クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン   作:オービタル

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第五十七話:悲劇の皇太子

その頃、海を越え、別の大陸にある国【ディラクニア法国】では、教皇の側近であるザイナーン枢機卿が、地下に眠る遺跡(五億年前の格納庫)で、信者と共に移送されてきたネフィリムの一体と数体のガーディアンを崇めていた。するとそこにネフィリム教乙師が駆け付ける。ソルヴィフ王国の神官達が謎の組織『七つの大罪』と言う四人組に壊滅されたとの報告であり、それを耳にしたザイナーン枢機卿は興味が湧く。

 

「“七つの大罪”……魔王の名が付く死に至る大罪、面白い……」

 

さらにその七つの大罪は各国にいるとの事……そして彼等が“オーガ”の姿としなやかな曲刀と武器を持ち、鎧は鉄ではなく木材を使用しているとの事。さらに自分達の事を自ら『“鬼(オニ)の一族”』と名乗っている

 

「『鬼(オニ)の一族』……良いだろう!!」

 

ザイナーン枢機卿はマントを靡かせ、宣言する。

 

「我らディラクニア法国は……君達を歓迎する為に、宣戦布告をしよう!!討伐対象は……七つの大罪!!」

 

ネフィリム信者や神官、教乙師、教甲師やワイバーン竜騎士が飛び立ち、ロビン達を指名手配として探し回る。周辺の人間やエルフやドワーフの村を襲い、奴隷売買をする法国。

 

その頃、ノーザブル烈王国に到着した一輝達は路地裏で大筒とバトルアックスを持ったアフリカ系アメリカ人でガタイのいい黒人にして生粋の江戸っ子のクアンタ人『エギル・クアンタ』に出会った。

 

「よぉ、ベンケイにヨシツネ!」

 

「「エギル!」」

 

「知り合い?」

 

「旧友だ♪」

 

「お前達二人が、“ブリタニア家”の末裔か?」

 

二人は頷き、エギルは胸を拳に当て、クアンタ流の敬礼をする。

 

「これから、宜しく頼むな♪」

 

「こちらも、世話になる。」

 

お互い敬礼や礼で交わし、酒場で情報収集をする。エギルによればジャッカス自由商業連合にいたシャルルがエレボス帝国にいるゾードと合流し、ここへ向かっているとの事。そしてディラクニア法国の闇で暗躍しているネフィリム信教団体はジャッカス自由商業連合の闇商人と共に他国の村や街から人々を拉致し、奴隷売買、薬物や拷問などの強制洗脳をしているらしいとの事。

 

「やる事は……親父達が倒した【奴等】と同じ……」

 

「滅び朽ちた帝国連合……五大宇宙帝国"ディアヴォリアス"」

 

今から二十五年前……元ヴァルキュリアス総統【陽弥】とフロンティア総司令官【レオン】、新生クアンタ帝国皇帝【勇人】や今の宇宙共和国や数多の神々も率いる種族反乱同盟軍と交戦していた宇宙一の最大武力行使国家であったが、皇帝であったドレギアスは勇人の手により倒され、連合であったグリニア帝国、コーパス協商同盟、ネブラ銀河帝国、シャンドゥア傭兵国、ゼルトラン帝国連合。その内のネブラ銀河帝国は降伏し、宇宙共和国の加盟国として勧誘された。シャンドゥアとゼルトランは戦争時に逃げ出し、裏切りによりドレギアスに星を滅ぼされた。グリニア帝国残党とコーパスは最後の足掻きでグレイス達に歯向い、そして滅んだ。

 

真面目に聞いていたアイナは興味津々になっていた。

 

「これが…親父とマスター達が終わらせた……“光と闇の抗争戦記”だ。」

 

「実際の戦いは僕や兄さんも知らない。だけど、その戦争で多くの人が無差別に地獄へと追いやられた……正に宇宙をも揺るがす程の煉獄の戦争。」

 

「でも、平和になったんですよね?」

 

「……平和?……違う、戦争の傷跡が消えなくなったのだ。数多の神々が守護する世界の大半が消滅し、生き延びた種がなだれ込むように移民して来た。コロニーは愚か、船団や開拓惑星、避難民用衛星施設を使ってのボランティアは悲惨なものだよ。」

 

「…………ここへの避難民を移送する事は出来ませんのですか?」

 

「無理だ……人口はこの星の人口の一千万倍、未開惑星での低文明に私達の様な文明が関わってはいかん。グレイスが再構築させたこの世界に……」

 

「そんな……」

 

一輝達は暗い表情で黙り込む。アイナは暗い表情をするロビンを心配するとドアが開く。

 

《?》

 

一輝達はその方向を見る。それは柄の悪そうな顔や防具をした冒険者であり、彼等は酒を飲みながら今後の事について話し合う。一輝達はその話をこっそり聞く。話の内容は噂になっている七つの大罪に賞金首が出たとの事、ディラクニア法国は各地で七つの大罪を探し、見つけ次第早急に殺す様にと……。

 

その話を聞いていた一輝達は不安を抱く。

 

「まさかこんなに早く知られるとは……」

 

「マズイよ兄さん、こんな所でバレて乱闘してみろ……明らかにこの世界滅ぼす程の力出しちゃうよね?」

 

「……だろうな」

 

「とにかく、ここから出てゾード達を待っておこう。」

 

「そうだな…」

 

一輝達一行は酒場から出て、廃墟の中で一休みをする。月光が照らされる窓に一輝は黄昏ていた。

 

「このままじゃ、奴等の思う壺だ……」

 

一輝はそう呟くと、首に付けているロケットを取り出し、中の写真を見る。その写真に写っていたのは髪が白く、褐色の肌をした美しい猫人の少女と子供の頃の一輝が一緒に写っていた。

 

「……シレーヌ」

 

黄昏時の掠れた声と共に、彼の目から涙が零れ落ちる。

 

 

 

一方、ロビン達は地下の部屋を調べていた。いろんな陶器や資料が置かれており、中には骸も転がっていた。

 

「相当古い物だな…」

 

「何せ50年も前の物だとよ、グレイスさんが目覚めた頃には既に生命が活動していた聞いている。」

 

「ふ〜ん……?」

 

すると地面の地形が段々と変わりだす。

 

「氷?」

 

「こんな場所にか?」

 

「嫌、ここだけなんか……」

 

エギルとヨシツネ、ベンケイが不注意に氷の上に足を踏み入れた直後、表面にヒビが入り、割れた。

 

《っ!!?》

 

氷が割れ、下へ滑り込んで行くロビン達。その音に気付いた一輝も後を追う。地中奥深くまで滑り落ち、ロビン達はある地下空洞に辿り着く。

 

「何だろうねここ…」

 

ヨシツネが空洞の周りを見ていると、エギルが空洞の状態を把握する。

 

「凡そ4年も前にできた空洞だな……だが、こんなに綺麗な空洞ができるとはおかしすぎる…」

 

「おかしすぎる?」

 

「この空洞自体だ……途中に掘られているが、この穴は【プラズマドリル】で掘った後なのだ。」

 

「え!?それってつまり…」

 

「あぁ、プラズマドリルが使えるとなると……4年前この星に……俺たち以外の人類が漂流してきた可能が高い。」

 

「じゃあ!このドリルの回転根を辿れば……」

 

「漂流してきたスペースシップがある。船のバッテリーが生きていれば、その中に生存者もいる」

 

エギルが説明していた直後、足元の地面がなくなる。

 

「おっと!!」

 

ベンケイがエギルを掴み、落ちない様に引っ張る。ライトや懐中電灯で辺りを調べる。

 

「あった…」

 

目の前に巨大な装甲で守られたスタークルーザーがあり、何千人も搭乗できるサイズでもあった…あちこちが凍っており、船体に複数の穴が空いていた。だとロビンが船を見て、ある事に気付く。

 

「あれ?……この船、何処かで……あぁっ!!」

 

船体の窓側にその船の名前が載っていた。その船の名は……【タイタニック】。

 

「タイタニック……」

 

「“タイタニック” 何ですか?」

 

アイナがロビンに問うと、後から来た一輝が神虎を落とす。

 

「?」

 

「…………本当だろうな?」

 

「一輝?」

 

一輝は驚愕した表情で、ロビンに問う。ロビンは無言のまま頷くと、一輝が急いでタイタニックへ向かう。

 

「「「一輝!!」」」

 

「俺達も行こう!」

 

ロビン達も急いでタイタニックへと向かう。一輝はタイタニックのドアのパスワードを打ち、ドアが開いたと同時に中へ走って入っていき、ロビンも後に続く。だがこの時、この航空機の周りに巨大な影が蠢いていた事に、彼らは知る由もなかった。

 

タイタニック内部へと潜入した一輝達は蒸気機関銃器を構えながら進む。ロビンと一輝の擬似マナの光とアイナの光魔法で辺りを照らす。

 

「一輝、一体どうしたんだ?そんなに慌てて………一輝?」

 

ベンケイの問いに無視する一輝。ロビンが説明する。

 

「このタイタニックは……【アステリア人】の豪華客船なんだ。その中に、兄さんの恋人…【シレーヌ・アステリア】を含む王家の一族達が乗っていたんだ。」

 

「一輝義兄さんの恋人!?」

 

「……とても綺麗な人であった。褐色の肌、しなやかな筋肉、母の如く優しさ、透き通るかの様な白き髪、性格は芯が強く、自分を貫く生き方をしているが、周囲への気配りも自然にできる“猫人”のお姫様なんだ…」

 

「猫人のお姫様」

 

「両親と彼女の両親が古い仲でね、兄さんとシレーヌさんは幼馴染なんだ。二人の親公認で許婚となり、俺やアイナにとっては義理の姉になる筈だったんだが…………」

 

「筈だった?」

 

「……四年前のあの日、大事件が起こった。」

 

 

 

 

《回想》

 

 

四年前……当時の一輝は最年少の中で優秀な学歴を持ち、生徒会長を務めていた。ヴァルキュリアス高等学校……一輝はいつもの様に幼馴染の猫人である少女【シレーヌ・アステリア】と一緒に帰っていた。シレーヌは惑星アステリア出身であり、【アステリア星系王国】の当代最強の猫人にして第一王女…アステリア人には必ず掟があった。

それは『見合い』であった。彼女の種族は代々王家の婿か嫁になる物は「強き者」ではなくてはならない、力に自信がある者が彼らと『見合い』を行い、我が物とするのがアステリアの慣わし。

丁度一輝とロビンが『マスター・ギデオン』、『マスター・マクライト』を含む“賢者”の修行を終え、父と母とともにアステリアとの友好関係の為、許婚と見合い…両方を行い、結果一輝があっさりとシレーヌに勝利すると同時に、シレーヌは一輝の勇ましい姿と逞しい身体に一目惚れと見惚れ、猫の様に一輝に戯れる事になった。

それから10年後、ヴァルキュリアス大学 付属高等学校……一輝達高校三年生の最後の修学旅行であった。しかし、謎の重力嵐によってシャトルとの連結部が外れ、シレーヌを乗せた豪華客船はそのまま重力嵐の中に引きずり込まれていく。勿論、一輝のシャトルと共に……運良くその宙域をパトロールしていた【ファウンダー軍事盟約連邦】の艦隊が救助に来てくれた。

 

連邦ドロイドが燃え盛るシャトルのハッチをこじ開け、煙が立ち回る客席へと入り込み、当時十七歳であった一輝を救助する。

 

「待ってくれ!!シレーヌがまだあのシャトルに!!」

 

『無理です!生存率が14.2%に確定しました!彼女達アステリア人を助けるのは困難です!』

 

「俺の事は良い!!彼女を!頼むっ!!」

 

『生存者57名を確認!』

 

「シレーヌゥゥゥゥ!!!」

 

救助用バックパックにつけられた一輝達は連邦艦隊へ移送されていく。シレーヌ達アステリア人や他の生徒達や教師、兵士達を乗せたタイタニックはそのまま重力嵐の中へと吸い込まれ、消えた。

 

 

《回想終了》

 

 

四年前の悲劇と嵐によって断ち切られたシレーヌへの愛はやがて冷酷な鬼神へと変貌し、コンプレックスである最愛の家族であるロビン達を死守すると決意したと……。そして彼の本心は怒りと悲しみ、頑固で高慢な人物へと成り代わっていると。

一輝の過去に、皆んなは心痛める。

 

「知らなかった。一輝の大将に、そんな過去が……」

 

「……兄さんはあぁ見えて大人しいが、本心は剣鬼で……鬼神なんだ。だから兄さんの事を励ましたり、信頼できる仲間と思って欲しいのだ。お願い……」

 

「……わかったよ、大将にもしもの事があったら、皇帝さんに何されるか分からねえからよ」

 

「私も、一番負担を抱えているのは、アンタだけではないないからなぁ」

 

「あぁ、俺達も同じようなことや似たような事もあったからなぁ、お互い支え合うべきだ!」

 

「私も!いずれロビン様の妻となるものとして、義理の妹も全力で支えます!」

 

「皆んな……ありがとう♪」

 

「お前たち……早く来い」

 

悲劇の皇子に仕えると決意した四人は、皇太子の声に導かれ、さらに奥へと潜入する。

 

客用の通路へ辿り着き、客席エリア一層に入る。そこにはたくさんのアステリア人や一輝のクラス違いの友達の死体が転がっていた。一輝は彼らの目を閉じらさ、名を告げる。

 

「【カラミス】、【ロミオ】、【リーシャ】、【リリィ】……」

 

さらに奥の方へ行くと、兵士達の死体が転がっていた。するとロビンがある事に気付く。兵士達の周りには、空になっている無数の弾が転がっていた。

 

「何があったんだ……この航空機の中で…」

 

「分かりません、だけどみんなのを調べたのですが………」

 

「どうした?」

 

「言いたくはないです…」

 

「え?」

 

ロビンは不思議に思い、死体の健康状態を調べる。

 

「っ!?」

 

驚いた事に、彼らの臓器全てが崩壊しており、他の死体も崩壊状態であった。

 

「一体どうやったらこんな風に崩壊状態になるんだ?」

 

「みんな!こっちに来てくれ!」

 

ベンケイが何かを見つけ、一輝達は直ぐにベンケイの元へ駆けつける。

 

「何だ…これ?」

 

一輝達が見た光景は、数百人の近衛兵や兵士達、生徒達が凍りづけになって凍死していた。

 

「何で…こんなにみんな…ちょっと待て?」

 

一輝が凍死した彼らの何かに気付く。

 

「…違う………凍死していない、仮死状態だ!!」

 

何と、凍死していたと思われていた彼らは仮死状態で生きていたと分かる。

 

「急いで氷を溶かそう!」

 

「あぁ!」

 

ロビンが義手の左腕で氷に触れた瞬間、義手が凍りつく。

 

「っ!!?触るな!」

 

「?」

 

「凍るぞ」

 

「っ!!」

 

皆んなは直ぐに氷に触れないようにする。一輝は氷の温度を確かめる。

 

「ー100度……だがこんなに絶対零度なのに、どうして仮死状態なのだ?」

 

「それは分からない、まるで………」

 

その時、彼らは気付く。何故、彼らが生きたまま仮死状態で凍りづけにされた人々、銃弾が散らばった死体、崩壊した死体……この三つのキーワードが一つになる時、その先の答えは想像絶する物であった。

 

「なんて事だ……」

 

「どうしたの?」

 

アイナがロビンに問うと、ベンケイが答える。

 

「ここは…食糧を貯蔵する《冷凍庫》だ!」

 

「冷凍庫?」

 

すると航空機が揺れ始める。

 

「何!?」

 

「……ここが冷凍庫だとすれば、周りは……“奴等”の巣だ!!」

 

一輝達は急いで空洞へ戻ろうとした直後、何か悲鳴のような咆哮が聞こえて来た。そして航空機に大穴が空くと同時に、咆哮をした怪物が姿を現わす。

 

「あれは!?」

 

「あれが………『ネフィリム』!!」

 

甲虫の様な甲殻、蛇の様な体型、頭部はこの世とは思えないまさに航空機をも超える巨大なエイリアンワームであった。

 

「何て醜い怪物だ……」

 

《………ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!》

 

幼虫型ネフィリムは巨大な口を開け、大咆哮をする。口の中から色々と食べた物が吐き飛び散り、その中にシレーヌの両親が身につけていた王冠や装飾物が出てくる。

 

「…………」

 

それを見た一輝の頭上に落雷が落ち、心に怒りの煉獄の炎を燃やす。

 

「殺す!!!!!」

 

一輝は鞘から神虎を抜刀し、ロビン達もそれぞれの武器を取り出す。皆は武器をネフィリムに突きつけ、突撃して行くのであった。

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