
ヘリオスは高周波ソードをコックピットに突き刺した。高周波ソードの刃が、グレイスの胸部に突き刺さる。グレイスは血を垂れ流しながら、高周波ソードを引き抜こうとするが、失血のせいか、力が入らなくなり、目の輝きが消えかける。
「僕は……僕は……」
グレイスは最後の力を振り絞ろうと、操縦桿を握るが、腕に力が入らなかった。グレイスは涙を流しながら、陽弥から貰ったペンダントを握り締める。
「最後に……セレスと……あの子達の声が聞きたか………た……」
グレイスはそう呟き、意識を失う。それと同時に、本来の世界の月にある月面基地の格納庫に収納されている筈のフリューゲルスが咆哮を上げる。その咆哮は、真実の地球や偽りの地球にも響く。
「何だ!?」
「今の咆哮は!?」
「っ!!ヘリオス!」
「!?」
するとヘリオスが掴んでいたリベリオンが強く光だし、閃光を放つ。
「「「っ!!」」」
ヘリオス達は目が眩み、その隙に勇人のアダムが現れ、奥義を放つ。
「斬空!覇王刃!!」
アマノソウウンガから強力な斬空刃が飛び、風を切る。稲妻を発する大竜巻が起こり、湖の水を吸い上げていく。そして、竜巻が消え、上から吸い上げた湖の水が雨のように降り注ぐ。ヘリオス達は立ち直ると、そこにはもう誰もいなかった。
「チッ!あの勇人・ブリタニア・クアンタに邪魔された……」
「…様……リーゼ様!アンジュリーゼ様!」
「っ!!」
呼ばれた事に驚いたアンジュは思わず飛び起きる。
周りを見るとかつて自分が過ごしていた豪華な部屋であった。
アンジュは呼ばれた方を見るとモモカが居た。
「モモカ…?」
「良かった!アンジュリーゼ様!無事でなりよりです!」
「どうして……?それにここは……」
「はい!ここは【ミスルギ皇国】です!」
モモカが言った言葉にアンジュはベットから下りて窓を見る。
目の前にアケノミハシラがあり、モモカの言う通りアンジュとモモカが居るのはミスルギ皇国であった。
(でも、どうして……?)
考えつつアンジュは着替えようとしたら、モモカが着替えをやり始める。
あの時の筆頭侍女としての立場へと戻っていて、仕方なくモモカに頼むしかなかった。
着替えを終えたアンジュはすぐさま武器になる物を探す。
「アンジュリーゼ様?」
「本当ならライフルや手榴弾があればいいんだけどね」
「無駄よ」
声がした方を振り返ると、扉に軍服の様な制服を身にまとったサリア達が居た。
「あなたは大事な捕虜なのよ。勝手な事しないで」
「元気そうねサリア。一体何があったの?あんなに司令好きのあなたが……」
「別に、目が覚めたのよ。エンブリヲ様のお蔭でね」
話しによると、サリアはアンジュに落とされた後、エンブリヲに助けられ自ら迎えてくれた事に感謝をしていた。
自分を全く必要としていないジルからエンブリヲへと鞍替えした。
愛するジルからエンブリヲへと………。
サリアは頬を少し赤くしながら、エンブリヲから貰った指輪を見る。
「そして私はエンブリヲ様の直属の親衛隊『ダイヤモンドローズ騎士団』、騎士団長のサリアよ」
「ダイヤモンド…」
「なが…、要するにあなたはあのナルシスト男に惚れたって行く事ね」
っとアンジュが言った事に言うとした時。
「変態ナルシストではない……我が偉大なる父君である!」
「!!!?」
アンジュが前を見ると、サリア達の後ろから二人の男と女性一人の三人組がやって来た、それはアンジュが見覚えのあるヘリオスとファントム、そしてアトラスだった。
「また会ったな、皇女アンジュリーゼ」
「ヘリオス…ファントム…アトラス!!」
「俺達の事を覚えてくれたか?……まぁ、良い」
ヘリオスが頷きながら覚えた事に感心し、アトラスがアンジュとモモカに近づく。
「親父がお呼びだ。付いて来い」
「エンブリヲ…!」
っとその事にアンジュは表情を引き締め、アトラスがサリア達に命令する。
「お前たちは持ち場に戻れ」
「な!?行けません!! 彼女は危険です!!」
「我々はこいつにやられねぇ……黙って従え。」
ヘリオスがそうサリアに言いサリアは歯を噛みしめる、アストラが言った事にアンジュは内心で悔しがる、実際ヘリオスとアトラス、ファントムには全く歯が立たないのは事実だ。
仕方なくアンジュとモモカはヘリオス達に付いていき、サリアはまた必要とされてないっと思う。
その中でアンジュはグレイスとタスクの事を考える。
「(タスク……グレイス、あなた達無事よね?)」
その頃、グレイスは……意識が戻りつつ、薄々と目を開けていた。
「(グレイス!…………大丈夫か!?)」
何処からか、勇人の声がしたと思いきや、目の前が明るくなり、グレイスは目を覚ます。
「ここは……?」
「気がついたようですね」
「?」
っと、扉から王家の服を着た勇人とシンディが現れた。
「勇人さんにシンディさん……いつつっ!!」
グレイスは立ち上がろうとするが、ヘリオスの高周波ソードによって突き刺された刺し傷が痛み出し、腹を抑える。
「あ!無理をするな!」
勇人とシンディが一緒にグレイスを抱える。
「ここは?」
「新生クアンタ帝国…そしてクアトロン宮殿、俺の実家だ。」
「……僕、負けたんだ…」
「……あぁ、あの三人によって、お前はかなりの重傷を負おっていた。呼吸器官半壊、胃袋全摘、肝臓移植、大量失血、神経麻痺……この五つでお前はかなりの後遺症を背負うことになる。」
「…………ラルス!」
「?」
「ラルスは!?」
「………生きている。だが…」
勇人は機体の格納庫へとグレイスを連れて行く。そこで目にしたのは、すでに腕を失ったボロボロのリベリオンであった。
「…………」
「すまない、かなりの修理を施しんたんだが……腐敗も酷く、各部位、あらゆる機械がオーバヒートしてーーーー」
すると、グレイスが膝をつき、涙を流す。
「…………どうして」
「?」
「どうしてなんだろうなぁ………僕が弱いから、セレスやあの子達をーーー」
グレイスはそう呟き、また倒れる。
「お!おい!!」
「しっかり!誰かーーー」
勇人とシンディは急いでグレイスを自室へ運ぶのであった。
そしてもう一つの地球に居るリュミエールとアウローラは深海を進み、敵に発見されずに航行していた。
「まさかノーブルのあの三人、あんな力を隠していたなんて……」
「しかも、リベリオンのゼムリアン・フォルムが負けるなんて………そう言えば、アレクトラは?」
「…アカリ達に呼び出された」
「何で?」
「……理由はーーー」
オボロはナナリーに説明する。ジルの行動。彼女がエンブリヲに操られている事に気付いたアカリはすぐ様みんなを呼び集め、拘束しているジルーーーアレクトラを尋問していた。
「やはりそうじゃったか……お主の洗脳の一言とあの作戦を聞いた時に確信を持てたのじゃよ。もしやお主は10年前の【あの大戦】の時にエンブリヲに…?」
「何だって!!? 本当かい!!アレクトラ!!?」
ジャスミンがそれに問うも、ジルは顔を逸らして戸惑いながらも黙り込む。
「何で黙ってるんだい…!答えろよアレクトラ!!!」
マギーが怒鳴りながらジルの胸倉をつかみ、振り向かせ言い聞かせる。
「それは………!」
「詳しく話して貰うぞ。アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ…」
アカリの冷たい一言にジルは話す。
「…ああ、そうだ、私は操られた…エンブリヲの人形だった……」
ジルの言葉にジャスミン達は驚き、その場にいたメイも驚く。
「何故、あの男の人形にされていたの?」
「……私はあの時、リベルタスを行い…エンブリヲを殺そうとした。
だが奴に身も心も憎しみ…全てを奪われた。誇りも使命も純潔も…。ああ…怖かったよ。リベルタスの大義…ノーマ解放の使命…仲間との絆。それが全部…奴への愛情、理想、快楽へと塗り替えられていった。何もかもあいつに踊らされていると感じたんだ………」
マギーは腕を組んだまま問う。
「何で黙ってたんだ……」
「どう話せばよかったのだ?エンブリヲを殺しに行ったが、逆に奴に惚れましたとでも言えるのか?全て私のせいさ…リベルタスの失敗も仲間の死も全部………、こんな汚れた女を救う為に皆死んでしまった…!!」
「そ、んな………そんな!!」
メイにとっては残酷な事実を知って、姉の死がジルに当たる事に困惑していた。
「私に出来る償いはただ一つ、エンブリヲとディメントを殺す事だ。今頃、奴は新しい玩具で遊んでいるだろうな」
「……アンジュの事じゃな。」
「ああ、利用するつもりだった。勿論此処の皆もそうだった」
それを聞いたジャスミンとマギーは驚く、自分達を使い捨ての道具にしようとしたジルの言葉を聞いて。
「だが、それをいとも簡単に潰された…、リュガによってな──」
―――パンッ!!
ジルの頬にマギーの平手打ちが放たれ、それにジルはただ黙ったままマギーを見る。
「私はあんただから一緒に来たんだ、あんたがダチだからずっと付いて来たんだ。
………それを利用されていただなんてさ!!何とか言えよ!アレクトラ!!」
「そのくらいにしときな、マギー…」
「………ぐッ!」
マギーはその場を離れ、ジャスミンはジルと面と向かい合う。
「知っちまった以上、あんたをボスにはして置けない。指揮権を剥奪する…いいね?」
「………ああ」
ジルはジャスミンによってアウローラの指揮権及びノーマ達リーダーの座を失った。
それも大きな傷跡を残して…………。
《回想終了》
事実を知ったナナリーは驚きを隠せなかった。
「そんな事が!?」
「あぁ……アウローラの指揮権はゾーラに渡された。彼女なら、多くの仲間を導いてくれる。だけど……」
「グレイスか?」
「あぁ、グレイスが戻ったら良いんだけどな…」
「あいつが居なきゃ始まらないからなぁ……本当、どこ行ったんだ?」
オボロとナナリーはグレイスを心配しながら、作業を続けるのであった。
その頃、グレイスは自室に引きこもっていた。勇人とシンディはドアの前に立っていた。
「グレイス……大丈夫か?」
「…………」
しかし、グレイスからの返事は何も来なかった。
「…………食事、ここに置いておきますからね?」
シンディはドアの前にスープとパンと水を置いて、離れる。
「かなりのショックの様でしたね…」
「あぁ……アイツの過去と今の状況から見れば、本人は辛いんだが……俺達は、どう話に入れば良いんだが…。こんな時、ザ・シード……フェイトである母さんがいれば……」
勇人は自分の過去を振り返る。己が弱く、たった一人の家族であった母親がかつての敵であったドレギアスの攻撃から、愛する息子を庇い、消滅した。そんな自分の弱さを乗り越えた勇人は考え込む。
「シンディ……守るって、何なんだろう。俺たちから見れば、アイツら……人間は守りたいって思う。だけど、グレイスの兄弟のほとんどがエンブリヲの遺伝子で造られた人造人間。人間を抹消する事をプログラムされているんだ。グレイスはそんな人間を守ろうとしている。ねぇ、守るって……意味があるの?」
「……私にも分かりません。けど、守りたいから弱いじゃありません。守りたいものがあるからこそ、人は強くなると思います。」
「あぁ…」
「これは…陽弥さんからの言葉なので、それに従っているのですから♪」
シンディはニッコリと微笑ましい表情をし、勇人は呆れ返る。それと同時に、二人の話を聞いていたグレイスは考え込む。
「守りたいもの……」
グレイスはそう考えながら、眠りにつく。だがその時、彼の頭上に禍々しいオーラを放つディメントが嘲笑いながら、横の椅子に座っていた。
「さて勇人……お前の大事なものを、葬りに来たぜ……」
ディメントは腰から猛毒が塗られている短剣を取り出し、勇人とシンディの子である長男『一輝・ケラン・クアンタ』と次男『ロビン・ケラン・クアンタ』が寝ている子供部屋へと足を踏みいれようとしていた。