クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン 作:オービタル
イリアス神聖国に入国したロビンは、フードを被って身を隠す。神聖国はあらゆる宗教団体や教会の者たちが創神神を崇める総本山国家。創神教の教皇が国を治め、人々は創造神の加護の元に生かされ、今もこのイリアス神聖国の後方にある巨大樹『世界樹』の下で創造神“グレイセス”からの声を待ち続けているとのこと……。ロビンは教会都市を観光していると、あの時のエルフの者たちが現れる。
「(やばい、変装しないと…)」
ロビンは擬似マナで衣服や黒髪の鬘、能面をつけ、やり過ごすが……。
「そこの君。」
「(ギクッ!?もしかして……バレた!?)」
「金色の御髪、碧眼の瞳、異国の服を着た男を知らぬか?」
「異国の服?さぁ、見かけてませんなぁ」
音声変換器で、ロビンの声は青年ではなく一般のおじさんの声に聞こえており、エルフの兵士は次の人に尋ねる。
「(何しに来たんだろう?調べてみるか……)」
ロビンはさっきの兵士の心を読む。
「(はぁ、全く…アイナノア姫様のわがままは以上だ。幼少の頃に隣国“ノーザブル列王国”との戦争に、姫様は人質として囚われ交渉によって解放されたが、奴らは調子の良いことに姫様に焼き鉄仮面をつけられ、100年間悲しみ続けられたが、ロビンと言う若者が姫様の素顔を癒し、醜かったあの顔もあんなに綺麗に美しくなった。だが姫様は彼の方ともっとお話しがしたいと……)ハァ〜…」
心の内容を確認したロビンは、彼女は俺と話して何を……。
「まぁ、いいか…」
ロビンはそう思い、教会都市を見て回る。様々な聖書やその中にある物に目が映る。
「この聖書の表紙に描かれているこの“龍”……何処かで…」
表紙に描かれているドラゴンを見て、ロビンの中のドラゴニウムが感応波を流す。
「『アウ…ラ?…』」
彼の言葉と同時に、世界樹の上の白と黒の機神帝のツインアイが光りだし、立ち上がる。その様子を見ていたグレイセスが問う。
《来たか……行くのか?フリューゲルス、ネメシス…》
『『あぁ、ここへ来ている兄弟達に……この星の真実を見せなければならない。』』
《そうか……急いでくれ、上の“奴”も一緒に落ちている。もしこのまま戦闘が長引けば……》
『“奴ら”も再起動を開始する……今度こそな。』
フリューゲルスはそう言い、ネメシスを連れて世界樹の下へ降りていった。グレイスは心配そうな表情で、フリューゲルスを見る。
《急いでくれ……フリューゲルス。》
ロビンは聖書を見つめていると、店主が声を掛けてきた。ロビンはそれに気づき、聖書を買う。教会の屋根の上で聖書を読むが、つまらないのか聖書をしまい、空を見上げる。
「あ〜〜〜〜…………つまんない。」
『まぁ、そう言うな……いつか通信が繋がると思うぞ♪』
「……そうだ……ん?」
「どうした?」
上空の彼方、二つの星が一つになり、赤く染まる。
「あれ……星だよな?にしては、どんどん大きくなっていない?」
『違うぞロビン!これは!!』
その直後、何処からかとてつもない銃声が響く。星が二つへと別れるとそれは姿を現わす。
「あれは!!」
一つはテオスブレードを持ったクーフリンとロビンを襲い掛けたあの巨大甲虫であった。
「一輝兄さん!?」
『どうやらお前を探しに、ここへ来てまきこまれたらしいなぁ!!』
「鬼瓦!行ってみよう!」
ロビンは異次元ポーチからホバーボードを取り出し、屋根の上から飛び降りる。ホバーボードの起動スイッチ踏み込むと、ホバーボードからエアーが放出され、宙に浮く。
「急ぐぞ!!」
ホバーボードからエアーが放出し、前へ突き進む。ロビンは夜光を持ち、人々の間を回避しながら、城門へと突き進んでいくと、エルフの兵士達の上へ飛び上がり、回転しながら通り過ぎた。
「今のは!」
「あの人だわ!!」
二人の兄妹はそれに気づき、急いで後を追う。ロビンは城門を抜けると、クーフリンと大甲虫の姿が見えてきた。
一方、一輝は大甲虫に苦戦していた。ノバビームライフルではかなりの威力であり、街や国を破壊してしまうことがあり、ここはあえて接近戦を持ちかける。大甲虫が高周波ブレードを突きつけ、飛んできた。
「くっ!!」
一輝も必死にテオスブレードで防ぐが長くは持たない。相手の斬撃に圧されていく。
「つ、強い!!」
『…………ヴォス クィス?』
「言葉を話しただと!?」
大甲虫がこの星独自の言語を話した事に驚く一輝。その直後、上空から光の刃の雨が降り、一輝と大甲虫は回避し、上空を見る。世界樹の木の上を覆う雲が裂け、そこから曙光とともにデブリスイーパー砲を構えたフリューゲルスが降下してきた。
「あれは……フリューゲルス!?」
「……“フリューゲルス”?」
フリューゲルスは地面に足を付け、一輝を見る。
「?」
『……新生クアンタ帝国第二皇太子“ロビン・ケラン・クアンタ”はいるか?』
フリューゲルスが一輝に問うその直後、背後から大甲虫が高周波ブレードを突き構えていた。
「危ない!!」
するとフリューゲルスから聖天が射出され、大甲虫の両腕を真っ二つにした。
「っ!!?」
一瞬の事で何も分からなかったが、肉眼では見えないほどの速さと、攻撃が大甲虫の両腕を切断したことは間違いなかった。そしてそこにロビンが駆けつけて来た。
「兄さん!一輝兄さん!!」
「ロビン!!」
するとフリューゲルスがロビン、そして一輝を見る。
『お前達を待っていた。』
「「!?」」
『“グレイス”が…話があると、世界樹の上で待っている。』
するとフリューゲルスのコックピットハッチが開き、ロビンは乗り込み、一輝もフリューゲルスと共に世界樹の上へと上昇していく。
世界樹の木の頂上であるここ…聖地ではあらゆる機械が並び立ち、汚染物質除去装置である“サンクチュアリ”から赤外線素粒子ナノマシンを放出していた。そしてそこに、白龍のグレイスが二人と会う。
《二人とも……よく来たね♪》
「お久しぶりです。グレイスさん」
「え?兄さん……知り合い?」
「あぁ、俺がまだ三つでお前が半ばだった頃、親父とお袋の友達だった人物だ。18年前に行方不明となっていたが、あのフリューゲルスとネメシスを見て、ここにあなたがいるとわかりました。」
《18年……君達の世界では、そんなに経っていたが。》
「え?」
《こっちの世界は…………数千年以上だ。》
「数千年!?」
《……さて、その話は置いておいて…君達も知っているの通り、この星を覆っている星雲を知っているだろ?》
「「はい」」
《あの星雲は、“人工”でできた星雲だ。》
「あの星雲が人工物!!?」
グレイスは詳しく二人に説明する。あの星雲にはあらゆる熱源や通信を遮断するナノマシンでできている。理由は簡単……ある生命体が宇宙へ解き放さない事であった。その生命体の名は……“古代生命体 ネフィリム”と、ネフィリムによって造られた“古代造兵 ガーディアン”を目覚めさせない事であった。グレイスはそう言いながら、世界樹のメインシャフトを起動する。すると一輝とロビンが立っていた場所が下へと降りていく。そこは木の根で覆い隠された基地で、大破した他のフリューゲルスとネメシスや黒歴史兵器が転がっていた。内部はあのアンジュの家であった宮殿そのものであり、グレイスは椅子に腰掛ける。
「グレイスさん、完全にエンブリヲ気分ですね♪」
「でしょ?でも僕はあんな奴みたいにはなりたくない。僕は…この世界の調律者として、正しい事している。だが、やはり争いは変わらなかった。」
すると一輝がグレイスの肩に手を掛け、慰める。
「あなたも頑張ったんでしょ?自分を責めないでください♪」
「ありがとう……」
グレイスは立ち上がり、モニター画面を開く。目的は地下に眠るネフィリムのコアを叩き、五億数千年前の悲劇を起こさない為。彼らとの約束である未開惑星保護条約の為、極力接触を避ける……破壊した大甲虫や残骸はこちらへ移送し、研究するとの事。
「何もかも、ありがとうございます。」
一輝とロビンはグレイスに頭を下げる。
「良いんだ……それにあの星雲の事も知りたい。それが分かれば、天帝軍との通信ができる。だが問題なのは……あの星雲の磁気嵐だ。」
「えぇ…」
「では早速、君達に命ずる。イリアス神聖国の者達が、この地下に勘付いた模様だ。もし彼らがこの地下基地と真実が分かれば……」
「戦争が……」
「さらに勃発…」
「そう…これ以上、ここの生命を終わらせたくもない。君達に、新しい武器を渡そうと思う。」
「え?ですが……私には真刀“神虎”があります」
「俺は真刀“夜光”」
「……蒸気機関だよ。君達の中のクアンタ人と星の民、人類の力を飛躍的に上げ、肉眼での軌道を視覚として見ることができるようにしておいた。それに蒸気機関なら、未開惑星には引っかからない。」
「なるほど…極力な技術より僅かひ進歩した技術を使えば法を避けることが出来る。」
「そう……後、この星に……“彼等”を呼んだ。」
「彼等…」
「朗報だよ…………クアンタ人の末裔が来ている。」
「「え!?」」
二人の他に、クアンタ人の末裔が五人も来ている事に驚く。
「どうしてクアンタ人は和心を持っているんだろう?」
「それで、そのクアンタ人は何処に!!?」
「……見て♪」
モニター画面に世界地図が表示される。世界樹を中心にして各国にいる五人に発信機を付けていると。
『ノーザブル烈王国』に“エギル”
『エレボス帝国』“ゾード”
『ジャッカス自由商業連合』に“シャルル”
『ソルヴィフ王国』に“ヨシツネ”と“ベンケイ”
『イリアス神聖国』に“一輝・ケラン・クアンタ”と“ロビン・ケラン・クアンタ”。
七人のクアンタ人のいる場所が特定し、一輝とロビンはそれぞれの武装と服装に着替える。服装は基本的に異国のように『和』を中心としており、各部に甲冑を身に付けていた。一輝は蒸気機関でできた小銃 “正式名称 稲羽”。ロビンは蒸気機関でできた短筒“正式名称 輝夜”を装備し、一輝とロビンの馬である“颯”と“暁”が貸し与えられた。
「フリューゲルスとネメシス、クーフリンはかなり目立ち過ぎる。気を付けて行ってこい。」
「分かりました。」
「おう!」
するとグレイスが一輝の耳元で小声で問う。
「聞きたいことがある……彼女…セレスやみんなは元気にしてる?」
「……元気にしてます。あちらの世界では三カ月間もみんなあなたの無事を祈っています。」
「そうか……セレス、早く会いたい。」
「では、行ってきます。」
「気を付けろ…同中、ネフィリムを“真の神”と間違ってそれを崇めているネフィリム教団がうろついている。僕を偽神と差別している……」
「分かりました。ソイツらはは?」
「……迷わず、牢獄へ送れ…」
「……はい」
一輝とロビンはそう決意し、グレイスは人が見られない通路である下水道への道を開く。一輝とロビンは手綱を引き、馬を走らせる。その夜、イリアス神聖国から数キロ離れた地域の土が開き、中から馬に乗った一輝とロビンが出てきて、最初に向かうソルヴィフ王国へと向かって行った。