クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン 作:オービタル
アカリによって呼び集められたタスク達。アカリは厳しい表情で、タスク達に説明する。
「みんな集まったな…………」
「アカリさん、俺達やエグナント達を集めて…」
「今から説明することは……この世界や、他の世界の運命を左右する事になるじゃろう。」
「え?それって……どう言う?」
「うちらの敵であるエンブリヲとDr.ディメント……じゃが、本当に倒すべき相手はエンブリヲでもない、Dr.ディメントなのじゃ」
「え!?つまり、エンブリヲではなく、ディメントを倒せって言う事ですか?」
「まぁ、そう言う事にもなるじゃろう」
「けど、一体どうしたのですか?急にそんな事を言い出して……」
「実を言うと、研究した結果、分かったことがあるのじゃ……これじゃ」
アカリがポケットから取り出したのは、さっきの血液を入れた小瓶であった。
「それって?」
「10年前のリベルタスで、リベロが殺して安らかに葬った改造された少女の血液じゃ。亡骸から摂取した。」
「それと…何か?」
「大ありなのじゃ、この血液に含まれている細胞……うちらの世界や、ドラゴン達の世界にはない物じゃ」
《え!?》
「この細胞は、一つ一つが生き物の様になっていて、対象物の細胞を糧とし、新たな生物へと変換してしまう恐ろしい生物兵器なのじゃ」
「その通りです。アカリ・ヤマツ博士♪」
《っ!?》
何処からか女性の声がし、皆は後方を振り向く。そこにいたのは、美しき黒のローブを着ており、手には杖を持った藍色の長髪の女性がアカリの説明を聞いて拍手していた。
「流石、ジャスミンさんのお姉さんですね♪」
女性はゆっくりと、アカリ達の方へ向かってくる。
「誰だテメェ!?」
「一体どうやって!?」
ヒルダ達はホルスターからハンドガンを取り出し、女性に向けると、アカリがヒルダのハンドガンを下ろす。
「撃つな…彼女は味方じゃ。良く来てくれた……ルナ・ギデオン」
「いえいえ、お兄さんの代理で来ているのですから♪」
「そうか、早速じゃが……お主はこれを知っているのじゃ?」
「えぇ……」
ルナはサンプルを見る。
「間違いない……これはお父さんやお爺さんが処分した麻薬『リーパー・エキス』です。」
「『リーパー・エキス』?それが……って、今、薬と言った?」
「はい……」
ルナはアカリ達に『リーパー・エキス』と言うものが何か説明する。
ーーー《リーパー・エキス》ーーー
かつて、ルナ・ギデオンの父である『シン・ギデオン』と亡き祖父である『サム・ギデオン』の一族を根絶やしに抹消寸前へ追い込んだ邪神『ドゥーム』の亡骸から取れる血液。それを飲んだ物は細胞がリーパー細胞に喰われ、悍ましき怪物へと変貌を遂げ、異常な進化、理性の消滅、他者の血を求め、強烈な飢餓状態へと陥らせてしまう……。ルナの世界で連邦条約第1条【未開惑星保護条約】(未開の惑星に、他者の存在、未知のテクノロジー、危険物の抹消、定期文明の保護する条約)によって、『リーパー・エキス』は廃棄処分されたのだが……五年前、何者かによって処理場でリーパー・エキスが入っているボトルが盗まれたと…。
「その危険物をディメントが持っている……と言うことは、盗んだ犯人は……」
「はい……恐らく、Dr.ディメントでしょう。リーパー・エキスを盗んだ彼は、人工的に作り上げ、あの子達を実験として、投与したと思われます。」
「試作の為の道具かよ……くそっ!!!!」
「それで?」
「私達の組織は、全力で捜索し、ついにこの世界に脱走したディメントと盗まれたリーパー・エキスを見つけ出せました。」
ルナの言葉に、タスクはある事に気づく。
「ちょっと待ってくれ!ディメントが脱走した?それってつまり……」
「その通りです。ディメントは…………」
私の住む世界の…別の世界に生きる“地球人“だった者です…………。
《っ!!!?》
衝撃の言葉に、皆は驚く。
「なるほど、それなら納得できる。儂らが相手していたあのレギオロイドとノーブル四天王、コーパスと呼ばれる謎の勢力……」
「おっしゃる通りです。レギオロイドとノーブル四天王は私達のオーバーテクノロジーとロストテクノロジーによって造られた存在。あなた方の友達でもあるグレイスも…私達の技術によって生まれた存在。コーパスは、かつてズァークが率いていた帝国に属していた組織で、その残党軍なのです。」
「マジかよ!?」
「だけど…ディメントがあなたの世界の人間なら、何で?」
「それはまだ分かりません…彼が一体何を企んでいるか、こちらも必死に解明しようとしております。私達ヴァルキュリアスは、あなた達と連合を組もうと思います。」
「おぉ!頼もしいじゃないか!」
「…共にディメントを倒す者ですから♪」
「うむ!それより、グレイスは何処にいるか知っておるか?」
「はい、彼なら勇人の所にいます安心してください。」
「良かった〜!」
「それともう一つ…お尋ねしたい事があります。」
「何じゃ?」
「……グレイスが【フリューゲルス】に呼ばれているみたいなのです。」
《っ!!!?》
ルナの言葉に、アカリ達は驚く。
「フリューゲルスが……グレイスを呼んでいると?」
「はい…もしかしたら、修理できないリベリオンに変わって、その機体がグレイスを選んだのかもしれません」
「おぉ〜!そうか!そうか!なら急いで姫さんの所へーーーあぁ、そうであった、リベリオンやヴィルキスがなければ……」
「心配無用です。私のセイレーンの次元跳躍システムなら、サラさん達の世界にある月面基地へ行けます。」
「本当か!?流石、オーバーテクノロジー!」
アカリははしゃぎながら、準備をする。するとルナはヒルダを見る。
「?…何見たんだよ?」
「……相変わらず、こっちの世界の“お母さん”は激おこプリプリだね♪」
「……はぁっ!?」
ヒルダはルナの言葉に、声を上げるのであった。
一方、グレイスは着々とモーント・ウィガーへ行く準備をしていた。勇人は二人の子供を助けようと、シンディの両親に事情を説明していた。 その時にシンディの母は孫達が連れさらわれた事に気を失って倒れたことは、言うまでもなかった。勇人は地球や各惑星に任務に行っている友達を呼び集めた。そして数秒も経たないうちに……。
《勇人!!》
勇人の元に、和装に満ちた九人の男女がやって来た。
「雄二!智彦!玲二!ベリト!志歩!瑠璃!彩乃!真里亞!サマエル!」
ヴァルキュリアス宰相の『新井 雄二』、剣闘士の『五十嵐 智彦』、格闘家の『上野 玲二』、勇人と瓜二つの暗黒生命体『ベリト』、発明家の『星川 志歩』、ジャーナリストで忍者の『西園寺 瑠璃』、医者の『瓜生 彩乃』…三歳の娘を背負った超ハッカー、そしてベリトの妻の『真里亞』、シンディと瓜二つの暗黒生命体『サマエル』が勇人とシンディの危機に、駆けつけて来てくれた。
「みんな!久し振りだな!」
「久し振りじゃねぇよ!お前等の子が誘拐されたって、急いで駆けつけて来たんだよ!」
「私達にできる事があれば何でも言ってね、力になってあげるから♪」
「あぁ…後、紹介したい人がいるんだ。」
勇人がグレイスを紹介する。
「はじめまして皆さん。僕はグレイス。僕の世界では、エンブリヲによって造られた人造人間です。」
「彼は、エンブリヲの遺伝子によって造られた……謂わば、エンブリヲの子って言っても良いかな?」
《え…………えええええええええぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜!!!!!!??????》
「あの……今なんて?」
「もう一度言う……彼はエンブリヲの子だ。」
「なっ!!?」
智彦と玲二、志歩が刀と籠手、小太刀を構える。
「っ!!……勇人さん、僕の父親って、この世界でも酷く憎まれている相手なんですか?」
「師匠が生まれる前からだ……皆エンブリヲの事は誰だって知っている。皆、武器を下ろして……彼はもうエンブリヲの配下でもない。洗脳を受けない人物なんだ。」
「……それなら、良いんだが。」
みんなは武器を下ろし、グレイスのこれからの事を話す。
「そのラグナメイル……グレイスの頭の中で語り掛けるとは、よっぽど凄く特別な兵器なのだろう。多分、アンジュさんのラグナメイル【ヴィルキス】と……サラマンディーネさんの龍神器【焔龍號】。」
「シンさんのパンドラメイル【ペルシウス・オーバーライズ】……」
「陽弥さんとエミリアさんのクアンタムメイル【シグムディア】と【シグニュー】……」
「レオンさんとタスクさんのオメガメイル【ヴェルトヴィンガー】と【スパーダディアス】……」
「俺とシンディのインフィニットメイル【アダム】と【イヴ】そして………」
「僕の新たなラグナメイル【フリューゲルス】……。」
「……グレイスのラグナメイルだけど、フリューゲルスって私達の世界では、【翼】って意味を持っているよね?」
「え?」
「この際だから、グレイスの【ラグナメイル】、ーーラグナーーじゃなく、【ゼロメイル】て名付けない?」
「……“ゼロメイル”」
「意味は…【無】なの♪」
「無……悪くありませんね♪」
グレイスは満足していると、瑠璃がある事を思い付く。
「そうだ!」
瑠璃はポケットからスマホを取り出す。
「これ、グレイスのスマホ♪」
「スマホ?」
「私たちの世界で使われている携帯端末電話“スマートフォン”略して“スマホ”だよ、それには色んな機能が付いているから、写真や情報、情報は各惑星や世界、そして別の世界のも追加されているから♪」
「それって、シンさんが勝手に私達のスマホを改造と付け加えたからじゃないのか?」
「………」
《黙るんかい!?》
「フフフ♪」
《皆さん、仲が良いんですね♪》
「……あぁ、俺達は勇人やシンディがいたから、こうやって固い友情ができたからなぁ」
「私達は二人がいたから、それぞれの未来は一歩ずつ進んでいるのだから♪」
「あの人は?」
「シン・ギデオン…陽弥・ギデオンのお父さんよ。宇宙一の科学者で、元メイルライダーのトップエースだったの。」
「嘘!?」
「お初にお目にかかる、エンブリヲの子 グレイスよ。君に二つ…贈り物がある。」
シンがそう言うと、グレイスの肩に誰かが触れる。グレイスは振り向くと、そこにいたのは全身が機械で覆われており、関節部がパラメイルに似ているが、人が持てるくらいの小さな関節部であり、リベリオンに似た2メートルもあるロボットであった。
「誰?」
『お忘れですか?グレイス様』
「ラルス!?」
リベリオンのAIであったラルスが、リベリオンに似たロボットになっている事に驚く。
『シン・ギデオンやヴェクタ人、アジマス人の科学力によって、身体を持ちました。エンブリヲやディメントの洗脳及び、AIの消去も200.0%%不可能になりました。そして、フリューゲルスのドッキングシステムと各武装、並びに医療箱、治療キット、エンブリヲの偽りの世界のあらゆる全システムの超速ハッキングと特殊ウィルス及び、ワクチンの組み込み、生成、乗っ取りも可能になりました。さらに地上、空間でのオートホッパー形態へ可能。』
新しくなったラルスはシン達によって、新たに機能を追加された事を自慢する。自慢気に話すラルスに、グレイスは口を開けたままであった。
「…………凄すぎます」
もちろん開発者の志歩も驚いていた。
「そしてもう一つはこれだ♪」
次に渡されたのは、機関銃的なビームランチャーであった。(分かりやすく言えばディバイドランチャーにストックとアサルトスコープ、さらにロングバレルと下部のフォトンソード放出口が追加されて物です。)
「何ですか、これ?」
「私が開発した局地型対応兵器。その名も『ヴァリスランチャー』だ。この兵器はビームランチャー、ガトリング、ビームアサルト、レールガン、サブマシンガン、ビームシューター、マグナム、フォトンソード・モードへとなるヴェクタの正式最新製騎兵銃でもある♪」
「それって、パーツによって様々な武装へ換装する事が可能な兵器なんですか!?」
「YES♪陽弥と共に考え付いたからなぁ」
ヴァリスランチャーを渡されたグレイスは実際に構える。
「あれ?このランチャー…軽い」
「極限まで軽量化に成功した。銃身に何が起こって怪我をしても、保証してやる♪そして皆の分もある」
シンはコンテナから勇人達のヴァリスランチャーを投げ渡す。そしてグレイス達はモーント・ウィガーへ行く準備をする。勿論、シン・ギデオンと共に…。
「これに乗るんですか?」
「あぁ…」
それは、美しい青空のようなシアンで染まっており、エネルギー流動経路が紅く光り輝く。特徴だったのが、その艦艇の形状であった。普通は船のような形だが、その艦艇は翼があり、まるで不死鳥と思わせる羽もあった。
「勇人達の為に作ったフェニックス級機動巡航艇『ディスティニーフェニックス』だ。」
グレイスはディスティニーフェニックスの神々しさに見惚れる。(分かりやすく言えば、実写版『ガッチャマン』のゴッドフェニックスを色付けし、超光速ブースターユニット及び、ガルドメイル、インフィニットメイル、ゼロメイル格納リングを取り付けた感じです。)
ブリッジには、船長である勇人と副船長の雄二、シンディ、瑠璃、玲二、智彦達やラルスが座っていた。志歩は制御室、彩乃は医務室、シンはテックラボルームにいる。
「グレイス、お前の席だ」
グレイスはデスティニーフェニックスに搭載されている武装『マグネティックハイドロナミックキャノン』と『ガーディアンホーミングレーザー砲』の照準及び、船の操縦の担当であった。グレイスは座り、コンソールのボタンを押し、目標を元の世界にある月面基地へ設定した。
それと同時に、元の世界にいるアカリ達も、行動を開始していた。リュミエールの格納庫にて、ルナがセイレーンを起動し、呪紋を唱え始める。
「ディバインゲート!」
セイレーンのツインアイが光り、リュミエールが一瞬で消えた。月面基地の頭上に、リュミエールが出現すると同時に、グレイス達が乗っているデスティニーフェニックスも出現し、モーント・ウィガーへ入って行くのであった。
エンブリヲや兄弟に復讐の焔を燃やすグレイス、ディメントによって二人の息子を誘拐された事に怒りの焔を燃やす勇人…この二人を止められる者は……誰一人もおりません。例えそれがエンブリヲでも……。