クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン 作:オービタル
神聖国後方、世界樹最下層基地。グレイスは誰かと茶室でお茶を飲んで一服していた。
「……1000年ぶりにまた会えて光栄です。勇人皇帝陛下にシンシア皇后陛下♪」
「まさかお前がこの星で、調律者をやっていたとは……」
「びっくり?」
「あぁ、条約は……ギリギリだ。」
「色々、この星でネフィリムを野放しにしてはいけませんからね。」
「だな、天帝軍も喜んで協力しよう。それから……“彼等”を呼ぶ。」
「アイカさん達を呼ぶのですか?」
「戦力は…多い方が良い。それにエグナント達の力なら、未開惑星保護条約に引っかからない。この星独自の能力を持っている。お前も無理をするな…」
「恐縮です……」
「……それに、馬鹿息子二人に会いたい。何処にいる?」
「ちょうど帰ってきた様です。弟さんの方は…嫁さんとなるお姫様を連れてきた様です♪」
「ロビンが?……見てみたいわ、ロビンの彼女♪」
シンシアが呟くとドアが開き、一輝とロビンが入ってきた。
「失礼します。今日は…っ!親父!お袋!?」
「父さん!母さん!?」
「おう、お前たち♪」
「「何でここに!!?」」
「お前たちが二日も行方不明だから、心配して来たのだ。」
「え?でもあの星雲が……」
「グレイスが一時的に星雲に穴を空けている。ネフィリムが宇宙電波に勘付かれない様今は閉じているとのことだ。」
「つまり……できたのですね?」
「うん、僕が作った『ゲート』なら、行き来できるが、長くはできない欠陥になってしまった。すまない…これでも全力でやったんだ。」
「いえ、それなら安心です。皆んなが心配していると思うので…」
「俺も…向こうの友達が心配していると思うので…ん?」
「それよりロビン……お前、彼女作ったてなぁ?」
「え!?」
「紹介しろよ♪」
『あぁ言ってるんだ、紹介してやれ』
「鬼瓦まで!!」
勇人とシンディは喜びながらロビンに問う。
「分かった!分かった!分かったって!!」
ロビンはドアの外で待っているアイナを呼び、いずれ義理の両親になる二人に挨拶をと、アイナが勇気を出して一歩前に出る。
「初めまして、皇帝陛下、皇后陛下……私はソルヴィフ王国国王『ファラサール・ソルヴィフ』の娘……第一王女“アイナノア・ソルヴィフ”と申します。」
「あらぁ、お行儀良いエルフのお姫様ねぇ♪」
「うむ、ロビンも良い女性を連れて来たな、良くやった♪」
「いや、父さん…母さん……何喜んでるの?」
ロビンは呆れながら勇人とシンディに問うと、一輝が勇人にある物を渡す。それはアステリア国王の冠であった。
「これは…」
「俺が倒したネフィリムが吐き出したシレーヌの父親の冠です。四年前、修学旅行で重力嵐に巻き込まれ、ここへ……」
「そうか…」
勇人は冠を受け取り、涙を流す。
「アステリア国王……すまない。言い訳はしない、本当にすまない……助ける事も……」
「勇人……」
「……ですが、シレーヌは生きている。」
「?」
「ロミオが残したビデオカメラに、国王が彼女を逃がしました。彼女はこの四年間……この世界の何処かにいます。シレーヌがそう簡単に……」
「……それは」
勇人が一輝の腰に付けているアステリア独自の曲刀に気付く。
「いつか…返そうと思っております。」
「……そうか」
「……あのぅ、話の途中で失礼しますが……そろそろ次の指令を出したいんですけど…」
「おっとすまない…」
グレイスは一輝達に次の指令を説明する。内容はディラクニア法国の件であった。彼等は周辺国の村を襲い、人々を拉致、薬を使った強制洗脳で勢力を広めていく一方であった。次に狙う諸国は…エレボス帝国であり、彼等は真の神の力であるネフィリムを使って侵略しようとしているとの事。
その事実に一輝達は驚く。
「とんでもない!アイツらを止めないと!」
「そうしてくれ、本当のネフィリムを知らない彼等は、本当の絶望という物を知らない。そこで君達兄弟の為に、対ネフィリム殲滅兵器を開発したんだ。」
「「殲滅兵器?」」
二人は首を傾げ、格納庫に案内された。そこに格納されていたのは赤と白のフリューゲルスであった。全身赤で染まったフリューゲルスは各部の装甲とバーニアが追加されており、頭部のカメラがツインアイではなく、ツインアイの眉間にモノアイが追加されていた。白のフリューゲルスはグレイスのフリューゲルスと違ってスラスターウィングの代わりに実体砲を連結していた。そして特徴的なのは、二体の形状が和装と悪魔を組み合わさったものであり、赤いフリューゲルスの頭頂部に黄金の悪魔像と猛虎を思わせるマーキングが装飾、塗与されており、白いフリューゲルスの頭頂部に白銀の堕天使像と白龍を思わせるマーキングが装飾、塗与されていた。
「これは?」
「一輝のクーフリンを改良し、僕のフリューゲルスのデータとネフィリムによって破れた量産型フリューゲルスの残骸を改修し、組み合わせ、極限へと進化させた“究極の双牙のゼロメイル”…その名も“フリューゲルス・ルヴェル”と“フリューゲルス・アルヴィオン”だ。」
「ルヴェルとアルヴィオン?……ラテン語で『紅き翼』と『白き翼』の意を持っているのか」
「えぇ♪」
一輝とロビンは二体のゼロメイルに見惚れる。
「「何で、俺たちにフリューゲルスを?」」
「……何のことかな?」
グレイスが口笛を吹きながら知らないフリをするが、みんなはグレイスの図星に気付く。一輝はフリューゲルス・ルヴェル、ロビンはフリューゲルス・アルヴィオンに乗り込む。コックピットは全天周モニターで覆われ、バイク状の座席になっていた。
「操縦法は今までのパラメイルと同じだ。」
一輝とロビンは二体のフリューゲルスを起動する。ルヴェルとアルヴィオンのモノアイとツインアイが翠に光り、ルヴェルの背部に装備されたスラスターウィングから12枚の深紅のビームウィングを放出し、アルヴィオンもスラスターウィングから12枚の翠に染まったビームウィングを放出する。
「クーフリン…嫌、ルヴェルか。これからよろしくな♪」
「アルヴィオン……俺の剣となってくれ♪」
紅き翼と白き翼は世界樹の最上部ハッチが開くのを確認し、紅き閃光と翠の閃光が流星の様に天空へ飛び出す。
「速いなぁ」
グレイスが感心しながらドラゴンの姿へと変身し、一輝とロビンの後を追う。紅と翠の光は彗星の如く速さで、空を飛ぶ。神聖国教会都市中では上空に赤と翠の光が飛んでいる事に大騒ぎになる。そして今度は世界を創生した龍神 グレイセスも現れ、さらに大騒ぎになる。グレイスと共に空を飛行する一輝とロビンは話し合う。
《速いだろ?》
「最高です!」
《ハハハ♪だろ?五億年前の遺物は僕のいた世界よりも凄い高度な科学力を持っていたからなぁ》
一輝とロビンは納得し、エレボス帝国へと向かっていった。
一方、蜘蛛型の成虫体ネフィリムを運ぶディラクニア法国教甲師団体。エレボス帝国領域を監視するダーマ砦で、ディラクニア法国教甲師団がこっちに近づいている事に気付く。
「お前達!一体何だそれは!?」
すると教甲師団達はネフィリムを縛り付けていたロープを切り離し、すぐさま森の中へと逃げる。
「ん?」
不思議に思ったその直後、ネフィリムの流動経路が緑に光る。そしてネフィリムが起動し、頭部に内蔵されている高出力荷電粒子重砲『天獄砲』を放つ。天獄砲の高出力ビームは大地を裂き、ダーマ砦の塁壁をいとも簡単に破壊した。
「馬鹿な!!?」
「塁壁を…一撃で!!」
それと共に、森の中からガーディアン達が現れ、ビーム砲を乱射してくる。帝国兵達は急いで魔法障壁を展開するが、ガーディアンやネフィリムの圧倒的な科学力と武装と威力に為すすべも無く、帝国兵達はネフィリムに喰い殺され、ダーマ砦を乗り越え、エレボス帝国へと進軍して行く。
一方、エレボス帝国ではダーマ砦が突破された事に、若き皇帝である“ジアート・エレボス”が慌てていた。偵察兵によれば巨大な蜘蛛は真っ直ぐ此方へと進軍してくる事であった。
「何とかせねば………」
頭を悩めるジアートの元に、偵察兵が報告しにやってくる。
「申し上げます!巨大な蜘蛛の怪物が周辺の街に襲いかかり、アヴァンス砦をも突破しました!」
「アヴァンス砦!?あの難攻不落の要塞がこうもあっさりと……」
「さらに、襲われた街の生き残りから奇妙な事を耳にしました。」
「?」
「“紅き天使”と“白き天使”と“龍神 グレイセス”が……怪物を追っていたと……」
「龍神 グレイセス!!?」
「はい……伝説やおとぎ話の想いすぎかと思いましたが、ほかの生存者達もグレイセスが空を飛んでいたの証言もありまして…」
「……どうなっているのだ?」
ジアート皇帝は世界を創りし神が現れた事に、頭をさらに悩ませる。
その頃、ネフィリムに追い付いたグレイセスは龍の姿のままネフィリムに相手していた。巨蟲人と聖龍皇が暴れまわる中、ガーディアンを一匹たりともグレイセスに近づけさせないよう、一輝とロビンのフリューゲルスが戦場を舞う。一輝のルヴェルは右腕に搭載されている【零聖天】を放ち、蛇の如く速さで、ガーディアンを握りつぶしたり、高火力輻射波動を放つ。ガーディアン内部の機械がオーバーヒートし始め、爆裂して行く。ロビンのアルヴィオンは背部に装備されている超音波振動斬刀『リヒトシュヴェルト(“光の剣”)』を二つ抜刀し、回転しながらガーディアンの装甲もろとも切り裂いていった。
「「攻撃は最大の防御!!」」
二人はことわざを言いながら、迫り来るガーディアンのビームをビームウィングで防御し、エネルギーを吸収して行く。
「「吹き飛べ!!」」
二人は一斉にウィングに吸収されたエネルギーを放ち、ビームウィングから刃状のエネルギー光弾【フェザーエッジ】が放たれ、無数のガーディアン達を破壊して行く。
グレイセスも蜘蛛型ネフィリムの前脚両方を引きちぎり、押し返した直後、ネフィリムの糸疣から糸が吐かれ、グレイセスは身動きが取れなくなる。
《ぐっ!!》
ネフィリムはグレイセスに襲い掛かろうとした瞬間、上空からルヴェルとアルヴィオンのフェザーエッジが降り注ぐ。ネフィリムは急いで後方に下がり、グレイセスも糸を燃やし脱出し、距離を取る。一輝とロビンはグレイセスの前に出て、ビームウィングを広げて光臨を展開する。
「グレイスさん!ここは俺に任せてくれ!」
一輝はルヴェルの零聖天をネフィリムに向け高火力輻射波動を放ち、さらにスラスターウィングの各部からドラゴニウム粒子を散布し、トリオン型障壁でグレイセスを守る。ロビンもリヒトシュヴェルトを連結し、刀身に高周波エネルギーブレードを纏わせた【リヒトシュヴェルト・バスターソードモード】を構える。ネフィリムは腹部からハッチが開き、【プルーマ・ラケーテン】を全弾発射する。
「通じないぞ!!」
アルヴィオンがリヒトシュヴェルトを振り回し、複数のミサイルを切り裂き、アルヴィオンを通過して行くミサイルはルヴェルの高火力輻射波動によって蒸発する。
「そろそろ“ダイレクトアタック”するか……ロビン、行くぞ!」
「あぁ!!」
ロビンはとてつもない速さでネフィリムの頭部にリヒトシュヴェルトを突き刺し、一輝のルヴェルも零聖天のスーパーパドルデーゲンを突き刺す。
「トドメだ……」
一輝は呟き、零聖天から高火力輻射波動が放たれ、ネフィリムの全身がオレンジに光る。見る見るうちに各部が融解し始め、爆裂して行く。ルヴェルとアルヴィオン、グレイスは急いでその場から離れ、爆発するネフィリムを眺める。
エレボス帝国宮殿テラスから望遠鏡で見ていたジアートは、グレイセス達に破れたネフィリムが大爆発して行く光景に驚く。
「『天使と竜の輪舞』だ………」
ジアートが呟くと、赤い天使と白い天使がこちらを見る。
「?」
すると天使二体が突然と消え、ジアートは驚くのであった。
世界樹の基地に戻ると、勇人とシンディが二人を抱きしめ、伝言を伝える。
「これから俺たちはクアンタ星に戻って、アカリ達を呼ぶ。味方は多い方が良い。グレイス…一輝とロビンの事、よろしく頼む。」
「こちらもです。全力で二人や七つの大罪をサポートします。」
グレイスはそう言い、勇人達を空間転送装置でクアンタ星へと転送させた。
「さて、色々と忙しくなりそうだ♪ネフィリムやガーディアンを駆逐する為に、先ずは各国のディラクニア法国の情報を集めないとな♪」
「それと、シレーヌさんの行方も」
「フフフ、そうだったな……」
一輝とロビンは世界樹から見える星空を眺めていた。
砂嵐が吹き荒れる死の砂漠。砂の海の上を歩いている旅人が歩んでいた。砂嵐の中、廃墟になった村に立ち寄る旅人……。家の中は蜘蛛の巣や砂や埃で充満しており、砂中から親子らしき骨が転がっていた。旅人は厳しい目で祈り、足元にある人形を拾うが、何年も老化しており、人形は土のように崩れ落ちる。
「…………何もない、帰る場所もない……私はもう…“大切なあの人”にも会えない…」
声の性は女性であり、旅人である女性はフードを外す。驚いた事に、彼女の頭には猫のような耳があり、小麦色の褐色の肌、白銀の長髪をしていたが、特徴的だったのは彼女の目であった。両目を黒い包帯で覆っており、感覚、嗅覚、聴覚を駆使しながら砂の大地を彷徨うのであった。
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